スカーレット、君は絶対に僕のもの
第104話 動き出す
翌日の事だった。その日は私のおかえりパーティが体育館で開催された。冬休みに入っている事もあって来ない人も居たけど、実家が街にあるマーヴィンやエレン、ジョンもわざわざこっちまで来てくれて私の帰還を喜んでくれた。
実家が南の島でちょっと遠いはずのグレッグも来てくれて、私を見たときに床に泣き崩れるのを見たときには悪いけどちょっと笑ってしまった。その後泣きながらリュックをガザゴソして、震える手で南の島銘菓のパインマフィンの箱を差し出してきたので私も皆も笑ってしまった。
驚いたのはそのパーティにマリーも参加してくれた事だった。何故か涙目でこのゴブリンにハグをしてくれて何故かマフラーをプレゼントしてくれたのだった。付いてきたリサもマリーの珍しい様子を見て戸惑っていたけど、まあ……昨日の敵は今日の友とも言うし、嬉しかった。
長い長いシュリントン先生の挨拶と共に楽しかったパーティが終わると私は帰りに家森先生と売店に寄って、お弁当を買って彼の部屋に戻った。いや、これからは我々の部屋だった。
赤いリュックの置いてある椅子に私が座って、その向かいの席に家森先生が座ってお弁当を食べた。その時に、テーブルに置いてある家森先生の携帯が鳴った。
「そう言えば、ヒーたんの携帯を新しく発注しなければなりませんね。」
そう言って彼は携帯の画面を見た。私はパーティでベラ先生に言われたことを話した。
「それはもうベラ先生が発注かけてくれるみたいです。今年は後期の授業の単位をまるっと落としているので、来期もこの学園にいようと思ってて。」
「ああそうだ、」
家森先生が携帯をテーブルに置いて、お弁当に橋を揃えて置いて私のことをじっと見てきた。改まった彼の様子に、私も合わせてフォークをお弁当に置いた。
「言い忘れていましたが、実は来期でここからいなくなります。」
え。
え?
「え!?」
私は目を見開いて勢いよく立ち上がった。いなくなる!?ど、ど、ど!?
「どうして!?」
家森先生が笑顔で両手のひらをこちらに向けてきた。
「まあまあ、よく聞いてください。今現在のブラウンプラントの生徒と、ベラと共に新しく街に出来る本校へ移動することとなったのです。このブラウンプラントへは新しい生徒とシュリントン先生率いる先生方が在籍する事となります。イスレ山の一件から学園の知名度が一気に上昇して入学希望者が爆発的に増えてしまったので。」
「ああなんだ……そう言うことか。」
安心した。なーんだ、みんな一緒に移動するのならいいや。シュリントン先生はここに残るんだろうけど。ほっと一息ついて着席すると家森先生が微笑んだ。
「と言うことで、本校の学園長は僕になります。更に言ってしまえば理事は僕で副理事はベラになります。」
「あら、おめでとうございます。シュリントン先生は?」
「……ブラウンプラント校の校長です。」
そ、そっか……仕方ないかもしれない。いつも資料は家森先生任せだったし、ドラゴン事件の時に私とベラ先生を置いて門を閉めたからね。まあ……仕方ない。
「いつもはシュリントン先生がやってくれていたことを今度は僕とベラで行なっていくのですから、また一から学ぶことが増えますが、生徒たちの為です。骨を折る覚悟はあります。」
「じゃあ来年は少し忙しいかもしれませんね、でもシュリントン先生いなくても家森先生とベラ先生なら大丈夫だと……」
「しーっ。」
家森先生が口に人差し指を当ててそう言ったので、ちょっと笑ってしまった。そして彼は箸でお弁当の卵焼きを小さく割り、それを口に入れてから言った。
「ふふ、ですから我々は街に新しく建つ本校の寮で暮らすことになります。ヒーたんが望むのならその辺の家を借りてもいいですが、今度の職員寮はここよりも更に広いですよ。」
「そうなんですか!もうこの部屋でも二人で暮らすにしては広すぎる気がしますけど……でも寮でいいです。ベラ先生ともタライさんとも近いし。因みに彼らは……?」
私の聞きたい意味を理解してくれたのか、ははっと家森先生が白い歯を覗かせて笑って首を振った。
「彼らはまだ一緒には暮らさないようです。しかし……このようなメールを頂きました。」
「え?」
家森先生がテーブルの上の携帯を人差し指一本でくるりと回転させてから、私の前へと差し出してくれた。
____________
☆招待状☆
〜愛と魂の儀式〜
今日は楽しかったですね!
家森先生、ヒーたん!
明日は俺たちのパーティ!
場所はベラ様の部屋で、
俺たちの儀式を行うよ!
ごちそういっぱい
用意するから来てね!
てか、来なかったら
迎えに行くし〜!
時間は午前11時
ドレスコードはフォーマル
何か聞きたいことあったら
高崎までどしどしどすこい
タライ
____________
「……何これ。何このテンション。」
「ふふ、儀式をするようですね。参加をしなければ迎えに来るそうですし、参加するしかないようです。」
確かにそうだよね。私は笑いながら携帯を家森先生に返した。しかしドレスコードかぁ……フォーマルな服装じゃないとダメってことだよね。フォークで卵焼きを口に入れて、もぐもぐした後に彼に聞いた。
「欧介さんはどんな格好で行きますか?フォーマルかぁ……でも欧介さんなら普段と同じ格好でもいけそうですけど。」
「僕はそうですね……念の為、スーツを着て行きます。ヒーたんのドレスは無いので後で売店に買いに行きましょう。」
「ええ?いいのですか?」
「いいですとも。しかし僕がいないところでは着ないように。」
はい……分かりましたよ。相変わらずの家森先生の様子にちょっと笑いながら唐揚げを頬張っていると、家森先生の携帯がまた鳴ったのだった……なんか知らない間に人気者になってるじゃん。
私のプチヤキモチの視線に気づいたのか、携帯を確認終わった家森先生が、ふふと微笑んで私の頭を撫でてくれた。
「僕宛ではありませんよ。あなた宛です。」
「ええ?」
彼がまた携帯を私に向けてくれた。
____________
家森さん、こんばんは!
ドロシーです!
ヒイロが生還したって
ニュースで見ましたよ!
ああ、これは救われたと
思いました。何故なら、
もう俺はダスティさんに
見限られてしまったんだ。
今年で終わりだと思った
その時にこのニュース!
さあ、ヒイロ。
今こそその才能をさらに
俺と共に開花させるのだ。
そして地下世界に、
超新星のハーモニーを
轟かせ、人々に
歓喜の雷光を落とすのだ!
と言うことで、時間が
ある時に俺と会って。
さあ契約して。
ドロシー
____________
なんかすげぇ教祖様みたいなこと言ってきた……すごい来てほしい感じは伝わってきたし、ドロシーさんはどうしてるかなと少し思ってたところだったので嬉しかった。
「返事していいですか?」
「ええ、どうぞ。」
そう答えた家森先生がお弁当を食べ始めて、私は返事した。
____________
ヒイロです!
ありがとうございます!
契約したい……ですけど、
来期も街の学園本校で
学ぶことになりました。
でも作曲はしたいですけど
家森
____________
これでいいや。送信ボタンを押して数秒後に返事が来た。めっちゃ早い。
____________
来期も……?え?
は、は、分かった。
じゃあ来年は作曲だけ
お願いする。でも
その翌年はこっちに
来てね。それでいい?
とにかく会って、
契約してくれ。
もう干し肉しか食べるもの
無いよ。あと、
ジークも会いたいって。
ドロシー
____________
「欧介さん、」
「はい?」
「学園にいながら作曲ってしていいんですよね?でも契約したら就労規定引っかかりますか?」
家森先生が少し上を見て考えてから答えた。
「いえ、印税は大丈夫です。コンサートなど時間の制約が必要なものは出来ませんが。」
「分かりました。じゃあオッケーって送ろっと。来年で卒業しまーす……と。」
「……その後は作曲の活動のみを?」
すごく小さな声で聞いてきた。ドロシーさんに返事を打ちながら家森先生の顔を見ると、すごい真顔だったので思わず二度見してしまった。しかも若干脅しに入っている顔だった。
「そ、そうですとも?まあ卒業後はもしかしたらたまにコンサートを開くかも分からないですけど。それじゃあ、ダメですか?」
「いえ……それならいいです。」
ニコッと笑ってくれた。ああ良かった。学園を卒業してからのことが不安だったのね。そんなの心配しなくても私だって一緒にいたいですと思いつつ、ドロシーさんに了承の返事した。彼が干し肉しか食べてないことがちょっと心配なので、来年から頑張って彼と協力していこうと思った。
そしてお弁当を食べ終えた我々は、学園の売店で深緑色のドレスを買った。帰宅して初めて入る物置部屋の中で、そのドレスと以前合コンの時にウェイン先生のお金で買ったヒールを合わせてみたらいい感じになった。背中が開いていてちょっと派手かなと思ったけど、実際に着てみると意外と気にならなかった。全身鏡に映る自分に向かってバンバンと撃つ仕草をして、一人で笑ってしまった。
実家が南の島でちょっと遠いはずのグレッグも来てくれて、私を見たときに床に泣き崩れるのを見たときには悪いけどちょっと笑ってしまった。その後泣きながらリュックをガザゴソして、震える手で南の島銘菓のパインマフィンの箱を差し出してきたので私も皆も笑ってしまった。
驚いたのはそのパーティにマリーも参加してくれた事だった。何故か涙目でこのゴブリンにハグをしてくれて何故かマフラーをプレゼントしてくれたのだった。付いてきたリサもマリーの珍しい様子を見て戸惑っていたけど、まあ……昨日の敵は今日の友とも言うし、嬉しかった。
長い長いシュリントン先生の挨拶と共に楽しかったパーティが終わると私は帰りに家森先生と売店に寄って、お弁当を買って彼の部屋に戻った。いや、これからは我々の部屋だった。
赤いリュックの置いてある椅子に私が座って、その向かいの席に家森先生が座ってお弁当を食べた。その時に、テーブルに置いてある家森先生の携帯が鳴った。
「そう言えば、ヒーたんの携帯を新しく発注しなければなりませんね。」
そう言って彼は携帯の画面を見た。私はパーティでベラ先生に言われたことを話した。
「それはもうベラ先生が発注かけてくれるみたいです。今年は後期の授業の単位をまるっと落としているので、来期もこの学園にいようと思ってて。」
「ああそうだ、」
家森先生が携帯をテーブルに置いて、お弁当に橋を揃えて置いて私のことをじっと見てきた。改まった彼の様子に、私も合わせてフォークをお弁当に置いた。
「言い忘れていましたが、実は来期でここからいなくなります。」
え。
え?
「え!?」
私は目を見開いて勢いよく立ち上がった。いなくなる!?ど、ど、ど!?
「どうして!?」
家森先生が笑顔で両手のひらをこちらに向けてきた。
「まあまあ、よく聞いてください。今現在のブラウンプラントの生徒と、ベラと共に新しく街に出来る本校へ移動することとなったのです。このブラウンプラントへは新しい生徒とシュリントン先生率いる先生方が在籍する事となります。イスレ山の一件から学園の知名度が一気に上昇して入学希望者が爆発的に増えてしまったので。」
「ああなんだ……そう言うことか。」
安心した。なーんだ、みんな一緒に移動するのならいいや。シュリントン先生はここに残るんだろうけど。ほっと一息ついて着席すると家森先生が微笑んだ。
「と言うことで、本校の学園長は僕になります。更に言ってしまえば理事は僕で副理事はベラになります。」
「あら、おめでとうございます。シュリントン先生は?」
「……ブラウンプラント校の校長です。」
そ、そっか……仕方ないかもしれない。いつも資料は家森先生任せだったし、ドラゴン事件の時に私とベラ先生を置いて門を閉めたからね。まあ……仕方ない。
「いつもはシュリントン先生がやってくれていたことを今度は僕とベラで行なっていくのですから、また一から学ぶことが増えますが、生徒たちの為です。骨を折る覚悟はあります。」
「じゃあ来年は少し忙しいかもしれませんね、でもシュリントン先生いなくても家森先生とベラ先生なら大丈夫だと……」
「しーっ。」
家森先生が口に人差し指を当ててそう言ったので、ちょっと笑ってしまった。そして彼は箸でお弁当の卵焼きを小さく割り、それを口に入れてから言った。
「ふふ、ですから我々は街に新しく建つ本校の寮で暮らすことになります。ヒーたんが望むのならその辺の家を借りてもいいですが、今度の職員寮はここよりも更に広いですよ。」
「そうなんですか!もうこの部屋でも二人で暮らすにしては広すぎる気がしますけど……でも寮でいいです。ベラ先生ともタライさんとも近いし。因みに彼らは……?」
私の聞きたい意味を理解してくれたのか、ははっと家森先生が白い歯を覗かせて笑って首を振った。
「彼らはまだ一緒には暮らさないようです。しかし……このようなメールを頂きました。」
「え?」
家森先生がテーブルの上の携帯を人差し指一本でくるりと回転させてから、私の前へと差し出してくれた。
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☆招待状☆
〜愛と魂の儀式〜
今日は楽しかったですね!
家森先生、ヒーたん!
明日は俺たちのパーティ!
場所はベラ様の部屋で、
俺たちの儀式を行うよ!
ごちそういっぱい
用意するから来てね!
てか、来なかったら
迎えに行くし〜!
時間は午前11時
ドレスコードはフォーマル
何か聞きたいことあったら
高崎までどしどしどすこい
タライ
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「……何これ。何このテンション。」
「ふふ、儀式をするようですね。参加をしなければ迎えに来るそうですし、参加するしかないようです。」
確かにそうだよね。私は笑いながら携帯を家森先生に返した。しかしドレスコードかぁ……フォーマルな服装じゃないとダメってことだよね。フォークで卵焼きを口に入れて、もぐもぐした後に彼に聞いた。
「欧介さんはどんな格好で行きますか?フォーマルかぁ……でも欧介さんなら普段と同じ格好でもいけそうですけど。」
「僕はそうですね……念の為、スーツを着て行きます。ヒーたんのドレスは無いので後で売店に買いに行きましょう。」
「ええ?いいのですか?」
「いいですとも。しかし僕がいないところでは着ないように。」
はい……分かりましたよ。相変わらずの家森先生の様子にちょっと笑いながら唐揚げを頬張っていると、家森先生の携帯がまた鳴ったのだった……なんか知らない間に人気者になってるじゃん。
私のプチヤキモチの視線に気づいたのか、携帯を確認終わった家森先生が、ふふと微笑んで私の頭を撫でてくれた。
「僕宛ではありませんよ。あなた宛です。」
「ええ?」
彼がまた携帯を私に向けてくれた。
____________
家森さん、こんばんは!
ドロシーです!
ヒイロが生還したって
ニュースで見ましたよ!
ああ、これは救われたと
思いました。何故なら、
もう俺はダスティさんに
見限られてしまったんだ。
今年で終わりだと思った
その時にこのニュース!
さあ、ヒイロ。
今こそその才能をさらに
俺と共に開花させるのだ。
そして地下世界に、
超新星のハーモニーを
轟かせ、人々に
歓喜の雷光を落とすのだ!
と言うことで、時間が
ある時に俺と会って。
さあ契約して。
ドロシー
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なんかすげぇ教祖様みたいなこと言ってきた……すごい来てほしい感じは伝わってきたし、ドロシーさんはどうしてるかなと少し思ってたところだったので嬉しかった。
「返事していいですか?」
「ええ、どうぞ。」
そう答えた家森先生がお弁当を食べ始めて、私は返事した。
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ヒイロです!
ありがとうございます!
契約したい……ですけど、
来期も街の学園本校で
学ぶことになりました。
でも作曲はしたいですけど
家森
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これでいいや。送信ボタンを押して数秒後に返事が来た。めっちゃ早い。
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来期も……?え?
は、は、分かった。
じゃあ来年は作曲だけ
お願いする。でも
その翌年はこっちに
来てね。それでいい?
とにかく会って、
契約してくれ。
もう干し肉しか食べるもの
無いよ。あと、
ジークも会いたいって。
ドロシー
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「欧介さん、」
「はい?」
「学園にいながら作曲ってしていいんですよね?でも契約したら就労規定引っかかりますか?」
家森先生が少し上を見て考えてから答えた。
「いえ、印税は大丈夫です。コンサートなど時間の制約が必要なものは出来ませんが。」
「分かりました。じゃあオッケーって送ろっと。来年で卒業しまーす……と。」
「……その後は作曲の活動のみを?」
すごく小さな声で聞いてきた。ドロシーさんに返事を打ちながら家森先生の顔を見ると、すごい真顔だったので思わず二度見してしまった。しかも若干脅しに入っている顔だった。
「そ、そうですとも?まあ卒業後はもしかしたらたまにコンサートを開くかも分からないですけど。それじゃあ、ダメですか?」
「いえ……それならいいです。」
ニコッと笑ってくれた。ああ良かった。学園を卒業してからのことが不安だったのね。そんなの心配しなくても私だって一緒にいたいですと思いつつ、ドロシーさんに了承の返事した。彼が干し肉しか食べてないことがちょっと心配なので、来年から頑張って彼と協力していこうと思った。
そしてお弁当を食べ終えた我々は、学園の売店で深緑色のドレスを買った。帰宅して初めて入る物置部屋の中で、そのドレスと以前合コンの時にウェイン先生のお金で買ったヒールを合わせてみたらいい感じになった。背中が開いていてちょっと派手かなと思ったけど、実際に着てみると意外と気にならなかった。全身鏡に映る自分に向かってバンバンと撃つ仕草をして、一人で笑ってしまった。
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