全スキル保持者の自由気ままな生活
71話 競技種目の発表
 各々毎日のレベリングの課題をこなした後、自身の欠点を見つめ直していたり、さらにそこからレベルを上げている者もいた。
 そしてあっという間に時は流れ、1ヶ月が経った。
 「特訓はこれで終わりだ!みんなよく頑張ったな!」
 俺の考えていた以上のことをみんなはしてくれた。
 これならみんなは勝てるだろう。
 『やったあああああぁぁぁぁぁっ!!』
 みんなが自身の成長に感動し、叫ぶ。
 「まだ、喜ぶのは早いぞ!俺たちが目指すのは魔導演武祭優勝!これが俺たちの目標、いや、達成するべきことだ!」
 これで優勝すれば誰もこのクラスを馬鹿にする奴はいなくなる。
 
 『おおおおおおおおぉぉぉぉぉっ!!!!』
 みんなが優勝へ向けて気合いを入れるために、再び叫ぶ。
 「じゃあ帰るか」
 「また来てね~」
ファフニールが俺たちを見送ってくれる。
 そして俺たちは行った時と同じように円になる。
 「〈転移〉」
 そして俺たちはダンジョンを去り、元いた教室まで戻るのだった。
 教室に戻ると、そこには先生がいた。
 「そろそろ戻って来る頃やと思ってたわ。で、どうや首尾は?うまくいったんか?」
 
 「何とかなりそうです」
 はっきり言って他の連中がどれぐらいなのか、俺はまだ知らない。
 それが余裕で勝てるのか勝てないのか、俺には判断つけ難いんだ。
 それでも、俺の予想は勝てると思ってる。
 (まあ、最後の大血闘では俺が出るから負けはないだろうけどな)
 それが俺の究極の苦手分野じゃなければ。
 「そりゃ良かった!魔導演武祭は3日後や。それまでゆっくり休みい」
 先生に言われた俺たちはその場で解散となり、言われた通りゆっくり休むのだった。
 若干数名は気になってまだ訓練していたようだが……。
 そして魔導演武祭前日。
 今日はこの祭で行う種目が発表される時だ。
 この祭は大血闘だけは毎年やる仕組みらしい。
 この時だけは混雑が予測され、体育館で一斉に喋るらしい。
 (俺、去年いなかったからなぁ……)
 この祭の全容なんて知るよしもない。
 ……ダッル!
 はっ!思いっきり本音が出てしまった……。
 はっきり言って俺は人混みが多いところは苦手だ。
 ……いや、得意な人はそうそういないと思うけど、満員電車とか絶対に乗りたくない主義だから。
 「では明日の魔導演武祭の競技種目を発表するっ!!」
 教壇で理事長は大声を出す。
 
 『うるさいっ!!』
 魔導マイクという魔力を通して音を伝える魔道具を理事長は使用していた。
 つまり、マイクで大声を出すと反響する。
 それが仇となって、反響音が体育館中に響いた。
 みんなのセリフが被るのは当たり前というべきだろう。
 「えー、それでは改めまして、魔導演武祭の競技種目を発表したいと思います」
 この場にある全員に怒られて、ようやく真面目にする気になったのか、普通に喋り始めた。
 「今回の競技種目は全7種目。一つ目は速さと体力を競う学園周回リレー!」
 学園周回リレーか……。
 これは余程の体力がある奴に任せないと厳しいな。
 「二つ目は忍耐力を競う絶対零度耐久!」
 これは……いざとなれば俺が行こうか……。
 流石に絶対零度はみんなにはキツすぎるか……?
 「三つ目はパワーを競うパンチングマシーン対決!」
 パワー型求む!
 ……これはなにをしてもいいんだろうか?
 それならミサタが適任だろうな。
 一番馬鹿力だし。
 「四つ目は知識を競う古代文字解読クイズ!」
 これは賢い奴に。
 俺は無理だ!
 「五つ目は魔法力を競うマジックタッグ!」
 これは……魔法力とそれによる速さを表しているのか?
 これに関しても俺は適任じゃないだろうな。
 「六つ目は自身の運を競うトレジャーハント!」
 これは……俺には知らん!
 他の奴に任せる!
 
 「そして最期は……例年通り大血闘だ~!」
 それを言った時、周りから大勢の人が歓声を上げた。
 (そんなに毎年盛り上がっているのか?)
 「みんなも分かってると思うけど、この競技は各々のクラスの最強が集まって全学年対抗戦だ!」
 学年対抗戦ねぇ……。
 楓も出るって言っていたし、この試合は俺と楓のワンサイドゲームになりそうだな。
 「魔導演武祭は様々な機関の人が来賓として来るから自分のアピールになるよ!それじゃあ……魔導演武祭、頑張ってね!!」
 (なるほど……。みんながこれだけ盛り上がるのも納得できる)
 これは将来の為にもなる学園行事となるわけか。
 ……これは何だか俺が出るのは悪い気がしてきたなぁ……。
 俺の就職先はもう冒険者って決まってるから!
 そうして発表が終わり、俺たちは体育館を後にした。
 これからは自主練の時間になっていた。
 だが先生が、
 「今から自主練や。ゆっくり英気を養うなり、最後の確認をしたい者は訓練してもいいで」
 そう言われたので、俺は今からどうしようかな迷っていた。
 「あ、トオル君はちょっとついてきて」
 何故か先生に呼び出しをくらった。
 そして俺は外へ出る。
 「みんなはどうや?」
 「さっきも言ったと思いますけど、悪くはないですね。あの程度なら負けないと思いますよ」
 「それはSクラスも?」
 「流石にそれは厳しいですね……。全て俺が出るんだったらともかく、出ないんだったら確実に楓のところで潰されますね」
 「そうか……」
 あのメンツでまだ可能性にかけるとしたらミサタだ。
 はっきり言ってあの天魔法を撃てるのであれば楓にだって負けはしないだろう。
 (でも、その隙を楓が許してくれるとは思わないからなぁ……)
 ああ見えて負けず嫌いだし。
 勝負事なら余程じゃない限り手加減しないからなぁ……。
 「チーム分けはどうするんや?」
 「……種目ごとに出場できる人数を知らないです……」
 どの種目に何人出場出来るのか俺が知るとでも!?
 「ああ、そうやったね。一〜七種目までに出場出来る人数は10人。リレーだけ4人出ることができるね」
 ふむ……。俺の出席番号が21番である為、Eクラスには21人いるというわけだ。
 そして10人となると、必然的に俺が入らないとなる。
 (ふむ……。これは俺出た方がいいのか?)
 出たら滅茶苦茶になるぞ。
 「……俺は出ないとダメなんですか?」
 「そりゃあ全員出場って規定で決まっているからね。人数が少ないところは複数回出場もありということになってるんよ」 
 (マジか……。なんてルール作ってくれるんだあの理事長は!?)
 ……俺はこれは出ないといけないっぽいな。
 なら適当にやるか……。
 (俺だけがチームに入ったら他のチームのバランスが崩れるし、単騎でいけるのは俺だけだからな)
 残念ながらミサタにはこれは厳しそうだ。
 かと言って俺とミサタで組んでもミサタの抜けた穴は修正不可能なほど大きい。
 「じゃあ俺は一人で出るということでいいですか?」
 「もちろんOKや!暴れていき!」
 「了解です」
 こうして魔導演武祭には俺一人だけで出ることが決まった。
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