異世界でも目が腐ってるからなんですか?
8話目 前半 予兆
「……捕まえたぞ」
思いっ切り俺の体を貫いてくれたイクナをその瞬間に抱き締めて捕まえた。
「ッ!?ウガアァァァァッ!!」
思わぬ反撃に驚き、その場で暴れ始める。
その怪力を俺だけでどうにかできるか……そう思っていたのも杞憂だったようで、なんとかギリギリで押さえ込めていた。
「悪いイクナ、少し我慢しててくれ」
そう言って暴れようとするイクナを押さえつつ、首元に噛み付いた。
さながら吸血鬼のように。
するとアリアたちにやった時とはとは違った不思議な感覚を覚えた。
俺のウイルスを与えつつイクナのウイルスを吸い取るという行為が、まるで俺とイクナの血管を繋げて血液を入れ替えているような感じだ。
体の中からどんどんと出ていき、イクナのが入ってくる……今までそんな経験などしたことがないから良い例えが思い浮かばないけれど、血液の入れ替えというのが感覚的には一番近いかもしれない。
【仮個体名「イクナ」へのウイルスの注入、抽出70%――】
次第にイクナの抵抗する力が弱っていき、力の抜けた腕がダランと垂れ下がる。
アナさんから終了お知らせを聞いて首筋から離れると、イクナは虚ろな目をしていた。
……コレ本当に大丈夫かよ?
【仮個体名「イクナ」から――したウイルスを解析――異じょ――】
アナさんがお知らせの言葉の途中、突然ジジッとノイズのような音が混じり初め、その先が聞こえなくなってしまった。
「なん、だっ……!?」
短い時間ではあったが、そのノイズは脳みそを直接掻き混ぜられているかのような不快さを覚え、視界が大きく揺らぐ。
俺の胸に突き刺さりっぱなしだったイクナの腕を抜く。
「……オニィ……チャ……」
イクナはフッと正気に戻った細目で何かを呟き、そのまま気を失って倒れてしまう。俺も立つことが難しく、その場に尻もちを付く。
彼女の身を案じたララたちがイクナの元へ駆け寄る。
「大丈夫ですかい、旦那?顔色が悪いようですが……あいや、普通体を貫かれてその程度で済んでるのが不思議なんですけど……」
唯一ガカンは変わらず俺を心配してくれていた。
「あ、ああ……ぐっ!?」
ノイズは止むことなく頭の中を掻き乱し、その不快感は久しぶりに味わう痛みにも似た感じがしていた。
どうなってるんだ……今の俺の痛覚は無くなってるんじゃないのか?
【……別のウイルスの拒絶反応による脳への異常を確認。適応を開始します】
そのお知らせと同時に一気に頭の重さが楽になる。
今更ではあるけれども、本当にアナさんには厄介になりっぱなしだな……
「……もう大丈夫だ、問題ない」
顔を覗き込んでくるガカンにそう言って立ち上がる。
しかしさっきよりも体の調子がいいのは気のせいか?軽く感じるような……
【イクナから抽出したウイルスの適応により、八咫 来瀬のLUC以外の全ステータスに+10の補正が入りました。体の一部が捕食時とは関係なく形態変化ができるようになりました】
お、おう、マジか……+10って結構デカくねえか?
【なお、現在のステータスであれば短剣以外の武器も使用に支障がないと思われます】
つまり俺もララみたいに大剣を振り回せるってことか?
冒険者になる時には適正が短剣だって言われてたからその通りに使ってたけど、他の武器も使えるオールラウンダーとか格好良くない?
まぁ、俺が格好良くなるイメージなんてこれっぽっちも湧かないんだけど。
「……そういえばイクナは?」
「へい、今は眠っています。ただ……たまに体が震えたり跳ねたりしてララさんたちが心配しています」
「そうか……」
問題ない……とまでは言えないけれど、さっきの様子を見る限り元に戻るはずだ。
もしかしたらイクナの中でも俺みたいに拒絶反応が起きてるだけかもしれないし……
……あれ?俺はアナさんのフォローがあって元に戻ったけれど、イクナは大丈夫なのか……?
【元々八咫 来瀬の体内にあったウイルスをこちらで遠隔操作し、順応させています】
あ、それはよかった。
「しかし……もう探索してる場合じゃないな。今日はもう帰るか」
「それがいいにゃ。ダンジョンはすぐになくなることはないからまた別の日に来ればいいにゃ」
「イクナが大丈夫なら……ね」
俺の考えにレチアもそう言って同意し、ララは気を失っているイクナの頭を撫でながら言う。
どちらにしろ、しばらくは安静にしておいた方がいいかもな。
……にしてもなんで急にイクナは暴れ始めたんだ?
【……イクナから採取したウイルスの解析結果が出ました。魔物捕食による過剰な栄養摂取したためにウイルスが大量に増殖して起きた現象だと思われます】
あー……ってことは魔物食ったから一時的にパワーアップしたってことか?どっかの漫画にあった主人公みたいな能力だな……
そんなことを考えながら帰ろうとしていると、戻る道から人の足跡が聞こえてくる。
目を向けるとそこにはマルスとルフィスさんがやってきていた。
「やぁ、ヤタ君たちもこっちに来てたんだね!」
「まぁな。これでも借金持ちで金が入り用だし、稼げるって聞いたら来るしかないでしょう?まぁ、もうこれから引き上げるところですけど」
「ずいぶん早いね……ああ、そういうことか」
マルスが視線をララの背中で外套を深く被って眠ってるイクナに向けるとすぐに納得した様子だった。
「君も大変だね」
「大変なのは元からだ、イクナを理由にはしねえよ。それよりお前ってそんな武器持ってたっけ?」
知ったような口を聞くマルスに少しイラッとしてぶっきらぼうに答えると、ふと奴の背負ってる武器が見慣れないものだったのに気付く。
いつも携えているそこら辺に売っていそうな細い剣ではなく、ララのような大剣を背負っていた。
しかもその見た目からして強そうで、レチアが普段使っている短剣のように特殊な装飾が施されているように見える。
「ああ、これは普段あまり持ち歩かないんだけど、本来僕が使う武器なんだ」
「は?……つまりお前の階級って大剣のやつだったのかよ?」
「そういうこと。まぁ、こういう狭いところでは使い勝手が悪いから使わないんだけど、一応ね……ダンジョンでは何が起きるかわからないから」
そう言っていつもの爽快な笑みを浮かべるマルス。
その言葉に俺は「嘘付け」と内心おもっていた。
「何が起きるかわからないから」で不利になるような武器を担ぐかよ、普通。
グロロの時にこいつの強さを見た俺からすれば、本気を出せば周りを巻き込みかねないから何じゃないかと思っている。
思えばグロロを相手にしてる時でさえ余裕があるように見えたし……
別にこいつにそこまで興味があるわけじゃないから追求はしないが、やっぱりなんかいけ好かないな。
「そうかよ、そんじゃな」
「……その前にそこに転がってる大量の魔物のことを聞かせてもらっていいかな?」
そう言うマルスの顔を見ると、俺たちがさっき倒した魔物の屍があり、さっきまでの笑みはそこになかった。
「……元々そこに転がってたんだよ。誰かが倒したんじゃないのか?まぁ、素材が放置されてたから貰っといたがな」
俺も視線を魔物に向けながら嘘を吐いた。
よく人間は嘘を吐く時に目を逸らすというが、目を逸らす先があれば問題ない。
そしてできればその間に相手の目を見ても動じないよう心の整理をすれば完璧だ。
「……そっか。でももしこの魔物たちが一度に来ていたのを見たのだとしたら、早くここを立ち去った方がいいよ」
「何?」
俺が嘘を吐いたのを見抜いたような言い方をするマルス。
ただそれよりもマルスが後半言った言葉が気になった。
「どういう意味だ?」
「直にわかるよ。だから今は彼女たちを帰してあげて」
マルスは再び笑みを浮かべてそう言う。
「……わかった。あとで聞かせてもらうからな」
そう言って俺たちは今度こそその場を後にした。
「チェスター!」
ライアン邸の研究室の扉を勢いよく開き、その中にいるであろう彼の名前を呼ぶ。
しかし中にいたのは彼の娘であるメリー一人だけだった。
「……チェスターは?」
「ぱ、パパはここにはいないよ。さっき出かけた……」
言葉を詰まらせながらもメリーが教えてくれる。
入れ違いになったわけか。
「どしたの?」
「ああ、本当は明日教えてもらうはずだった人工的な奇跡について今少しでも教えてもらおうと思ったんだが……いないならしょうがないか。邪魔したな」
少しでも攻撃手段を増やしておこうと思ったんだが、ダメならダメでしょうがない。
俺は振り返ってその場を去ろうとしたのだが……
「……ねぇ」
扉に手をかけようとしたところでメリーに声をかけられた。
「未完成のものでよかったら……これあげる」
そう言って彼女が差し出して来たのは、丸い円形の物だった。
「これは?」
「パパにも言ってないことなんだけど……私も私なりに研究して作ってたんだ、人工的な奇跡を発動させる道具……でもやっぱり実験するわけにもいかないから作るだけになってたもの、なの」
いつもより口数を多くして説明してくれた。
いや、これはありがたいかもしれない。
「ないよりはマシだ。それで使い方は?」
「まず装着するところは腕。それと安全装置のスイッチが付いてるから、それを押して今赤く光ってるのが緑色に変わったら解除された合図……あとはそれを付けた腕に意識を集中すれば、中に組み込まれた術式が発動して奇跡に似た技が放てる……と思う」
「と思う」と言われた時点で凄く不安なんですが。
……まぁいいや、不発とかだったら残念だったなで終わるし。
「一応聞くけど、これは貰って行っていいのか?」
「うん……だけどあとで感想教えてね」
そう言って微笑む彼女に、俺は思わずドキッと心が揺らぎそうになっていた。
……やっぱり元の顔が整ってるっていうやはズルいと思う。
思いっ切り俺の体を貫いてくれたイクナをその瞬間に抱き締めて捕まえた。
「ッ!?ウガアァァァァッ!!」
思わぬ反撃に驚き、その場で暴れ始める。
その怪力を俺だけでどうにかできるか……そう思っていたのも杞憂だったようで、なんとかギリギリで押さえ込めていた。
「悪いイクナ、少し我慢しててくれ」
そう言って暴れようとするイクナを押さえつつ、首元に噛み付いた。
さながら吸血鬼のように。
するとアリアたちにやった時とはとは違った不思議な感覚を覚えた。
俺のウイルスを与えつつイクナのウイルスを吸い取るという行為が、まるで俺とイクナの血管を繋げて血液を入れ替えているような感じだ。
体の中からどんどんと出ていき、イクナのが入ってくる……今までそんな経験などしたことがないから良い例えが思い浮かばないけれど、血液の入れ替えというのが感覚的には一番近いかもしれない。
【仮個体名「イクナ」へのウイルスの注入、抽出70%――】
次第にイクナの抵抗する力が弱っていき、力の抜けた腕がダランと垂れ下がる。
アナさんから終了お知らせを聞いて首筋から離れると、イクナは虚ろな目をしていた。
……コレ本当に大丈夫かよ?
【仮個体名「イクナ」から――したウイルスを解析――異じょ――】
アナさんがお知らせの言葉の途中、突然ジジッとノイズのような音が混じり初め、その先が聞こえなくなってしまった。
「なん、だっ……!?」
短い時間ではあったが、そのノイズは脳みそを直接掻き混ぜられているかのような不快さを覚え、視界が大きく揺らぐ。
俺の胸に突き刺さりっぱなしだったイクナの腕を抜く。
「……オニィ……チャ……」
イクナはフッと正気に戻った細目で何かを呟き、そのまま気を失って倒れてしまう。俺も立つことが難しく、その場に尻もちを付く。
彼女の身を案じたララたちがイクナの元へ駆け寄る。
「大丈夫ですかい、旦那?顔色が悪いようですが……あいや、普通体を貫かれてその程度で済んでるのが不思議なんですけど……」
唯一ガカンは変わらず俺を心配してくれていた。
「あ、ああ……ぐっ!?」
ノイズは止むことなく頭の中を掻き乱し、その不快感は久しぶりに味わう痛みにも似た感じがしていた。
どうなってるんだ……今の俺の痛覚は無くなってるんじゃないのか?
【……別のウイルスの拒絶反応による脳への異常を確認。適応を開始します】
そのお知らせと同時に一気に頭の重さが楽になる。
今更ではあるけれども、本当にアナさんには厄介になりっぱなしだな……
「……もう大丈夫だ、問題ない」
顔を覗き込んでくるガカンにそう言って立ち上がる。
しかしさっきよりも体の調子がいいのは気のせいか?軽く感じるような……
【イクナから抽出したウイルスの適応により、八咫 来瀬のLUC以外の全ステータスに+10の補正が入りました。体の一部が捕食時とは関係なく形態変化ができるようになりました】
お、おう、マジか……+10って結構デカくねえか?
【なお、現在のステータスであれば短剣以外の武器も使用に支障がないと思われます】
つまり俺もララみたいに大剣を振り回せるってことか?
冒険者になる時には適正が短剣だって言われてたからその通りに使ってたけど、他の武器も使えるオールラウンダーとか格好良くない?
まぁ、俺が格好良くなるイメージなんてこれっぽっちも湧かないんだけど。
「……そういえばイクナは?」
「へい、今は眠っています。ただ……たまに体が震えたり跳ねたりしてララさんたちが心配しています」
「そうか……」
問題ない……とまでは言えないけれど、さっきの様子を見る限り元に戻るはずだ。
もしかしたらイクナの中でも俺みたいに拒絶反応が起きてるだけかもしれないし……
……あれ?俺はアナさんのフォローがあって元に戻ったけれど、イクナは大丈夫なのか……?
【元々八咫 来瀬の体内にあったウイルスをこちらで遠隔操作し、順応させています】
あ、それはよかった。
「しかし……もう探索してる場合じゃないな。今日はもう帰るか」
「それがいいにゃ。ダンジョンはすぐになくなることはないからまた別の日に来ればいいにゃ」
「イクナが大丈夫なら……ね」
俺の考えにレチアもそう言って同意し、ララは気を失っているイクナの頭を撫でながら言う。
どちらにしろ、しばらくは安静にしておいた方がいいかもな。
……にしてもなんで急にイクナは暴れ始めたんだ?
【……イクナから採取したウイルスの解析結果が出ました。魔物捕食による過剰な栄養摂取したためにウイルスが大量に増殖して起きた現象だと思われます】
あー……ってことは魔物食ったから一時的にパワーアップしたってことか?どっかの漫画にあった主人公みたいな能力だな……
そんなことを考えながら帰ろうとしていると、戻る道から人の足跡が聞こえてくる。
目を向けるとそこにはマルスとルフィスさんがやってきていた。
「やぁ、ヤタ君たちもこっちに来てたんだね!」
「まぁな。これでも借金持ちで金が入り用だし、稼げるって聞いたら来るしかないでしょう?まぁ、もうこれから引き上げるところですけど」
「ずいぶん早いね……ああ、そういうことか」
マルスが視線をララの背中で外套を深く被って眠ってるイクナに向けるとすぐに納得した様子だった。
「君も大変だね」
「大変なのは元からだ、イクナを理由にはしねえよ。それよりお前ってそんな武器持ってたっけ?」
知ったような口を聞くマルスに少しイラッとしてぶっきらぼうに答えると、ふと奴の背負ってる武器が見慣れないものだったのに気付く。
いつも携えているそこら辺に売っていそうな細い剣ではなく、ララのような大剣を背負っていた。
しかもその見た目からして強そうで、レチアが普段使っている短剣のように特殊な装飾が施されているように見える。
「ああ、これは普段あまり持ち歩かないんだけど、本来僕が使う武器なんだ」
「は?……つまりお前の階級って大剣のやつだったのかよ?」
「そういうこと。まぁ、こういう狭いところでは使い勝手が悪いから使わないんだけど、一応ね……ダンジョンでは何が起きるかわからないから」
そう言っていつもの爽快な笑みを浮かべるマルス。
その言葉に俺は「嘘付け」と内心おもっていた。
「何が起きるかわからないから」で不利になるような武器を担ぐかよ、普通。
グロロの時にこいつの強さを見た俺からすれば、本気を出せば周りを巻き込みかねないから何じゃないかと思っている。
思えばグロロを相手にしてる時でさえ余裕があるように見えたし……
別にこいつにそこまで興味があるわけじゃないから追求はしないが、やっぱりなんかいけ好かないな。
「そうかよ、そんじゃな」
「……その前にそこに転がってる大量の魔物のことを聞かせてもらっていいかな?」
そう言うマルスの顔を見ると、俺たちがさっき倒した魔物の屍があり、さっきまでの笑みはそこになかった。
「……元々そこに転がってたんだよ。誰かが倒したんじゃないのか?まぁ、素材が放置されてたから貰っといたがな」
俺も視線を魔物に向けながら嘘を吐いた。
よく人間は嘘を吐く時に目を逸らすというが、目を逸らす先があれば問題ない。
そしてできればその間に相手の目を見ても動じないよう心の整理をすれば完璧だ。
「……そっか。でももしこの魔物たちが一度に来ていたのを見たのだとしたら、早くここを立ち去った方がいいよ」
「何?」
俺が嘘を吐いたのを見抜いたような言い方をするマルス。
ただそれよりもマルスが後半言った言葉が気になった。
「どういう意味だ?」
「直にわかるよ。だから今は彼女たちを帰してあげて」
マルスは再び笑みを浮かべてそう言う。
「……わかった。あとで聞かせてもらうからな」
そう言って俺たちは今度こそその場を後にした。
「チェスター!」
ライアン邸の研究室の扉を勢いよく開き、その中にいるであろう彼の名前を呼ぶ。
しかし中にいたのは彼の娘であるメリー一人だけだった。
「……チェスターは?」
「ぱ、パパはここにはいないよ。さっき出かけた……」
言葉を詰まらせながらもメリーが教えてくれる。
入れ違いになったわけか。
「どしたの?」
「ああ、本当は明日教えてもらうはずだった人工的な奇跡について今少しでも教えてもらおうと思ったんだが……いないならしょうがないか。邪魔したな」
少しでも攻撃手段を増やしておこうと思ったんだが、ダメならダメでしょうがない。
俺は振り返ってその場を去ろうとしたのだが……
「……ねぇ」
扉に手をかけようとしたところでメリーに声をかけられた。
「未完成のものでよかったら……これあげる」
そう言って彼女が差し出して来たのは、丸い円形の物だった。
「これは?」
「パパにも言ってないことなんだけど……私も私なりに研究して作ってたんだ、人工的な奇跡を発動させる道具……でもやっぱり実験するわけにもいかないから作るだけになってたもの、なの」
いつもより口数を多くして説明してくれた。
いや、これはありがたいかもしれない。
「ないよりはマシだ。それで使い方は?」
「まず装着するところは腕。それと安全装置のスイッチが付いてるから、それを押して今赤く光ってるのが緑色に変わったら解除された合図……あとはそれを付けた腕に意識を集中すれば、中に組み込まれた術式が発動して奇跡に似た技が放てる……と思う」
「と思う」と言われた時点で凄く不安なんですが。
……まぁいいや、不発とかだったら残念だったなで終わるし。
「一応聞くけど、これは貰って行っていいのか?」
「うん……だけどあとで感想教えてね」
そう言って微笑む彼女に、俺は思わずドキッと心が揺らぎそうになっていた。
……やっぱり元の顔が整ってるっていうやはズルいと思う。
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