浮遊図書館の魔王様

るーるー

第95話 美を語られました。

 


「うん?お前もなかなかの逸材! 切らしてくれるか? 服を!」
「いや、猟奇発言の後に変態発言されても誰もはいとは言わないと思うよ?」


 変質者が鋏をチョキチョキと音を鳴らしながらわたしのほうに向き構えをとる。


「さぁ! レクレ! ケチョンケチョンにしてあげなさい!」


 カハネルが胸元を隠しながら喚いてる。
 なら自分でやればいいのに。


「とりあえず捕まってくれない? えっとジャックさん?」
「それはできぬ相談だ。俺はまだ究極の美を堪能していないのだから」
「究極の美?」
「そうだ! 服を切られ恥じらいながらも見える肢体! そこに感じる美! 全裸ではなく見えそうで見えないもの! それが古代の人が求めた究極の美! その名も」


 変実者ジャックは一旦そこで言葉をきり大袈裟に両手を空に向かい広げた。


「チラリィィィィィィィズムゥゥゥ!」


 本人的にはなんらかの効果音がなっているポージングなんだろう。鳴ってはいないが。


火魔法ファイアーボール


 ため息を尽きながら軽い気持ちで火魔法ファイアーボール変実者ジャックに向かい放った。
 なにもしなければ火魔法ファイアーボールは一直線にポージングをとる変質者ジャックに直撃するだろう。


「人の話を遮るでない!」


 恍惚の表情を浮かべていた変質者ジャックがカッ! と目を見開き怒鳴る。
 両の腕が目に映らないほど高速に動き、火魔法ファイアーボールが消失。


「な⁉︎」


 驚きの声を上げた。
 両の手を胸の前で交差さした状態の変質者ジャックは傷一つない姿でたっていた。
 変質者ジャックが左右の手に持つ鋏から異様な魔力? というか呪いみたいな物を感じるし。
 あの鋏で魔法で幾重にも切り裂いたのだろう。


「お前もチラリズムにしてやろうか!」
「結構です!」


 あいも変わらずに意味のわからない事を言ってくる変質者ジャックにお断りの返事を返し、立て続けに火魔法ファイアーボールを放つ。 
 了承して全裸にされるのはゴメンだ。一応女なわけだし。
 わたしの手元を離れた火魔法ファイアーボールが幾つも変質者ジャックに殺到する。しかし、変質者ジャックはまた腕が全く視認できなくなる程の速度で鋏を振るう。自分に直撃をしそうな物だけを切り裂き疾走をやめる様子は見られない。
 腕が見えないが近づく魔法は片っ端から切り裂かれてる。その姿は変態的だ。
 一気に詰め寄る変質者ジャックに対して焦らず結界を発動。しかし、直後に悪寒を感じ一歩後ろに下がる。
 瞬間、先程までわたしがいた所を鋏がはしる。結界を軽々と切り裂きながら。


「っ!」


 その光景を見て危機感を感じ次元魔法ムーブで移動。
 瞬時に屋根の上に移動し、膝をつく。ハラリと髪が落ちるのを確認し、自分の胸元を見ると軽く切り裂かれていた。
 あの鋏、魔法を切り裂くの? 結界はまだレキにも切り裂かれたことないのに。


「さっきので確実に服を切り裂けたと思ったんだがどんな手品だ?」


 自分の鋏とわたしを交互に見ながら不思議そうな表情を浮かべている変質者ジャック
 無自覚で魔法を切ってるのか、たちが悪い。


「秘密」


 そう言いながらもわたしは次元魔法ムーブショットを放つ。これは見えないから切れないだろう! 狙ったのは右腕だけど吹き飛んでも治癒魔法で治せばいいわけだしね!


「ん?」


 変質者ジャックは何気無い動作で右の鋏で次元魔法ムーブショットを切り裂いた。


「なんで切れるの⁉︎」
「いや、なんか近づいてきたきたから切ってみた。それよりも君だ。ちゃんと芸術品に仕上げてあげるよ」


 勘で切ったとか。いや、それよりも発言がキモイ。


「ヒャッハァァァァァ!」


 奇声を上げながら変質者ジャックが跳ぶ。
 ちょっと待って! 魔法使わずに屋根まで飛び上がるとかどんな身体能力してるの⁉︎
 火魔法では威力はあっても変質者ジャックに切られた。ならば、


「速さで押し切る! 雷魔法ライトニング!」


 空中で逃げ場がない変質者ジャックに向かい火魔法より速度で勝る雷魔法を放つ。


「ぬお⁉︎」


 魔法を放ちパッと光った時にはすでに雷魔法ライトニング変質者ジャックの身体に直撃し硬直。受け身を取ることもとることもできずに屋根の上を転がった。
 よし! これは効いてる。流石にあの速度の魔法を切ることはできないみたいだ。それに雷魔法は痺れさす効果もあるからもう身動き取れないでしょ。




「あとは痺れている間に拘束すれば……」
「ふんぬ!」


 ……なんか気合をいれような声を上げて平然と立ち上がってるんだけど
 普通は雷魔法を食らったらしばらくは痺れて動けないものなんだけど。


「もうその魔法は見たから切れる」


 両手の鋏を構えながらレキみたいな事言ってるよ。
 変質者が身体を深く沈め、足に溜めを作るような素振りを見せた。


「その美《裸》! 拝ましていただく!」


 一気に掛けてきた。さっき突っ込んできた時よりも速い!
 すかさず雷魔法ライトニングを連射する。しかし、奴は言った通りに見切ったのか確実に雷魔法ライトニングを切り裂き前進してきた。どんな反射神経してるの⁉︎


「あ〜これは切られたかな」


 迫り来る鋏を呆然と見ながら呟いた。
 覚えた魔法を使う暇はないし。どうしようもない。
 全裸はやだな〜
 そう思い目を閉じ鋏の閃いた音を聞いたのだった。

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