全スキル保持者の自由気ままな生活

ノベルバユーザー255253

99話 そして神は絵を教える

俺たちが辿り着いたのは、一軒の家だった。

 「お母さん!ただいま!」

 男の子は家の中へと入っていく。
 
 「兄ちゃんもおいでよ!」

 男の子がこっちへ手招きしてくる。
 俺はお邪魔させてもらった。

 「おかえりなさいリオン……その方は?」

 「兄ちゃんはとっても絵が上手なんだよ!だから教えてもらうことにしたんだ!」

 「そうなの……息子がわざわざすみませんね」

 「大丈夫ですよ。俺は暇だったんですし」

 「私はアシェリーと申します。ほら、挨拶しなさい」

 「コラスだよ!兄ちゃんは?」

 「俺はトオルって言うんだぞ」
  
 わしゃわしゃと頭を撫でてあげる。
 嬉しそうだ。

 「それではリビングに案内しますね」

 「お願いします」

 俺はアシェリーさんに連れられてリビングへと移動した。

 
 「じゃあ兄ちゃん何か描いてくれよ!」

 「おう、いいぞ。何かリクエストとかあるか?」

 「それなら……さっき描いてあったようなお城がいい!」
  
 「了解」

 うーん……城っていうんだったらもう見慣れたあそこでいいよな?
 日本の城は分かりづらいと思うし……。
 お題が決まったところで俺はシャーペンを取り出し、描き始めた。

 「うわー……!」

 みるみるうちに俺は輪郭を仕上げていく。
 ……あれだけ見ればここのタルサ城よりもスラスラ書けるのは道理だろう。
 コラスは俺の技量に感銘を受けているようだった。

 それから5分後、絵は下書き程度には完成した。

 「やっぱり凄いね!兄ちゃんは!」

 「いや、それほどでも」

 「本当に絵がお上手なんですね。それってメルトリリスのお城ですよね?」

 「よくお分かりですね」

 「私も昔そこへ行ったことがあるんですよ」

 「へぇ……そうなんてすか」

 「トオルさんもメルトリリスへ?」

 「まああそこで育ったようなものですから」

 ダンジョンは除いて。
 入れるんだったら俺はダンジョンで育ったってことになるじゃん。それは嫌だ。

 「そうなんですか」

 「まあそういうわけで、この城は毎日のように見てたんですよ」

 「そうなんですか……」

 「兄ちゃん!早く教えてよ~!」

 「はいはい」

 そして俺は放ったらかしていたコラスの方へ集中した。
 
 「それでどんな絵を描けるようになりたいんだ?」

 「人の絵を上手く描けるようになりたい!」

 「人の絵か……」
 
 「…….やっぱり難しいの?」

 「いや、そうでもないさ。コツが必要だけど、自然を描くような面倒な手間はそこまでいらない」

 昔、部長に土下座されて50×100もの広さのやつに絵を描かされたことがあったが……あれはもうやりたくない……。
 工程自体が本当に面倒くさかったんだもん!

 「まあ絵なんてものは一朝一夕で上手くなるもんじゃないし、これからの頑張りで上手さなんて変わってくる。だから俺が主に教えることが出来るのは大体の描き方と練習方法だけだ。それでもいいか?」

 「うん!」

 元気よく返事をしたコラスに俺は昔自分がしていた練習方法と大雑把な人物画の基本を教えた。
 俺だって詳しく知らないからそこまで教えることが出来なかったが。
 

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