全スキル保持者の自由気ままな生活

ノベルバユーザー255253

40話 決着

 俺たちは炎龍王の素材を集め終わり、98階層に到着していた。
 扉を開けると、そこには氷の魔法を纏ったドラゴンがいた。ただし、前の5倍は少なく見積もっても強い。
 ……ていうか、なんでこんなに青いドラゴンって多いの?
 このダンジョンで3体目だよ。ちょっとアンバランスなんじゃないのか?

 「グルアアアアアアアッッ!」

 叫び声を上げて、こっちが攻撃するのを待っていた。
 攻撃したらカウンターという名目で攻撃するんだろう。
 普通の魔物より余程知性が付いていると思える。

 (うーん……どう攻撃しようかな?コイツの行動パターンは分からないし、前のように感じていたら確実に痛い目を見る)

 とりあえず、俺は氷によく効く魔法を使うことにした。

 「〈炎魔法〉インフェルノ!」

 ドラゴンの周りに黒い炎が渦巻く。
 
 (やったか!?)

 思わずそう言ってしまった。
 安定のごとく、フラグ回収をしてしまった。
 ドラゴンはインフェルノにくらっても、ピンピンしている。
 ……いや、あいつの防御結界がインフェルノを防いだんだろう。
 そうじゃなかったら防がれるはずないし。少なくとも少しは効くはずだもん。

 (さてさて、まずはあの厄介な結界から剥がしていくとしますか)

 俺はトルリオンを取り出し、ドラゴンに斬りかかった。

 ガキンッ!

 と、俺とドラゴンの間にある見えない壁に弾かれた。

 「グルアアッ!」

 ドラゴンの放った爪の一撃が俺はもろにくらってしまった。

 「くそったれ……」

 コイツは思ったより手こずりそうだな。
 そこまで痛くはないにせよ、あの結界が面倒くさすぎる。
 
 「グルルッ!」

 ドラゴンが追い打ちをかけてきたのか、こちらに大多数の氷柱みたいなのがが飛んでくる。
 
 「〈炎魔法〉インフェルノ!」

 氷柱がこちらに着く前に、俺の前に張ったインフェルノが氷柱を溶かした。
 全ての氷柱を溶かし終わり、魔法を解除した瞬間を見計らってか、ドラゴンはブレスを撃ってきた。

 「遅いっ!」

 俺は今いたところから瞬時に脱出して、反対方向に回り込んでいた。

 「グルアアアアアアアアッッ!」

 なんと、ブレスを放ったままこちらに振り向いてこようとしたのだ。

 (ヤバイ!)

 そう思った俺はもうなりふり構わず倒すことにした。
 俺の出し惜しみが怪我の元につながるとか一番嫌なことだからな。
 俺はダーインスレイブを抜く。

 「〈血壊魔法〉ブラッディボム!」

 俺はドラゴンの方へ手を向け、魔法を唱えると防御結界を無視して、体内の血を爆弾と化した。
 そして爆発した血が吹き出る。
 
 (今回は血壊魔法使わないとどうなっていたか分からないな……)

 ダーインスレイブ作って正解だぜ。
 もし無かったら、今回の戦いも勝てないことはなかったが、だいぶ消耗していだと思うからな。

 「ドラゴンに吹っ飛ばされていたけど大丈夫!?」

 「ああ、それに関しては全然問題ない」

 あんまり痛くなかったしな。
 これも〈超防御上昇〉の常時発動型スキルを使っていたおかげなんだろう。

 「じゃあ行くか」

 多分次の階層のボスはコイツよりは強いんだろう。
 一層気合い入れて望まないとな。

 99階層。
 そこには何もいないと思われた。

(また、透明系の敵なのか?)

 そう思った瞬間、天井付近に強烈な光が発生した。

 「眩しいっ!」

 この眩しさは流石に厳しいぞ!
 眩しさに耐える訓練なんてしてないわけだしな。
 光は真っ直ぐ降りてきて、

 ドスンッ!
 
 という音とともに地面に降り立った。
 光の中に見えたのは1匹のドラゴンだった。

 (……まずい。この光の中で攻撃できるか?この光はウザすぎる)

 そう思った俺はダーインスレイブを取り出し、短期決戦を仕掛けることにした。

 「〈血壊魔法〉ブラッディボム!」

 俺はそう唱えるものの、俊敏に動いたドラゴンに躱されてしまった。

 「くそっ!」

 なんつー反射速度だ!
 あれを直感で躱すか!?
 あいつの動きさえ止められたら早いのに……っ!
 よし、検索だ!

 〈スキル検索開始……合致スキル1件。表示します〉

 それに出てきたのは、

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<バインド>

 対象を拘束することができる。
 込める魔力量によって拘束する強度が変わる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 だった。
 
 (これなら!)

 そう思った俺はすぐさまスキルを発動させるのだった。

 「〈バインド〉!」

 俺はありったけの魔力を込め、奴に向かってスキルを唱えた。
 すると不思議なことに、俺の手からどんどん鎖が出て対象を追いかけていった。
 なんとか逃げるドラゴンだったがだんだんと追い詰め、とうとう捉えることに成功した。

 「これで終わりだ!〈血壊魔法〉ブラッディボム!」

 捕まっているドラゴンに俺は血壊魔法を使う。
 ジタバタしながら鎖を解こうとするが、残念だったな。それは俺の魔力をほとんどつぎ込んだ、言わばヒヒイロカネ並みの硬度を誇る鎖だ。
 早々に千切られてたまるか。
 
 「グルアアアアアアアアッッ!!!」

 最後の抵抗とばかりに光を強め、暴れるもののブラッディボムによって爆散した。

 「これで……終わりだな」

 今回は眩しすぎた。おかげで前が未だにチカチカして見える。
 
 「多分次で最後だ。気を引き締めていくぞ!」

 「「「おー!」」」

 そして俺たちはダンジョンの最下層であろうところの階段を降りていくのだった。

 そして運命を決める100階層に到着した。

「ウラアアアアアアアアアッッッ!!!!」

 そこには1匹の黒いドラゴンがいた。
 直感的に感じてしまった。

 (あいつはヤバイ……俺を余裕で超えている……)

 これまではかつビジョンは浮かんでいたんだけど、こいつにはそんなことが一切ない。
 完全に勝てることがない敵だ。
 
 あいつのレベルが気になった俺は鑑定を使用した。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<名前>原初の龍 ファフニール
<レベル>37959
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 次元が違う。
 俺は改めてそう思い知らされた。
 こんな奴、勝てる筈がない!
 だけど、ここで引くわけにはいかない。
 せっかくここまで来たんだ。たとえ死んだとしても、コイツは倒す!

 「今回は全力で後ろに下がっててくれ」

 「待って!!」
 
 エルがなにか言っていたが、俺はいく。ここで行かないとダメな気がしするんだ。
 
 俺はドラゴンへ突っ込んでいった。

 「はあああああっっ!」

 俺は渾身の一振りを奴に向けて放つ。

 ガキンッ!

 それは奴の鱗にあっさりと跳ね返されてしまった。

 「ガ……ッ!」

 俺は尻尾の攻撃をくらって、壁の端に叩きつけられた。

 (ヤバイ……。今ので肋骨がほとんど折れてしまった。クソっ、やっぱり強いな)

 俺は瞬時に自身に〈回復魔法〉パーフェクトヒールを使い、全快させる。

 (コイツに勝つ方法は!何かないのか!?)

 〈スキル検索開始……合致スキル0件。表示できません〉

 こんなのは初めてだ。
 現状では絶対に奴には勝てないということなのか!?

 俺が考えていると、奴が黒いブレスを撃ってきた。

 「ぐ、ぐああああぁぁぁぁぁああっ!!!」

 俺は全力でブレスを叩き斬らんとするが俺の努力も虚しく、ブレスに飲み込まれてしまった。

 
 「グフッ……」

 (あー、やっぱり強すぎるわ)

 俺は何とか命は助かったものの、もう生きているのが不思議な状態。
 右手一本動かせやしない。

 「お兄ちゃん!!」

 「ご主人様!!」

 「起きろ!透!!」

 (ああ、あいつら下がってろって言ったのに……)

 「お前は何でここまで来たんだ!楓の為だろ!!ならこんなところでくたばってる暇なんてない筈だ!」

 天谷が俺に言葉を投げかける。

 (確かにな……、でももう助からないんだよ。もうアイツは俺に目標を定めて確実に殺そうとしている)

 「お前は自分が誰にも負けない為にここに来たんだろう!!そしてお前を待ってくれてる人がいるだろう!!ならこんなところで負けてんじゃねぇ!
 起きろおおおおおおおぉぉぉおお!!!!」

 俺はその時、楓とルーナの笑顔が脳裏によぎった。

 (そうだ……ここで負けられない!負けるわけにはいかないんだ!何としてでもコイツに勝って誰にも負けないって証明するんだよ!!)

 〈なら、私はあなたのことを応援します。譲り渡しましょう。私の力を!〉

 突然そんな声が聞こえると、俺の手から抜けて地面に刺さっていたトルリオンが俺の目の前に浮いた。
 
 パリンッ。

 そうガラスが割れるような音を聞いた時、ドラゴンはあのブレスを再度俺に向けて放った。
 
 だが、それはトルリオンによって防がれた。

 俺は朦朧する中で、トルリオンを鑑定した。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<神剣トルリオン>

<概要>透の透による透のための剣。

 <効果>透が装備するとステータスが2倍に跳ね上がる。透以外が装備すると重さが100倍以上になり、2倍の効果も無くなる。

『apostle of god』
 神の使徒に選ばれた証。
 それにより全ての物理、魔法攻撃を吸収し、それを倍にして返す。
 神の慈愛によりステータスが100倍アップする。

 <品質>神級
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 (ははっ、これはとんだチート性能だな)

 だけどこれがあれば奴にも勝てる。
 さっきトルリオンが吸収していた分の攻撃も残っていることだし。
 
 「〈パーフェクトヒール〉」

 自分の肉体を瞬時に再生し、戦えるまで戻ってこれた。
 これも全て神様のおかげだな。
 あの人のおかげで今の俺がいる。

 「行くぞっ!!」

 ステータスが上がったおかげか体が羽のように、いやそれ以上より軽く動けるようになっていた。
 一瞬で1キロぐらいあった距離を詰め、俺は上段からの今の全力を振り下ろした。
 その瞬間、金色だったトルリオンに黒色のオーラが纏った。 
 
 「はあああああああぁぁぁぁあッッ!!!」

 「ウラアアアアアァァァァアアッッ!!!」

 お互いの全力を振り絞った一撃が交差する。
 俺は上段斬りで、奴は黒極のブレスを放つ。
 それに打ち勝ったのは俺だった。
 
 「はあああぁぁあっっ!!」

 ブレスを断ち切り、奴の体ごと真っ二つに斬り裂いた。

 「はあ……はあ。……俺の、勝ちだ!!」

 俺は腕を上げ、拳を握る。
 
 こうして俺たちはこのチートモンスターに決着をつけたのだった。

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