憧れで冒険者になるのはダメですか?

きょう✩.*˚

憧れ

村の全てを焼き尽くす龍。それを見て、悲鳴をあげる村人達。助けは来ない。なぜなら、この村は国から見捨てられたから。龍は1人の村人を捕らえる。それは、小さな少年だった。

「た、助けてぇ!」

助けを求める少年。当たり前だが、助けは来ない。少年が食われる寸前、

少年は自分を掠める一筋の流星を見た。

それと同時に龍の動きが止まる。そして龍は倒れ、龍を倒した剣士に手を貸してもらう。

「大丈夫?怪我は?」

剣士は問う。少年はこの剣士を見て、

自分もこんな剣士になりたいと思った。



龍の襲撃から10年。村の復興も進み、村人達も活気を取り戻しつつあった。

「…本当に村を出るのかい?」

村長は問う。この問いに対し、少年、いや、青年は当たり前だと言うように、

「僕は村を出ます。出て剣士になります。10年前、俺を助けてくれたような!」

青年の名はハンス・ノーベルト。15歳。家族はいない。

「ふーむ…良かろう。ハンスが剣士になることを認めよう。」

村長はそう言い頷く。

「ありがとうございます!」

「しかしな。お前は正式名称を知るべきだ。剣士じゃなくて、冒険者だ、冒険者。」

苦虫を噛み潰したような顔で言ってくる。が、そんなこと関係ないと言った具合に、

「そんな細かいこと気にしてたら早死しますよ?雑に行かないと。」

村長激昂…!

「どういうことだ?それは?」 
 
キレる村長。元冒険者だった村長は近くにあった木刀を持って向かってくる。

「うっそでーす!」

逃げるハンス

「待てやクソガキ!」

村長が追いかけ、ハンスは逃げる。というテンプレをしようとした矢先、フライパンで頭を殴られる。

「何やってんの?!」 

村長の娘のリン・アルンベルトだ。平等に村長も殴っている。

「痛いなぁ!何すんだよ!」

「何喧嘩してんのよ!まとめて美味しく調理するわよ!」

呆れたように言う。ちなみにリンの料理は絶品である。

「はぁー…変わんねぇなぁ…」

「もう一回くらい殴っとく?」

「いや、もう結構です。」

笑顔で殴ろうとしてくるサイコパスから離れ、村長と向き合う。

「王都へ向かう馬車はいつ出ますか?」

「…明後日だ。それまでに出発の準備をしとくと良い。」

「分かりました。」

必要な情報を得て、村長の家から去ろうとするが、

「あぁ、待て待て。これを持っていくと良い。」

家の裏の倉庫から持って来たのは、

「剣…ですか?」

そう。剣なのだ。それもかなり立派な…まるで…

「そう。こいつは魔剣だ。」

「はぁ?!」

魔剣。それは魔、つまり闇属性よりの能力が込められた剣。作ることはほぼ不可能。モンスターからのドロップ品を狙うしかないのだが…

「これはな。昔有名だった鍛冶屋に作って貰った逸品だ。」

「作った?魔剣を?」

「作ったんだ。魔剣をな。」

村長は昔を思い出すように言う。

「こ、こんな剣、貰えませんよ…」

「受け取ってくれ。剣は使い手がいるからこそ、輝くもんだ。ほれ。」

雑に放ってくる。それを奇声をあげながら受け取る。

「わー!危ない!」

村長は何も無かったかのように続ける。

「これが紹介状だ。これで王都にあるギルドを訪れると良い。」

ポーンと投げ渡される。

「金は大丈夫か?」

村長は問う。がしかし、ハンスは10年間何もしてこなかった訳では無い。

「はい。この日のために貯めてあります。」

「そうか。なら良い。今夜は祭りだな。」

その一言に、ハンスは首を傾げる。

「祭り…ですか?なぜ?」

村長は驚いたように言う。

「まさか、知らないのか?この村にはな。冒険者として出ていく者のステータス、能力値だな。それを教会で確認しとるんだ。」

ハンスはますます首を傾げる。

「それと祭りがなんの関係があるんですか?」

「ついでだ、ついで。村を出ていく奴と、最後にバカ騒ぎをしようっていうな。」

「ついでって…」

「ま、良いじゃないか。最後に楽しむんだな。」

そう言うと村長は外へ出ていく。リンもそれについていき、村長の家にはハンス1人に。

「…散歩でもしてくか」

王都へ行ったら帰るのはいつになるかわからない。故郷の風景を目に収めようと散歩をしに行くのだった…

Fin

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