マギアルサーガ~うたかたの世に幕を引け~

松之丞

Chapter-04 Prologue【勇者の伝説 - 序章】

昔々 あるところに 一人の少年がいました

彼は裕福ではありませんでしたが 毎日お腹が満ちるほどのパンと

他者を慈しむことができるだけの 家族の愛情がありました

ある日 何の前触れもなく 少年に悲劇が訪れます

彼がようやく 山でイノシシ狩りのお手伝いができるようになって

いつものように 大人たちとイノシシを追いかけていました

彼が夢中になっていると 突然大人たちは狩りを止めて みな村の方を見ました

村の方から 空へと向かって 黒々とした煙が立ち昇っていました

彼を置いて 大人たちは走っていきます 彼も後を追いますが ついて行けません

少年が村に着いた頃には 村は亡くなっていました

村に駆けつけた大人たちも 優しかったお父さんやお母さんも 亡くなってしまいました

彼は目が腫れるくらい泣きましたが それでも歩くことを止めませんでした

彼は勇敢でした 今は亡き村を捨てて 大人たちに聞かされた 都へと旅立ちました

少年はたった一人で 大人たちの見よう見まねで狩りをしながら 都へとたどり着きました

獣の血に塗れた彼を 都の人々は みな哀れんではくれません ただ訝しげに見るだけでした

ですが一人だけ 彼を気遣ってくれる人がいました

少年と同じような歳の 大変綺麗な服を身に纏った 貴族の少年でした

貴族の少年は言いました

「大丈夫? どうしたの? 君はどこから来たの?」

少年は言いました

「うん、大丈夫。ずっと向こうの村から来たんだ。でもみんな燃えて無くなっちゃった」

貴族の少年

「……そうなんだ。帰るおうちがないなら、僕の家に来ない?」

少年は言いました

「本当に? いいの?」

貴族の少年は言いました

「もちろん。困ったときはお互い様って、いつもお父さんが言ってるんだ」

少年は言いました

「じゃあ、お友達にもなってくれる?」

貴族の少年は言いました

「もちろん。僕はアルトリウス。アルでいいよ。君のお名前は?」

少年は言いました

「僕はアレキサンダー。アレクでいいよ。よろしくね、アル」

貴族の少年は言いました

「こちらこそ、アレク」

それはとても運命的な そしてとても悲しいお話の 始まりでした

表題:勇者の伝説 序章……小さな出会い、大きな運命
作者:不詳
年代:不詳
取扱:禁書処分

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