床ぺろリスト! 魔法? 一発しか撃てませんが?
黒館の主2
「しかし、冒険者というのは月日が流れたというのにやってる内容は変わらんもんじゃのう」
サブリナと意気投合していたアトワントが先ほど納品されたばかりの血の入ったボトルを口元に運んでいた。グラスなどに移すことなくそのまま飲み干しているため口から零れた紅い液体が胸元へと流れているがアトワントは気にした様子はなくがぶ飲みを続けていく。
「トレインも迷宮都市で楽しく過ごしているようですしね」
冒険者相手に狩りをしていて楽しいというのは悪魔で狩る側であるとうことであるのだがこの場にツッコミを入れる人間は誰もいない。
「ぷはー、トレインのぅ。あやつは我が作った人形の中でも戦闘特化に作っておいたからのぅ」
「あ、あんたがあのやばいやつを作ったの⁉︎ あいつのせいで私! 迷宮に入れないのよ!」
「あ? あやつ迷宮に住み着いておるのか? まぁ、むかしから暗くてジメジメした所が好きじゃったからのぅ。独り立ちしてからあやつちゃんと洗濯しとるんじゃろか。ちゃんと洗って干さんとカビるぞ」
心配そうにするアトワントであるがトレインが負けるとかそういった心配は一切していない。それどころかサブリナとファラに興味深げな視線を向ける。
「おそらくは倒せてはいないんじゃろうが、お主らどうやってトレインをやったのじゃ? 百年以上前の作品とはいえ当時のけっさくじゃったんじゃがな」
「主、おそらくは今の冒険者にとっても出会うこと自体が天災のようなあつかいになるかと」
そんなもんかのぅ、と笑うとアトワントは残りの紅い液体を全て飲み干し満足げな笑みを浮かべる。そして再びサブリナ、ファラ、ネイトの三人に視線を送り先ほどまでとは違う好戦的な笑みを口元に浮かべる。
「ふむ、余興じゃ。血も飲んだことじゃしお主らの力を見てみるとしよう」
「はっ?」
間抜けな声を上げるサブリナとは違い、危険な空気を感じ取ったファラとネイトはサブリナの首元を掴み後ろへ後退する。
「ぐぇ」
サブリナの苦しげな声が響く中、先ほどまで三人が立っていた場所に漆黒の槍が音もなく突き刺さる。
「何の真似? 依頼は終わったはずですが?」
混乱しているサブリナを引きずりつつファラが疑問を声にだす。ネイトも腰の短杖を構え戦闘態勢に入っていた。
そんな中、クリードが大きくため息を付き、右手を軽く振るう。するとニヤニヤと笑みを浮かべていたアトワントの姿が搔き消え、部屋に置いてある本棚に何かがぶつかるような音が部屋の中に響く。
「主、いつも言っていますが冒険者だからといってすぐに力を試そうとするのは悪い癖です」
やれやれといった様子で口にするクリードだがそこに主を心配する色はない。
「いや、クリード。お主も気づいとるんじゃろう? そこの三人、量は普通じゃが魔力の密度が常人と比べれば桁違いじゃ。おそらくはそれを含む血はさぞうまいことじゃろうよ」
本をかき分けるように出てきたアトワントは三人を視界にとらえ唇を軽く舐める。
そこまできてようやくサブリナも現状が読み込めたのか指輪に魔力を込めいつでも動けるように備え始める。
「主」
「わかっとる。そんな勝手に吸うたりせんわ」
咎めるような従者の声にアトワントは苦笑を浮かべ答える。
「ならばゲームはどうじゃろう?」
「ゲーム?」
アトワントの提案にファラが怪訝な声できき返す。アトワントは大きく頷くと、指を軽く鳴らす。するとなにもなかった床に一つの魔法陣のようなもの現れる。警戒する三人を他所に魔法陣は光り輝き、しばらくの間光を放ち続け、それが収まるとそこに膝をつきアトワントに向かい頭を垂れたメイドが鎮座していた。
「マスター、お呼びいただき光栄にございます」
「うむ、ポメラ。此度のゲームはお主に任せた」
「御意に」
ポメラと呼ばれた存在が返事をすると同時に立ち上がりサブリナたちの方へと振り返る。そして両の手を音が鳴るように合わせ、広げるとどこから取り出したのかわからない真紅の大鎌を構える。
「人形?」
「ほう? よくみやぶったのう」
ネイトがポメラを見て独り呟いた言葉にアトワントは感心したようにして頷いた。
「ポメラは我が作った人形の一体じゃ。戦闘特化型のトレインなどよりは劣るがそこそこに強いぞ? さてゲームと言ってもシンプルだ。このポメラと戦い勝利すればお主らの勝ち。負けたら我の勝ちだ。我が勝ったらお主らの血を少しづつ貰う。ああ、死ぬほどの量ではないから安心せいでは。お主らが勝ったのであれば褒美をとらせよう」
シンプルじゃろ? とアトワントは笑う。
「無論、ゲームなのじゃから死なん。ポメラの大鎌は刃を潰しとるしの」
アトワントがポメラの方をみると慌てたようにポメラが違う大鎌を取り出している所だった。どうやら殺る気満々の武器を出していたようだ。
しばらくアトワントとサブリナ、ファラがポメラを眺めていたが焦っている様子のポメラはそれに気付かずに刃の潰れた大鎌を取り出し額の汗をぬぐい、やりきったような顔をして素振りをしていた。刃を潰したのにも関わらずその音は鋭く、鎌が振るわれるたびに衝撃で壁に亀裂が走る 。
それを見ていたアトワントはダラダラと汗を流していた。
「……安心せよ! ポメラは優秀じゃ! なんとかなる! ちょっと怪力じゃから頭が飛んだり凹んだりするかもしれんが…… 最悪我が吸血鬼にして甦らしてやるから!」
「どこに安心できる要素があると⁉︎」
ファラのもっともな悲鳴のような叫びが部屋に響いた。
サブリナと意気投合していたアトワントが先ほど納品されたばかりの血の入ったボトルを口元に運んでいた。グラスなどに移すことなくそのまま飲み干しているため口から零れた紅い液体が胸元へと流れているがアトワントは気にした様子はなくがぶ飲みを続けていく。
「トレインも迷宮都市で楽しく過ごしているようですしね」
冒険者相手に狩りをしていて楽しいというのは悪魔で狩る側であるとうことであるのだがこの場にツッコミを入れる人間は誰もいない。
「ぷはー、トレインのぅ。あやつは我が作った人形の中でも戦闘特化に作っておいたからのぅ」
「あ、あんたがあのやばいやつを作ったの⁉︎ あいつのせいで私! 迷宮に入れないのよ!」
「あ? あやつ迷宮に住み着いておるのか? まぁ、むかしから暗くてジメジメした所が好きじゃったからのぅ。独り立ちしてからあやつちゃんと洗濯しとるんじゃろか。ちゃんと洗って干さんとカビるぞ」
心配そうにするアトワントであるがトレインが負けるとかそういった心配は一切していない。それどころかサブリナとファラに興味深げな視線を向ける。
「おそらくは倒せてはいないんじゃろうが、お主らどうやってトレインをやったのじゃ? 百年以上前の作品とはいえ当時のけっさくじゃったんじゃがな」
「主、おそらくは今の冒険者にとっても出会うこと自体が天災のようなあつかいになるかと」
そんなもんかのぅ、と笑うとアトワントは残りの紅い液体を全て飲み干し満足げな笑みを浮かべる。そして再びサブリナ、ファラ、ネイトの三人に視線を送り先ほどまでとは違う好戦的な笑みを口元に浮かべる。
「ふむ、余興じゃ。血も飲んだことじゃしお主らの力を見てみるとしよう」
「はっ?」
間抜けな声を上げるサブリナとは違い、危険な空気を感じ取ったファラとネイトはサブリナの首元を掴み後ろへ後退する。
「ぐぇ」
サブリナの苦しげな声が響く中、先ほどまで三人が立っていた場所に漆黒の槍が音もなく突き刺さる。
「何の真似? 依頼は終わったはずですが?」
混乱しているサブリナを引きずりつつファラが疑問を声にだす。ネイトも腰の短杖を構え戦闘態勢に入っていた。
そんな中、クリードが大きくため息を付き、右手を軽く振るう。するとニヤニヤと笑みを浮かべていたアトワントの姿が搔き消え、部屋に置いてある本棚に何かがぶつかるような音が部屋の中に響く。
「主、いつも言っていますが冒険者だからといってすぐに力を試そうとするのは悪い癖です」
やれやれといった様子で口にするクリードだがそこに主を心配する色はない。
「いや、クリード。お主も気づいとるんじゃろう? そこの三人、量は普通じゃが魔力の密度が常人と比べれば桁違いじゃ。おそらくはそれを含む血はさぞうまいことじゃろうよ」
本をかき分けるように出てきたアトワントは三人を視界にとらえ唇を軽く舐める。
そこまできてようやくサブリナも現状が読み込めたのか指輪に魔力を込めいつでも動けるように備え始める。
「主」
「わかっとる。そんな勝手に吸うたりせんわ」
咎めるような従者の声にアトワントは苦笑を浮かべ答える。
「ならばゲームはどうじゃろう?」
「ゲーム?」
アトワントの提案にファラが怪訝な声できき返す。アトワントは大きく頷くと、指を軽く鳴らす。するとなにもなかった床に一つの魔法陣のようなもの現れる。警戒する三人を他所に魔法陣は光り輝き、しばらくの間光を放ち続け、それが収まるとそこに膝をつきアトワントに向かい頭を垂れたメイドが鎮座していた。
「マスター、お呼びいただき光栄にございます」
「うむ、ポメラ。此度のゲームはお主に任せた」
「御意に」
ポメラと呼ばれた存在が返事をすると同時に立ち上がりサブリナたちの方へと振り返る。そして両の手を音が鳴るように合わせ、広げるとどこから取り出したのかわからない真紅の大鎌を構える。
「人形?」
「ほう? よくみやぶったのう」
ネイトがポメラを見て独り呟いた言葉にアトワントは感心したようにして頷いた。
「ポメラは我が作った人形の一体じゃ。戦闘特化型のトレインなどよりは劣るがそこそこに強いぞ? さてゲームと言ってもシンプルだ。このポメラと戦い勝利すればお主らの勝ち。負けたら我の勝ちだ。我が勝ったらお主らの血を少しづつ貰う。ああ、死ぬほどの量ではないから安心せいでは。お主らが勝ったのであれば褒美をとらせよう」
シンプルじゃろ? とアトワントは笑う。
「無論、ゲームなのじゃから死なん。ポメラの大鎌は刃を潰しとるしの」
アトワントがポメラの方をみると慌てたようにポメラが違う大鎌を取り出している所だった。どうやら殺る気満々の武器を出していたようだ。
しばらくアトワントとサブリナ、ファラがポメラを眺めていたが焦っている様子のポメラはそれに気付かずに刃の潰れた大鎌を取り出し額の汗をぬぐい、やりきったような顔をして素振りをしていた。刃を潰したのにも関わらずその音は鋭く、鎌が振るわれるたびに衝撃で壁に亀裂が走る 。
それを見ていたアトワントはダラダラと汗を流していた。
「……安心せよ! ポメラは優秀じゃ! なんとかなる! ちょっと怪力じゃから頭が飛んだり凹んだりするかもしれんが…… 最悪我が吸血鬼にして甦らしてやるから!」
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