全スキル保持者の自由気ままな生活
49話 水着は浅葱色
 「ああー、いい湯だ……」
 俺は風呂に入っていた。
 「夜にこうして外で風呂を入ったのは初めてだなぁ……」
 向こうにいた時は風呂なんて入る暇なかったからな。
 いつも〈クリーン〉という洗浄のスキルで済ましていた。
 日本も基本室内だしな。(露天風呂は含めない方向で!)
 露天風呂もありだったら結構入ってるし。
 「はぁ……」
 なんだかこれから戦争だと思うと、鬱になってくる。
 だって負けはしないと思うんだけど、面倒くさいじゃん!100万だよ100万!
 数が数だけに一気に襲ってかかられたら迷惑以外の何ものでもない。
 (……なんだ……?)
 今、一瞬だけ空気が変わった。
 人だったのがいきなり悪魔へと変わったような感じ……。
 それから考えるもまともに答えなんて出てくることはなかった。
 
 (多分、戦争絡みのことだろう……。もし最悪なケースになるんだったら、俺が責任とって全員滅ぼすしかなくなっちゃうんだけどな)
 そう硬く決意した俺であった。
 透の決意から少し前。
 アルスター帝国軍は合戦場の前で急速を取っていた。
 「クソッ!あの男めっ……!余を馬鹿にしおって!」
 そこにはアルスター帝国第二王子アマス=アルスターが自分の気持ちを抑えきれず、叫んでいた。
 
 「アルスター帝国第二王子アマス=アルスター様とお見受けいたします」
 アマスの前に一人の黒のフード、黒のマントを被っているなんとも怪しい姿の女がいた。
 「何の用だ!余は今忙しいのだ!お前のような男など相手をしている暇などないのだ!」
 それだけ言い終わった後、ようやく気づくことができた。
 普通、ここに入ることができるのは、兵士か貴族かになっている。
 そこに怪しい格好の女が現れている。
 
 (こいつ……っ!只者ではない……)  
 アマスはそう気づいた瞬間、女から瞬時に距離を取った。
 「それほど恐れなくても……」
 女はドン引きされたことに少し寂しがっていた。
 「……それで本日はどのような要件でこちらへ来たんですか?」
 アマスは思わぬ客の来客に焦って、変に敬語を使っていた。
 「あなた、どうしてもメルトリリス王国に勝ちたいですか?」
 「はい!もちろんです!」
 憎っくき親の仇とも思えるような表情を女に向ける。
 「わかりました。なら、あなたたちに力を貸しましょう」
 そう言って女は何やら怪しげな呪文を唱え、この場にいる兵士達全員に魔法をかけた。
 「これでみなさんは強くなりましたよ。戦争、頑張ってください」
 「ありがとうございます!」
 藁にもすがる思いだったアマスにとってこれは奇跡のように見えた。
 なぜなら何もしなくたって自分たちの戦力が上がるんだから。
 女は応援を残し、魔法によりその場所から消えた。
 俺がお風呂を入っていてもエルはぐっすり眠れていたようだ。
 (ふぅ、風呂も入ったし無駄に汗もかきたくないからもう寝るか)
 そして俺はテントに入り、自分用の毛布を被った。
 (……そういえばあの不気味な感覚はなんだったんだろうな……?)
 あの人が人でなくなったような感覚。
 あれがどうなったのか気になるが、今はそんなこと気にしている暇はない。
 なんたって、明後日には“アレ”が控えているんだからな。
 明後日の合戦を楽しみにし、俺は眠りにつくのだった。
 そして翌朝。
 合戦前日だ。
 今日は湖で遊ぶことになっている。
 ……はっきり言って暇だからな。
 (武器の用意とか、ドロップアイテムが腐るほどあるし、無かったとしても首手で意識は狩れるしな)
 そう。ダンジョンにいた頃。
 俺はこの技をマスターしたのだ!
 カッコいいからな!一度やってみたかったんだよ。
 まあ、一人ずつやらなければならないということには変わりないから、大変といえば大変なんだけどな。
 (防具面に関しても、いらないだろ?俺に傷つけれることができるやつ=7桁以上の敵しかもういなくなっているからな)
 実際。ファフニールの攻撃だってそこまで効かないほどだからな。
 レベルが3桁以下の奴らに俺を倒せるところが想像できない。
 「ご主人様、今日は何して遊ぶの?」
 「そうだな……。まずは普通に泳ぐか」
 「うん!」
 「なら……水着がいるな。何か要望はあるか?」
 「うーん……水色の水着がいい!」
 「エルって水色系が好きなのか?」
 普段着も水色だし、水着も水色となると、好き以外に考えられないんだが……。
 「うん!私、澄んでいる色って好きなの!」
 「へぇ」
 なるほど。それは俺も同感だな。
 濃い色よりも薄い方が断然いい。
 まあ、食事になってくると話は変わってくるんだけどな。
 「じゃあ、水色だけってのも癪だし、他の色で作るか。澄んでいるようにするからさ」
 「うん、いいよ」
 というわけで、エルからも許可を得たことだし、俺は前から作りたかった色を使って水着を作ることにした。
 色は浅葱色を使う。
 浅葱色って何かって?
 一番有名なのは新撰組のあの羽織の色だな。
 まあ、俺はそれが好きでこの色にしたんだけどな。
 というわけで、早速作り始める。
 今回は防具という面は抜きにしていいから、浅葱色の布を創造し、俺の裁縫技術で縫い上げていく。
 「よし!完成!」
 そこには男物の水着と、女性用の水着。二つが完成した。
 「わー!この色も綺麗だね!」
 「そりゃあな。俺の一番好きな色だからな」
 ……昔も、この色を使ってよく絵を書いていたよなぁ。
 
 (そういえば、俺ってこの世界に来てから一度も絵を描いていないよな……?)
 腕とかが鈍ってなかったらいいんだけど……。
 今更絵の世界に戻るつもりなんてないんだけどな。
 「じゃあ着替えよう!」
 「そうだな」
 「ふふっ、楽しみ……!」
 エルはご満悦のようだ。
 これは職人冥利に尽きるものだな。
 俺は外で、エルがテントの中でそれぞれ水着に着替えた。
 ……浅葱色って男の水着だったら少しダサい気がするのは俺だけだろうか……?
 「お待たせ!」
 エルは浅葱色の水着を着けて出てきた。
 「ご主人様、どう?似合ってる?」
 「ああ。似合ってるぞ」
 「ありがとう!」
 今までほとんど水色の服とかしか見たことがなかったから、こういう色も新鮮だな。
 
 「ご主人様とお揃いだね!」
 「そうだな」
 そりゃ俺は面倒くさくて同じ色でまとめて作ったからな。
 いちいち俺だけ色を変えるのは時間がかかるし。
 「じゃあ早速泳ごうよ!」
 「ああ」
 エルは俺の手を取って湖まで走った。
 
 「うわぁ!遠くからでもよかったけど、近くで見るともっと綺麗だね!」
 今日は晴天。
 空が澄み、水も綺麗に見えるという神コンディション。
 必然的に湖の水もとても綺麗になるということだ。
 「ねぇ、ご主人様。カエデちゃんやルーナちゃんとは遊ばないの?」
 「……俺はそれでもいいんだけど、せっかく暫しの別れを告げたのに戻ってくるのは……なんというか気まずい?」
 「なんで疑問形なの……?」
 呆れるエル。
 「じゃあもう転移だけしてよ」
 「……それだけなら」
 そして俺たちは上に即席で作ったラッシュガードを羽織り、一度王国へ向かって転移した。
 無事俺がいた部屋に到着し、
 「ちょっとみんなを呼んでくるから待っててね」
 そう言って、扉から出て行った。
 そして1時間後。
 (どれだけ待たされるんだ……)
 女性は準備に時間がかかることは知っているが流石にこれはかかりすぎだろう!
 1時間だぞ!ゲームもない俺にとってはこの1時間は暇でしかない!
 「お待たせ!ご主人様!」
 「透ー、流石にあんなカッコいいセリフの後にまた会うのはどうかと思うよ」
 「グハッ!!」
 俺の現在のHP。最大値の半分。
 「私もちょっと残念だなぁって思うよ」
 「ガッ……!」
 そして俺はさらに半分減らされ体力がなくなってしまった。
 床に肘と膝をつけて、ほぼ土下座の体制である俺を見かねて。
 「でも誘ってくれてありがとう」
 「私も海、行きたかったんだ!ありがとう!」
 と、楓とルーナは声をかけてくれた。
 そして俺のHPは全快になった。
 楓たちは水着が見えないように、俺たちと同じでラッシュガードを着ていた。
 (多分、楓が作ったんだろうなぁ……)
 俺と同じことができる人は誰か?と言われたら楓だからな。
 「じゃあ行くか」
 「「「出発っ!!」」」
 こうして初めてみんなで湖に行くことになった。
 俺は風呂に入っていた。
 「夜にこうして外で風呂を入ったのは初めてだなぁ……」
 向こうにいた時は風呂なんて入る暇なかったからな。
 いつも〈クリーン〉という洗浄のスキルで済ましていた。
 日本も基本室内だしな。(露天風呂は含めない方向で!)
 露天風呂もありだったら結構入ってるし。
 「はぁ……」
 なんだかこれから戦争だと思うと、鬱になってくる。
 だって負けはしないと思うんだけど、面倒くさいじゃん!100万だよ100万!
 数が数だけに一気に襲ってかかられたら迷惑以外の何ものでもない。
 (……なんだ……?)
 今、一瞬だけ空気が変わった。
 人だったのがいきなり悪魔へと変わったような感じ……。
 それから考えるもまともに答えなんて出てくることはなかった。
 
 (多分、戦争絡みのことだろう……。もし最悪なケースになるんだったら、俺が責任とって全員滅ぼすしかなくなっちゃうんだけどな)
 そう硬く決意した俺であった。
 透の決意から少し前。
 アルスター帝国軍は合戦場の前で急速を取っていた。
 「クソッ!あの男めっ……!余を馬鹿にしおって!」
 そこにはアルスター帝国第二王子アマス=アルスターが自分の気持ちを抑えきれず、叫んでいた。
 
 「アルスター帝国第二王子アマス=アルスター様とお見受けいたします」
 アマスの前に一人の黒のフード、黒のマントを被っているなんとも怪しい姿の女がいた。
 「何の用だ!余は今忙しいのだ!お前のような男など相手をしている暇などないのだ!」
 それだけ言い終わった後、ようやく気づくことができた。
 普通、ここに入ることができるのは、兵士か貴族かになっている。
 そこに怪しい格好の女が現れている。
 
 (こいつ……っ!只者ではない……)  
 アマスはそう気づいた瞬間、女から瞬時に距離を取った。
 「それほど恐れなくても……」
 女はドン引きされたことに少し寂しがっていた。
 「……それで本日はどのような要件でこちらへ来たんですか?」
 アマスは思わぬ客の来客に焦って、変に敬語を使っていた。
 「あなた、どうしてもメルトリリス王国に勝ちたいですか?」
 「はい!もちろんです!」
 憎っくき親の仇とも思えるような表情を女に向ける。
 「わかりました。なら、あなたたちに力を貸しましょう」
 そう言って女は何やら怪しげな呪文を唱え、この場にいる兵士達全員に魔法をかけた。
 「これでみなさんは強くなりましたよ。戦争、頑張ってください」
 「ありがとうございます!」
 藁にもすがる思いだったアマスにとってこれは奇跡のように見えた。
 なぜなら何もしなくたって自分たちの戦力が上がるんだから。
 女は応援を残し、魔法によりその場所から消えた。
 俺がお風呂を入っていてもエルはぐっすり眠れていたようだ。
 (ふぅ、風呂も入ったし無駄に汗もかきたくないからもう寝るか)
 そして俺はテントに入り、自分用の毛布を被った。
 (……そういえばあの不気味な感覚はなんだったんだろうな……?)
 あの人が人でなくなったような感覚。
 あれがどうなったのか気になるが、今はそんなこと気にしている暇はない。
 なんたって、明後日には“アレ”が控えているんだからな。
 明後日の合戦を楽しみにし、俺は眠りにつくのだった。
 そして翌朝。
 合戦前日だ。
 今日は湖で遊ぶことになっている。
 ……はっきり言って暇だからな。
 (武器の用意とか、ドロップアイテムが腐るほどあるし、無かったとしても首手で意識は狩れるしな)
 そう。ダンジョンにいた頃。
 俺はこの技をマスターしたのだ!
 カッコいいからな!一度やってみたかったんだよ。
 まあ、一人ずつやらなければならないということには変わりないから、大変といえば大変なんだけどな。
 (防具面に関しても、いらないだろ?俺に傷つけれることができるやつ=7桁以上の敵しかもういなくなっているからな)
 実際。ファフニールの攻撃だってそこまで効かないほどだからな。
 レベルが3桁以下の奴らに俺を倒せるところが想像できない。
 「ご主人様、今日は何して遊ぶの?」
 「そうだな……。まずは普通に泳ぐか」
 「うん!」
 「なら……水着がいるな。何か要望はあるか?」
 「うーん……水色の水着がいい!」
 「エルって水色系が好きなのか?」
 普段着も水色だし、水着も水色となると、好き以外に考えられないんだが……。
 「うん!私、澄んでいる色って好きなの!」
 「へぇ」
 なるほど。それは俺も同感だな。
 濃い色よりも薄い方が断然いい。
 まあ、食事になってくると話は変わってくるんだけどな。
 「じゃあ、水色だけってのも癪だし、他の色で作るか。澄んでいるようにするからさ」
 「うん、いいよ」
 というわけで、エルからも許可を得たことだし、俺は前から作りたかった色を使って水着を作ることにした。
 色は浅葱色を使う。
 浅葱色って何かって?
 一番有名なのは新撰組のあの羽織の色だな。
 まあ、俺はそれが好きでこの色にしたんだけどな。
 というわけで、早速作り始める。
 今回は防具という面は抜きにしていいから、浅葱色の布を創造し、俺の裁縫技術で縫い上げていく。
 「よし!完成!」
 そこには男物の水着と、女性用の水着。二つが完成した。
 「わー!この色も綺麗だね!」
 「そりゃあな。俺の一番好きな色だからな」
 ……昔も、この色を使ってよく絵を書いていたよなぁ。
 
 (そういえば、俺ってこの世界に来てから一度も絵を描いていないよな……?)
 腕とかが鈍ってなかったらいいんだけど……。
 今更絵の世界に戻るつもりなんてないんだけどな。
 「じゃあ着替えよう!」
 「そうだな」
 「ふふっ、楽しみ……!」
 エルはご満悦のようだ。
 これは職人冥利に尽きるものだな。
 俺は外で、エルがテントの中でそれぞれ水着に着替えた。
 ……浅葱色って男の水着だったら少しダサい気がするのは俺だけだろうか……?
 「お待たせ!」
 エルは浅葱色の水着を着けて出てきた。
 「ご主人様、どう?似合ってる?」
 「ああ。似合ってるぞ」
 「ありがとう!」
 今までほとんど水色の服とかしか見たことがなかったから、こういう色も新鮮だな。
 
 「ご主人様とお揃いだね!」
 「そうだな」
 そりゃ俺は面倒くさくて同じ色でまとめて作ったからな。
 いちいち俺だけ色を変えるのは時間がかかるし。
 「じゃあ早速泳ごうよ!」
 「ああ」
 エルは俺の手を取って湖まで走った。
 
 「うわぁ!遠くからでもよかったけど、近くで見るともっと綺麗だね!」
 今日は晴天。
 空が澄み、水も綺麗に見えるという神コンディション。
 必然的に湖の水もとても綺麗になるということだ。
 「ねぇ、ご主人様。カエデちゃんやルーナちゃんとは遊ばないの?」
 「……俺はそれでもいいんだけど、せっかく暫しの別れを告げたのに戻ってくるのは……なんというか気まずい?」
 「なんで疑問形なの……?」
 呆れるエル。
 「じゃあもう転移だけしてよ」
 「……それだけなら」
 そして俺たちは上に即席で作ったラッシュガードを羽織り、一度王国へ向かって転移した。
 無事俺がいた部屋に到着し、
 「ちょっとみんなを呼んでくるから待っててね」
 そう言って、扉から出て行った。
 そして1時間後。
 (どれだけ待たされるんだ……)
 女性は準備に時間がかかることは知っているが流石にこれはかかりすぎだろう!
 1時間だぞ!ゲームもない俺にとってはこの1時間は暇でしかない!
 「お待たせ!ご主人様!」
 「透ー、流石にあんなカッコいいセリフの後にまた会うのはどうかと思うよ」
 「グハッ!!」
 俺の現在のHP。最大値の半分。
 「私もちょっと残念だなぁって思うよ」
 「ガッ……!」
 そして俺はさらに半分減らされ体力がなくなってしまった。
 床に肘と膝をつけて、ほぼ土下座の体制である俺を見かねて。
 「でも誘ってくれてありがとう」
 「私も海、行きたかったんだ!ありがとう!」
 と、楓とルーナは声をかけてくれた。
 そして俺のHPは全快になった。
 楓たちは水着が見えないように、俺たちと同じでラッシュガードを着ていた。
 (多分、楓が作ったんだろうなぁ……)
 俺と同じことができる人は誰か?と言われたら楓だからな。
 「じゃあ行くか」
 「「「出発っ!!」」」
 こうして初めてみんなで湖に行くことになった。
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