全スキル保持者の自由気ままな生活

ノベルバユーザー255253

34話 次階層への準備

 二頭のドラゴンを倒した俺たちは70階層を突破し、セーフティゾーンへ到着した。

 「これからどうする?」

 「やっぱりもう10階層進むか?」

 「うーん……」

 確かに悩ましいところだ。
 この先の地形も分からないわけだし、さっきの火山のように、対応出来るのならば先にしておくのも手だ。
 だけど、この先がどうなってるかなんて俺だって分からない。
 ……予想なら立てられるけど。

 「次の階層ではどのすてー が来ると思う?」

 「うーん……、やっぱり……氷山ステージかな?」

 天谷がそう答えた。

 「だよな」

 俺も逆にそれ以外ないと思ってる。
 火山と来たら次は氷山でしょ!

 「じゃあちょっと下見行ってくるわ」

 「よろしくー」

 じゃあちょっくら行ってくるか。
 そう思い、俺はさらに下へ降っていった。

 72階層の入り口の扉を開ける。
 そこは吹雪が吹き荒れており、5メートル先も見ることができない絶対零度並みの世界だった。

 「……」

 俺は表情を固めたまま、扉を閉めた。
 ……ヤバイ。
 このダンジョンの中で一番厄介だ。
 まず寒い。
 これに関しては後でスキルか魔法でどうにかなるかもしれないけど、一番厄介なのは先があまり見えないということだ。
 これはどうにかなるか俺には分からない。
 とりあえず報告に行くか……。


 「え!?次の階層からほとんど視界が見えないってどういうこと!?」

 「言っている通りだ。ほぼ絶対零度。吹雪が吹き荒れているし、クソ寒い」

 「それはさっきの火山階層と違ってヤバイね」
 
 「下見に行って正解だったね……」

 各々俺の情報をもとに感想を言っている。
 エルの感想はマジで最もだな。
 下見に行ってなかったら俺たち凍え死ぬところだったぞ……。
 ……いや、これガチでシャレにならない。

 (というわけで絶対零度に対応するの、ないですかね?)

 〈スキル検索開始……合致スキル1件。表示します〉

 そして出てきたのは〈炎魔法〉ファイアバリアだった。

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<ファイアバリア>

 炎で作られるはバリア。攻撃はもちろん、冷気を遮断したり、氷を溶かすことができる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 と、火山層で使ったウォーターバリアの真反対のような魔法だった。

 「で、この先どうするか決まった?」

 奏音が俺に聞いてきた。

 「……ああ、一応。火山層で使ったウォーターバリアと真反対のファイアバリアというのを使おうと思ってるんだが……」

 「だが……?」

 「これが絶対零度で耐えられるか分からない」

 「だよね……」

 これに関してはほぼ補助的な役割があるから他のアイデアも欲しいんだが……、何をすればいいのか分からない。

 「じゃあさ!みんなの服を作ってよ」

 突然天谷がそんなことを言ってきた。

 「は?」

 「魔法を人間にすることができるんだったら物にも出来るんだよね?」

 「ああそうだが……まさか」

 「そのまさかだよ。ファイアバリアを自身に付与してから、服にもファイアバリアを付与する」

 「だけど、それだったらそのままの服でもいいんじゃないか?」

 「この服は魔法を遮断する服だから多分ダメだと思う」

 なるほど……、ていうかなんでそんな面倒な服着てんだよ。
 まあ、敵の魔法を軽減させるためだと思うんだけどな。
 じゃあいるのは俺とエルと天谷と奏音だな。

 「じゃあ一応要望聞いておく」

 「私はエルちゃんと同じワンピースで色は黒色がいい!」

 「はいはい。で、天谷は?」
 
 「僕は普通にポロシャツとデニムみたいな感じで」

 「了解」

 じゃあ俺は天谷と同じやつにするか。

 「色は?」

 「あ、白で」

 じゃあ俺は黒にするか。

 「エルは?」

 「私はこのワンピースと同じやつがいい!」

 エルは水色のワンピースね。
 これで全員の意見が出たな。
じゃあ早速取り掛かるか。

 「じゃあしばらく作業してくるから、テントで休んでてくれ」

 「はーい!」

 エルはOKの表示をするが、他の二人はなんのことだ?というふうに首を傾げている。
 そこにエルがテントを出すと、たいそう驚いていた。
 
 よし、それじゃあ始めるか。
 俺はセーフティゾーンの隅っこに移動して、早速どの鉱石を使うのかだよな。やっぱり魔法の伝導率がいいのはミスリルなのか?
 もうミスリルでいいか。
 なんか他のやつを調べるのは面倒くさくなってきた。
 というわけでミスリルを6つ作る。
 俺と天谷の服とズボン、エルと奏音のワンピースで計6つ使うからな。
 エルの最初のワンピースを作った感じでミスリルを〈紡績加工〉していく。
 ミスリルは全て糸になった。
 それを俺は〈裁縫〉スキルを駆使して、どんどん編み上げる。
 そして全員の分の服が完成した。
 だけどこれでまだ終わりしゃない。
 色がまだつけ終わってないからだ。
 エルのアリストルを使ったワンピースはそもそもの色が白だったから何もしなかったけど、色を付けるとなると話は変わってくる。

 (色を付けることができるスキル)

〈スキル検索開始……合致スキル1件。表示します〉

 それで出てきたのは〈ペイント〉という俺の想像していた名前の通りのスキルが出てきた。

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<ペイント>

 自身の使える属性の色を塗ることができる。
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 よし、これなら大丈夫だな。
 天谷の白に関してはミスリル自体もほぼ白だから問題ない。
 俺と奏音は黒だから闇属性。エルは水色だから水属性。
 試し描きをセーフティゾーンの壁にやって分かったことがある。
 込める属性の魔力の強さで色の強弱が変わってくるということだ。
 これで少し青色になりそうだった水色も問題なくやることができる。
 そして本番。
 結果、綺麗な黒と水色に塗ることができた。

 「これでどうだ?」

 俺は完成作を持って戻って、エルたちに聞いた。

 「うん!これ良い!」

 「流石手先が器用なだけあるね」

 元々の俺だったらもっと時間かかってたし、こんなに綺麗に縫えてなかったぞ。

 「じゃあ早速着替えよう!」

 エルがそう言ったので女子はテントの中で、男は外で着替えることになった。
 俺たちは男なのでテントは女子に譲ることにした。
 結局、悩むことなんて無かったから、着替えるのには5分もかからなかった。

 「どうかな?」

 「うん。似合ってるんじゃないか?」

 エルが感想を聞いてきたから、普通に似合ってると答えた。
 実際、とても可愛い。やっぱり、エルには一番ワンピースが似合ってると思う。
 カノンの方も、天谷に感想を聞いていた。
 天谷の方も、俺と似たような感想を送っていた。
 完全にこれからダンジョンに挑むとは思えないような格好だ。
 いや、普通シャツとズボンだけで挑む奴なんているか?俺はいないと思う。

 「で、どうする?」

 「どうするって何が?」

 「このまま進むか進まないか」

 「うーん……」

 正直言って今から行くと深夜になりそうな予感がする。
 吹雪のせいでこれまで以上に探索が面倒くさそうだからな。
 
 「今日はお開きにするか?」

 「私はいいと思う」

 奏音は賛成してくれた。
 
 「お兄ちゃんが面倒ていうのは相当ってことだと思うから今日は休んだほうがいいと思う」

 「うーん、僕はまだ昼ぐらいだしいけると思うけど……」

 「よし、なら行ってこい」

 「無理に決まってるのにそれを言う!?」

 「分からないよ?もしかしたら行けるかもしれないじゃないか」

 「そんな見え見えな挑発には乗らないよ」

 やっぱり乗らないかー。
 それより昼食ってないからお腹すいてきた。

 「エルー、ご飯作ってくれる?」

 「わかった!」

 よし、エルよ。お主の料理テクをみんなに見せつけるんだ!

 「じゃあ、今日はもう休みでいい?」

 「おう」

 「うん」

 「……みんながそれでいいって言うなら」

 というわけで、本日はここでお休みすることになった。

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