異世界でも目が腐ってるからなんですか?
12話目 前半 魔族、悪意
ということで、案の定起きていたチェスターたちのところへ行き、メリーの両頬を引っ張ってやった。
「いふぁいいふぁいいふぁい!いはいほぉ……」
「あー……ヤタ?時間的にもですが、事前の約束も無しに人の家に上がり込むのはどういった了見なのか聞かせてもらっても?」
突然やってきた俺が娘の頬を引っ張る状況がわかっていないチェスターが聞いてくる。
「人工的な奇跡を生み出す話、あんたと話しただろ?それをメリーが個人的に研究してたらしくてな」
「ほっほう、流石我が娘。して結果は?」
「良い結果だったらあんたの娘の頬を好きで伸ばしてると思うか?」
メリーの「い、いひゃい……へもなんはかきもひよくなっへひは……」となんて言ってるかわからない言葉をスルーしながら引き続き頬を引っ張り続ける。
「ふむ……その腕輪がメリーの研究成果、というわけですか?」
「ああ。奇跡の発動どころか暴発して俺の腕が消し飛んだがな」
「ほ、ほめんなはい〜」
泣き目で「ごめんなさい」と言ってる気がするメリー。
対してチェスターはというと興味深そうに腕輪を凝視していた。
「ちなみにその腕輪で魔物は倒せましたか?」
「倒す……まではいってないな。ただ岩人って魔物の片腕を吹き飛ばせたくらいには大きな爆発だったぞ」
「ほう!では威力は申し分無いですね。どうせです、その腕輪は娘からのプレゼントということで君が貰ってやってください」
……なんでそんな話になるのだろうか。
こんな不良品を「少女からのプレゼント」なんていう体のいい名目で押し付けられるのは凄く嫌なのだが。
本当だよ?女性からの初めてのプレゼントだからって浮かれるわけないんだからね?ボクウソツカナイ。
「こんなもん押し付けられても困るんだが」
「そう言わないで。君ならその腕輪をデメリット無く使えるでしょうし、処分するのも面倒……下手に捨てる訳にはいきませんからねぇ」
おい。
今こいつ処分が面倒って言いやがったな?やっぱ面倒臭いだけじゃねえか!
たしかに俺ならデメリット無視して使えるけど……
なぜか頬をつねられているというのに笑っているメリーに視線を向ける。
なんで人生初の贈り物がよりにもよって爆発物なの?
いや、子供の頃とかイジメ感覚で虫とか渡されそうになったことあったけど、素で危険物をプレゼントとか……遠回しに「嫌いなので死んでください☆」って言われてるみたいで凹みそうになるわ。
実際腕輪に一度殺されてんだけどね☆
「まぁいいけどよ。貰えるもんは貰っとくが……それはそれとしてチェスターのはないのか?」
「おや、年頃の少女からの贈り物より中年の男の方がいいのかね?」
チェスターはそう言って意地の悪い笑みを浮かべる。くそ、わかってて言ってやがるな、こいつ……!
「で?あるの?ないの?」
若干の苛立ちを声に乗せながらチェスターの言葉を無視してもう一度聞く。
「わかりましたからそんなに怒らないでください。一応試作段階のモノがありますが、もう少し改良を加えてからお渡しします」
「そうか、わかった」
「ほろほろはなひて〜」
泣き声で「そろそろ離して」と聞こえた気がしたのでメリーの方を見てみると、少しだけ涙を浮かべていた。
さすがにやり過ぎたか?
「むぅ……今度はちゃんと作るから……」
ちょっと赤くなった頬を擦り、口を尖らせながら呟くメリー。
その様子が不覚にも可愛いと思ってしまい、ドキッとする。
「そだな。せめて自爆しないやつを頼むわ」
皮肉にそう言ってやると、メリーはムスッとした表情のまま自分の席に座り、機械的なものをイジり始める。
そんな姿を見たチェスターは肩をすくめた。
「あまりイジメないでやってくださいよ?」
「イジメて……」
むしろ俺はイジメられるどころか殺されそうになってんだけど?なんてツッコミたいけど、なんかもう疲れてきて面倒臭いからいいや……
「とりあえずこの腕輪は返さなくていいってことか?」
「うん。内部構造は全部覚えてるし、爆発しちゃうなら多分、あなたが使わないと一回で壊れちゃうと思うから……」
……それもそうだ。
最近慣れてて忘れていたが、普通なら腕もろとも爆発して壊れて終わりだ。
だが俺のウイルスは「身に付けているものの復元」ができる。
そこには腕輪も含まれているため、何度でも元に戻るってわけだ。
これほど自爆道具を使いこなせる奴は、そこら辺の漫画に出てくるような不死身でもできないだろう。
俺も復活できるのは限界があるが、それでも十分有効活用できるってことだ。
だが……戦う手段が充実してくるのはいいけど、その手段自体がことごとく人間離れしていくよな。
「呪器」→血を取り込んで強化。わざと自分の血を取り込ませてウイルス付き。
「形態変化」→腕など体の一部を大口に変化させ、大抵のものを体内に取り込む。岩などの硬い物質さえ美味しく食べる。
「メリーの腕輪」→爆発する。とにかく爆発する。もはや暴発レベル。
なにこれ。
「冷やし中華始めました」みたいな感じで「人間やめました」になってるんだけど。なにそれ、仮面被って大勢の前で宣言しちゃいそう。
……もうやめよ。考えるだけで虚しくなってくる。
「仕方ない、せめて次貰うまでの繋ぎにするか」
「でゅふ。そ、そんなこと言って、女の子からのプレゼントならなんでも嬉しいんじゃないの……?」
俺の呟きにいつもの調子で反応するメリー。でゅふて。
やり過ぎたかと思ったらコレかよ。本当に鼻を摘み上げて泣かせてやろうか……
「というか、そもそもこの腕輪は成功してたら何が出てくる予定で作ったんだ?」
「えっと、高温の熱を前方に向けて噴射するのをイメージして作ったけど……」
前方に噴射……バーナーみたいな感じか?たしかにそれは強そうだ。
「なるほど。それが方向を向けられないままその場で爆発したってわけか」
「そう。だから次は方向制御と集中砲火を頑張って組み込む」
……頑張った結果、俺が使えるのなら嬉しいけど、また自爆して放つようなのは勘弁してほしいんだがな。
「だ、だからこれからもパパのだけじゃなくて、私の実験にも付き合って、ね?」
そう言って微笑み、首を傾げるメリー。
あざとい。
その後、チェスターたちとある程度話してから宿に帰ると、付けっぱなしにしていた腕輪を見たレチアにめちゃくちゃ問答された。
「ところでなんですが……その背中に背負ってる赤ん坊はなんですか?」
「すげー今更な反応だな!?俺、最初から抱いてたよな?まさか見えてない幽霊の部類なのかと思って中々言い出せなかったぞ……」
俺が背中にベビーキャリアで背負っている九尾の赤ん坊にようやく触れたチェスター。
するとメリーがいつの間にか俺の背後に立ち、かなり危ない顔で背中の赤ん坊を見てきていた。
「見たところ普通の赤ちゃんじゃないみたいだけど……も、もしかしてヤタの子供……?」
「おいやめろ。そんな人に向けちゃいけない顔で赤ん坊を見るな。あと俺の子でもないから研究材料でもない。あっち行け、しっしっ!」
そう言うとメリーは少し残念そうにして離れる。
ったく……もしこの赤ん坊のことを馬鹿正直にコイツらに話したら本当に研究材料として解剖されるんじゃないかって心配になっちまう。
「……いや、メリー」
「うん?」
「ちょっとこいつ抱いてみろ」
「……え?」
しばらく停止した後に眉をひそめて聞き返してくるメリー。
「だからお前が抱っこしてみろって」
「な、なぜ……?」
「だってお前、子供が欲しいんだろ?まさか産んで終わりだとか解剖するから世話をする気ないなんて言わないだろうな?つーかそんなん俺が許さん」
「そう、だけど……」
「それでもなんで?」と言いたげな彼女の表情は変わらなかった。
「だったら赤ん坊の抱き方くらい覚えとけって話。たしかにこいつは普通の赤ん坊じゃないが、十分参考にはなるはずだ」
「それは……そうかもしれないけど……」
なんとも煮え切らない態度で答えるメリー。
「いふぁいいふぁいいふぁい!いはいほぉ……」
「あー……ヤタ?時間的にもですが、事前の約束も無しに人の家に上がり込むのはどういった了見なのか聞かせてもらっても?」
突然やってきた俺が娘の頬を引っ張る状況がわかっていないチェスターが聞いてくる。
「人工的な奇跡を生み出す話、あんたと話しただろ?それをメリーが個人的に研究してたらしくてな」
「ほっほう、流石我が娘。して結果は?」
「良い結果だったらあんたの娘の頬を好きで伸ばしてると思うか?」
メリーの「い、いひゃい……へもなんはかきもひよくなっへひは……」となんて言ってるかわからない言葉をスルーしながら引き続き頬を引っ張り続ける。
「ふむ……その腕輪がメリーの研究成果、というわけですか?」
「ああ。奇跡の発動どころか暴発して俺の腕が消し飛んだがな」
「ほ、ほめんなはい〜」
泣き目で「ごめんなさい」と言ってる気がするメリー。
対してチェスターはというと興味深そうに腕輪を凝視していた。
「ちなみにその腕輪で魔物は倒せましたか?」
「倒す……まではいってないな。ただ岩人って魔物の片腕を吹き飛ばせたくらいには大きな爆発だったぞ」
「ほう!では威力は申し分無いですね。どうせです、その腕輪は娘からのプレゼントということで君が貰ってやってください」
……なんでそんな話になるのだろうか。
こんな不良品を「少女からのプレゼント」なんていう体のいい名目で押し付けられるのは凄く嫌なのだが。
本当だよ?女性からの初めてのプレゼントだからって浮かれるわけないんだからね?ボクウソツカナイ。
「こんなもん押し付けられても困るんだが」
「そう言わないで。君ならその腕輪をデメリット無く使えるでしょうし、処分するのも面倒……下手に捨てる訳にはいきませんからねぇ」
おい。
今こいつ処分が面倒って言いやがったな?やっぱ面倒臭いだけじゃねえか!
たしかに俺ならデメリット無視して使えるけど……
なぜか頬をつねられているというのに笑っているメリーに視線を向ける。
なんで人生初の贈り物がよりにもよって爆発物なの?
いや、子供の頃とかイジメ感覚で虫とか渡されそうになったことあったけど、素で危険物をプレゼントとか……遠回しに「嫌いなので死んでください☆」って言われてるみたいで凹みそうになるわ。
実際腕輪に一度殺されてんだけどね☆
「まぁいいけどよ。貰えるもんは貰っとくが……それはそれとしてチェスターのはないのか?」
「おや、年頃の少女からの贈り物より中年の男の方がいいのかね?」
チェスターはそう言って意地の悪い笑みを浮かべる。くそ、わかってて言ってやがるな、こいつ……!
「で?あるの?ないの?」
若干の苛立ちを声に乗せながらチェスターの言葉を無視してもう一度聞く。
「わかりましたからそんなに怒らないでください。一応試作段階のモノがありますが、もう少し改良を加えてからお渡しします」
「そうか、わかった」
「ほろほろはなひて〜」
泣き声で「そろそろ離して」と聞こえた気がしたのでメリーの方を見てみると、少しだけ涙を浮かべていた。
さすがにやり過ぎたか?
「むぅ……今度はちゃんと作るから……」
ちょっと赤くなった頬を擦り、口を尖らせながら呟くメリー。
その様子が不覚にも可愛いと思ってしまい、ドキッとする。
「そだな。せめて自爆しないやつを頼むわ」
皮肉にそう言ってやると、メリーはムスッとした表情のまま自分の席に座り、機械的なものをイジり始める。
そんな姿を見たチェスターは肩をすくめた。
「あまりイジメないでやってくださいよ?」
「イジメて……」
むしろ俺はイジメられるどころか殺されそうになってんだけど?なんてツッコミたいけど、なんかもう疲れてきて面倒臭いからいいや……
「とりあえずこの腕輪は返さなくていいってことか?」
「うん。内部構造は全部覚えてるし、爆発しちゃうなら多分、あなたが使わないと一回で壊れちゃうと思うから……」
……それもそうだ。
最近慣れてて忘れていたが、普通なら腕もろとも爆発して壊れて終わりだ。
だが俺のウイルスは「身に付けているものの復元」ができる。
そこには腕輪も含まれているため、何度でも元に戻るってわけだ。
これほど自爆道具を使いこなせる奴は、そこら辺の漫画に出てくるような不死身でもできないだろう。
俺も復活できるのは限界があるが、それでも十分有効活用できるってことだ。
だが……戦う手段が充実してくるのはいいけど、その手段自体がことごとく人間離れしていくよな。
「呪器」→血を取り込んで強化。わざと自分の血を取り込ませてウイルス付き。
「形態変化」→腕など体の一部を大口に変化させ、大抵のものを体内に取り込む。岩などの硬い物質さえ美味しく食べる。
「メリーの腕輪」→爆発する。とにかく爆発する。もはや暴発レベル。
なにこれ。
「冷やし中華始めました」みたいな感じで「人間やめました」になってるんだけど。なにそれ、仮面被って大勢の前で宣言しちゃいそう。
……もうやめよ。考えるだけで虚しくなってくる。
「仕方ない、せめて次貰うまでの繋ぎにするか」
「でゅふ。そ、そんなこと言って、女の子からのプレゼントならなんでも嬉しいんじゃないの……?」
俺の呟きにいつもの調子で反応するメリー。でゅふて。
やり過ぎたかと思ったらコレかよ。本当に鼻を摘み上げて泣かせてやろうか……
「というか、そもそもこの腕輪は成功してたら何が出てくる予定で作ったんだ?」
「えっと、高温の熱を前方に向けて噴射するのをイメージして作ったけど……」
前方に噴射……バーナーみたいな感じか?たしかにそれは強そうだ。
「なるほど。それが方向を向けられないままその場で爆発したってわけか」
「そう。だから次は方向制御と集中砲火を頑張って組み込む」
……頑張った結果、俺が使えるのなら嬉しいけど、また自爆して放つようなのは勘弁してほしいんだがな。
「だ、だからこれからもパパのだけじゃなくて、私の実験にも付き合って、ね?」
そう言って微笑み、首を傾げるメリー。
あざとい。
その後、チェスターたちとある程度話してから宿に帰ると、付けっぱなしにしていた腕輪を見たレチアにめちゃくちゃ問答された。
「ところでなんですが……その背中に背負ってる赤ん坊はなんですか?」
「すげー今更な反応だな!?俺、最初から抱いてたよな?まさか見えてない幽霊の部類なのかと思って中々言い出せなかったぞ……」
俺が背中にベビーキャリアで背負っている九尾の赤ん坊にようやく触れたチェスター。
するとメリーがいつの間にか俺の背後に立ち、かなり危ない顔で背中の赤ん坊を見てきていた。
「見たところ普通の赤ちゃんじゃないみたいだけど……も、もしかしてヤタの子供……?」
「おいやめろ。そんな人に向けちゃいけない顔で赤ん坊を見るな。あと俺の子でもないから研究材料でもない。あっち行け、しっしっ!」
そう言うとメリーは少し残念そうにして離れる。
ったく……もしこの赤ん坊のことを馬鹿正直にコイツらに話したら本当に研究材料として解剖されるんじゃないかって心配になっちまう。
「……いや、メリー」
「うん?」
「ちょっとこいつ抱いてみろ」
「……え?」
しばらく停止した後に眉をひそめて聞き返してくるメリー。
「だからお前が抱っこしてみろって」
「な、なぜ……?」
「だってお前、子供が欲しいんだろ?まさか産んで終わりだとか解剖するから世話をする気ないなんて言わないだろうな?つーかそんなん俺が許さん」
「そう、だけど……」
「それでもなんで?」と言いたげな彼女の表情は変わらなかった。
「だったら赤ん坊の抱き方くらい覚えとけって話。たしかにこいつは普通の赤ん坊じゃないが、十分参考にはなるはずだ」
「それは……そうかもしれないけど……」
なんとも煮え切らない態度で答えるメリー。
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