浮遊図書館の魔王様

るーるー

第104話 知らないとこで口論荒れていました



「いろいろとありましたが最後はポンバドゥール様です」
「はいはーい」


 ウサギ仮面の言葉にポンパドゥールは軽く返事を返した。


「……私みたいにきっとこいつにもスキャンダルがあるはず」


 落ち着きを取り戻したハピナスがイライラした様子でボソリと呟く。
 先程アイドル的活動が暴露されたことを根に持っているようだ。


「はっはっは、私にはなんにもスキャンダルなんてないよ?」


 快活に笑うポンパドゥールだがウサギ仮面は手元の紙を見て首を傾げる。


「ポイントは28000。しかしポンパドゥール様の所は勇者が堕ちたと聞きましたが?」
「「「「一番のスキャンダルじゃない⁉︎」」」」


 今日一番の女神たちの大声が響く。


「まぁね。流石に適当に作った勇者じゃだめだったね」


 カラカラとポンパドゥールは笑う。
 そんなポンパドゥールをラヴリが睨みつける。


「ポンパドゥール、あなた勇者が堕ちるってどういうことかわかってるの?」


 勇者は女神の一部の力を授かった言わば女神の代行者だ。その代行者が負けるということは女神が負けたということに他ならないのだ。


「そんなことはわかってるよ」
「何か理由があったの?」


 カナエが不思議そうに尋ねる。
 ポンパドゥールは馬鹿ではない。愉悦の女神と呼ばれるがゆえに楽しいことに目がないのは確かだがそれでも無謀なことはしない頭を使って楽しむタイプだ。
 そんな女神があっさりと勇者が倒されたことにカナエは疑問を持っているのだ。


「簡単なことだよ」


 ポンパドゥールは気楽そうにかつ楽しげに紅茶の入ったカップに口付ける。


「いや、私の管轄内に新しい魔王が現れてさ~ あっさり勇者倒されちゃったんだよ」
「「「新しい魔王?」」」
「あれ? 言ってなかった?」
「言ってないわよ」


 訝しげな表情を浮かべながら女神の視線がポンパドゥールを射抜くが彼女は全く気にも留めない。


「あんなにあっさりと負けるとは思ってなかったんだよ」
「加護などは与えていたのでしょう?」
「いや、全然」
「馬鹿ね! 加護も与えずに魔王のとこに送るなんて!」
「……タルメアに馬鹿と言われるのがこんなにむかつくとはね」


 馬鹿にするような視線を受けポンパドゥールは額に青筋を浮かべる。


「しかし、もし魔王ならば新たな魔王が生まれたことになり現状四人の魔王が人界にいることになりますね」
「……確かに」
「今までの魔王三体はなんとかなっていますが、ここに新たな魔王が加わるとなると勢力図が変わるわ」


 各女神たちが意見を出し合い始めたのを待っていたかのようにウサギ仮面は一歩前に出る。


「ようやく僕が提案したい案件に行き着きました」


 ウサギ仮面は仮面が着いているはずだが安堵の表情を浮かべているように見えた。


「僕が提案したい議案はこちら」


 ウサギ仮面が手を翳すと先程までポンパドゥールが使っていた映像が映る球体が再び現れる。


『もう〜いくら私が可愛いからって惚れちゃダメなんだぞ☆』
「ガハァ!」


 再び球体にヒラヒラの服を着たハピるんが現れそれを見たハピナスが吐血しながら机に突っ伏した。


「わざとだな」
「わざとね」
「いい衣装だわ!」
「わざとよね」


 机に突っ伏すハピナスと衣装に夢中なタルメア以外の女神が型を震わしているウサギ仮面に視線を向ける。視線を向けられていることに気づいたウサギ仮面は咳払いをしつつ球体に映るハピるんを消すし新たな映像を映し出した。


「この少女こそがファンガルム皇国を半壊まで追い込んだ新たに誕生した魔王レクレ・フィンブルノです」


 そう言い映し出されたレクレの映像は盛大にこけてそこいら中の物をばら撒いているものだった。


「「「「え、弱そう」」」」


 女神が声を合わせた。
 確かにこんな映像を見せられたら強そうには見えないだろう。


「まぁ、手に入った映像というのがこれしかないのでなんとも言えませんが空飛ぶ城を保有し幾つものオリジナル魔法までも作り出す恐ろしい敵です」
「とてもそうは見えないんだけど……」


 カナエが首を傾げながら疑いの目を向けるがウサギ仮面は話を続ける。


「さらに彼女の眷属と呼べる獣人種の四姉妹。彼女らも恐ろしいまでの戦闘力を秘めています。そちらのほうは映像が手に入らなかったのですが」
「獣人種の映像なんていらないわ」


 嫌悪感を隠そうともせずにラヴリが吐き捨てる。


「そんな魔王レクレと対面した人からの貴重なインタビューがあります。本人のプライバシーのために顔と音声は変えております」
「……無駄に細かい」


 さらに球体を操りウサギ仮面は新たな映像を映し出した。
 やたらとモザイクがかかった映像だ。


「イヤーアイツハアクマノヨウナヤツデネワシノムスメをカッサラッテイッタンダヨ!」
「「「「ちょっと待て!」」」」
「はい? 何か?」


 甲高い声に変換された声が流れ映像が映し出された瞬間に女神全員からツッコミが入った。ウサギ仮面は疑問の表情? かどうかはわからない仮面を女神に向けながら訪ねた。


「モザイクの位置おかしいだろ!」


 ポンパドゥールが指摘したのは映像に映し出されたモザイクの位置だ。


「何か問題が?」
「大有りだ! 普通プライバシー守るとかほざくなら顔を隠せ! 顔を!」


 ポンパドゥールが指摘しているモザイクの位置は明らかにファンガルム王とわかる映像で彼の顔以外・ ・・・ ・全てにモザイクがかかっていたのだ。怪しいことこの上なかった。


「いや、編集とかよくわからなかったから適当にしたらああなりまして……」
「このオッさんこんな気持ち悪い体してるの? 気持ち悪い!」


 原理を理解していないタルメアは毒を吐く。


「あと、顔だけ見えてる状態でこんなに甲高い声はちょっと……」


 何故かカナエは口元を着物で押さえながら汚物を見るような目で映像を見ていた。


「……わかりました」


 せっかく用意した物をいろいろと言われたせいか若干しょんぼりしながら映像を消したウサギ仮面がコホンと咳払いを行う。


「さて、先ほどの映像でいかにかの魔王が危険かわかっていただいたかと思いますが」
「「「「どこで⁉︎」」」」


 再び女神全員がツッコミを入れたのだった。

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