全スキル保持者の自由気ままな生活

ノベルバユーザー255253

29話 裁縫と加工

 俺たちは50階層を突破し、51階層のセーフティゾーンで今日は休むことにした。
昨日のような無茶な行軍は危険だからな。

 「ご主人様、これを広げるの?」

 「ああ。頼めるか?俺はその間に色々したいことがあるから」

 「うん!任せて!」

 テントの案件はエルに一任することにした。
 そして俺のすることとは、エルの防具をもっとしっかりしたものに変えるために、新しいものを作ることだ。
 流石にトルリオンのように、ヒヒイロカネを使うわけにはいかないだろう。
 絶対に魔力枯渇してしまう。
 勇者ステータス+魔力激増でちょうどぐらいだったのに。
 というわけで物理や魔法の防御面で活躍できる金属、ヒヒイロカネや魔鋼鉄は抜きにして。
 何かある?

 〈スキル検索開始……合致スキル1件。表示します〉

 それで出てきたスキルは〈叡智〉というスキルだった。
 細小は。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 <叡智>

 この全ての世の中の事象を本に表し、知りたいことを念じて本を開くとその情報を得ることができる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 というスキルだった。
 ……検索ツールさん。つまりこれは、自分で調べろということですか?つれないなー。
 まあ検索ツールさんが出した答えなんだ。
 信じていいだろう。

 「〈叡智〉」

  すると俺の手に一冊の分厚い赤い本が握られていた。
 おおー!これに全てのことが書かれているのか!
 早速検索検索っと……。

 (物理や魔法の防御面で活躍できる金属、ヒヒイロカネや魔鋼鉄は抜きで)

 そう念じ本を開くと、そこには天結晶アリストルという金属が出てきた。
 これは初耳だな。ヒヒイロカネやミスリルは地球で聞いたことがあるけど、これは無いな。
 アリストルは主に防御面で優れていて、ドラゴンの炎を防いだり、50トンのものを落としても割れるどころか傷一つつかないほど硬い金属だ。
 現存する金属では最強とされているのだそうだ。
 ヒヒイロカネや魔鋼鉄はどちらも架空の金属とされている。
 未だこの世界では発見されていないそうなのだ。
 ……ていうか魔鋼鉄って二番目だったんだな。3割ぐらいしか魔力消費してなかったからトップ10に入ってるかな?ぐらいだと思っていた。
 
 「よし!」

 気合いを入れて、製作を始めることにした。
 今回作るのはエルの防具と何か効果のあるアクセサリーだ。
 身代わりの指輪はあるけど、それだけじゃ不安だしな。
 というわけでアリストルを創造で作り、作業を始めた。
 
 まず防具だが、これは鎧とか金属製なものは辛いだろう。
 というわけで何かいいスキルはないか?と検索ツールさんに聞いてみると、〈紡績加工〉と〈裁縫〉のスキルが答えとして返ってきた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 <紡績加工>

 ありとあらゆるものを糸にすることができる。生きているものは糸にはできない。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 <裁縫>

 常時発動型スキル。糸を使い、ものを縫うことが達人レベルで上手くなる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 スキルの内容はこんな感じだ。
 紡績加工は便利だな。
 魔物の死骸とかも糸にできるんだろうか?
 それだったら超硬い魔物とかの素材を使って服を作ればほぼ無敵じゃねぇか!
 まあ、それを今回は鉱石で試すんだけどな。

 「〈紡績加工〉、〈裁縫〉」

 俺はアリストルを持ちながら、「紡績加工〉を唱え、ついでに〈裁縫〉も唱えておく。
 俺それなりに器用だと自分の中では思ってるんだけど……。
 え?料理ダメだろって?料理と裁縫を同列にして比べるのは良くないぞ!
 ……俺がこれを言ったらただの言い訳にしか聞こえないな。
 〈紡績加工〉を使ったアリストルは金属としての形を保てなくたり、糸の塊へと変換された。
 スゲェな!現実世界だったらありえない光景だ。
 じゃあ早速縫うことにするか。
 俺の元から器用だったものがスキルによって更に上乗せされ、あっという間に服を縫い合わせていく。
 よし!一着完成!
 少し簡単なワンピースだけどこれでいいよな?
 早速性能チェックだ!

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 <アリストルのワンピース>

 物理や魔法の耐久性に特化しており、このワンピースだけでもほとんどの攻撃は防ぐことが出来る。
 さらにこの服を着ているだけで自分に害悪がある攻撃をバリアする効果がある。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 おー!物理と魔法の防御に特化しているというだけでも嬉しいのに、さらにバリア効果なんて。
 これで安心してまた戦えるな。
 じゃあ、次はアクセサリーだ。
 ……何がいいかな?
 基本欲しかった性能はワンピースだけで揃っちゃったし、やっぱり状態異常を治すのがいいのか?
 まあ、また作ると思うから欲しいものがあればその時で。
 俺は〈叡智〉で状態異常を回復できるものを調べた。
 すると本にはリカバリー鉱石と言う名のついた鉱石が効果があると言われた。
 リカバリー鉱石って……。もうちょっと良いネーミングセンスは無かったのか?
 まあ、今回は〈紡績加工〉はしなくていいからな。

 「〈創造〉」

 俺は創造でリカバリー鉱石を作る。
 それを加工でネックレスの形にする。
 そうして出来たのが2つ目のプレゼントのネックレスだった。

 「よし!完成!」

 「ご主人様?あ、ここにいた!もうご飯できるよ!」

 「わかった」

 そんなに時間経ってたっけ?
 テント張り終えたらすぐに作ったのか?
 まあ、いいけど。それよりテントの中からいい匂いがした。

 「ご飯の後に少し話したいことがあるんだけど」
 
「え?いいけど……。なんで?」

 「それは秘密だ。それと今日のご飯はなんなんだ?」

 「今日はカレーだよ!」

 それは嬉しい!
 俺の大好物の一つだ!
 ……ていうかこの世界にカレーあるんだな。
 多分先代勇者が持ち込んだんだろうけど。

 「じゃあ食べるか」

 「そうだね!」

 「「いただきます」」

 カレーを一口すくい、食べる。
 うん!少しピリッとした辛さにルーも美味しい!
 やっぱりエルって料理うまいよな。
 こんな短時間でこんなうまい料理は作れないぞ。普通。

 「……なあ、俺が別のところにいる間にどれぐらいの時間が経っていたか分かるか?」

 「うーん……、だいたい3、4時間ぐらいかな?」

 「……マジで?」

 「うん」

 そんなに集中していたか?たしかにお腹は空いていたけど、それは昼ごはんの分だと思ってた。
 もう夜じゃん。
 昼を抜いたため、カレーは飲み物だ!って呼べるレベルで早く食べ終えた。

 「ごちそうさまでした」

 「ご主人様早いね……、私はもうちょっと時間かかるからテントの中で休んでいて」

 「おう、そうさせてもらうわ」

 カレー、美味かったな。また今度作ってもらうか。
 そう思う俺だった。


 「お待たせ!」

 「おう、終わったか」

 「うん。ちゃんと片付けもしておいたよ」

 「いつもすまないな」

 「いいよ!これが私の仕事なんだから!」

 「じゃあ、そんな頑張り屋さんのエルにプレゼントだ」

 俺はさっき作ったワンピースとネックレスをエルに渡した。

 「……え?ご主人様、これくれるの?」

 「ああ、エル以外に誰がいるんだよ」

 「本当に!ありがとう!」

 「やっぱり笑顔のエルを俺は好きだよ」

 「ご、ご、ご主人様急に何言ってるの!?」

 「え?素直に俺の気持ちを言っただけだが?」

 主に妹みたいにって感じで。
 恋愛対象は……、ごめんなさい。
 俺には未来の彼女がいるんで。

 「……ねぇ、今着てみてもいい?」

 「ああ、いいぞ」

 俺は紳士だから、しっかり後ろを見る。もちろんチラ見するなど破廉恥なことは考えていない。

 「……もういいよ」

 俺は振り返ると、白色のワンピースを着ていて、首にはネックレスをかけている。
 単純ながら、そのコーデは爆発的な破壊力を秘めていた。
 まさにシンプルイズベスト。

 「やっぱり似合ってる」

 「……ありがと」

 頰を赤く染め、右下に視線を向けながら小さく俺に礼を言う。

 「どういたしまして。それよりもう寝るか」

 「うん。そうする」

 「わかった。今日は間違って俺の毛布に入ってくるなよ」

 「入らないよ!!」

 「はいはい」

 こうして俺は毛布を被り、寝るのだった。

「全スキル保持者の自由気ままな生活」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く