全スキル保持者の自由気ままな生活
44話 激怒
 「おいっ!どういうことだっ!!!」
 「お、落ち着いてください!」
 俺はその一言で少し冷静になりレオンから手を話す。
 「……どういうことかちゃんと説明してくれ」
 今にも沸騰しそうな理性を押さえつけ、レオンから話を聞く。
 「はい。2ヶ月前のことです。ーー」
 そしてレオンは語り出した。
 トオル様が着く2ヶ月日前。
 王国にこんな親書が届きました。
 〈いつもご無沙汰しております。
 本日新書をお送りししたのは貴国の聡明なる王女、ルーナ=メルトリリスと、我が最賢の息子、アマス=アルスターとの婚約を申し込みたい。
 なお、これは確定事項である。
 断った場合、我が国との全面戦争とお考えよ。
 アルスター帝国国王スマル=アルスター〉
 この親書は簡単に言ったら、
 「そちらの王女のルーナをくれ。その代わりに私の息子と結婚してやる。断った場合は、領民もろとも皆殺しにする」
 と言っているようなものなのだ。
 これを見た女王陛下はもちろん激怒した。
 
 「こんなこと……!世界条約に反します!」
 「しかし帝国は世界で一番力を持っております……。戦争になれば不利になるのは確実でしょう」
 「それでも各地から救援を頼めば……!」
 女王陛下がお辛そうに方法を探すが、こればっかりは無理としか言いようがない。
 帝国兵は屈強かつ強固。
 こちらの兵では突破するのも難しい。
 「陛下もお分かりでしょう……。帝国は周辺諸国も我がものしています。そうなれば我が国に味方してくれるのはほんの一握りの国しかいなくなっています……」
 「そんな……あなたはそれでいいの!?」
 「良いわけないでしょうッッ!!!」
 「……ごめん」
 「……こちらこそ申し訳ございませんでした」
 私が怒鳴ってしまったのを察してくださり、誤ってくださる。
 
 「……話は聞かせてもらいました」
 「ルーナっ!?」
 「……私に行かせてくれませんか?私のせいで領民の皆さんにを見放すなんてことは出来ません」
 「そんな……!あなたには勇者様がいるでしょう!」
 「……いいんですお母様。覚悟の上ですから……」
 「……せめて、今日だけは思いを吐き出して。あなたの本音が聞きたいわ」
 「お母様……っ!……行きたくない!トオルが帰ってきてきてからもずっと一緒にいたい!!」
 「話は聞いたよ!」
 まるで図っていたかのようにカエデ様が扉を開け放った。
 「カエデ……」
 「本音が聞けて私は嬉しかったよ。ルーナちゃんを他の奴に渡すわけにはいかないからね。そんなことしたら透がガチギレしちゃうよ?」
 カエデ様が決断なされたおかげで、陛下は結婚を取りやめることを報告しました。
 そして次の日の夜。
 王城に暗殺者が忍び込み、カエデ様を襲いました。
 カエデ様もここで来るとは思っていなかったようで、反応できずに敵に眠らされてしまいました。
 
 「私のせいで……カエデちゃんが……!」
 王女殿下は結婚の話を受諾し、楓の眠りと引き換えに。という条件を出し、3日前に出発しました。
 
 「お話した通りです」
 「そうか……」
 「お願いしますっ!どうか王女殿下を取り戻していただけないでしょうかっ!!」
 「お前に言われなくても分かってるよ」
 俺は今体の底から怒りが湧いていた。
 帝国の奴らへの怒りもあるが一番デカイのは彼女一人も守ることができない俺の不甲斐なさだった。
 ……それよりも、2ヶ月前って言ったらもう帝国に着いている頃だよな?
 ふぅ……、まだ2ヶ月前、ということには助かったな。
 これが半年前とかだったら絶対間に合っていないだろうな。
 (今ならまだ間に合う。……今は楓の治療に専念するか)
 一刻も早く、この状態から解除してあげたいからな。
 俺は何をされたのか知るために鑑定をした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<名前>涼川 楓    <種族>人間
<性別>女     <状態異常>石化
<年齢>17歳
<レベル>975
<体力>S
<物攻>S
<物防>S
<魔力>SSS
<魔攻>SSS
<魔防>SS
<敏捷>SS
<運>S
<スキル>
 「スキルリスト」、「検索ツール」
<称号>
 「神に選ばれしもの」、「異世界の勇者」、「超絶万能美少女」、「弓神」、「ドラゴンスレイヤー」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 なるほど……石化という状態異常がかかっているのか。
 これならパーフェクトヒールで回復できるな。
 え?いちいち鑑定する必要があったのかって?
 そこはいいんだよ!楓の成長も知りたかったし、何より勝手に回復してそれがダメだったという方が良くない。
 何事にも下調べというものは大事なんだよ。
 「〈パーフェクトヒール〉」
 俺がそう唱えると、石化は無事解除された。
 「………………んっ?透……?」
 「ああ、ただいま」
 こうして本当の意味で楓と再開した。
 楓が起きた後、何が起こったのか俺は説明した。
 「透っ!何でもっと早く帰って来なかったの!?」
 「悪い……。約束を果たすのに遅くなっちゃったからな」
 「……うん」
 楓は納得してくれたようだ。
 ……実際そんな話になっているとは知らなかったしな。
 知っていたら飛び出してでも止めに行っていたのに……。
 「これから俺はすぐさま帝国に行くんだけど、楓はどうする?」
 「私も行く!……っ!」
 「まだ石化の後遺症が残っているんだろ?ゆっくり休んでろ」
 「……必ず二人で帰ってきてね」
 「何言ってやがる?俺に出来ないことなんてない。何たって俺は全スキル持ちなんだからな」
 本当は俺が本気出せば止められる奴なんてほんの一握りの中の一握り×100ぐらいの奴しかいないからな。
 むしろ帝国の勇者の天谷が立ち塞がっていても余裕で勝てる自信はある。
 
 「レオン、楓を頼んだぞ。もし何かあればお前の首がないと思え」
 「はっ!」
 エルは今回は居残り組だ。
 帝国の奴らなど俺一人でもどうにかなるし、何よりエルがいれば万が一はないだろう。
 そうして俺は憎き帝国へ向かうのだった。
 俺は部屋を出た後、帝国へ着いた。
 移動手段はもちろん転移だ。
 「ここも久しぶりだな……」
 エルとここら辺を回ったんだよなぁ。
 まあ、ここいらも特に良かったというのはあそこしかないしな。
 というわけで情報収集のために俺たちは〈青の猫家〉にやって来た。
 「いらっしゃいませ!……あ、トオルさん!お久しぶりです!」
 「ああ、久し振り。もう一年になるんだね。あれから大丈夫だった?」
 「はい!あの人たちもこちらにちょっかいをかけなくなるようになりました」
 「そうか」
 一年前のことだから忘れてるかもしれないが、この子はテリアちゃん。俺が商会を潰した時に、その商会に虐めをくらっていた〈青の猫家〉看板娘だ。
 「それで何か最近に行われると言った行事とか知ってる?」
 「うーん……あ!そういえばどこかで王子様とお姫様が結婚式をするとか言っていたような……」
 ビンゴ!
 これに違いない。
「その話、詳しく聞かせてもらえる!?」
 「は、はい!……でも私も詳しく知らないんです。お父さんだったら知ってるかも……。お父さーん!」
 「おう、テリア。呼んだか?」
 「トオルさんが結婚式のことについて教えて欲しいんだって」
 「ああ、そのことか……。というか久し振りだな。トオル君」
 「久し振りです」
 「結婚式の話なんだけどな……、正式な発表は3日後って話なんだけど……とある信頼できる筋からの情報によると3日後には式も全て終わらしてから発表するんだって」
 「そうなんですかっ!?」
 それはまずい……。しらみつぶしで探すにしてもそれだったら時間がかかりすぎる。
 しかもいつあるのか分からないんだったら特定のしようがない。
 「どこでやるか分かるんですか!?」
 「ああ、今日の午後3時から。場所はこの地図に書いてあるよ」
 そう言って紙を渡してくる親父さん。それには地図らしいものと、赤いバッテンが書かれていた。
 ……それにしても何でこんなことまで知っているんだろう?
 まあ、それはありがたい!これでようやくとめることができるんだからな。
 (今日の3時って……後1時間しかねぇぞ!?)
 「お世話になりました!」
 こうして俺は結婚式の現場へと走り出した。
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