床ぺろリスト! 魔法? 一発しか撃てませんが?
数が多いと可愛いものでもこわい
昼にもかかわらず薄暗い廊下に四人分の足音が反響して響く。しかもその廊下はさして広くないくせに広大なフロアを歩いているようにとてつもなく大きな音を響かせているのだ。
「ひぃ!」
「きゃぁぁぁぁ!」
そんな廊下を歩いている四人のうち二人が悲鳴を上げながらうずくまる。それもガタガタと震えながら。
「あのおねえさん? さっきから悲鳴を上げてうずくまるんだけど全然先に進まないよ?」
もう何度目かになるかわからないこのやりとりに少年執事はうんざりしていた。
「我も疑問だが何故友たる闇を恐れるのか?」
まったくわからないとばかりにネイトも嘆いていた。
しかし、いつもなら馬鹿にされたような発言に噛み付いてくるはずの二人、ファラとサブリナは一向に攻撃ならぬ口撃をし返してこない。それに不気味さを覚えるネイトであるが当の二人、ファラとサブリナはそれどころではなかった。
「や、闇とかそんなレベルの問題じゃないよ!」
「そうよ! まずこの廊下がありえないでしょ! あとなんで平然とあるけるのよ!」
唾を飛ばしながらキレるサブリナであるがこれは別に彼女の頭がおかしくなったわけではなく、きちんとした理由がサブリナの指差した方にあるのだ。
サブリナの指差した方に視線を向ければまず眼に入るのは瞳それも一つや二つでなく大量のである。
「なんで廊下を埋め尽くすくらいに人形が置かれてるんだよ!」
ファラとサブリナが怯える理由、それは廊下の壁一面を覆うように配置されたアンティークドール達である。煌びやかに装飾を施され、精緻な作りをしたその人形達は芸術品と呼ぶにふさわしい物であろう。……暗い廊下に隙間もなく置かれていなければの話だが。
「ああ、あれは主の趣味です。人形集めと作るのが趣味なんですよ」
「趣味⁉︎ あの呪いの人形が⁉︎」
少年執事の言葉に目尻に涙を浮かべたファラが噛み付く。
「何でもかんでも怖いものを呪いというのはどうかと思うが?」
ネイトは哀れむような目線をファラとサブリナへと向ける。
ただの人形であればファラやサブリナもなんとも思わなかっただろう。しかし、この屋敷に入り廊下を歩き始めてからというものファラとサブリナは全身を舐め回すように見られる視線を感じていたのである。だがその程度はさしたる問題ではない。
本当に問題なのはふとした拍子に振り向いた時に人形達が普通に歩き回っていたことである。
さらには宝石を埋め込まれた人形の眼と合ってしまいしばらく見つめ合うと人形は宝石の瞳をギョロっと音が鳴るように動かすと何事もなかったかのように元の位置に戻り座り込んだのであった。
当然、それを見たファラとサブリナが悲鳴を上げたのは言うまでもないだろう。
「う、動く人形よ⁉︎ 瞳がギョロって動いたのよ⁉︎」
「人形だってたまにはうごかしたいんだろう?」
「そんな人形いてたまるか!」
「トレインさんもあんな感じじゃないか」
「喋らないのが不気味なんだよ!」
喋る方がより気持ち悪いと思うのだがファラは違うようだ。サブリナはというと「トレインさん…… う、頭が……」と何かトラウマを思い出したのかガタガタと震えていた。
「あ、トレインをご存知なんですか?」
興味のある話題だったのか先を歩く少年執事が振り返る。その顔には好奇心の色が浮かんでいた。
「知ってるも何も、迷宮で出会ったら逃げろと言われるくらいの動く厄災よ! あれのせいで私なんてまともに仕事できないんだから!」
沈んでいたと思ったら思い出したかのように怒り出したサブリナ。怒りのせいで先ほどまで怖がっていたことなど頭の片隅にも残っていないのだろう。ファラも同じかというとそうではなく完全に目を閉じ、サブリナのローブを掴みぶつぶつと何かをつぶやいていた。
「目を閉じれば何も見えない、目を閉じれば何も見えない、目を閉じれば何も見えない!」
もはや自己暗示と言えるレベルであった。
「そうですか、今は迷宮都市のほうにいるんですね。どこに行ったかわからなくなったので心配していたんですが安心しましたよ」
「なんだか知り合いみたいなものいいね?」
「ええ、最後にあったのはかなり前ですが友人ですよ」
迷宮のモンスターと友人になれるのだろうか? とサブリナは疑問を持ったがペースを落とすことなく歩き続ける少年執事を追いかける。
やがて大きな扉の前までやってくるとようやく少年執事は立ち止まり、サブリナ達の方へと向き直った。
「こちらが主、アトワント・ビリフィタス様がいらっしゃる部屋でございます」
そう告げ扉をゆっくりと開けはなつ。
「ではどうぞ」
少年執事の促しにネイトは瞳を輝かしながら、サブリナは疑問を持ちながら、ファラは目を閉じ怯えながら部屋に足を踏み入れたのであった。
「ひぃ!」
「きゃぁぁぁぁ!」
そんな廊下を歩いている四人のうち二人が悲鳴を上げながらうずくまる。それもガタガタと震えながら。
「あのおねえさん? さっきから悲鳴を上げてうずくまるんだけど全然先に進まないよ?」
もう何度目かになるかわからないこのやりとりに少年執事はうんざりしていた。
「我も疑問だが何故友たる闇を恐れるのか?」
まったくわからないとばかりにネイトも嘆いていた。
しかし、いつもなら馬鹿にされたような発言に噛み付いてくるはずの二人、ファラとサブリナは一向に攻撃ならぬ口撃をし返してこない。それに不気味さを覚えるネイトであるが当の二人、ファラとサブリナはそれどころではなかった。
「や、闇とかそんなレベルの問題じゃないよ!」
「そうよ! まずこの廊下がありえないでしょ! あとなんで平然とあるけるのよ!」
唾を飛ばしながらキレるサブリナであるがこれは別に彼女の頭がおかしくなったわけではなく、きちんとした理由がサブリナの指差した方にあるのだ。
サブリナの指差した方に視線を向ければまず眼に入るのは瞳それも一つや二つでなく大量のである。
「なんで廊下を埋め尽くすくらいに人形が置かれてるんだよ!」
ファラとサブリナが怯える理由、それは廊下の壁一面を覆うように配置されたアンティークドール達である。煌びやかに装飾を施され、精緻な作りをしたその人形達は芸術品と呼ぶにふさわしい物であろう。……暗い廊下に隙間もなく置かれていなければの話だが。
「ああ、あれは主の趣味です。人形集めと作るのが趣味なんですよ」
「趣味⁉︎ あの呪いの人形が⁉︎」
少年執事の言葉に目尻に涙を浮かべたファラが噛み付く。
「何でもかんでも怖いものを呪いというのはどうかと思うが?」
ネイトは哀れむような目線をファラとサブリナへと向ける。
ただの人形であればファラやサブリナもなんとも思わなかっただろう。しかし、この屋敷に入り廊下を歩き始めてからというものファラとサブリナは全身を舐め回すように見られる視線を感じていたのである。だがその程度はさしたる問題ではない。
本当に問題なのはふとした拍子に振り向いた時に人形達が普通に歩き回っていたことである。
さらには宝石を埋め込まれた人形の眼と合ってしまいしばらく見つめ合うと人形は宝石の瞳をギョロっと音が鳴るように動かすと何事もなかったかのように元の位置に戻り座り込んだのであった。
当然、それを見たファラとサブリナが悲鳴を上げたのは言うまでもないだろう。
「う、動く人形よ⁉︎ 瞳がギョロって動いたのよ⁉︎」
「人形だってたまにはうごかしたいんだろう?」
「そんな人形いてたまるか!」
「トレインさんもあんな感じじゃないか」
「喋らないのが不気味なんだよ!」
喋る方がより気持ち悪いと思うのだがファラは違うようだ。サブリナはというと「トレインさん…… う、頭が……」と何かトラウマを思い出したのかガタガタと震えていた。
「あ、トレインをご存知なんですか?」
興味のある話題だったのか先を歩く少年執事が振り返る。その顔には好奇心の色が浮かんでいた。
「知ってるも何も、迷宮で出会ったら逃げろと言われるくらいの動く厄災よ! あれのせいで私なんてまともに仕事できないんだから!」
沈んでいたと思ったら思い出したかのように怒り出したサブリナ。怒りのせいで先ほどまで怖がっていたことなど頭の片隅にも残っていないのだろう。ファラも同じかというとそうではなく完全に目を閉じ、サブリナのローブを掴みぶつぶつと何かをつぶやいていた。
「目を閉じれば何も見えない、目を閉じれば何も見えない、目を閉じれば何も見えない!」
もはや自己暗示と言えるレベルであった。
「そうですか、今は迷宮都市のほうにいるんですね。どこに行ったかわからなくなったので心配していたんですが安心しましたよ」
「なんだか知り合いみたいなものいいね?」
「ええ、最後にあったのはかなり前ですが友人ですよ」
迷宮のモンスターと友人になれるのだろうか? とサブリナは疑問を持ったがペースを落とすことなく歩き続ける少年執事を追いかける。
やがて大きな扉の前までやってくるとようやく少年執事は立ち止まり、サブリナ達の方へと向き直った。
「こちらが主、アトワント・ビリフィタス様がいらっしゃる部屋でございます」
そう告げ扉をゆっくりと開けはなつ。
「ではどうぞ」
少年執事の促しにネイトは瞳を輝かしながら、サブリナは疑問を持ちながら、ファラは目を閉じ怯えながら部屋に足を踏み入れたのであった。
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