全スキル保持者の自由気ままな生活

ノベルバユーザー255253

54話 超極大魔法

 あの方法とはこれからのお楽しみというわけで。

 「とりあえずその首についているやつを外すぞ。〈ディスペル〉」

 アルスさんの首についていた、いかにも禍々しい首輪を絶対解除の魔法で取った。

 「嘘っ!?これは魔王様しか取り外すことができないのに!」

 「ふっ」

 残念だったな。すでにアルスさんの支配権は奪ってある。
 ……正確には奪ったんじゃなくてディスペルで支配権ごと解除しただけなんだけどな。

 「これから貴様には我のメイドになってもらう!」

 本人の目の前で堂々と宣言した。

 「くっ!!そんな辱めを受けるぐらいなら死んだほうがマシだ!早く殺せ!」

 「殺すわけないだろう。我のメイドとなり、罪を償うがいい!」

 「……私っ、こんなことしたくないのに……!」

 アルスさんは本当に嫌だったのか、自身の目から涙が溢れている。 

 「「「あ!透(トオル)(ご主人様)が女の子泣かした!!」」」

 「その……悪かった。少しふざけすぎたようだ……だから泣かないで!」

 俺は頑張ってアルスさんに謝る。
 しかし、

 「隙あり!」

 どこかに隠し持っていたナイフを俺に向けて切りつけてきた。
 俺はあえて避けない。

 バリンッ!

 硬質な音ともに、アルスさんの持っていたナイフが根元からポッキリ折れた。

 「なっ……!これはアマダンタイト製のナイフなんですよ!どうして切れないんですか!?」

 (……ん?アダマンタイトなんて聞いたことないな)

 少なくともトルリオンよりは下だろう。
 あえて見せつける為に俺はトルリオンを取り出した。

 「俺に傷を付けたかったら少なくともこれぐらいの武器を用意するんだな」

 そうじゃなかったらたとえ当たったとしても剣の方が耐え切れずに砕け散る。

 「それは……まさか神鋼鉄ヒヒイロカネっ!?それをどうやって手に入れたの!?」

 「教えてやってもいいんだぜ?でもそれだったら俺のメイドになってからだな」

 敵にベラベラと自身のことを喋るバカじゃいからな。俺は。

 「……くっ!」

 今アルスさんはどっちにするか悩みに悩んでいるだろう。
 俺のメイドになればヒヒイロカネのことについて教える。しかし、これを断ったら入手方法も知る由もなくなる。
 恥辱に耐えて情報を得るか得ないか。

 「……分かりました。私はあなたのメイドになりましょう」

 「うん!ヤダ」

 ようやく決意した人の気持ちを真正面から砕いていく俺。
 今からは俺の問題だ。責任は全て俺にある。

 「「「「…………………は?」」」」

 「メイドは俺よりも位が低いんでしょ?」

 そして俺はスキル〈奴隷術〉を使用する。

 「ああ!ああぁぁあっ!!」

 奴隷になるのは苦しいものだ。
 喉に奴隷紋が施される時、そこには激痛が走る。
 この話を俺は昔(4、5ヶ月前)ファフニールから聞いた。

 そして奴隷紋の痛みに耐えられなかったのか、地面に倒れ、気絶した。

 「ちょっと透!?いくらなんでもやり過ぎなんじゃないの!?」

 「……いいんだ、これで。こうしないと後がすごく面倒くさくなる」

 「……どういうこと?」

 「情報の持ち逃げを防ぐ為だよ。別に情報が漏れたとしても害はそこまでないんだけど、俺たちのような全スキル者に渡ると厄介だ」

 もしかしたらあの魔王が全スキル持ちの可能性がある。
 今は奴隷として情報を口外させないことが一番なんだ。
 それは口約束なんかで成立するものなんかじゃない。

 「……でも……」

 「嫌だと思うならみんなでアルスの面倒を見てやってくれ。悪役は俺一人で十分だ」

 これが俺なりの責任の取り方だ。
 いや、けじめのつけ方だな。
 第一、俺が甘いからこんなことになったんだし。
 
 「じゃあもう一回行ってくる」

 そして俺は転移を発動し、90万の兵の元へ行った。

 そして俺は今、クリエイトアースで自分で作った超特大の壁の上にいた。
 ざっと高さは300メートルぐらいだ。

 「さて、やりますか」

 ここからは全力でいく!
 俺の切り札のうちの一つを今から使用する。

 「〈我は願いし。太陽の極光が我が敵を焼き滅ぼすことを〉」

 俺は詠唱を唱える。
 詠唱が進んでいくごとに、俺の周りにとてつもなく膨大な魔力が集まってくる。
 
 「〈神なる太陽の光はここにあり。この全ての光を集め、ここに顕現せよ!〉」

 詠唱が完了し、俺のとっておきの魔法が放たれる。

 「超極大魔法!アトムディストラクション!!」

 直訳すると“原子消滅”。
 これは俺の大量の魔力を用い、太陽からの熱視線を降らせ原子ごと消滅させる魔法なのだ。
 俺の目の前、壁の中に極光のビームが放たれ中にいる人間を構成している原子ごと消滅させた。
 
 アトムディストラクションの後には立っているものはいない。
 そうファフニールに言われるほど、この魔法は強力なんだ。
 俺自身もこの魔法をくらったら、ただじゃ済まない。
 耐えることは出来るかもしれないが、無傷とはいかないだろう。

 (……君たちの今後に幸あれ……)
 
 俺は壁の上で手を合わせ、これから行きゆく魂たちへ祈った。

 (……終わったな)

 アトムディストラクションを撃ったせいで、周囲の地形はほとんどと言っていいほど変わっていたが、それは何とかなる。
 
 「〈土魔法〉クリエイトアース解除」

 俺がそう唱えると、巨大な壁が崩れ落ち、俺の攻撃で抉り取った地面に被さっていった。
 俺は唱えた瞬間に飛翔で飛び、何も起こっていない方の地面に降り立った。

 (もうちょっと綺麗にしておくか……)

 そう思った俺は創造で約1000本の鍬を作り出し、それを〈念操〉というスキルで操り、被さっていた土をきれいにする。
 念操とは魔力で物体を思った通りに動かすスキルだ。
 もちろん、動かす重量と数によって必要な魔力の量は大きくなる。

 (まあ、俺はまだまだ余裕だけどな)

 その気になれば俺のレベルと同じぐらいの桁は操れるんじゃねぇか?
 ……それだったら何キロ、いや、何トン持てるんだろうな?
 気になるので待っている間に計算しよう!

 (えーっと……鍬自体の重さが約600グラムぐらいと仮定してそれを1,000,000,000本(10億本)作るとしよう。
 つまり600×10億。キロに直すなら、0.6×10億となる訳だ。
 キロの方で計算すると、600,000,000(6億)キロにもなる)

 ……今思うと、俺って本当に人外の粋なんだな。
 純粋に魔力だけで、6億キロ、6万トンもの重量を持ち上げることが出来る。
 今は千本だから……60キロぐらいか。
 大体人の体重ぐらいなら余裕で持ち上げれる訳だ。

 ……おっと、ようやく終わったな。
 あの計算が終わってから約5分後。
 千の鍬は土を耕し終わっていた。

 「これどうしようかな……」

 一つ問題なのが、鍬の後処理だ。このままここに放置していくというのもいいけど、そんなことしたらやったのが俺だって絶対にバレる。

 「はぁ……もうバラすか」

 俺は持ち手の木と金属とを〈分解〉で分けた。
 そして金属はアイテムボックスに詰め込み、木の方は全て炎で燃やした。

 「後は種だけだな」

 流石にこのまま耕すだけ、というのはどうかと思う。
 というわけで、俺は創造ですぐに繁殖・成長するけど、全長が30センチぐらいの植物の種を作った。

 「はっ!」

 俺は勢いをつけて飛び、上からどういう感じにばら撒くか考える。

 (……いや、これもう考えずにただひたすらに作って種を落としていけばいいんじゃね?)

 魔力が減っても即座に回復できるわけでし。
 俺は飛びながら作りたい種をイメージし、出来たそれを上からばら撒く。

 そして10分後。
 
 「こんな感じでいいかな?」

 後は水だな。
 俺は森の方まで行き、雨を降らせることにした。

 「〈水魔法〉ウォーターレイン」

 範囲を平原に絞って雨を降らせる魔法を唱えた。
 すると、平原の真上から雲がものすごい勢いで集まり、雨が降った。
 この効果は10分だ。

 そして10分後。
 成長速度をアホのようにしていたから、水をあげただけで、もう芽が出ていた。

 「終わりだな!」

 俺は上機嫌でみんなの元へ戻った。
 
 この日、俺は帝国軍100万を極大魔法で殲滅し、その事は周辺国にすぐに伝わる事となった。

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