浮遊図書館の魔王様

るーるー

第75話 ライブラリ防衛しました④

 


 空中に次々と爆音と共に魔法の花が咲く。
 弓矢も飛んではいるが木や岩を砕くことは無理なためゴブリンのほうを攻撃し続けている。
 それでもやっぱり全ての投げられた物は防げず何人かの負傷者がでていた。


「いやー大変だね」
「他人事のように言わないでください!」


 呑気に言ったら魔法を撃ちながらカハネルに怒られた。
 わたしはすでに魔法を使うのをやめた。こんなに魔法が飛び交ってるんだから大丈夫でしょ?


「がぁぁぁぁぁ!」


 ……たまに悲鳴が聞こえるけど大丈夫だよね。


「どうぞご主人」
「ありがとう、アトラ」


 いつの間にか後ろに控えるアトラが紅茶の入ったカップを差し出してくる。
 一応感謝の言葉を言ったけどどっから出したんだよ、その紅茶。


「呑気すぎますよ」
「だったら早く終わらして欲しいんだけど」


 本のためにも早く終わらしたいんだけど、そしたらわたしも本を読めるんだけど。


「できるならやってま……」


 カハネルが喋っている最中にわたしの視界から消えた。
 変わりに拳大の大きさの岩が転がる。どうやら岩に当たったみたいだ。頭じゃなくてよかったよ。でも完全にのびてるから指揮とれないね。


「いや、冷静に考えている場合じゃないじゃろ⁉︎ カハネルが倒れたら指揮をする奴がいなくなるぞ?」


 ベアトリスが慌ててるけどなんでそんなに慌てるかな?


「カハネルが倒れたら魔王であるわたしが指揮を取るよ。アル、レキ」
「はい」
「はいはい!」


 わたしの呼びかけに忠実なメイド二人がすぐに応え、わたしの前に膝をついた。


「お主、指揮なんて取れるのか?」


 疑わしげな目でわたしを見てくるね。
 まぁ、わからないでもないんだけど。


「指揮はとれなくても勝つことはできるよ」


 カハネルがとった指揮は正しい。普通の戦力ならこの戦い方が一番正攻法だろう。
 普通の戦力• • • • •ならばだけど。
 でも、残念がら浮遊図書館うちは普通じゃないんだ。


「アル、右側を。レキ左側を殲滅してきて」
「了解しました」
「わかった!」


 うん、元気がいいね。そのままサクッと殺ってしまおう。


「じゃ、頼むよ」


 わたしの言葉を聞き終わるとレキとアルは姿を消す。街門から見下ろすとすでに二人は左右の軍勢に向かって走っていっていた。好戦的だね、あの二人は。


「子供二人を殺す気か? レクレ」
「いつもみたいに魔王様と呼ばないの?」


 どうやらベアトリスは怒ってるみたいだ。
 まぁ、知らないからね。


「カハネルやベアトリスの考えてる策っていうのはさ、あくまでファンガルム皇国の戦力を基準に考えてるよね? 普通ならそれでいいんだよ」
「なにが言いたいんじゃ?」
「でもファンガルム皇国は滅びた。滅ぼしたのは浮遊図書館うちだ」


 ベアトリスがなんとも言えないような表情を浮かべた。わたしはベアトリスの疑問に答えることをせずに言葉を続ける。


「わたしは戦のいろはは知らない。だから浮遊図書館でねは戦いは各個人に任せたし、敵の数も制限した。それでもわかったことがあるんだよ?」
「それは?」
「レクレ、私達はいかなくていいのかい?」


 下を見るとこちらを見上げるファス、ビリアラがこちらを見上げていた。ユールは真紅一号を着込もうと悪戦苦闘しているようだった。


「いえ、出てもらいますよ。じゃ、南門以外の担当を決めちゃってください」
「わかった!」


 ファス、ビリアラ、一人で鎧を着るのを諦めたユールが三人で話し始める。
 門の周辺は散発的に来てるだけだから十分でしょ。
 南門はアルとレキがいるしね。


「さてどこまで話したかな?」
「わかったことがあるという話までじゃ」


 そうだったそうだった。


「そうそう、わかったことはね。うちの子は強いってことだよ!」
「ふざけとるのか!」


 声が大きいよベアトリス。耳が痛くなる。
 いまだに信用してないみたいだから仕方ない。だって彼女達の戦いを見てないんだからね。浮遊図書館内部で冒険者千人をあしらい続けた彼女達の実力を。


「まぁ、しばらくは任してよ。最悪の場合はわたしが殺るから」
「そうなったら本当に最悪の状況じゃよ」


 がっくりと肩を落としたベアトリスを置いておき下を覗き込む。ファス先生が手を振って来たから担当が決まったんだろう。


「じゃ、三人ともよろしくね〜」
「「「わかりました」」」


 素早く動きだした三人にひらひらと手を振る。
 ユールもどうやら真紅一号着れたみたいだしね。


「レキ様、アル様が戦闘を開始しました!」


 さて戦闘はどうなってるのかな?

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