スカーレット、君は絶対に僕のもの
第32話 ヒイロの部屋
ついに私の体は元通りになり、医務室から出ることをウェイン先生と家森先生から許可された。久しぶりの外の空気!久しぶりの私のグリーン寮のボロい部屋に帰ってくると心が休まる感じがした。
「ああ〜〜」
そうそうそうなんだよね、この床も窓もドアも家森先生が直してくれたのだ。家森先生と言えば医務室にいる間は本当によくしてくれた。感謝しかない。みんなにも感謝しているけど、特にずっと付き添って助けてくれたのは彼だった。
それにあの後タライさんと家森先生が仲直りしてくれて、しかも彼女さんのことを一緒に内緒にしてくれると言ってくれたみたいだし。やはり家森先生はいい人だと思った。
私はピカピカに修復された床をじっと見ながらそんなことを考えていた。いつの間にか家森先生は近くにいてくれた。そして私は多分家森先生のことが好きだと思う。それが先生としてではなくて、多分恋愛的な感情だと思う。彼を思い出すと胸が熱くなるので。
そうとなれば恋愛の仕方を学ばないといけない……私はバッグからPCを取り出してテーブルの上に置いて早速ドラマチャンネルを観ることにした。
するとその時だった。
トントトン
ドアがノックされた。お隣のマーヴィン……?はもっと荒々しいノックだし、タライさんはいつもメールしてから来るし、誰だろう。
「はーい」
「あ、僕です。」
……家森先生だった。
この休日に、私に何の用事があるのだろうか。まあちょっと嬉しいけど、でも今朝も医務室から出るときに会ったばかりなのに、もう会いにくるとは思わなかった。白衣は無くシャツにジレの姿の彼は、私の部屋に入ると辺りを見回しながら言った。
「久しぶりの部屋ですね、ああ」
「どうしたんですか?急に」
もうこの部屋にも慣れた様子で私のベッドに座った家森先生が、私にそう質問されると少し戸惑った表情で私をじっと見つめてきた。
「……何があったと言う訳ではありませんが。それではいけませんか?来ては。」
いけなくはないのだ。しかし実は明日、タライさんと初めて街へ行く予定がある。その準備を少ししたいとは思っている……けどまた何故か誤解されると大変だからな、そのことは黙っていることにした。冷蔵庫からさっき買ったばかりの麦茶をグラスに入れて先生に渡す。
「お茶どうぞ。別に来ても大丈夫ですよ。私はお友達が少ないので予定もそんなにないですし……ははっ」
「お茶どうも。いえ、ヒイ……ロにはジョンやエレン、高崎もいますしグリーンクラスですとお隣の部屋のマーヴィンやグレッグとも仲がよろしいようで。」
ヒイの後にちょっと間が開いたのも、私の交友関係を的確に把握しているのも結構疑問に感じているけど、まあそれだけ気にしてくれているんだと思うと少し嬉しかった。私は椅子に座って折角来てくれた家森先生と話すことにした。
「まあ確かにそう言われてみると、ここに来てから友達増えました。」
家森先生がじっと私のことを見つめながら聞いた。
「ヒイ……ロはここに来る以前はどこに住んでいたのでしょうか?」
げっ……その話題はまずい。後やっぱりヒイ…ってなるのは何でなの?いやいや、これはまずい話題の流れだ。何か、何か話題は無いものか。あ!そうだ、聞き返せばいいんだ!
「家森先生はどこの……」
と言ったところで以前食事会の時に出身地を聞いたことを思い出した。それを先生も思ったのか首を傾げながら私を見てくる。
「僕は先日も話した通り地上の出身ですし、家族でこちらに来てからは灯の雪原に住んでいました。あなたはどちらの出身ですか?」
げっ……やばい。手がガクガク震える。何とか何か言わないと。
「そうですよね、先生が灯の雪原に住んでいたことを前も聞きましたね。は、はは。私ですか?私は大したところの出身じゃないですよ!」
よし!これでいいだろう!しかし先生は微笑んでから聞き返してきた。
「ふふ、となると街以外ですか?山林や南の島にも住宅街はありますが、そのいずれかでしょうか?」
「家森先生」
「はい?」
「……恋の話しません?」
これしかない。食事会の時もノリノリで話していたように、きっとこの話題なら食いつくだろう!すると案の定家森先生はニヤリとした後にお茶を一口飲みながら私を見つめてきた。
「恋の話ですか……それではあなたの初恋の話を聞かせてください。」
げっ……何故そうなる!私は何とか悟られないように口を尖らせながら話した。
「そんなことより、家森先生の話が聞きたいです。」
すると先生は眉間にしわを寄せた。
「しかし先ほどからヒイ……ロは自分のことを僕に話そうとしない。それはどうして?」
「ちょっと待ってください、さっきからどうしてヒイ……ロと間を開けて言うんですか?」
私が我慢出来ずに聞くと、家森先生が視線を逸らしてボソッと声を漏らした。
「……高崎はあなたのことをヒイロとは呼びませんね?」
「まあ、最近はそうかもですね。それがどうしました?」
「……。」
じっと家森先生が私を見つめてくるし彼の頬は紅く染まっている。
……ああ、なるほど。分かりました。多分そうなのね。
「先生もよかったら……みんなの前だと恥ずかしいので、二人の時はヒーちゃんでも何でもいいですけど。」
家森先生の顔がパッと明るくなった。
「そうですか!なら二人の時は……ヒーちゃんと呼びます。ふふ」
笑顔で見つめてくる先生。可愛いと思う反面、タライさんへの態度とのギャップが凄すぎてちょっと考えさせられる。しかしこれはチャンスだ。話題をどんどん変えていこう。
「家森先生は、今好きな人いないんですか?」
「えっ……」
ちょっと唐突すぎた話題だったかな?話題を変えることだけに集中してしまった。家森先生はというとグラスをもう一度口に近づけながら小声で言った。
「いることはいますが、僕は教師の仕事を集中すべきだと思いませんか?」
何でそれを私に聞いてきたんだろう。そっか……でもいるんだ!そう言うってことは相手は生徒なんだ!ああ、きっとマリーだろうな。昨日も授業の後に廊下を歩きながら仲良さげに話していたってタライさんが言ってたし。私はそっか、と漏らした後に言った。
「まあ、先生も恋する時は恋しますよね。ちなみにマリーですか?内緒にするので。」
「え?……ああうーん。」
何その反応。家森先生はちょっと笑いながら天井を見つめている。
それって結構図星なんじゃない!?はああ、ちょっとショックだけど分かってたけどショック。そっか……でも先生からは話しづらいよね、私からどうにか話さないと。
「いいんですよマリーと……ふふっ、したんでしょう?」
そうだよ、だってタライさんが言ってたもん。男女が部屋で二人っきりですることを先生とマリーはしたって。しかし家森先生はぽかんとした表情をしている。
「え?僕が?マリーと?それはなぜ……」
私は身を乗り出しながら小声で先生に話すようにすると、先生も身を乗り出して話を聞いた。
「別にいいんですよ、やってたって誰も責めたりしませんから。タライさんが家森先生とマリーはやっただろうって。でも別にしてたっていいじゃないですか。」
すると家森先生は片手で頭を抱えた。
「まあ、決まりとしてはそうですが僕はマリーとしていませんよ……全く高崎は適当なことばかり仮説を立てるのですから困ったものですね」
そうだったんだ……してないのか。ふうん、と頷く私に先生が身を乗り出した姿勢のまま聞いてきた。
「その……気に障りましたら謝りますが、こんなことを生徒であるあなたに聞くのも気がひけるのですが……いえ、これはやはりやめておきましょう」
ああ、なるほど。私のことを聞きたいんだ!私は笑顔で答えた。
「え?ああ、私ですか?ジョンやリュウとしたことがありますよ!」
「えっ!?え!?」
そんなに驚くことかね?先生はそれはもう目も口も開きっぱなしになっている。私は初めて見る家森先生の表情を見て、つい笑ってしまった。
「はっはっは!そんなに驚くことじゃないでしょう?先生ったら大げさなんだから!リュウはアレでしたけどジョンはとっても上手でした!もう的確に弱点を攻撃してくるんですよ!あ、そうだタライさんともしました!もう彼はベテランです!」
しかし先生のテンションは落ちたままだ。あれ?
「何故……そんなにも笑顔で話すのですか?……そうですか。そうでしたか。僕が言える立場ではないとは思いますが、あなたがそこまでの人だとは思いませんでした。すみませんが少し考える時間を頂きたい……今日はこれで失礼します。」
すると先生はベッドから立ち上がってテーブルにグラスを置いて、スタスタと部屋を出て言ってしまった。
あれ?突然そんなに怒ることだったのかな。そんなにゲームってやっちゃダメなことだったんだろうか……でもみんなしているし。
また先生が怒った理由が分からない。もう、どうしたらいいのか、分からなくなった。
「ああ〜〜」
そうそうそうなんだよね、この床も窓もドアも家森先生が直してくれたのだ。家森先生と言えば医務室にいる間は本当によくしてくれた。感謝しかない。みんなにも感謝しているけど、特にずっと付き添って助けてくれたのは彼だった。
それにあの後タライさんと家森先生が仲直りしてくれて、しかも彼女さんのことを一緒に内緒にしてくれると言ってくれたみたいだし。やはり家森先生はいい人だと思った。
私はピカピカに修復された床をじっと見ながらそんなことを考えていた。いつの間にか家森先生は近くにいてくれた。そして私は多分家森先生のことが好きだと思う。それが先生としてではなくて、多分恋愛的な感情だと思う。彼を思い出すと胸が熱くなるので。
そうとなれば恋愛の仕方を学ばないといけない……私はバッグからPCを取り出してテーブルの上に置いて早速ドラマチャンネルを観ることにした。
するとその時だった。
トントトン
ドアがノックされた。お隣のマーヴィン……?はもっと荒々しいノックだし、タライさんはいつもメールしてから来るし、誰だろう。
「はーい」
「あ、僕です。」
……家森先生だった。
この休日に、私に何の用事があるのだろうか。まあちょっと嬉しいけど、でも今朝も医務室から出るときに会ったばかりなのに、もう会いにくるとは思わなかった。白衣は無くシャツにジレの姿の彼は、私の部屋に入ると辺りを見回しながら言った。
「久しぶりの部屋ですね、ああ」
「どうしたんですか?急に」
もうこの部屋にも慣れた様子で私のベッドに座った家森先生が、私にそう質問されると少し戸惑った表情で私をじっと見つめてきた。
「……何があったと言う訳ではありませんが。それではいけませんか?来ては。」
いけなくはないのだ。しかし実は明日、タライさんと初めて街へ行く予定がある。その準備を少ししたいとは思っている……けどまた何故か誤解されると大変だからな、そのことは黙っていることにした。冷蔵庫からさっき買ったばかりの麦茶をグラスに入れて先生に渡す。
「お茶どうぞ。別に来ても大丈夫ですよ。私はお友達が少ないので予定もそんなにないですし……ははっ」
「お茶どうも。いえ、ヒイ……ロにはジョンやエレン、高崎もいますしグリーンクラスですとお隣の部屋のマーヴィンやグレッグとも仲がよろしいようで。」
ヒイの後にちょっと間が開いたのも、私の交友関係を的確に把握しているのも結構疑問に感じているけど、まあそれだけ気にしてくれているんだと思うと少し嬉しかった。私は椅子に座って折角来てくれた家森先生と話すことにした。
「まあ確かにそう言われてみると、ここに来てから友達増えました。」
家森先生がじっと私のことを見つめながら聞いた。
「ヒイ……ロはここに来る以前はどこに住んでいたのでしょうか?」
げっ……その話題はまずい。後やっぱりヒイ…ってなるのは何でなの?いやいや、これはまずい話題の流れだ。何か、何か話題は無いものか。あ!そうだ、聞き返せばいいんだ!
「家森先生はどこの……」
と言ったところで以前食事会の時に出身地を聞いたことを思い出した。それを先生も思ったのか首を傾げながら私を見てくる。
「僕は先日も話した通り地上の出身ですし、家族でこちらに来てからは灯の雪原に住んでいました。あなたはどちらの出身ですか?」
げっ……やばい。手がガクガク震える。何とか何か言わないと。
「そうですよね、先生が灯の雪原に住んでいたことを前も聞きましたね。は、はは。私ですか?私は大したところの出身じゃないですよ!」
よし!これでいいだろう!しかし先生は微笑んでから聞き返してきた。
「ふふ、となると街以外ですか?山林や南の島にも住宅街はありますが、そのいずれかでしょうか?」
「家森先生」
「はい?」
「……恋の話しません?」
これしかない。食事会の時もノリノリで話していたように、きっとこの話題なら食いつくだろう!すると案の定家森先生はニヤリとした後にお茶を一口飲みながら私を見つめてきた。
「恋の話ですか……それではあなたの初恋の話を聞かせてください。」
げっ……何故そうなる!私は何とか悟られないように口を尖らせながら話した。
「そんなことより、家森先生の話が聞きたいです。」
すると先生は眉間にしわを寄せた。
「しかし先ほどからヒイ……ロは自分のことを僕に話そうとしない。それはどうして?」
「ちょっと待ってください、さっきからどうしてヒイ……ロと間を開けて言うんですか?」
私が我慢出来ずに聞くと、家森先生が視線を逸らしてボソッと声を漏らした。
「……高崎はあなたのことをヒイロとは呼びませんね?」
「まあ、最近はそうかもですね。それがどうしました?」
「……。」
じっと家森先生が私を見つめてくるし彼の頬は紅く染まっている。
……ああ、なるほど。分かりました。多分そうなのね。
「先生もよかったら……みんなの前だと恥ずかしいので、二人の時はヒーちゃんでも何でもいいですけど。」
家森先生の顔がパッと明るくなった。
「そうですか!なら二人の時は……ヒーちゃんと呼びます。ふふ」
笑顔で見つめてくる先生。可愛いと思う反面、タライさんへの態度とのギャップが凄すぎてちょっと考えさせられる。しかしこれはチャンスだ。話題をどんどん変えていこう。
「家森先生は、今好きな人いないんですか?」
「えっ……」
ちょっと唐突すぎた話題だったかな?話題を変えることだけに集中してしまった。家森先生はというとグラスをもう一度口に近づけながら小声で言った。
「いることはいますが、僕は教師の仕事を集中すべきだと思いませんか?」
何でそれを私に聞いてきたんだろう。そっか……でもいるんだ!そう言うってことは相手は生徒なんだ!ああ、きっとマリーだろうな。昨日も授業の後に廊下を歩きながら仲良さげに話していたってタライさんが言ってたし。私はそっか、と漏らした後に言った。
「まあ、先生も恋する時は恋しますよね。ちなみにマリーですか?内緒にするので。」
「え?……ああうーん。」
何その反応。家森先生はちょっと笑いながら天井を見つめている。
それって結構図星なんじゃない!?はああ、ちょっとショックだけど分かってたけどショック。そっか……でも先生からは話しづらいよね、私からどうにか話さないと。
「いいんですよマリーと……ふふっ、したんでしょう?」
そうだよ、だってタライさんが言ってたもん。男女が部屋で二人っきりですることを先生とマリーはしたって。しかし家森先生はぽかんとした表情をしている。
「え?僕が?マリーと?それはなぜ……」
私は身を乗り出しながら小声で先生に話すようにすると、先生も身を乗り出して話を聞いた。
「別にいいんですよ、やってたって誰も責めたりしませんから。タライさんが家森先生とマリーはやっただろうって。でも別にしてたっていいじゃないですか。」
すると家森先生は片手で頭を抱えた。
「まあ、決まりとしてはそうですが僕はマリーとしていませんよ……全く高崎は適当なことばかり仮説を立てるのですから困ったものですね」
そうだったんだ……してないのか。ふうん、と頷く私に先生が身を乗り出した姿勢のまま聞いてきた。
「その……気に障りましたら謝りますが、こんなことを生徒であるあなたに聞くのも気がひけるのですが……いえ、これはやはりやめておきましょう」
ああ、なるほど。私のことを聞きたいんだ!私は笑顔で答えた。
「え?ああ、私ですか?ジョンやリュウとしたことがありますよ!」
「えっ!?え!?」
そんなに驚くことかね?先生はそれはもう目も口も開きっぱなしになっている。私は初めて見る家森先生の表情を見て、つい笑ってしまった。
「はっはっは!そんなに驚くことじゃないでしょう?先生ったら大げさなんだから!リュウはアレでしたけどジョンはとっても上手でした!もう的確に弱点を攻撃してくるんですよ!あ、そうだタライさんともしました!もう彼はベテランです!」
しかし先生のテンションは落ちたままだ。あれ?
「何故……そんなにも笑顔で話すのですか?……そうですか。そうでしたか。僕が言える立場ではないとは思いますが、あなたがそこまでの人だとは思いませんでした。すみませんが少し考える時間を頂きたい……今日はこれで失礼します。」
すると先生はベッドから立ち上がってテーブルにグラスを置いて、スタスタと部屋を出て言ってしまった。
あれ?突然そんなに怒ることだったのかな。そんなにゲームってやっちゃダメなことだったんだろうか……でもみんなしているし。
また先生が怒った理由が分からない。もう、どうしたらいいのか、分からなくなった。
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