世界再生記
練魔術
「主、これから私の言う通りに動いてください、まずは空気の流れを感じるのです。」
「....」
スベルはヒカリの言う通りに動くことにした。
最初は彼女が戦い方を見せるといって前に出たときはどうかと思ったけど、彼女のこの落ち着きよう、多分大丈夫なのだろう。
ーー空気の流れを感じる、か、こういうことかな?
目を瞑って視界を遮断、耳と肌に全神経を注ぎ込む。
自然が奏でる音、モンスターが近づいてくる足音、肌に当たる穏やかな風、降り注ぐ殺気を孕んだ視線
「これ、は、何だ?」
それらとは別の新しい感覚、いや、これは初めてじゃない、二度目だ。この世界に来たときも感じた、何故か妙に馴染むこの感覚、まるで空気が無造作に干渉してくるような、強引に入り込んでくるような、
「それがマナです。この世界を統べる大いなる大気の流れにして我々に与えられた戦う術、これを使い、悪しき者を浄化する活路を作り出すのです。」
ヒカリは、警戒してあまり近づいこないモンスターに向けて手を前へ突きだす。
「イメージを、マナが己の回りに収束し、望むべき形へと変わる過程を想像するのです。」
ヒカリはその輝く瞳を閉じ、精神を統一、すると、大気に含まれるマナが、力を与えてくれる奇跡が、ヒカリの周りだけに集まっていく。
濃縮され、洗練され、それは意思を持ったかのように形を成していく。
既に可視化できるレベルまで収束したマナは青白く輝き、ヒカリの手には光輝の剣が握られていた。
「これが私たち精霊や主だけに許された力、錬魔術れんまじゅつです。」
そして前進、彼女はこの力の正体を明かし、生み出した得物を握り締め、今度は立場が逆になっている敵目掛けて地を蹴った。奴等は己と相手との力量を本能で理解し、こちらに背を向けた状態で一目散に逃げ惑い....逃げ切ることはできなかった。
モンスターの足が遅かった、確かにそれもある。けれど、彼らが逃げ切れなかったのはそれが主因ではない。
彼女が、ヒカリが赤い彗星のごとく、音を置き去りにしたのだ。
瞬く間にモンスターとヒカリとの間は詰まり、振りかざされた光剣が怪物の背中を捉える。
切断、と言うにしてはあまりに断面が荒々しい。
斬られたモンスターの表面は皮膚がただれ、血が蒸発し、肉が焼けた臭いが舞う。
最早これは切断と言うよりも熱断、触れたものを焼き、原子レベルまで断ち切る必殺の剣。
そしてそれは二匹目、三匹目と命を刈り取っていき、残りの一匹も同じように焼き切るのかと思えば、ヒカリは四匹目の前へと回り込み、その勢いのまま回し蹴りを食らわせた。
「なんでこっちに飛ばしてくるんだよー!?」
蹴りを食らい、体がくの字になりながら飛ばされたモンスターは、一直線にスベルのもとへと飛んでくる。
それに罵声を飛ばしながら持ち前の反射神経で華麗に躱すと、モンスターはそのままの勢いで後方の木壁へと激突した。
「主今です!マナの流れを錬魔術へと変換するのです。」
「な、なるほど、そういうことね。」
これは試練、分かりにくいけど、ヒカリが俺の錬魔術のためにわざわざ作ってくれた低い壁、相手はほぼ子どもの弱者、けれども確実にこの世に害をなす悪、高校生上がりの世界の王には丁度良いだろう。
「マナの流れは...まだ感じるな。次は己の周りに収束させて、望むものをイメージ。」
モンスターは木に衝突した影響で身体中を血で汚し、あまりの痛みに苦悶したことで醜悪だったその顔をより一層歪なものへと変貌させている。
目は血走り、呼吸は荒々しく、奥歯を噛み締め、ナイフを持った手はガタガタと震えている。
逃げは....取らないようだ、もう分かっているのだろう、自分の死期を。だから敢えて逃げることはせず、その生涯の最期をせめて勇敢なもので飾って終わろうと、
なんて、モンスターはそんなことを考える存在じゃない。奴等は邪悪で、害悪で、俗悪で、醜悪で、最悪な生き物、同情の余地など一片もない。
「やっぱ俺といったらこれだよな。よろしく頼むぜ、相棒。」
ーーイメージは固まった、長年培ってきたものだ、容易に想像できる。
マナも思った以上に収束が速い。これなら案外楽勝にいけそうだな。
マナは順調にスベルのもとに集まり、彼の想像した通りのものへと形を変えていく、勿論それは今まで最も多くの時間を共に過ごし、最も使い込んできたもの。
モンスターは衝突で揺れた脳を押さえ込みながら、その明らかに落ちたスピードで接近。最初の邂逅のような恐怖は微塵も感じない。
無いと思っていた戦う術があると分かった瞬間、こうも異様なほどの落ち着きを得るとは思わなかった。
「お前が王の初陣、最初の犠牲だ。光栄に思えよ。」
最も数をこなし、最も質を高め、最も使い方を熟知した武器、スベルにとって至高の宝具である弓を錬魔。
矢をセットし、弦を引き、迫り来るモンスターに狙いを澄ませる。
モンスターはそのただならぬ気配に目を見開き、咆哮を上げ、勢いを上げる。
「これで終わりだ。」
が、その努力も虚しく、指から離れた弦はそのまま矢を押し出し、一直線にモンスターの頭部を貫通した。
「....」
スベルはヒカリの言う通りに動くことにした。
最初は彼女が戦い方を見せるといって前に出たときはどうかと思ったけど、彼女のこの落ち着きよう、多分大丈夫なのだろう。
ーー空気の流れを感じる、か、こういうことかな?
目を瞑って視界を遮断、耳と肌に全神経を注ぎ込む。
自然が奏でる音、モンスターが近づいてくる足音、肌に当たる穏やかな風、降り注ぐ殺気を孕んだ視線
「これ、は、何だ?」
それらとは別の新しい感覚、いや、これは初めてじゃない、二度目だ。この世界に来たときも感じた、何故か妙に馴染むこの感覚、まるで空気が無造作に干渉してくるような、強引に入り込んでくるような、
「それがマナです。この世界を統べる大いなる大気の流れにして我々に与えられた戦う術、これを使い、悪しき者を浄化する活路を作り出すのです。」
ヒカリは、警戒してあまり近づいこないモンスターに向けて手を前へ突きだす。
「イメージを、マナが己の回りに収束し、望むべき形へと変わる過程を想像するのです。」
ヒカリはその輝く瞳を閉じ、精神を統一、すると、大気に含まれるマナが、力を与えてくれる奇跡が、ヒカリの周りだけに集まっていく。
濃縮され、洗練され、それは意思を持ったかのように形を成していく。
既に可視化できるレベルまで収束したマナは青白く輝き、ヒカリの手には光輝の剣が握られていた。
「これが私たち精霊や主だけに許された力、錬魔術れんまじゅつです。」
そして前進、彼女はこの力の正体を明かし、生み出した得物を握り締め、今度は立場が逆になっている敵目掛けて地を蹴った。奴等は己と相手との力量を本能で理解し、こちらに背を向けた状態で一目散に逃げ惑い....逃げ切ることはできなかった。
モンスターの足が遅かった、確かにそれもある。けれど、彼らが逃げ切れなかったのはそれが主因ではない。
彼女が、ヒカリが赤い彗星のごとく、音を置き去りにしたのだ。
瞬く間にモンスターとヒカリとの間は詰まり、振りかざされた光剣が怪物の背中を捉える。
切断、と言うにしてはあまりに断面が荒々しい。
斬られたモンスターの表面は皮膚がただれ、血が蒸発し、肉が焼けた臭いが舞う。
最早これは切断と言うよりも熱断、触れたものを焼き、原子レベルまで断ち切る必殺の剣。
そしてそれは二匹目、三匹目と命を刈り取っていき、残りの一匹も同じように焼き切るのかと思えば、ヒカリは四匹目の前へと回り込み、その勢いのまま回し蹴りを食らわせた。
「なんでこっちに飛ばしてくるんだよー!?」
蹴りを食らい、体がくの字になりながら飛ばされたモンスターは、一直線にスベルのもとへと飛んでくる。
それに罵声を飛ばしながら持ち前の反射神経で華麗に躱すと、モンスターはそのままの勢いで後方の木壁へと激突した。
「主今です!マナの流れを錬魔術へと変換するのです。」
「な、なるほど、そういうことね。」
これは試練、分かりにくいけど、ヒカリが俺の錬魔術のためにわざわざ作ってくれた低い壁、相手はほぼ子どもの弱者、けれども確実にこの世に害をなす悪、高校生上がりの世界の王には丁度良いだろう。
「マナの流れは...まだ感じるな。次は己の周りに収束させて、望むものをイメージ。」
モンスターは木に衝突した影響で身体中を血で汚し、あまりの痛みに苦悶したことで醜悪だったその顔をより一層歪なものへと変貌させている。
目は血走り、呼吸は荒々しく、奥歯を噛み締め、ナイフを持った手はガタガタと震えている。
逃げは....取らないようだ、もう分かっているのだろう、自分の死期を。だから敢えて逃げることはせず、その生涯の最期をせめて勇敢なもので飾って終わろうと、
なんて、モンスターはそんなことを考える存在じゃない。奴等は邪悪で、害悪で、俗悪で、醜悪で、最悪な生き物、同情の余地など一片もない。
「やっぱ俺といったらこれだよな。よろしく頼むぜ、相棒。」
ーーイメージは固まった、長年培ってきたものだ、容易に想像できる。
マナも思った以上に収束が速い。これなら案外楽勝にいけそうだな。
マナは順調にスベルのもとに集まり、彼の想像した通りのものへと形を変えていく、勿論それは今まで最も多くの時間を共に過ごし、最も使い込んできたもの。
モンスターは衝突で揺れた脳を押さえ込みながら、その明らかに落ちたスピードで接近。最初の邂逅のような恐怖は微塵も感じない。
無いと思っていた戦う術があると分かった瞬間、こうも異様なほどの落ち着きを得るとは思わなかった。
「お前が王の初陣、最初の犠牲だ。光栄に思えよ。」
最も数をこなし、最も質を高め、最も使い方を熟知した武器、スベルにとって至高の宝具である弓を錬魔。
矢をセットし、弦を引き、迫り来るモンスターに狙いを澄ませる。
モンスターはそのただならぬ気配に目を見開き、咆哮を上げ、勢いを上げる。
「これで終わりだ。」
が、その努力も虚しく、指から離れた弦はそのまま矢を押し出し、一直線にモンスターの頭部を貫通した。
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