クーデレ系乙女ゲームの悪役令嬢になってしまった。
9 女の子の、友達が言っていたんですけど~シリーズはだいたい本人ですよ
今日はクリスマスだから、サンタさんを意識して赤いドレスにした。
艶やかなドレスの生地に漆黒のローズチュールを重ねた、少し大人っぽいデザイン。ラメの刺繍が施されたローズは照明に映えてとっても素敵。ウエストに黒い薔薇のコサージュ。背中にはシンプルな同系色のリボンを。
いつもは姫カットされたストレートヘアーも今日は1つにまとめて同じくブラックローズのコサージュを刺した。
うん、やっぱりすっごく可愛いこのドレス。お兄様にもじゃあ今日はミヤビサンタだねって言われた。うん、それ採用!
今日の私はミヤビサンタだから、みんなの願いを叶えましょう。
「お父様達にミヤビサンタからプレゼントですっ!」
「雅ちゃんが僕達に? それは楽しみだなあ」
前世では社会人になる前の記憶しかない私には、大人のセンスはやっぱりわからなかったので、結局消耗品になってしまった。
「はい、お父様は好物の和菓子セット」
「……っ! 僕の好みを完璧に熟知してるっ! いつの間にっ!」
「えへへ」
お父様は甘い物があまり得意じゃない。
だけど、洋菓子などの生クリームに比べて、和菓子は口に合うみたいでよく頂いているのを見かける。
記憶が戻る前は、お父様達に私も食べたいなんて言えなかったから、大きくなったら食べようと心のメモに書き留めてたのだ。
紳士が好むブランドはわからないけど、スイーツなら老舗の和菓子店から最近流行りの人気和菓子店までバッチリよ。
でもお父様は上生菓子、鹿の子、栗蒸し羊羹、きんつば、どれもこのお店! ってこだわりがあるから、買うの大変だったんだよね~。
「はい、これはお母様に」
「……まあ! これ、雅ちゃんが買ってくれたのね。本当は、すっごく欲しかったのっ!」
でしょうねでしょうね。
お母様は次の日上流階級のパーティーとか、気合いを入れなきゃいけない日の前の日には、いつもこのブランドのコスメのパックをする。
以前私もお願いして一緒にパックした。その次の日のもちもち具合といったらもう! 思わずお母様に、すごい! 潤ってる! と報告し、触りあったほどだ。
後からパック6枚で諭吉さん2枚以上するのには驚いたけど、うん納得のお値段。
多分ここのコスメがお母様のお気に入りなんだろうな~と思っていたら、先日クリスマス限定のコフレを食い入るように見ていた。
お母様もお兄様みたいにご自分で買われるんだろうなと思って、半ば諦めながら聞いてみたら、お仕事が忙しいのと毎年大人気だから手に入らないという理由で諦めているようだった。
お母様大好きなお父様にお願いすればお休みくらい頂けると思うけど、お忙しいお父様にそれをお願いするのは気が引けるようだった。お母様が手伝って、やっと回ってるのに、お休みなんてしたらお父様倒れちゃうよね。
こんな時ほど私の出番だ。
サンタさんは子どもだけじゃなく大人にも来るのさ!
思った以上に喜んでくれて私も嬉しいよ、お父様、お母様!
「はい、お兄様にはマフラー」
「あ、財布と同じブランドなんだ」
そうなんですよ。お財布を買いに行くお兄様に同行させて頂いた時、ネオンブルーのウォレットもあったのに、シンプルなブラックにしていた。
水浅葱色が好きなら当然青系が好きだと思ってたんだけど、どうやら違うみたい。その時にさりげな~~く、どのお財布がいいか探ったから、バッチリ好みなはず。
「あの時聞いてたのは、もしかしてこのためだった?」
「えっ、気づいてなかったんですか?」
お兄様。女の子の、友達が言っていたんですけど~シリーズはだいたい本人ですよ。
お兄様の今後のためにも教えてあげたいけど、このまま純粋なままでいて欲しいからあえて言いません。
お兄様にプレゼントしたマフラーは、そのブランド特有の上品なチェック柄が魅力的で、カシミアを100%使用しているから手触りもすっごく滑らかなんだ。
本当は青系のネイビーか、お財布と同じブラックにしようと思っていたんだけど、お兄様的にはキャメルだったみたい。お兄様の通う学校の制服、白い学ランによく映えるし、お兄様ならなんでも似合います!
「あれ? プレゼントと一緒に何か紙が……」
「ふっふっふっ」
気づいちゃいましたか、お兄様。実はお兄様だけでなくお父様達にも仕込んでいたんだ。
「それは『何でもお願いをきく券』です!」
「……何でも?」
「わたくしが生理的に無理なこと以外」
「あ、制限つきなんだ」
そりゃそうですよ。いくら家族とはいえ、生理的に無理なことをするのは私の精神衛生上宜しくないですし。
一応お父様には口酸っぱく無理やりお見合いとかは無効だと伝えといた。
手作り(?)プレゼントまで貰えると思っていなかったのかものすごく浮かれていたけど、ちゃんと聞いてますか? もったいなくて使えないよ~じゃなくて使って下さい!
「じゃあ、今度は僕の気になるお店に付き合ってもらおうかな」
「……っ! もちろんです!」
お兄様とデートだ! まだ片手で数えられるくらいしか2人でお出かけをしたことはなかったから、私としてもすごく嬉しいです!
お母様静かだなあ~と思ってちらりと見ると、感激の余り泣いてしまってお父様に慰めてもらっていた。そんな、大袈裟な!
でも人形みたいに物言わず静かだった子どもが急に活動的になったら、驚くけど嬉しいよね。お母様も使って下さいね?
          
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