スカーレット、君は絶対に僕のもの
第50話 俺たちの頼み
「どうにかさ、してやろうよ。おかしいじゃんヒイロ……グフ」
炭酸水をガブガブ飲んだ後にゲップをしながらグレッグが言った。そんな具合であの才色兼備のマリーを狙っているんだからウケる。俺は笑いを漏らしながら床に座ってスナックを食べながら言った。
「おま、ゲップすんなよ!まあ確かにそうだけどさ……でもあの二人に何が起きてんのか分かんないもんな。」
俺のベッドに座っていたマーヴィンがごくっとジュースを飲んだ後に言った。
「うん。でもさ、分からねえものをどうするんだよ。ヒイロに何があったのか聞いたって話そうとしねえし。話そうとしない奴に無理矢理どうしたのか聞いたって仕方ないだろ。」
確かにそうかもしれないけど、どうにかならないのかな。俺は考え込んだけど、そのマーヴィンの言葉が気になったのか床に座ってたグレッグは眉間にしわを寄せながら立ち上がった。
「マーヴはヒイロのこと心配じゃねえのかよ!」
いきなり怒鳴られて反応したマーヴィンも勢いよく立ち上がってグレッグを睨んだ。
「ああ!?てめえ勘違いしてんじゃねえぞ!心配だけど本人がほっといて欲しかったら仕方ねえって意味だ!心当たりはあるけど……確かじゃねえし。」
「その心当たりってのを言えよ!あ!?」
「……。」
この二人はいつもすぐぶつかる……俺はため息交じりにバチバチを睨み合う二人の間に入って止めることにした。
「やめろって!……とにかくさ、誰かにヒイロを慰めてもらえばいいじゃん。タライさんとかさ……」
突然二人が可哀想な人を見るような目で俺のことを見てきた。どうしてこうなったのか、何が理由なのか見当も付かない。
「リュウお前、分かってないよ」
「え?」
はあ、と吐息を漏らすマーヴィンが黒の癖っ毛をかき上げながら言った。
「ここはあいつだろ?な、グレッグ」
「ああそうだな……正直あんなとこ行きたくねぇけど行くしかねえよ。」
「え?どこ行くの?どこ?」
俺の質問にどちらも答えてくれないまま俺たちは部屋を出た。
どこ行くのか……俺は疑問だらけのまま付いて行く。二人は校庭を通って校舎に入って2階まで階段を上った。ある部屋の前で立ち止まったグレッグが俺に向かって頷く。
「ここだよ」
「職員室じゃん……あ、そうかベラ先生か!」
なるほどね!と思った瞬間にマーヴィンにどつかれた。違うんだ……え?
グレッグがはあ〜〜〜と大きなため息の後に言う。
「違うんだよリュウ、頼むのはベラ先生でもないしここは職員室でもない。ここは拷問室なんだ。」
「え?」
「まじ俺、家森のせいで職員室恐怖症だからな……何度あいつにここで折檻されたか……やべえ吐きそうになってきた。」
まじでグレッグが青白くなってきた。俺はちょっと心配になって彼の背中をさすることにした。そ、そうなんだ……やっぱり家森先生に舐めた態度取るのはやめようと思ってしまいました。
「と、とにかく家森に頼むしかねぇだろ、ヒイロは家森のこと好きなんだからさ。」
「え!?なんで?」
マーヴィンの発言に俺が驚くと、マーヴィンがガラにもなく朗らかな表情になって首を振ってきた。
「詳しくは聞かないでくれ……とにかくヒイロも家森もお前達が思ってる以上に仲がいいんだよ……俺には分かる。分かるんだよ。それをお前達も分かるだろう?」
まるでこの世の理を全て理解している、ファンタジー映画に出てくる賢人様のように俺らに語りかけてきたマーヴィンの言ってる意味が何となく分かって、俺とグレッグが笑ってしまう。
なるほどな。マーヴィンの様子だと家森先生はヒイロの部屋に何度か遊びに来てたんだな……それ程に仲が良いのに、じゃあなんでマリーを選ぶのか。そう考えると確かにヒイロは元気なくて当然なのかもな。てかじゃあそれって股かけてる家森先生のせいじゃね?元気出させるって言ったって……
俺が考え事してる間に、変なタイミングでグレッグが職員室のドアをノックした。
ドォンドン!
ガラッ
「うるっさいわね!もう少し優しく叩きなさいと何度も言ったでしょう!?」
あ、ベラ先生だ。
「ベラ先生〜」
グレッグの野郎がデレデレし始めた。そうなるのも分かる。俺たちグリーンクラスの生徒はベラ先生が大好きだ。女としてじゃない。俺たちのことを家族以上に信じてくれる彼女が普通に大好きなんだ。だからグレッグもマーヴィンも俺も彼女にはデレデレしてしまうという訳さ。
「……あなたたち気持ち悪い表情しないでよ。それで何よ?何の用なの?」
そうやって他のクラスの生徒にはしないだろう、冷たい態度もちょっとグッとくる。それはみんな言ってたけれど、他のクラスの生徒には礼儀正しい態度なのに俺たちだけこうして冷たくするんだ。そう言ったら家森先生もそうかもしれないけど……オエエ。
「リュウ大丈夫?具合でも悪いから来たのかしら?」
「い、いや、違うんです……ね?グレッグ」
俺はそう言ってグレッグを見る。しかしグレッグも俺を見る。
「リュウ、お前言えよ。」
「え!?俺!?でもなんて言えばいいか分からないし……マーヴ言って。」
ああ!?とため息を漏らすマーヴィンが、ベラ先生に向かって言った。
「……はあ、仕方ねえな。家森先生いますか?」
「家森先生?なんで?え?」
ベラ先生がそういう反応をするのも分かる。俺らが職員室までやってきて、しかも家森先生を呼んでるんだからそんな奇跡に近いこと、彼女が想像出来ないのも分かる。俺はベラ先生に言った。
「……家森先生にどうしても。用事があるんです。」
「そ、そうなの……」
ベラ先生が思案顔になった。奥ではシュリントン先生がPCを見ながらドーナツ食べているのが見えた。このコーヒーと書類が混じったような独特な匂いも、やっぱちょっと苦手。
「……もしかして復讐に来たんじゃないわよね?」
ベラ先生の心配を俺たちは笑った。
「違いますって!本当に……な!リュウ、マーヴ。普通に用事があるので呼んでくれませんか?」
「そ、そう……家森先生に用事なのね。今夜は雪でも降るのかしら、初夏だけど……」
そう言いながら去って行ったベラ先生が奥で家森先生を呼んだ声が聞こえた。その間に俺はグレッグに聞く。
「おい、本当にこれでいいの?」
「いいんだよ!ヒイロは家森のこと好きなんだから。」
そうなのかもしれないけど……と思ってるとすぐに家森先生がやってきて、俺たちの前に立ちはだかった。
「何です?」
うっわ……機嫌わるっ……
眼鏡の奥の瞳が座ってて怖い。声も授業の時よりも低くて怖い。人に対してここまで怖いと思ったのは、俺が小さい頃、冷蔵庫に入ってたお惣菜のメンチカツを食べちゃった時に、母ちゃんがおこになって布団叩き片手にいつまでも俺のことを追いかけてきた時以来だ。
家森先生に対しての恐怖心を感じたのか、俺以外の二人も皆互いに目をチラチラ合わせている。特にグレッグは手も肩も震え始めている。俺はマーヴィンの耳元でかなりの小声で言うことにした……それでも家森先生には聞こえてるだろうけど。
「ちょっとさ、日を改めようよ。」
しかしマーヴィンが首を振る。
「もうほっとけないだろ。俺だって毎日もう……ほっとけない。言うしかねえ。」
そんなにヒイロのこと大事なのか……マーヴ。しかし何も話そうとしない俺たちにしびれを切らした家森先生が、白衣のポケットから青い懐中時計を取り出して時間を確認しながら言った。
「……何です?今時間があまり、「ヒイロの件です」
マーヴィンの言葉に家森先生が「え」と小さい声で反応する。マーヴィンは先生に言った。
「あいつ、最近朝から晩まで泣いてて……うるさいから、家森先生が慰めてあげてください。あいつは家森先生が好きだから。」
マーヴィンの言葉に家森先生が目を丸くした。そうか、そうだったな。隣の部屋だからヒイロが泣いてるの聞こえてるんだ。それで心当たりがあるって言ってたのか。でも家森先生はマリーを……うーん。
「……しかしそれは事実ではありません。もう僕は「事実ですよ」
さっきから食い気味に言うマーヴィン、それくらい伝えたいのかも。
「だって……はあ。いいですか?泣きながら、ああ〜会いたい〜家森先生〜びゃあああ〜もうドラゴンハンターに残ってない〜って訳の分からないこと朝から晩まで繰り返し言ってるんですよ?」
ヒイロの声真似をしながらマーヴィンが話した。まじかよ、そりゃあ心当たりありすぎだろうな。それを聞いた家森先生は何回も瞬きをして、戸惑いながら髪をかきあげて言う。
「そ、そうですか……頻繁にヒイロがそう泣いていると?」
マーヴィンがだからそうだよ、と意味を込めて何度も頷いた。
「そうそう、毎晩、毎朝。」
そっかと漏らしたグレッグが少し考えた表情の後に家森先生に向かって言った。
「……だから!家森……先生が慰めてあげてくださいよ!僕はヒイロが好きって言ってさ!だってデートしたいって、こないだ言ってたじゃないすか!」
「えええ!?」
職員室の奥の方からシュリントン先生の興奮気味の悲鳴が聞こえたあとすぐにベラ先生の声で、しーっ!と聞こえた。家森先生は振り返りもしないでため息をついた。
「……もう丸聞こえですね、はは。とにかく実はそろそろヒイロを訪ねようと思っていたところでした……調べ物も完了したことですし。」
『調べ物?』
俺たちの声が重なってしまった。
「いえ、こちらの話です。さあ行きましょうか。」
うぃっす!と反応する俺らと共に、グリーン寮へ向かって家森先生が歩き始めた。よかったよかった、これで何とか話し合って……ヒイロが少しでも元気になってくれないと、授業だってゲームだってつまんないままだしな。
炭酸水をガブガブ飲んだ後にゲップをしながらグレッグが言った。そんな具合であの才色兼備のマリーを狙っているんだからウケる。俺は笑いを漏らしながら床に座ってスナックを食べながら言った。
「おま、ゲップすんなよ!まあ確かにそうだけどさ……でもあの二人に何が起きてんのか分かんないもんな。」
俺のベッドに座っていたマーヴィンがごくっとジュースを飲んだ後に言った。
「うん。でもさ、分からねえものをどうするんだよ。ヒイロに何があったのか聞いたって話そうとしねえし。話そうとしない奴に無理矢理どうしたのか聞いたって仕方ないだろ。」
確かにそうかもしれないけど、どうにかならないのかな。俺は考え込んだけど、そのマーヴィンの言葉が気になったのか床に座ってたグレッグは眉間にしわを寄せながら立ち上がった。
「マーヴはヒイロのこと心配じゃねえのかよ!」
いきなり怒鳴られて反応したマーヴィンも勢いよく立ち上がってグレッグを睨んだ。
「ああ!?てめえ勘違いしてんじゃねえぞ!心配だけど本人がほっといて欲しかったら仕方ねえって意味だ!心当たりはあるけど……確かじゃねえし。」
「その心当たりってのを言えよ!あ!?」
「……。」
この二人はいつもすぐぶつかる……俺はため息交じりにバチバチを睨み合う二人の間に入って止めることにした。
「やめろって!……とにかくさ、誰かにヒイロを慰めてもらえばいいじゃん。タライさんとかさ……」
突然二人が可哀想な人を見るような目で俺のことを見てきた。どうしてこうなったのか、何が理由なのか見当も付かない。
「リュウお前、分かってないよ」
「え?」
はあ、と吐息を漏らすマーヴィンが黒の癖っ毛をかき上げながら言った。
「ここはあいつだろ?な、グレッグ」
「ああそうだな……正直あんなとこ行きたくねぇけど行くしかねえよ。」
「え?どこ行くの?どこ?」
俺の質問にどちらも答えてくれないまま俺たちは部屋を出た。
どこ行くのか……俺は疑問だらけのまま付いて行く。二人は校庭を通って校舎に入って2階まで階段を上った。ある部屋の前で立ち止まったグレッグが俺に向かって頷く。
「ここだよ」
「職員室じゃん……あ、そうかベラ先生か!」
なるほどね!と思った瞬間にマーヴィンにどつかれた。違うんだ……え?
グレッグがはあ〜〜〜と大きなため息の後に言う。
「違うんだよリュウ、頼むのはベラ先生でもないしここは職員室でもない。ここは拷問室なんだ。」
「え?」
「まじ俺、家森のせいで職員室恐怖症だからな……何度あいつにここで折檻されたか……やべえ吐きそうになってきた。」
まじでグレッグが青白くなってきた。俺はちょっと心配になって彼の背中をさすることにした。そ、そうなんだ……やっぱり家森先生に舐めた態度取るのはやめようと思ってしまいました。
「と、とにかく家森に頼むしかねぇだろ、ヒイロは家森のこと好きなんだからさ。」
「え!?なんで?」
マーヴィンの発言に俺が驚くと、マーヴィンがガラにもなく朗らかな表情になって首を振ってきた。
「詳しくは聞かないでくれ……とにかくヒイロも家森もお前達が思ってる以上に仲がいいんだよ……俺には分かる。分かるんだよ。それをお前達も分かるだろう?」
まるでこの世の理を全て理解している、ファンタジー映画に出てくる賢人様のように俺らに語りかけてきたマーヴィンの言ってる意味が何となく分かって、俺とグレッグが笑ってしまう。
なるほどな。マーヴィンの様子だと家森先生はヒイロの部屋に何度か遊びに来てたんだな……それ程に仲が良いのに、じゃあなんでマリーを選ぶのか。そう考えると確かにヒイロは元気なくて当然なのかもな。てかじゃあそれって股かけてる家森先生のせいじゃね?元気出させるって言ったって……
俺が考え事してる間に、変なタイミングでグレッグが職員室のドアをノックした。
ドォンドン!
ガラッ
「うるっさいわね!もう少し優しく叩きなさいと何度も言ったでしょう!?」
あ、ベラ先生だ。
「ベラ先生〜」
グレッグの野郎がデレデレし始めた。そうなるのも分かる。俺たちグリーンクラスの生徒はベラ先生が大好きだ。女としてじゃない。俺たちのことを家族以上に信じてくれる彼女が普通に大好きなんだ。だからグレッグもマーヴィンも俺も彼女にはデレデレしてしまうという訳さ。
「……あなたたち気持ち悪い表情しないでよ。それで何よ?何の用なの?」
そうやって他のクラスの生徒にはしないだろう、冷たい態度もちょっとグッとくる。それはみんな言ってたけれど、他のクラスの生徒には礼儀正しい態度なのに俺たちだけこうして冷たくするんだ。そう言ったら家森先生もそうかもしれないけど……オエエ。
「リュウ大丈夫?具合でも悪いから来たのかしら?」
「い、いや、違うんです……ね?グレッグ」
俺はそう言ってグレッグを見る。しかしグレッグも俺を見る。
「リュウ、お前言えよ。」
「え!?俺!?でもなんて言えばいいか分からないし……マーヴ言って。」
ああ!?とため息を漏らすマーヴィンが、ベラ先生に向かって言った。
「……はあ、仕方ねえな。家森先生いますか?」
「家森先生?なんで?え?」
ベラ先生がそういう反応をするのも分かる。俺らが職員室までやってきて、しかも家森先生を呼んでるんだからそんな奇跡に近いこと、彼女が想像出来ないのも分かる。俺はベラ先生に言った。
「……家森先生にどうしても。用事があるんです。」
「そ、そうなの……」
ベラ先生が思案顔になった。奥ではシュリントン先生がPCを見ながらドーナツ食べているのが見えた。このコーヒーと書類が混じったような独特な匂いも、やっぱちょっと苦手。
「……もしかして復讐に来たんじゃないわよね?」
ベラ先生の心配を俺たちは笑った。
「違いますって!本当に……な!リュウ、マーヴ。普通に用事があるので呼んでくれませんか?」
「そ、そう……家森先生に用事なのね。今夜は雪でも降るのかしら、初夏だけど……」
そう言いながら去って行ったベラ先生が奥で家森先生を呼んだ声が聞こえた。その間に俺はグレッグに聞く。
「おい、本当にこれでいいの?」
「いいんだよ!ヒイロは家森のこと好きなんだから。」
そうなのかもしれないけど……と思ってるとすぐに家森先生がやってきて、俺たちの前に立ちはだかった。
「何です?」
うっわ……機嫌わるっ……
眼鏡の奥の瞳が座ってて怖い。声も授業の時よりも低くて怖い。人に対してここまで怖いと思ったのは、俺が小さい頃、冷蔵庫に入ってたお惣菜のメンチカツを食べちゃった時に、母ちゃんがおこになって布団叩き片手にいつまでも俺のことを追いかけてきた時以来だ。
家森先生に対しての恐怖心を感じたのか、俺以外の二人も皆互いに目をチラチラ合わせている。特にグレッグは手も肩も震え始めている。俺はマーヴィンの耳元でかなりの小声で言うことにした……それでも家森先生には聞こえてるだろうけど。
「ちょっとさ、日を改めようよ。」
しかしマーヴィンが首を振る。
「もうほっとけないだろ。俺だって毎日もう……ほっとけない。言うしかねえ。」
そんなにヒイロのこと大事なのか……マーヴ。しかし何も話そうとしない俺たちにしびれを切らした家森先生が、白衣のポケットから青い懐中時計を取り出して時間を確認しながら言った。
「……何です?今時間があまり、「ヒイロの件です」
マーヴィンの言葉に家森先生が「え」と小さい声で反応する。マーヴィンは先生に言った。
「あいつ、最近朝から晩まで泣いてて……うるさいから、家森先生が慰めてあげてください。あいつは家森先生が好きだから。」
マーヴィンの言葉に家森先生が目を丸くした。そうか、そうだったな。隣の部屋だからヒイロが泣いてるの聞こえてるんだ。それで心当たりがあるって言ってたのか。でも家森先生はマリーを……うーん。
「……しかしそれは事実ではありません。もう僕は「事実ですよ」
さっきから食い気味に言うマーヴィン、それくらい伝えたいのかも。
「だって……はあ。いいですか?泣きながら、ああ〜会いたい〜家森先生〜びゃあああ〜もうドラゴンハンターに残ってない〜って訳の分からないこと朝から晩まで繰り返し言ってるんですよ?」
ヒイロの声真似をしながらマーヴィンが話した。まじかよ、そりゃあ心当たりありすぎだろうな。それを聞いた家森先生は何回も瞬きをして、戸惑いながら髪をかきあげて言う。
「そ、そうですか……頻繁にヒイロがそう泣いていると?」
マーヴィンがだからそうだよ、と意味を込めて何度も頷いた。
「そうそう、毎晩、毎朝。」
そっかと漏らしたグレッグが少し考えた表情の後に家森先生に向かって言った。
「……だから!家森……先生が慰めてあげてくださいよ!僕はヒイロが好きって言ってさ!だってデートしたいって、こないだ言ってたじゃないすか!」
「えええ!?」
職員室の奥の方からシュリントン先生の興奮気味の悲鳴が聞こえたあとすぐにベラ先生の声で、しーっ!と聞こえた。家森先生は振り返りもしないでため息をついた。
「……もう丸聞こえですね、はは。とにかく実はそろそろヒイロを訪ねようと思っていたところでした……調べ物も完了したことですし。」
『調べ物?』
俺たちの声が重なってしまった。
「いえ、こちらの話です。さあ行きましょうか。」
うぃっす!と反応する俺らと共に、グリーン寮へ向かって家森先生が歩き始めた。よかったよかった、これで何とか話し合って……ヒイロが少しでも元気になってくれないと、授業だってゲームだってつまんないままだしな。
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