ダークヒーロー 〜俺はヒーローであることに執着する〜

レイン

1話ヒーロー

俺はヒーローとはなんだろうかと疑問に思っていた。




ヒーローとは普通の人より力があり強い者

ヒーローとは正義の心を持ち人々を守る者

ヒーローとは……





人によってヒーローについての思いが違うこともあるかもしれないが根底の部分では誰もが誰かを守ることだと思っていた。




だが……なんだ、なんだこれは!?




俺は瞳にはヒーローと思われる者が救うべき人々を蔑ろにして自分だけが助かるためにそのヒーローとしての力を行使していた。


ある者は助けを求める人が近くにいて、助けられる力があると言うのにその求めを目に耳に入れながらも、自分が助かるために置いて行く。

ある者は目の前に怪物に襲われる人がいて、怪物と戦うために力を持っているのにも関わらず自分のところに怪物が来なかったことを喜び逃げていく。

ある者は助けてもらった人に感謝の言葉すら言わず一目散に逃げる者や、人を身代わりにして生き残ろうとする者




この誰もがヒーローとして正しい行動ではない。




だがそんなヒーローらしからぬ行動を戒める者はその場にいなかった。





ーーあぁ、もうだめだ、ここにいては救うべき人を救うことが出来ない。




俺は今ヒーローを統括するためのヒーロー協会の支部の1つにいる。



ここにはたくさんのヒーローがいてヒーロー協会の偉い方を守っていた。俺もまた命令を出されここを守っていた。


「なんでですか! なんで行っちゃダメなんですか!」

俺は上官に今も画面に映る助けを求める人々を見つめながら何度も訴える。

「これは上からの命令だからだ!」

上官に何度訴えても答えは変わらなかった。

「あぁ!もう!俺だけでも行きます!目の前で助けを求める人がいるって言うのにそれを無視することなんて俺には出来ません!」

俺はとうとう我慢の限界に達していた。今もまた誰かヒーローがいれば助けられたはずの命が失われた。



必ず助けられる



なんてそんな理想を抱いているわけじゃない、だからと何もせずただ見ているだけの現状を許せるわけでもなかった。


「だめだ!ここの場所を守ることがか俺たちに与えられた上からの命令だ!」

現場へと向かおうとしていた俺を上官は止める。

「上からの命令だと! 何も起こってないこの場所を守ることに何の意味があるって言うんだ!」

わかってはいる、今はまだこの場所に被害が出ていないだけでもしかしたら数分後には被害が出てしまう、もしこの場所に被害出てしまえばヒーロー達を統括することができず、正しい命令は出せずそのせいで失ってしまう命もあるかもしれない、だけど目の前で何も出来ず失われていく命をただ見ていることも出来なかった。

「それが命令だ! 従うんだ!」

結局俺は上官と他のこの場を守っているヒーロー達に止められて現場へと行くことは出来なかった。


そして結局この場に被害は出ることはなかった。



こうしてたくさんの人々の命が失われた。



そして1人本部にいたはずのヒーローが行方不明になった。

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