床ぺろリスト! 魔法? 一発しか撃てませんが?
必要経費
「……ここ?」
目の前にそびえ立つ不気味な館を見上げながらファラが疑問に満ちた声を上げる。
「ここよ! だって村の人がそう言ってるんだから間違いないわ!」
こちらは欠片も疑問に思っていないサブリナである。
「うむ、なんというかいい趣味だな」
いつもと違い心なしか興奮した様子のネイト。
そんな危機感知能力の低い二人を見てファラは小さくため息をついた。ただの城であるのならばさして気にはしなかっただろう。だが三人の前にそびえ立つ館は長年手入れがされていないような廃墟と化しているような状態である。さらには全てが闇のごとく黒色で塗りつぶされているのだ。おそらくはネイトが感嘆の声を上げたのは『全部真っ黒な廃墟みたいな館かっこいい!』といった感想だからであろう。
「めちゃくちゃ不気味なんだけど?」
館の上では甲高い声を上げながら飛び回る蝙蝠らしき姿も見られ、まだ昼間であるにもかかわらず不気味な雰囲気を倍増さしていた。
「でもちゃんと人が住んでるみたいよ?」
「なんでわかるんです?」
ファラが尋ねるとサブリナは館の玄関を指差す。そちらの方に注目すると幾つもの箱のようなものが積み重ねられているのに気付いた。
「あれがなんです? どこかで見たことあるような箱ですが」
思い出せないのかファラはおもわず顔をしかめる。
「あれは迷宮都市カーディナスの出前ピザ屋『ゴッドチーズ』の箱よ」
「すごいネーミングだね」
「さらにいうならあの一番上に積まれている箱は『ゴッドチーズ』が昨日から販売を開始した新作『もーだめだチーズ』よ!」
「すっごい縁起が悪そうな…… というかよく知ってますね」
珍しく? サブリナに感心したような眼を向けるファラ。そんな視線を受けサブリナはなぜか勝ち誇ったかのような表情を浮かべながら胸を反らした。
「私も朝食べたしね。それにね! ふふーん! 私も『ゴッドチーズ』の常連だからね! ポイントカードも持ってるのよ!」
誇らしげに魔法のカバンより金色に輝くカードを取り出し見せつけてくる。
余談ではあるがサブリナの見せつけた金色のカードはピザ屋『ゴッドチーズ』のポイントカードであり一番上のポイントカードでもある。
というのもポイントカードにはランクがあり初めはブロンズ、次にシルバー、最後にゴールドという順である。そしてポイントカードのランクの上げ方であるがそれは買った枚数によるのだ。ブロンズからシルバーに上がるまでは百枚頼まなくてはならなく、シルバーからゴールドへはなんと五百枚頼まなければならないという鬼畜仕様である。(そのくせ特にポイントカードによる特典などはない)
さらには『ゴッドチーズ』で販売されているピザは良い素材を使っていることからなかなかにお高く銀貨三もするのであり。このことからサブリナがいかにその『ゴッドチーズ』に入れ込んでいるかがよくわかるというものである。
閑話休題
「なるほど。よくわかった」
納得したように頷くファラ。確かにサブリナの言う通り昨日発売したばかりのものが置かれているのであれば人がいるという根拠にしてもいいであろう。
「ところでさ、サブリナ」
「ん? なによ」
ファラの声が少しばかり低くなったことにサブリナは気づかない。しかし、気付いたネイトはさりげなく、かつ目立たないように後ろに一歩下がった。
「君さ、昨日装備整えるのにお金がないとか言って僕から銀貨七枚借りたよね?」
「う、うん」
ファラの確認にサブリナの目が泳ぐ。それもちょっとではなくかなりの挙動不審にだ。
「私はビザとやらは詳しくはないんですがね。それなりに高いことはわかるんだ」
「へ、へー」
さりげなくサブリナに向け一歩距離を詰めたファラ。それに怯えるようにサブリナは一歩後ろに下がるため距離は詰まらない。ただファラから放たれる圧力だけが増す。
「で、サブリナ。あんた、なにの装備を整えたの?」
「え、えーと指輪と防具と魔法道具の補充と……」
徐々に声が小さくなるサブリナを睨みつけたままファラは「ふーん」と興味がないような様子の返事をする。その様子を見ていたネイトはまるで猫に嬲られるネズミを連想してしまった。言うまでもなくファラが猫でサブリナがネズミである。
「ねえ、サブリナ。僕は別に怒って理わけじゃないんだよ? 本当のことを知りたいだけだし」
笑っているが笑っていない。矛盾する表現ではあるが今はそう言うしかない。ファラはにこやかに笑ってはいるが纏う魔力はそうは言ってはいないのだ。
「ほんと? 怒らない?」
「おこらないおこらない」
恐る恐る尋ねるサブリナに表面上はにこやかな笑みを浮かべたファラが答える。バカでも嘘だとわかる笑みを。だが残念なことに今この場にいるバカにはわからなかったようだ。
「じゃあ言うけどね。いやぁ! 私としたことがゴッドチーズの新作のピザをチェックするの忘れててさ! 慌てて買いに行ったのよ!」
許されると思ったサブリナはにへらぁと笑みを作りながらペラペラとしゃべりだす。言葉を発するたびにファラの額に青筋が浮かび上がっていることになど全く気づく様子など見られない。
「へー、で結局ピザにいくら使ったの?」
「銀貨五枚よ! 新作のドラゴンピザはおいしかったわ!」
思い出したかのようにサブリナは今にもよだれを垂らしかねないかのように顔をにやけさしていた。
肩を震わすファラになぞ気づくわけなどなく。
「そ……」
「そ?」
「装備整えるお金でピザかってんじゃネェェ!」
「怒らないって言ぎゃひ!」
もっともな言い分を叫びながらファラが振り上げた拳がサブリナの顔面に一切の加減なく突き刺さる。
「いいパンチだ。体重が乗って実に申し分ない」
吹き出た鼻血とサブリナが放物線を描くのをネイトは拍手をし、場違いな感想を述べながらみとどけるのであった。
目の前にそびえ立つ不気味な館を見上げながらファラが疑問に満ちた声を上げる。
「ここよ! だって村の人がそう言ってるんだから間違いないわ!」
こちらは欠片も疑問に思っていないサブリナである。
「うむ、なんというかいい趣味だな」
いつもと違い心なしか興奮した様子のネイト。
そんな危機感知能力の低い二人を見てファラは小さくため息をついた。ただの城であるのならばさして気にはしなかっただろう。だが三人の前にそびえ立つ館は長年手入れがされていないような廃墟と化しているような状態である。さらには全てが闇のごとく黒色で塗りつぶされているのだ。おそらくはネイトが感嘆の声を上げたのは『全部真っ黒な廃墟みたいな館かっこいい!』といった感想だからであろう。
「めちゃくちゃ不気味なんだけど?」
館の上では甲高い声を上げながら飛び回る蝙蝠らしき姿も見られ、まだ昼間であるにもかかわらず不気味な雰囲気を倍増さしていた。
「でもちゃんと人が住んでるみたいよ?」
「なんでわかるんです?」
ファラが尋ねるとサブリナは館の玄関を指差す。そちらの方に注目すると幾つもの箱のようなものが積み重ねられているのに気付いた。
「あれがなんです? どこかで見たことあるような箱ですが」
思い出せないのかファラはおもわず顔をしかめる。
「あれは迷宮都市カーディナスの出前ピザ屋『ゴッドチーズ』の箱よ」
「すごいネーミングだね」
「さらにいうならあの一番上に積まれている箱は『ゴッドチーズ』が昨日から販売を開始した新作『もーだめだチーズ』よ!」
「すっごい縁起が悪そうな…… というかよく知ってますね」
珍しく? サブリナに感心したような眼を向けるファラ。そんな視線を受けサブリナはなぜか勝ち誇ったかのような表情を浮かべながら胸を反らした。
「私も朝食べたしね。それにね! ふふーん! 私も『ゴッドチーズ』の常連だからね! ポイントカードも持ってるのよ!」
誇らしげに魔法のカバンより金色に輝くカードを取り出し見せつけてくる。
余談ではあるがサブリナの見せつけた金色のカードはピザ屋『ゴッドチーズ』のポイントカードであり一番上のポイントカードでもある。
というのもポイントカードにはランクがあり初めはブロンズ、次にシルバー、最後にゴールドという順である。そしてポイントカードのランクの上げ方であるがそれは買った枚数によるのだ。ブロンズからシルバーに上がるまでは百枚頼まなくてはならなく、シルバーからゴールドへはなんと五百枚頼まなければならないという鬼畜仕様である。(そのくせ特にポイントカードによる特典などはない)
さらには『ゴッドチーズ』で販売されているピザは良い素材を使っていることからなかなかにお高く銀貨三もするのであり。このことからサブリナがいかにその『ゴッドチーズ』に入れ込んでいるかがよくわかるというものである。
閑話休題
「なるほど。よくわかった」
納得したように頷くファラ。確かにサブリナの言う通り昨日発売したばかりのものが置かれているのであれば人がいるという根拠にしてもいいであろう。
「ところでさ、サブリナ」
「ん? なによ」
ファラの声が少しばかり低くなったことにサブリナは気づかない。しかし、気付いたネイトはさりげなく、かつ目立たないように後ろに一歩下がった。
「君さ、昨日装備整えるのにお金がないとか言って僕から銀貨七枚借りたよね?」
「う、うん」
ファラの確認にサブリナの目が泳ぐ。それもちょっとではなくかなりの挙動不審にだ。
「私はビザとやらは詳しくはないんですがね。それなりに高いことはわかるんだ」
「へ、へー」
さりげなくサブリナに向け一歩距離を詰めたファラ。それに怯えるようにサブリナは一歩後ろに下がるため距離は詰まらない。ただファラから放たれる圧力だけが増す。
「で、サブリナ。あんた、なにの装備を整えたの?」
「え、えーと指輪と防具と魔法道具の補充と……」
徐々に声が小さくなるサブリナを睨みつけたままファラは「ふーん」と興味がないような様子の返事をする。その様子を見ていたネイトはまるで猫に嬲られるネズミを連想してしまった。言うまでもなくファラが猫でサブリナがネズミである。
「ねえ、サブリナ。僕は別に怒って理わけじゃないんだよ? 本当のことを知りたいだけだし」
笑っているが笑っていない。矛盾する表現ではあるが今はそう言うしかない。ファラはにこやかに笑ってはいるが纏う魔力はそうは言ってはいないのだ。
「ほんと? 怒らない?」
「おこらないおこらない」
恐る恐る尋ねるサブリナに表面上はにこやかな笑みを浮かべたファラが答える。バカでも嘘だとわかる笑みを。だが残念なことに今この場にいるバカにはわからなかったようだ。
「じゃあ言うけどね。いやぁ! 私としたことがゴッドチーズの新作のピザをチェックするの忘れててさ! 慌てて買いに行ったのよ!」
許されると思ったサブリナはにへらぁと笑みを作りながらペラペラとしゃべりだす。言葉を発するたびにファラの額に青筋が浮かび上がっていることになど全く気づく様子など見られない。
「へー、で結局ピザにいくら使ったの?」
「銀貨五枚よ! 新作のドラゴンピザはおいしかったわ!」
思い出したかのようにサブリナは今にもよだれを垂らしかねないかのように顔をにやけさしていた。
肩を震わすファラになぞ気づくわけなどなく。
「そ……」
「そ?」
「装備整えるお金でピザかってんじゃネェェ!」
「怒らないって言ぎゃひ!」
もっともな言い分を叫びながらファラが振り上げた拳がサブリナの顔面に一切の加減なく突き刺さる。
「いいパンチだ。体重が乗って実に申し分ない」
吹き出た鼻血とサブリナが放物線を描くのをネイトは拍手をし、場違いな感想を述べながらみとどけるのであった。
「ファンタジー」の人気作品
-
-
3万
-
4.9万
-
-
2.1万
-
7万
-
-
1.3万
-
2.2万
-
-
1.2万
-
4.8万
-
-
1万
-
2.3万
-
-
9,711
-
1.6万
-
-
9,545
-
1.1万
-
-
9,448
-
2.4万
-
-
9,173
-
2.3万
コメント