東方狂人形劇

なるるん

妖々夢 (前編)

?〔…さて、どう捌いたものか…〕

一人厨房に立つ少女は考えていた。まな板の上にいるのはマグロ(キハダでもクロでも本でもいいがとりあえずデカイマグロ)である。ここは三枚おろしが妥当だろう。迷わずに包丁を進めていく。すでに頭は落とし、内臓は除去済みだ。あとは決めゼリフを…

?〔…さばいていくっ!〕

決まった…!と内心ほくそえみ、気づけばマグロはすでにおろされていた。

?〔…さて、ここから何を作っていこうか…刺身は確定、カマは塩焼き、半身は切り身にして…あと、頭も煮つけにしないと、幽々子様はほんとによくたべるんだから…〕

今日も白玉楼のコックは大忙しである。


幽々子〔…そろそろ出来上がる頃よね…?おいしそうな香りもしてきてるし、ちょっと覗きに…〕

コックを柱の影より見ゆる者あり。名をば西行寺の幽々子となむ言ひける…(竹取物語みたいな序文ですこと)

?〔…まだ完成しておりませんのでお待ちいただけませんか…ってもう食べてる!?〕

幽々子〔いや、すごくおいしそうな鮪だったし…ごめんなさいね。妖夢の作ってくれるご飯は本当においしいもの。あら、こっちのお寿司もおいしそうね♪〕

妖夢〔勝手に食べないでくださーい!!〕

こうしてまた、白玉楼の一日が始まった。


コック長に怒られてしまった幽々子は仕方なく屋敷の縁側へと向かった。庭には二羽ニワトリ…はいないが、庭師がきちんと整備していることもあり、見渡すと季節の花が咲いている。最近では幻想郷では珍しい花の【弟切草】が生えてきた。とてもきれいな黄色の花なのでたいそう気に入っている。ほかにも花は咲いているのだが、弟切草以外は名前を知らない。そういえば友人の紫がこの花の名前を教えてくれたんだったか…そんなことを考えつつ、コック長の料理を待っていた。

紫〔ハァイ、ジョージィ…〕

幽々子〔私は幽々子よ、ふざけてるの?紫〕

紫〔…冗談よ、ちょっと最近問題が起きててね〕

幽々子〔また何かの異変?〕

紫〔いや、まだわからない。でも、ここ最近でスカーレットの妹と七色の魔法使いが失踪したらしいわ。どちらも特に事前に兆候はなかったそうよ。何があるかわからないから、一応伝えておくわ〕

幽々子〔…へぇ、あの二人が…〕

紫〔まあ、伝えたいことはもうないから。…気を付けてね〕

そう言い残して、紫はいつも通りスキマで帰っていった。幻想郷での失踪は珍しい、そのうち巫女が動き出すだろう…もっとも、あの巫女にやる気があればだけれども。

妖夢〔…幽々子様、お食事できましたよ〕

幽々子〔…わかったわ。さ、早速食べましょ♪〕


白玉楼の一日が始まった。
























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