ちょっとだけ切ない短編集

北きつね

キミから届いたメール


 今年で、10年が経った。
 いつまでも引きずっていてはダメだと周りからは言われる。俺も、それは解っている。今年で、26だ。結婚した友達も出始めている。

 俺は、まだキミを探してしまっている。
 10年前。俺とキミは、約束した。幼い感情からだったかも知れない。でも、キミも喜んでくれた。バイトして貯めた指輪も受け取ってくれた。
 二人で過ごした夜。そして、朝になり、キミは家に帰る途中で、俺の手が届かない場所に旅立った。

 キミと過ごした最後の日が、俺の誕生日になるとは思っていなかった。

 俺は、眠るように横になっているキミを10年前に見ている。火葬されるキミを見送った。お義父さんとお義母さんに混じって、最後にキミを持ったのも俺だ。
 しかし、俺は、この10年。キミを忘れられない。

 お義父さんとお義母さんからは、キミを忘れても恨まないと、三回忌が終わってから言われた。
 涙を流しながら、俺に謝ってきた。

 七回忌では、お義父さんに怒られた。
”娘に依存するな”

 俺は、キミに依存しているのか?
 キミが居ない現状が10年経っても、夢なのだと思えてしまう。

 キミが起きない10年間で、俺は3649回も起き上がっている。起きて、キミが居ない現実を知って絶望する。キミがお腹が空かないのに、俺は空いてしまう。キミのしたかった仕事を俺はしている。

 このまま寝て、朝に起きなくて、迎えに来てくれていると嬉しい。
 俺は、10年間の思い出を10年かけてキミに語るよ。キミの見ていた10年を教えてよ。

”おやすみ”

 そうか、明日は俺の誕生日か・・・。キミに祝ってもらった10年前に戻りたいよ。

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”ぴっぴぴっぴっぴぴっぴっぴぴ”

 え?メール?なんで?
 キミからのメール?ほら、やっぱり、キミが居なくなったのが夢だった。これが現実だ。俺を起こすためのメールだろう?唯一変えなかったキミの連絡先だけが登録されている携帯電話。電池も使えなくなり、常に充電状態でなければ駄目だ。

 俺は、キミからのメールを確認する。

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私の愛する人へ
10年経ったね。貴方の隣に私は居ますか?
私は、10年後も貴方を愛します。愛しています。
10年後の私は、貴方が好きだと言った私ですか?文句はないですか?
私が、隣に居たら、このメールを見せてください。きっと恥ずかしがるでしょう。
子供は居ますか?27歳の私は、しっかり仕事をしていますか?

貴方との約束を守っていますか?
守れていなかったら、ゴメンなさい。10年前の私が代わりに謝ります。

私が貴方の隣に居なかったら、私を忘れてください。でも、私が貴方の隣に居たら抱きしめてください。

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