全スキル保持者の自由気ままな生活

ノベルバユーザー255253

65話 同盟締結

 「お待たせいたしたした。こちらが我が国、タルサ王国です」

 馬車に揺れて揺られて揺られ続けること3日間。
 特に何事もなく本拠地、タルサ王国王都へ到着した。

 「……………やっと着いた…………」

 俺ははじめての馬車旅で心身ともに疲れ果ててしまった。
 
 (……やばい。こんな経験したことなかったから吐きそう……)

 初日には耐えきれずゲロってしまったが、2、3日目は何とか耐え切れることができた。
 俺にとっては地獄の時間だった。

 (……異世界に来て初めてこんなにしんどいことになったな……)

 乗り物酔いはたとえ世界最強でもよくあることだ。
 ……こう考えると、日本の乗り物って凄いんだよな。
 全然揺れないし。
 こっちの馬車は常に揺れまくっているから酔う。
 乗って1時間ぐらいで酔ったわ!

 「では東諸国連合本部へ向かいましょう」

 ギルバートが顔を出すだけで、門番が理解したのか扉が開いていく。

 (流石王族。顔パスぱねぇっす!)

 普通無理でしょ?
 いや、前々から連絡が入っていたのか?
 そして再び馬車が揺れる。

 (くっ……。もう歩いていいかな……?)

 流石にこれ以上馬車に乗って行くのは逆にしんどい。

 (歩いていいか?)

 俺は隣にいた女王様に聞いた。

 (……酔いましたか?)

 (とっくの昔に酔ってる)

 (分かりました)

 「すみません。彼が歩きたいと言っているんですがいいですか?」

 「ええ、構いませんよ。でも少し小走りの速さなので置いていかれないよう気をつけてくださいね」

 よし。ギルバートからの許可も得たことだし、歩くか!
 俺は後ろから地面へ飛びランニングをしながら馬車へとついて行く。

 (ああ!断然こっちの方が楽だ!)

 気持ち悪い感覚がなくなり、スッキリした。
 最初は好意を無下にするわけにはいかず、馬車に乗っていたが絶対外でランニングしてた方が楽だった!
 
 「大丈夫ですか?」

 ギルバートが馬車の中から話しかけてくる。

 「あ、はい」

 急に聞かれたので俺は敬語になってしまう。

 (それにしても……)

 とても活気がある街だな……。
 これはメルトリリスを上回るんじゃないか?

 それからランニングをすること約10分。
 遠くに見える巨大な城ほどではないほどにしても、十分に大きな建物に到着した。

 「到着です。これが東諸国連合の本部です」

 ……思ったよりしっかりしたところなんだな。
 もうちょっと小ちゃいものかと思ってたんだが……。

 「ありがとうございます」

 女王様はこのことを知っていたのか特に感嘆することもなく入口へ向かって行く。
 それに俺も続いて行く。

 「この本部では奥にある大会議場や、さまざまな各国家で話し合うための会議室、やって来る首脳陣の部屋などいろいろな施設がここにはあるんですよ」

 ギルバートは丁寧に説明してくれている。
 ……今思ったんだが、こんなに説明してくれるのは俺が勇者だからだろうか?
 俺のことは女王様を伝えて知っていると思うし、何よりも楓と違ってバカだからな。
 他国のことなんか知る必要ないって思ってたし。

 「こちらが大会議場です」

 案内されて着いたのは大会議場という63カ国の首脳陣が集まり会議をする場所だった。
 扉をくぐると、卓の周りにたくさんの人が集まっていた。
 すると、辺りからヒソヒソと声がした。

 (得体の知れない者を招き入れて不安がある……か)

 ていうかそれ以外にないと思うけど……。

 「静粛に。これから同盟締結の話し合いを行う前にトオル様に挨拶してもらいます」

 ギルバートはそう言って魔力を使うことによって使えるマイクを俺に渡した。

(何でここで俺に振るかなぁ……)

 そう思いながらも渋々マイクを取り、話をする。

 「初めまして。私は金山透と言います。
 前に聞いた方もいると思いますが私は歴とした勇者です。
 私が今日同盟を結べることを前提で話を聞いてください」

 まあ、出だしはこんなもんでいいだろう。
 これからは俺が同盟を結ぶことによって起こり得る利益の話だ。

 「同盟を結ぶのなら、私は友好的な関係を望んでいきたいと思っております。
 この力は皆様の国民には余程のことがない限り攻撃に使用することはないことを誓います。
 そして物資の方ですが、言ってくださったら出来る限り様々な事をさせて頂きたいと思います」

 「例えばどのようなものかね?」

 そこで俺の言葉を挟んで質問をしてきた。

 「例えばお金を払っていただけばどんな物でも用意しますし、私が開発したものを無償で用意したりすることもできます」

 「発明とはどのようなものかね?」

 これまた最もな意見が飛んできた。

 「言葉で説明するよりも、実際に見てもらった方が早いですね」

 俺はそう言ってアイテムボックスの中からいろんなものを取り出した。
 戦闘用品や、化粧用品、食料や調味料など、ここの世界にないものでいろいろと作っていたものがある。

 「百聞は一見にしかず。どうぞいろいろ見ていってください」

 俺はそう促した。

 「これは何だね?」

 俺が置いていったものを手にとって質問してきた。

 「それは銃ですね。安価で簡単に製造できますよ」

 それの素材は鉄だしな。
 ガルバドメスなど、ミスリルを使った銃だと大量生産は普通難しいからな。
 ま、俺はできるけど。
 この世界の銃はライフリング加工がされていないため、安定しないし、あまり直進性も良くなかった。

 「試しに撃ってみますか?」

 俺は普通の弾と当たっても貫通しない的を用意する。

 「おお!それでは試させてもらおうか」

 そう言って彼は弾を込め、構える。

 (なかなか様になっているな……)

 どこかで練習していたのか、様になっている。
 パンッ!
 という音とともに弾は真っ直ぐ飛んでいき、的の中央に命中した。
 
 『おおー!』

 命中したことを見た観衆は、声を上げ、彼に向けて拍手を送った。

 「これはすごい!狙った方向に綺麗に飛んでいく!しかもこれは正規の銃より遠くへ飛ばせるだろう!」

 流石というべきか、1発でライフリングと普通の物との性能の違いを言い当てた。

 「これはどうやって作っているのかね!?」

 興奮していた彼が俺に質問してくる。

 「ま、まあ説明はまた今度ということにしませんか?なんか話が進まなくておかんむりな人がいるみたいですし……」

 俺は一刻も早く終わらせておきたいと言った風に見える男が数名見えた。
 その一部は本当にどうでもいい風に見えたな。

 (まあ、別にいいんだけどな)

 俺的には同盟を結べた、ということはラッキーなんだけど、無くたって問題はないからな。
 でもやるからにはしっかりやらないと。

 「それで説明はまた今度するとして……これでいいですか?」

 と、俺は終わっていいのかギルバートに尋ねる。

 「はい。ありがとうございました」

 「こちらこそ」

 そう言ってギルバートは首脳たちの方へ向き直る。

 「ではこれから採決をとる。トオル様が同盟の加入に賛成な者」

 ギルバートがそう言うと、大多数の人が手を上げてくれた。
 もちろん半数を上回っている。

 「では同盟は締結されました。それにあたって調印を行います」

 (……やべ。俺判子とか持ってないんだけど?)

 いや、この場合はサインでいいのか?
 そう思っていると、ギルバートがスラスラッと書き上げていく。

 「ではこちらにサインを」

 渡された紙を俺は見る。
 
 (うん、不利益なのは無いな)

 そう理解した俺は書かところに羽ペンを使って書き上げる。

 (初めて羽ペン使ったな)

 そう言えばギルドに登録した時も、ただ血を垂らすだけだったしな。

 「これにて同盟は締結されました。では次の議題に入ります。メルトリリス王国との友好の為、同盟を結ぶことについてです」

 今度はメルトリリス王国だ。

 「この国についてはもう説明は要りませんよね?」

 そうギルバートが言うと、みんなうんうんと頷いていた。

 「ではメルトリリス王国との同盟に賛成な者」

 また多くの手が上がる。

 「ではメルトリリス王国との同盟は締結されました。ーー」

 そして俺と同じ行為をし、同盟が締結された。

 「では、本日の議題はこれまでです。お疲れ様でした」

 そしてこの場は解散となり、俺個人とメルトリリス王国は東諸国連合と同盟を締結したのだった。

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