浮遊図書館の魔王様
第三十二話 お話しました
騎士の後ろを付いてわたしが入って行ったのは真っ白なファンガルム城だった。
「やっぱり城は黒より白のほうが映えるな〜」
浮遊図書館を思い出しながらぼやく。
元となったのは確実にこの城だろうしなんか歴史を感じる。
城内に入ると慌ただしく人が動き回っていた。
広間のあちこちに瓦礫が転がってるし襲撃でもあったみたいな感じだな。
「こちらです」
騎士に指示されるまま大広間の階段を登っていく。ふと天井を見るといくつものヒビ割れが眼に入りさらに横にはどでかい穴が空いていた。瓦礫はおそらくあの穴のせいだろう。
なんとなく嫌な予感を感じながらも階段を上がっていく。
あと一階上に上がれば謁見の間(浮遊図書館ではそう呼ぶ)というところで横の広間につれられる。
そして一つの扉の前で騎士が立ち止まり、軽くノックをする。
「こちらで少しお待ち下さい」
そう言いとわたしを中に入れると静かに扉を閉められた。
え、殿下っていう人と二人っきりにされちゃうの? わたし人見知りなんだけど。
渋々ながらに部屋に入りまだ誰もいないため真ん中のソファに座り周りを見渡すといろいろと装飾品がかざられているようだ。
大体のものがおそらく美術品の類のものなんだろうけど、中にはなんか魔力を放ってる本が目立ったためわたしは本棚なほうに行き嬉々として手を伸ばした。
「この部屋はお気に召しましたか?」
鈴の音のような声に話しかけられたため本を手に持ちながらそちらに視線をむけると先ほどまでだれもいなかった対面のソファに一人の輝くような銀の髪の女性がニコニコ笑いながら座っていた。
魔法かな? それも姿を消せる類のやつ。
「突然声をかけられたのに驚かないのですね」
「十分驚いてるよ? あまりに驚いてる心臓が止まってまた動き出したくらいには」
普通に考えたら死んでもおかしくなかったくらいの隙だったし。今は結界張ってないしね。
女性はクスクスと楽しそうに笑う。
「なるほど、ベアトリスの言ってた通り楽しいお方ですね」
「ベアトリスを知ってるの?」
「ええ、彼女は私の友達であり、臣下でもありますから」
臣下。ベアトリスは貴族だ。
それも貴族三十二門という貴族を統べる貴族。そんな彼女を臣下と呼べるのは、
「あなたが殿下?」
「あまり殿下とよばれるのは好きではないで親しみを込めてユニエール、もしくはユールと呼んでいただきたいです魔王さま」
「じゃ、ユール。わたしに何の用?」
わたしが尋ねるとユールは困ったような表情を浮かべる。え、なんか悪いこと聞いた?
「魔王さまがこちらに用事があると思いましたが?」
「え? わたしは特に何もないけど」
「そうですか。お会いする日は今日のパーティとお伝えしましたのに昨日まさかあんな現れ方をするとは思いませんでしたので火急の要件かと思いまして」
昨日? あんな現れ方?
全く記憶にない。
考えながら本を持ちユールの対面のソファに座り込んだ。
「その様子では覚えていなさそうですね」
「全く」
「あなたは空から落ちてきたんですよ」
でしょうね! なんか周り見てたらそんな気がしてたよ。
よりにもよって城から城に落ちるなんてすごい確率な気もしないでもないけど。
「怪我人は」
「幸いにも横領などをしていた大臣や貴族だけですわ」
わたしの質問にユーはルニッコリと笑いながら答える。
「そっか、ならよかったよ」
ソファに深く座り込み息を吐く。
悪人ならそんなに気を落とさなくてもいいかな。
そんなわたしを興味深そうにユールが眺めている。
「意外ですね。魔王さまでも人死にが嫌いですが?」
「人が死ぬのはめんどくさいことだよ」
人の生き死はめんどくさい。特にこの世界では。
人の生き死に関わるのは本の中だけで十分だよ。
「そういえばユールのほうもわたしに手紙出してたよね? ベアトリスから受け取ったよ」
「ええ、私は魔王さま、あなたに非常に興味がありますの」
宝石みたいな蒼い瞳がキラキラしてるよ。珍しい物を見た時の子供みたいな眼してるし。
「魔王さまはまだ家臣を五人程しか抱えてないと聞いたのですがそれは本当ですの?」
「本当だよ。そんなに人はいらないからね」
なによりいるのは獣人と魔導書だし。やる仕事もさしてないしね。しいて上げるなから図書館の本の管理と食事当番くらいだし。
「それに世界征服をしようとしてると噂ですわ」
「それは噂だよ。レキはやろうとしてるみたいだけど」
噂が結構シャレにならならいレベルで深刻化してる気がするな〜。なんとかして噂なくさないとめんどうなことになりそうだし。
「とても楽しそうですね!」
聞かれてわたしは肩をすくめる。
そんなに嬉しがるようことでもない気がするけど。
なにより本を読む時間が減ってるんだよ。騒がしくて楽しいのはいいんだけどね。
「わたしは本を読めれさえすればいいんだよ」
もともと浮遊図書館は本を集めてわたしはひたすら読書に没頭するために願った建物だ。なのに充実した読書ライフが送れてない。
「わたしも王族のくだらない生活よりそちらのほうが楽しそうです!」
王族の生活は堅苦しそうだからね。この姫もフラストレーションが溜まっているんだろう。
「父上は口を開けば礼儀だマナーだ慎みだとぐちぐちと言ってきますので」
「王族ってそんなものじゃないの?」
「そう言われればそうなんですけどストレスが溜まります!」
王族のストレスなんてわからないし、礼儀作法などしつけられてもいないわたしからしたら全くの謎だね。
「それで君はわたしに愚痴を言うために読んだのかな?」
いい加減愚痴を聞くのもしんどいし、本題に入って欲しいんだけど。
「あ、そうでした」
ポンと手を叩きニコニコと笑顔を浮かべながら
「私を攫ってほしいんですよ」
にこやかにわたしに火種を放り投げてきたのだった。
「やっぱり城は黒より白のほうが映えるな〜」
浮遊図書館を思い出しながらぼやく。
元となったのは確実にこの城だろうしなんか歴史を感じる。
城内に入ると慌ただしく人が動き回っていた。
広間のあちこちに瓦礫が転がってるし襲撃でもあったみたいな感じだな。
「こちらです」
騎士に指示されるまま大広間の階段を登っていく。ふと天井を見るといくつものヒビ割れが眼に入りさらに横にはどでかい穴が空いていた。瓦礫はおそらくあの穴のせいだろう。
なんとなく嫌な予感を感じながらも階段を上がっていく。
あと一階上に上がれば謁見の間(浮遊図書館ではそう呼ぶ)というところで横の広間につれられる。
そして一つの扉の前で騎士が立ち止まり、軽くノックをする。
「こちらで少しお待ち下さい」
そう言いとわたしを中に入れると静かに扉を閉められた。
え、殿下っていう人と二人っきりにされちゃうの? わたし人見知りなんだけど。
渋々ながらに部屋に入りまだ誰もいないため真ん中のソファに座り周りを見渡すといろいろと装飾品がかざられているようだ。
大体のものがおそらく美術品の類のものなんだろうけど、中にはなんか魔力を放ってる本が目立ったためわたしは本棚なほうに行き嬉々として手を伸ばした。
「この部屋はお気に召しましたか?」
鈴の音のような声に話しかけられたため本を手に持ちながらそちらに視線をむけると先ほどまでだれもいなかった対面のソファに一人の輝くような銀の髪の女性がニコニコ笑いながら座っていた。
魔法かな? それも姿を消せる類のやつ。
「突然声をかけられたのに驚かないのですね」
「十分驚いてるよ? あまりに驚いてる心臓が止まってまた動き出したくらいには」
普通に考えたら死んでもおかしくなかったくらいの隙だったし。今は結界張ってないしね。
女性はクスクスと楽しそうに笑う。
「なるほど、ベアトリスの言ってた通り楽しいお方ですね」
「ベアトリスを知ってるの?」
「ええ、彼女は私の友達であり、臣下でもありますから」
臣下。ベアトリスは貴族だ。
それも貴族三十二門という貴族を統べる貴族。そんな彼女を臣下と呼べるのは、
「あなたが殿下?」
「あまり殿下とよばれるのは好きではないで親しみを込めてユニエール、もしくはユールと呼んでいただきたいです魔王さま」
「じゃ、ユール。わたしに何の用?」
わたしが尋ねるとユールは困ったような表情を浮かべる。え、なんか悪いこと聞いた?
「魔王さまがこちらに用事があると思いましたが?」
「え? わたしは特に何もないけど」
「そうですか。お会いする日は今日のパーティとお伝えしましたのに昨日まさかあんな現れ方をするとは思いませんでしたので火急の要件かと思いまして」
昨日? あんな現れ方?
全く記憶にない。
考えながら本を持ちユールの対面のソファに座り込んだ。
「その様子では覚えていなさそうですね」
「全く」
「あなたは空から落ちてきたんですよ」
でしょうね! なんか周り見てたらそんな気がしてたよ。
よりにもよって城から城に落ちるなんてすごい確率な気もしないでもないけど。
「怪我人は」
「幸いにも横領などをしていた大臣や貴族だけですわ」
わたしの質問にユーはルニッコリと笑いながら答える。
「そっか、ならよかったよ」
ソファに深く座り込み息を吐く。
悪人ならそんなに気を落とさなくてもいいかな。
そんなわたしを興味深そうにユールが眺めている。
「意外ですね。魔王さまでも人死にが嫌いですが?」
「人が死ぬのはめんどくさいことだよ」
人の生き死はめんどくさい。特にこの世界では。
人の生き死に関わるのは本の中だけで十分だよ。
「そういえばユールのほうもわたしに手紙出してたよね? ベアトリスから受け取ったよ」
「ええ、私は魔王さま、あなたに非常に興味がありますの」
宝石みたいな蒼い瞳がキラキラしてるよ。珍しい物を見た時の子供みたいな眼してるし。
「魔王さまはまだ家臣を五人程しか抱えてないと聞いたのですがそれは本当ですの?」
「本当だよ。そんなに人はいらないからね」
なによりいるのは獣人と魔導書だし。やる仕事もさしてないしね。しいて上げるなから図書館の本の管理と食事当番くらいだし。
「それに世界征服をしようとしてると噂ですわ」
「それは噂だよ。レキはやろうとしてるみたいだけど」
噂が結構シャレにならならいレベルで深刻化してる気がするな〜。なんとかして噂なくさないとめんどうなことになりそうだし。
「とても楽しそうですね!」
聞かれてわたしは肩をすくめる。
そんなに嬉しがるようことでもない気がするけど。
なにより本を読む時間が減ってるんだよ。騒がしくて楽しいのはいいんだけどね。
「わたしは本を読めれさえすればいいんだよ」
もともと浮遊図書館は本を集めてわたしはひたすら読書に没頭するために願った建物だ。なのに充実した読書ライフが送れてない。
「わたしも王族のくだらない生活よりそちらのほうが楽しそうです!」
王族の生活は堅苦しそうだからね。この姫もフラストレーションが溜まっているんだろう。
「父上は口を開けば礼儀だマナーだ慎みだとぐちぐちと言ってきますので」
「王族ってそんなものじゃないの?」
「そう言われればそうなんですけどストレスが溜まります!」
王族のストレスなんてわからないし、礼儀作法などしつけられてもいないわたしからしたら全くの謎だね。
「それで君はわたしに愚痴を言うために読んだのかな?」
いい加減愚痴を聞くのもしんどいし、本題に入って欲しいんだけど。
「あ、そうでした」
ポンと手を叩きニコニコと笑顔を浮かべながら
「私を攫ってほしいんですよ」
にこやかにわたしに火種を放り投げてきたのだった。
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