幻灯箱の紅い薔薇

きあき

秋津島~蜻蛉は何処へ逝く?~

工場の煙突から吐き出された煙が
黒い雲と混じわり広がる
ボクは雑草だらけの線路の上で
何時果いつはてることなく続く
赤蜻蛉あかとんぼの群れを見上げていた

「もうすぐ雨が降るよ
建物の中にお入り!!」
遠くから誰かの声がする
雑草だらけの畑の向こうには
しんと静まり返った住宅街
工場の煙突から吐き出される煙以外
動くものは何一つ僕の目には映らない

蜻蛉とんぼは何処へ逝ったのか?」

ポツポツと降り始めた雨は
チリチリとボクを濡らす
曼珠沙華まんじゅしゃげが淡い火花をあげ
こうべを垂れていく
雨はチリチリとボクを濡らす
世界は静かに死を抱いていた
チリチリと雨が降り
チリチリと弱き者から煙を上げ
大地へと還って逝く

チリチリと
チリチリと
酸っぱい雨がボクを溶かしていく
見上げる空には
煙の混じった雲が広がっている
消えゆく光の中
ボクは蜻蛉とんぼを探した
真っ青な空に飛ぶ
真っ赤な蜻蛉とんぼの群れを

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