全スキル保持者の自由気ままな生活
48話 バーベキューと風呂
 結婚のほうこくをした後日、驚愕の内容が女王様から届いた。
 「……早いですね」
 「はい……。まさか帝国がこんなにも戦争をしたがっていたとは……。すみません、私の計算ミスです」
 「いいんですよ。別にそこまで負担じゃないんだし」
 「……そう言ってもらえるだけ嬉しいです」
 事実、負担にならない。
 俺が封印を外したら腕を軽く振るだけで、何千人と吹っ飛ぶだろう。
 今回は封印の状態で戦うからざっと……1000レベルぐらいといったところだと思う。
 レオンでも300ぐらいだったのに、それを帝国の奴が700以上越えるとは考えづらい。
 (まぁ、もしそれぐらい、もしくは1000以上の敵が現れるんだったら解放すればいいんだけだし)
 今回の戦争は俺が引き金だ。
 だから他人に任せていい案件じゃないし、それをするのは俺のプライドが許さない。
 というわけで、二人だけで戦う。エルともだ。
 ……そっちの方が全力出した時に味方に被害が出ないからいいんだけどな。
 「敵の数は約100万と聞いています」
 (うわぁ……。この国に戦争するのにどれだけ数つぎ込んでんだ?完全に俺がいなかったら全面戦争じゃねぇか)
 それに100万かぁ……。流石に解放しないとしんどいかなぁ?
 それだけの人数を俺とエルが一人で倒せる保証はない。
  
 (負けるわけではないんだけどなぁ)
 俺が抜けさせてしまったら後で面倒くさいことになりそうな予感が……。
 「なぁ、エル。お留守番してくれないか?」
 「いや!」
 「ですよねぇ……」
 こう言って意見を曲げないんだよ……。
 はっきり言って楓でも大丈夫……だと思うんだけど、もしものためにエルも残しておきたいんだよな。
 「場所はメルトリリス王国湖付近の国境で行われます」
 「そうですか」
 ご丁寧に合戦場所も表記とか、有難いものですなぁ。
 ……飛翔で飛んでいた時に、でっかい湖があったけど、それがその湖だったんだな。
 ちなみにデカさは琵琶湖ぐらいあった。
 「後何日ではじまるんですか?」
 これが一番大事。
 もしかしたら間に合わないかもしれないし、日付によっては買い物せずに直行しなければならないかもしれないからな。
 「それなら後3日の午後3時と、親書には記載されています」 
 (なるほど……。3づくしか……じゃなくて。まあ、それだけあれば余裕で間に合うだろう。飛べば一日で着くだろうしな)
 はっきり言って、準備とか俺のアイテムボックスに食材+生活用品は入っているからすぐに行っても問題ないんだけどな。
 「エルはどうしたい?」
 はっきり言って俺はその湖には興味があるから一度行ってみたい。
 エルが行きたくないって言うんだったら仕方ないんだけど。
 「もちろん!行きたい!」
 「よし、決定だな」
 こうして俺たちはすぐにメルトリリス王国湖へ向かうのだった。
 俺たちが行く時に見送りのメンツが豪華だった。
 女王様にルーナ、楓やレオン。それ以外にも様々な人が見送りに来てくれた。
 「みんな、今日は見送りに来てくれてありがとう。みんなの分まで勝ってくるよ」
 「そんなに気を背負わないでね。透だったら絶対に勝てるよ」
 「そうだね。頑張って!」
 楓やルーナに続き、他の人からも応援コールが続く。
 「ああ!それじゃあ行ってくる!」
 「行ってきます!」
 その言葉を言うと俺は飛翔を使い、メルトリリス王国湖に向けて出発した。
 
 「大丈夫か?」
 「うん……ご主人様にこうやっておぶってもらうのって久しぶりだね」
 そういえば……確かに。
 ダンジョンを踏破するまでは結構していたのに、それ以降はそれほどする機会がなかったからなぁ。
 「もうちょっとスピード出してもいいよ」
 「いや、今回はゆっくり行くことにする」
 「わかった」
 自然とか見ていたいしな。
 前は急いでいたから下のことなんて気にする余裕は無かったからな。
 こうやってゆっくり風に打たれながら進むって言うのもいいものだ。
 そして俺たちが進むこと8時間。
 ようやく琵琶湖並みのサイズがある湖に到着した。
 もう夕日も暮れかけている。
 「じゃあ、ここで休むか」
 俺たちは見晴らしのいい高台をテントの場所に選んだ。
 「おー!夕日が綺麗だね!」
 「ああ、そうだな」
 ちょうど湖に太陽が被さるようになっており、なんとも神秘的な光景だった。
 ……あと少しでこの先で戦争が起こるんだって思うとなんだか実感が湧かないな。
 「ご主人様、今日のご飯は何がいい?」
 「そうだなぁ……せっかくだからバーベキューでもするか」
 「やった!」
 エルはとても嬉しそうに見えた。
 使う肉はもちろんドラゴンの肉。
 ファフニールの分身はしっかり肉体として成立しており、肉も食べられる。
 ドラゴン=美味い。
 なら原初の龍=ヤバイほど美味いとなる。
 もう、黒毛和牛A5ランクなんて目じゃないぜ!
 エルは早速肉を取り出し、木炭に火をつけ、バーベキュー専用の網に肉を置き、焼き始めた。
 そして俺はその場から離れる。
 何故かって?そんなのあんないい匂いを目の前にして抑えられるわけないだろう!(食欲)
 というわけで、俺は緊急離脱してきた。
 「やっぱり綺麗だな……」
 俺は月夜に光り輝く湖を見ていた。
 ……俺はこういうのも好きだな。
 今度みんなを誘ってここにピクニックにいくか。
 そう思う俺であった。
「ご主人様!そろそろ焼けてきたよ」
 「お!」
 とうとう焼けたか!
 肉が俺を待っている!
 そして全力ダッシュで元の場所に戻るのであった。
 「はい、ドラゴンの焼肉だよ。タレか塩をつけて食べてね」
 (うおっほ!)
 俺は完全にテンションが、おかしくなっていた。
 「「いただきます」」
 俺はエル作のタレをつけて食べる。
 俺の頭に電撃が走った。
 「もう、ご主人様ー!そんな緩みきった顔しないでよー!」
 「エルもな!」
 あまりの美味しさに俺たちの頰が緩みまくっていた。
 ……冗談抜きでとろけるようだー!
 (……危ない危ない。危ないテンションに持っていかれるところだったぜ……)
 この肉は魔性の肉だな。
 中毒性が強い……かも。
 ていうかこの肉さえ出せば戦争とか止まるんじゃねぇか?
 それだけの力がこの肉にはある!……気がする。
 「ご主人様美味しいねー!」
 「あー!そうだな!」
 すっかり俺たちは深夜テンションみたいな状況になり、バーベキューを楽しみまくった。
 そして深夜。
 「………………はっ!」
 ようやく俺の意識が覚醒すると、辺りは特に異常はなかった。
 エルは楽しみ疲れたのか地べたに何も引かずに眠っていた。
 「おーい、こんなんじゃ風邪引くぞ?」
 「……」
 (あ、これ完全に寝ちゃってるな。起こすのも悪いしテントに寝かしておくか)
 俺はなるべくエルを動かさないようにテントへ運び、毛布を被せる。
 「俺もそろそろ寝ようかなぁ……」
 今日はバーベキューパーティーで少し疲れたからな。
 ……風呂も入りたいな。
 (材料……は創造で作ればいいか。よし!)
 というわけで俺は一からお風呂を作ることにした。
 結局、面倒くさそうだったので、本体を丸ごと創造することにした。
 お風呂の形はドラム缶で作った風呂みたいな簡易的ではなく、日本の一軒家についているような風呂を下に板を敷いた状態で作った。
 板を作ったのは、風呂の底を汚したくないと思ったからだ。
 
 (もうちょっと離れて作った方が良かったよな……)
 ここだったら熱気でエルを起こすかもしれないし、少し離れておけば大丈夫だろう。
 テントに関しては前のと同じ見えないから大丈夫だろう。
 俺が大丈夫なのは魔力感知があるからだ。
 俺は作った風呂をアイテムボックスの中に入れて、湖が見える高台までやってきた。
 (この景色を堪能しながら風呂……最高だな!)
 そして俺は風呂を取り出し、中に水魔法〈ウォーター〉と炎魔法〈ファイア〉でお湯を沸かした。
 そうして、俺の旅用の風呂が完成するのだった。
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