天白家の日常(連載版)

るーるー

残り日数を数えると、うっ頭が……

 始まりがあれば終わりがある。
 これは当たり前だ。
 だがしかし、終わって欲しくないものもあるわけで、


「夏休みが…… あと半月しかない!」


 カレンダーについてるバツ印が半分を埋め尽くしたのを再確認した僕は絶望的な声を上げる。
 右目を隠して左目だけで見てみた。やっぱり半分だ。
 今度は左目を隠して右目だけで見てみた。やっぱり半分だ。


「なぜ半分なんだ!」
「遊んでたからでありんす、愚民兄。あと邪魔」
「ぐぁ! 痛い! 心と右足の脛が痛い」


 邪魔だからという理由で兄の足を蹴る妹とはどうなんだろう。


「どうせ、今だに夏休みの宿題が終わってないでしょう? 愚民兄、アイスとってくれでありんす」
「おい、いかにも兄が勉強してないみたいな言い方をするな。ストロベリーとバニラどっちがいい?」
「……妹にぱしられるのは問題ないんでありんすか。バニラで」


 僕はストロベリーとバニラの二つのアイスを持ってリビングで座る才華の横に座る。すかさず才華がアイスに手を伸ばしてきたが僕は素早くその手を払う。


「なにするでありんす!」
「いいか、才華。僕はアイスを確認はしたがお前にやるとは一言も言ってない」
「ちっさい! 心が小さいでありんす!」
「ああ、小さいさ! サイズにして五円玉くらいだよ」
「想像以上に小さいでありんす! しかも真ん中穴空いてるし!」
「働かざるもの食うべからずという言葉を知ってるか? アイスを食いたきゃ働くんだな!」
「……宿題が終わってない愚民兄に言われるのは凄まじく腹ただしいものでありんすな」
「僕はストレスという対価を払ってアイスを食べてるからいいんだ」
「どこをどう見てもストレスを感じてるようにはみえないでありんす」


 なんとでも言うがいい。アイスは譲る気はないがな。


「で才華はなんでリビングに?」


 見た感じ特になにか持ってる感じでもないし勉強ではなさそうだし。


「明日からの行く旅行の準備でありんす」
「旅行?」


 はて、そんな予定あったかな?


「愚民兄にはないです。同じ学年の子たちといくんでありんす」
「……ああ、ついに幻覚を見ているのか」
「愚民兄、いい加減に現実を見るといいでありんす」


 呆れた目で見られました。
 僕が宿題に苦しんでいるのに才華だけ遊だなんて…… おかしいだろ!


「さぼってる愚民兄が悪いでありんす」
「正論には屈しない!」


 他人の幸福ヒ素の味! 


「そうね、使郎が悪いわ」
「然お姉様!」


 寝ぼけた表情をしながら然がリビングに入ってき、その然に喜色満面、才華が腰にしがみついた。
 相変わらず然が大好きだな。


「使郎」
「なんだよ」
「話は聞いてなかったわ」
「なんでさも聞いてたかのような言い方なんだよ!」
「しかし、私にも言えることがあるわ」
「なんだよ」


 寝ぼけた顔で目をこすり、挙句はあくびまでしてやがる。


「使郎が宿題を終わらせないと私が写せない」
「やる気一切なしかよ!」


 天白家は今日も平和です。(宿題が終わる気配が全くない)

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