世界再生記

高木礼六

落下

「ん?まだ誰もいないのか。ちょっと早く来すぎたのかもな。あ、それとも照れてあっちがなかなか出てこれないのかな?ふふーん、かわいいやつだな~。」


統は辺りを見回してまだここには誰もいないと分かると、幸せな妄想をしながらにやにやと笑い、誰もいない屋上に腰かけた。





「....」


「ん?」






どこからか声がした気がした。近くで囁くようなそんな声、でも周りには誰もいない。


「なんだ、気のせいか。」


統は不思議なこともあるもんだと思い、何事もなかったかのように扉を眺め続けた。
校舎内から屋上へ出られる唯一の場所、そこから手紙の差出人が現れると期待してにやにやと待ち続けた。





「....」


「ん、また。」






やはり何か聞こえる。でもやっぱり何も見当たらない。上には青く澄み渡る空、前には微動だにしない扉、左右には屋上と街の景観が広がっていて、下には黄みがかった床、どこにでもある普通の屋上だ。

残りは後ろだけだが、人がいるとは思えない、だってそこには柵があってその先には何もない、つまり人が立てるような足場はない。

だけど一応、



「あ...」



ダメもとで振り返ってみると、もちろんそこには人なんか居なかった、そう、人なんかは、あったのは光だった。その光は蛍のように黄緑色に淡く光りながら、誘うようにゆらゆらと点滅している。

手を伸ばせば届きそうだ、統は柵に手をつき、光を捕まえたいという衝動に駆られ、手を伸ばす。

あと少し、あと少しで届く、光に手が届く。

その時だった。

強い風が吹き、ふわっと体が浮いた。いや、これは風が吹いたというよりも、体が軽くなって光に吸い込まれたようだった。

体はそのまま柵を乗り越え、重力に抗うことなく、自由落下をしていった。

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