浮遊図書館の魔王様

るーるー

第五一話 危機感感じました

「あ、危なかった」


 わたしは冷や汗をかきながら映す鏡マジックミラーに映る勇者を見ながら呟いた。
 危ない危ない。あやうくレキが人殺しになるとこだった


「んんん!んん!」


 呻き声のほうに視線を向けると鎖で身動きがとれない状態にされにはアル、マーテ、ビリアラに押さえつけられたレキが転がっている。
 なかなかに愉快な格好だが押さえ込んでるマーテ達は必死だ。


「お姉ちゃん! 落ち着いてよ!」
「興奮しすぎ」


 どうも途中で転移さしたことで不完全燃焼だったみたいで興奮ぎみのレキ。
 そんなレキにわたしは笑顔で近づいていく。


「れーきーちゃーん」


 わたしの声を聞いた瞬間今まで暴れていたレキがビクリと体を一度震わせると恐る恐るといった様子でわたしの顔を見上げてきた。


「ダメじゃないか〜渡した剣じゃない方の剣で斬ろうとしたら」
「ひぐぅ」


 わたしの顔を見ながら涙ぐむほど怯えるなんてどんな怖い顔をしてるの?
 してないよね?


「だ、だって服斬られそうになったし……」
「服?」


 レキの服を見るといくつもの斬り傷がついていた。別に今更斬り傷が増えようとなんとも思わないんだけど。


「最後のあれは当たったら服危なかったんです」


 そうなのか。わたしには二人の剣戟は全くみえないんだけどね。なにより視力強化しないと見えないし。さっきのはレキが確実に殺す気だったから強制転移させたんだしね。


「ん、じゃいいよ」
「え」


 あっさりと許したわたしを疑うような目でレキが見上げてくる。そんなにわたしは信用がないのか?


「どうしたの?」
「いえ、怒らないのかと」


 ああ、そんなことか


「理由なくするなら怒るけど、理由があったら起こらないよ」


 学院でも理由もなく怒る教師もいたけど大概あいつらってこちらの理由をきかないんだよね。理由を聞くのと聞かないのではかなり違うのにそれをしないんだよ。頭の固い学院連中は。
 だからわたしは理由があったら怒らない。
 ……あのハゲのようにはね


「まあ、今後は気をつけようね。」


 そういうと治癒魔法をレキにかけた。緑の光がレキを包み込むとすぐさま傷が巻き戻すかのように塞がっていく。
 あ、ついでに縛鎖を解除しないと。


「ありがとうございます。魔王様」


 縛鎖からの拘束がとかれたレキはわたしの前に膝をつき深々と頭を下げた。


「大した傷じゃなかってよかったね」
「はい! これからも世界征服を頑張ります!」


 満面の笑顔で言ってくるけど理解してなさそうだな。
 世界征服なんてめんどうなことは適当にやってもらおう。言っても止まらなそうだし。
 見えないようにため息をつく。


「そういえばファスさんは?」
「ユーリもいないね」


 今頃気づいたのかマーテとアルがキョロキョロと周りを見渡している。


「彼女達なら最後のステージの準備さ」
「ステージ?」


 不思議そうな表情を浮かべながら見てくる二人にわたしは微笑み返す。


「そう、このゲームの最後の、ラスボスの準備さ」
「ラスボス!」


 アルが瞳を輝かせワクワクしているみたいだ。
 そのリアクションはとてもすてきだよ。


「さあ、ここにくる勇者達を魔王ぽく迎えて最後のステージを遊ぼうか!」


 ゾンビのように動きながら階段を上がる勇者達を見ながらわたしは笑みを浮かべた。

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