異世界の親が過保護過ぎて最強

みやび

──第26話──

俺がこの世界に来てから二十数年の時が経っていた。

だが、俺の身体は十五歳で止まったままだ。
同い年のラルフがいる為、ラルフと同じ様に成長させて行けば良いと思っている。

成人を迎えるまでは、本当に色々な事があった。
全属性の魔法や魔術を覚えたり、耐性を付ける為に毒を飲まされたり、レベルを上げる為に色々な魔物と戦わされたり……。

本当に良く生きていたよな。

そう思わされる程、毎日が危険と隣り合わせの気分だった。
そのお陰か、俺のレベルは600目前になっている。
それだけでも、どれほど無茶苦茶な事をやらされていたか想像出来るはずだ。

ライアやカイン、精霊や里の人達が俺を死なせない様に考えてくれているのは分かってはいるが、どこか基準が違うんだと思う。

そして、十五歳の時にイーサンが血の効力の時を動かし、俺は一週間程寝込んだ。
ライアやカインは付きっきりで世話をしてくれ、里の皆も一緒になって色々とやってくれた。

起き上がれる様になるとネロが来て、『本当に寿命が尽きなくなったのか?』と聞いてきた。
見た目が変わった訳でも無いので、俺も実感は無いがイーサンがそう言っていたので、多分そうなんだろうと言うと、ネロは神妙な顔で『……そうか。』と一言。
その後、ネロと話をしていたが、ネロが言うには俺の寿命が短いから情が移るのが嫌だったので冷たくしていた、らしい。
その後、数年間一緒に過ごす時間も増えたが相変わらず喧嘩はするし、戦闘にもなる。
だけど、前みたいに一線引かれてる感じはしなかった。

ラルフとネロの三人で遊ぶ事も増えていた。
遊び場は、あの闘技場。
それぞれ個人の戦い方を見たり、共闘したり……たまに邪魔をしたりして遊んでいた。
そんな様子を見ていた長老が森へ出しても構わないと許しを得たのだが、ライアとカインは猛反発。
お陰で一人で森に行けるようになったのは、ラルフより数年遅れての事だった。
ネロは元々一人で行っていたので気にはしていない。
初めて一人で行く森は思っていたよりも楽しかった。
ただ、数ヶ月間は【索敵】にライアかカインの反応があったが、知らないフリをしていると、大丈夫だと判断してくれたのか最近は着いてこなくなった。

そして今も一人で森に来ている。

〈闇落〉の魔物を倒し、爪や牙、毛皮等素材になる物を回収し【収納】する。
素材に関してはカインに教えて貰い、【収納】はイーサンに教えて貰った。
【収納】に上限があるかは分からないとの事なので、いっぱいになってから考えようと思う。
【収納】に入れると時間が止まっているので腐る事も無く、勝手にリストアップされ、まとめて見れるし、思い浮かべただけで出てくるので凄く便利。

あと、森に入った時には薬草や毒草も採取する様にしている。
暇を見つけては色々な薬を作って里の皆に手渡している。
もちろん、自分の分もちゃんと確保しているが。

これで少しは恩返し出来ていると良いんだけどな。

いつもの様に薬草を見つけ採取していると、常時発動させている【索敵】に、いつもと違う反応が五つ示されていた。
その近くには、凄く見覚えのある反応もある。

少し気になるのでその場所まで行く事にした。

自分に魔法をかけ、周りから存在がバレないようにし、一本の木の上から様子を伺う。

そこには五人の人間がいた。
そして向かい合うは巨体の狼─────ラルフだ。

人間は白い衣を纏い一人がラルフに向かい剣を構え、一人は杖で応戦し、一人が重症でそれを抱えている人が一人。
そして、祈っている人が一人。

白い服って森では目立つんだと思うけどな。

人間はラルフに意識を向けたまま会話をしている。

「くそっ!何でSクラスの銀狼に追われなきゃなんねぇんだよ!」

「逃げても追いかけてくるんだからしょうがないじゃん!」

「ごめんなさい、私が足手まといなら置いてって……」

「バカ野郎!そんな事出来る訳ないだろ!」

「本当にこの森にいるの?」

「ええ、きっと居ますわ。」

「目的を達成するまでに、このままだと死んじまうって!」

「でも、逃げても追いかけてくるんだよ!どうしたら良いのさっ!」

「……迎え撃つしかあるまい。」

「今の戦力では勝てるか分かりませんわ。」

「それでも、生き残る道がそれしか無いのならばやるしか無いだろう。」

…………。

凄く切羽詰まっている様子の人達なんだけど

『ねぇ!もう追いかけっこ終わり?次は何するの?何するの?』

ワクワクとただ遊んでいるだけのラルフ。

温度差が激しすぎる。

言葉が両方共に通じていないので、意志疎通がとれる訳もない。

人間のステータスを見ても、全員400前後でほぼ満身創痍。
レベルでもラルフに負けているのに、その状態で勝てる訳が無いと思う。

はっきり言って、この人達には興味が無いが、このままラルフが遊び続けるとあの人達を殺しかねない。

ラルフの悪い癖が出てしまっている。

遊びに夢中になり過ぎて手加減が出来なくなっている。

『ねえー!今度は何するの?あ、分かった!捕まえたら良いんだねっ!よーし!』

ラルフが足を踏ん張り勢いに乗せ突っ込む姿勢を取る。

ドゴォォォオオォォォンッ!

『わぁ!なに!?』

「くそっ!何だ一体っ!」

「警戒を怠るなっ!」

土煙が舞い、辺りを覆い尽くす。
これは俺が火と水の複合魔法で地面を爆発させたものだ。

そして、土煙が収まるまで双方ともに動かなかった。














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