世界再生記
異世界生活始まるそうです
「いやいやいや、マジでどうなってんだよ!?ここどこだよ!?誰か、教えてくれーー!!」
「その願い、私が叶えて上げましょう。」
これは夢だったはず、一度寝れば覚める夢だったはず。
辺り一面の海、見下ろしてくる広大な空、寝る前と何一つ変わらない。景色も自分の体も、自分の心も。
だからこそ、この悪夢がまだ目の前にあったことにも驚いたが、それ以上に、僅かな希望にすがる呼び掛けに答える声があったことの方が、二倍増しぐらいで驚いた。
しかもそれが自分が屋上から落ちる前に見たあの光と全くものが現れたのだから、もう何がなんだか整理が追い付かない。
おまけに喋ってるし、
「ここは悪意によって意図して作られた無の世界、フィンドブル。そしてあなた、アマタ・スベルは、この世界の王、つまり、世界を再生するものとしてここに転移されたのです。」
光は淡々と喋っていくが、呆然自失としたスベルの耳にはなかなか入っていかない。しかし、光は尚も喋り続ける。
「あなたにはこれから私と共に数々の世界を旅してもらい、各々の世界に蔓延る諸悪を滅ぼしてもらいます。そこで出会った仲間達と協力するもよし、何者とも関わらずに孤独に挑むもよし、手段は問いません、結果的に諸悪を滅ぼせばいいのです。」
頭が働かないスベルにも分かった。この光、如何にも綺麗事を並べて捲し立てようもしてあるが、絶対的に言えることが一つある。
ーーーこいつ、なに言ってるのかわからんーーー
は?悪意に作られた世界フィンドブル?知らねぇよ。聞いたこともない。
俺が世界の王?世界を再生する?俺にそんな大役、勤まるわけがないだろ!
それになんだ?世界を旅して諸悪を滅ぼせ?現代社会の働きかただって全然解決できないのに、こんな高校生が世界の諸悪なんか滅ぼせるわけがねぇだろ、アホなのか!?
「そうすれば世界は必ずもとに....」
「なあ、光さん、話してくれるのはありがたいんだけどさ、話が急すぎてついていけないんだけど、まず転移ってなんだ?ここは地球なのか、そこから教えてくれ。」
光はスベルに言葉を遮られ、依然としてフラフラと浮いている。
もちろん無視したというわけではない。
「転移とは体と心をそのままの状態で違う世界に移すことです。そしてここが地球なのかという質問にたいしては、否です。ここは地球ではありません。さっきもいったようにここはフィンドブルという無の世界、地球とは全く違う世界です。」
うん、何となく分かった。ここは地球とは違う世界で、俺はそこに俺自身として移動してしまったということ、でもやっぱり解せない。
「何で転移されたのが俺なんだ?それに、諸悪を滅ぼすって言ってたけど具体的にどんなことをするんだ?」
気になって当然だ。スベルは至って普通の高校生。そんな彼がいきなり世界の王だなんて、不可解にもほどがある。
「.....諸悪を滅ぼすというのは、その世界に蔓延っているモンスターと呼ばれる怪物が引き起こす災害を解決し、その魔物を束ねる親玉、モンスターロードを殺すことです。」
モンスターを殺す、か、モンスターって言えばいつもオタクの奴等がゲームで倒してる異形の生物みたいなやつのことなんだろうけど、あまり殺生は望まない。血は、嫌いなんだ。
それに、何で俺が選ばれたのかは上手くはぐらかされたようだが、なにか言えないことがあってのことだろう。だから今は深くは詮索しないでおく。
これから俺がどうすべきなのかは大方分かった。
でも一つだけどうしても気になることがある。
「なあ、光、俺は普通の地球に戻れるのか?今後の生活に深く関わってくる質問だ、可能かどうかだけでも教えてくれ。」
「それは、残念ながら無理ですね。できるにはできるんですが、私があなたを転移したのは空中落下の途中、元の世界に戻ったとなるとリスタートも空中から、つまりあなたを待つのは死のみです。」
「....」
スベルは、自分でも驚くほど、自分が地球に戻れないという事実に落胆していないと気づいた。
確かに、死という言葉を聞いたときはゾッとしたが、理解の範囲内だ。
それに思い返してみれば、それほど地球に未練があるものがあるわけでもないし、寧ろ異世界転移とやらには胸が高鳴っている。
これからも楽しみな用事なんかは、ああ、でもあのラブレターの差出人だけは知りたかったな。
俺の初イベントにして最大の転機、未練といったらそれぐらいだ。
「そのラブレター?と言うのは恋文のことですよね。それなら差出人は私ですよ。」
「え?」
「ちなみに言うと、あなたを屋上から落としたのも私です。」
「....ええ?」
え、ちょっと待って、今こいつ、俺の心のなかを読んだ?って、それよりもあのラブレターを書いたのがこいつ!?女子でも、ましてや人間でもない人外の、光!?
「それってほんと?」
「はい。」
「ラブレターの差出人は君?」
「はい。」
「屋上から君が落としたの?」
「はい。」
「それってもしかして、俺を地球に返さないためだったりする?」
「....はい、その通りです。」
また一つ分かったことがある。
ーーー全部こいつが悪い!!
なに、この光やろう、いきなり出てきて俺の恋路を踏みにじって、俺の人生薔薇色になるって思ったのに、今度はいきなりあなたが世界の王ですなんてほざきやがって、正気の沙汰じゃねえ、壁に張り付けて弓で射ぬ射てやろうか!?壁はないけど。
「やはりこのままは居心地が悪いですね。少々待ってください。」
今度はなに?勝手に俺を連れ出しといて居心地が悪い?なんともまあ、お偉いことで、
光はチカチカと次第に弱っていくかのように点灯していくと、今度は膨張を始めた。
様子を見ていると、それはどんどん形を成していく、手が生え、足が生え、頭が生え、そのすべてが黄緑色のベールに包まれている。
そして待つこと数十秒、光は遂に人の体を作り上げた。同時にベールも散り、現れたのは、
「最終確認です。あなたはこの世界を救ってくれますか?」
「もちろん。あなたのためになんでもやってみせます。」
「その願い、私が叶えて上げましょう。」
これは夢だったはず、一度寝れば覚める夢だったはず。
辺り一面の海、見下ろしてくる広大な空、寝る前と何一つ変わらない。景色も自分の体も、自分の心も。
だからこそ、この悪夢がまだ目の前にあったことにも驚いたが、それ以上に、僅かな希望にすがる呼び掛けに答える声があったことの方が、二倍増しぐらいで驚いた。
しかもそれが自分が屋上から落ちる前に見たあの光と全くものが現れたのだから、もう何がなんだか整理が追い付かない。
おまけに喋ってるし、
「ここは悪意によって意図して作られた無の世界、フィンドブル。そしてあなた、アマタ・スベルは、この世界の王、つまり、世界を再生するものとしてここに転移されたのです。」
光は淡々と喋っていくが、呆然自失としたスベルの耳にはなかなか入っていかない。しかし、光は尚も喋り続ける。
「あなたにはこれから私と共に数々の世界を旅してもらい、各々の世界に蔓延る諸悪を滅ぼしてもらいます。そこで出会った仲間達と協力するもよし、何者とも関わらずに孤独に挑むもよし、手段は問いません、結果的に諸悪を滅ぼせばいいのです。」
頭が働かないスベルにも分かった。この光、如何にも綺麗事を並べて捲し立てようもしてあるが、絶対的に言えることが一つある。
ーーーこいつ、なに言ってるのかわからんーーー
は?悪意に作られた世界フィンドブル?知らねぇよ。聞いたこともない。
俺が世界の王?世界を再生する?俺にそんな大役、勤まるわけがないだろ!
それになんだ?世界を旅して諸悪を滅ぼせ?現代社会の働きかただって全然解決できないのに、こんな高校生が世界の諸悪なんか滅ぼせるわけがねぇだろ、アホなのか!?
「そうすれば世界は必ずもとに....」
「なあ、光さん、話してくれるのはありがたいんだけどさ、話が急すぎてついていけないんだけど、まず転移ってなんだ?ここは地球なのか、そこから教えてくれ。」
光はスベルに言葉を遮られ、依然としてフラフラと浮いている。
もちろん無視したというわけではない。
「転移とは体と心をそのままの状態で違う世界に移すことです。そしてここが地球なのかという質問にたいしては、否です。ここは地球ではありません。さっきもいったようにここはフィンドブルという無の世界、地球とは全く違う世界です。」
うん、何となく分かった。ここは地球とは違う世界で、俺はそこに俺自身として移動してしまったということ、でもやっぱり解せない。
「何で転移されたのが俺なんだ?それに、諸悪を滅ぼすって言ってたけど具体的にどんなことをするんだ?」
気になって当然だ。スベルは至って普通の高校生。そんな彼がいきなり世界の王だなんて、不可解にもほどがある。
「.....諸悪を滅ぼすというのは、その世界に蔓延っているモンスターと呼ばれる怪物が引き起こす災害を解決し、その魔物を束ねる親玉、モンスターロードを殺すことです。」
モンスターを殺す、か、モンスターって言えばいつもオタクの奴等がゲームで倒してる異形の生物みたいなやつのことなんだろうけど、あまり殺生は望まない。血は、嫌いなんだ。
それに、何で俺が選ばれたのかは上手くはぐらかされたようだが、なにか言えないことがあってのことだろう。だから今は深くは詮索しないでおく。
これから俺がどうすべきなのかは大方分かった。
でも一つだけどうしても気になることがある。
「なあ、光、俺は普通の地球に戻れるのか?今後の生活に深く関わってくる質問だ、可能かどうかだけでも教えてくれ。」
「それは、残念ながら無理ですね。できるにはできるんですが、私があなたを転移したのは空中落下の途中、元の世界に戻ったとなるとリスタートも空中から、つまりあなたを待つのは死のみです。」
「....」
スベルは、自分でも驚くほど、自分が地球に戻れないという事実に落胆していないと気づいた。
確かに、死という言葉を聞いたときはゾッとしたが、理解の範囲内だ。
それに思い返してみれば、それほど地球に未練があるものがあるわけでもないし、寧ろ異世界転移とやらには胸が高鳴っている。
これからも楽しみな用事なんかは、ああ、でもあのラブレターの差出人だけは知りたかったな。
俺の初イベントにして最大の転機、未練といったらそれぐらいだ。
「そのラブレター?と言うのは恋文のことですよね。それなら差出人は私ですよ。」
「え?」
「ちなみに言うと、あなたを屋上から落としたのも私です。」
「....ええ?」
え、ちょっと待って、今こいつ、俺の心のなかを読んだ?って、それよりもあのラブレターを書いたのがこいつ!?女子でも、ましてや人間でもない人外の、光!?
「それってほんと?」
「はい。」
「ラブレターの差出人は君?」
「はい。」
「屋上から君が落としたの?」
「はい。」
「それってもしかして、俺を地球に返さないためだったりする?」
「....はい、その通りです。」
また一つ分かったことがある。
ーーー全部こいつが悪い!!
なに、この光やろう、いきなり出てきて俺の恋路を踏みにじって、俺の人生薔薇色になるって思ったのに、今度はいきなりあなたが世界の王ですなんてほざきやがって、正気の沙汰じゃねえ、壁に張り付けて弓で射ぬ射てやろうか!?壁はないけど。
「やはりこのままは居心地が悪いですね。少々待ってください。」
今度はなに?勝手に俺を連れ出しといて居心地が悪い?なんともまあ、お偉いことで、
光はチカチカと次第に弱っていくかのように点灯していくと、今度は膨張を始めた。
様子を見ていると、それはどんどん形を成していく、手が生え、足が生え、頭が生え、そのすべてが黄緑色のベールに包まれている。
そして待つこと数十秒、光は遂に人の体を作り上げた。同時にベールも散り、現れたのは、
「最終確認です。あなたはこの世界を救ってくれますか?」
「もちろん。あなたのためになんでもやってみせます。」
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