床ぺろリスト! 魔法? 一発しか撃てませんが?

るーるー

必要な辱め

「うぅ……」
「ぷ、ぷぷ」
「ふふふ」


 肩を震わすサブリナとそれを笑いを堪えるかのようにしてサブリナから目線を逸らしているネイトとファラ。
 恥辱に震えるサブリナの頭にはネイトが手にしていたうさ耳の被り物が装備されており首には装飾が施された首輪つけられていた。そして当然のよう鎖はファラの手元に繋がっていた。


「うぅ、すごい辱めだわ!」
「賭けに負けるからだよ」


 逃げ出すほどに嫌がったサブリナが今首輪をつけている理由。それは必死に逃げたにもかかわらず途中で転び二人に追いつかれたのもあるのだが。


「二人がかりなんて卑怯よ! 勝負よ! 勝負で決めましょ!」


 泥だらけになりながらそんなことを言ってきたサブリナを若干哀れんだような気がし視線を送ったファラが了承し、コイントスで勝敗を決めることとなったのである。
 結果はうさ耳と首輪をつけていることからわかるようにサブリナの敗北。怒りと恥辱で顔を赤くしながらサブリナは自分でうさ耳と首輪を自分でつける羽目となったのだ。当然、ファラとネイトはニヤニヤと笑いながら見ていたわけである。


 初めは単なるジョークグッズであった首輪であるが時間が経つにつれてファラとネイトから笑みが消えていく。
 といってもその理由は悪いことをしたという意味ではなく。つけといてよかった、という意味合いからくるものである。
 サブリナは極度の方向音痴である。それは城門前のやりとりでもわかることではあるのだが彼女は町の中でも迷子になるという筋金入りでもあるのだ。


 さて、そんな彼女サブリナが道を歩けばどうなるか? きちんとした道があるにもかかわらず引き寄せられるかのように道から逸れるのである。しかもどうやら本人的にはまっすぐ進んでいる気でいるようなのだが普通に逸れる。ネイトとファラに挟まれているというのに一人で逸れるのだ。もはや道に迷う呪いを掛けられていると言ってもいいだろう。
 結果、ジョークグッズであった首輪が本来の意味(逃亡を防ぐとは違うが)での用途として使われる羽目になったのだ。


「着いたわぁぁぁしゃぁぁぁ!」


 徒歩で三時間。カルーバ村に到着するや否や突然大きな気勢を上げ、周囲の人を驚かせるとどこにそんな力があるのかと言わんばかりにサブリナは首につけられた首輪を引きちぎり地面に叩きつけると何度も何度も足で踏みつけていた。


((うわぁぁ))


 少し離れたとこから見ていたファラとネイトは若干引きながらその様子を黙って、しかし、後ずさりしながら見ていた。今のサブリナは羞恥の色ではなく憤怒に染まりきっており声をかけても届きそうになかったからである。


 そして内心で引いているのは同行者の二人だけではなかった。カルーバ村の住人もである。目も麗しい少女がいきなり奇声をあげ地面に地団駄を踏み始めるという光景はその者を変人と決めつけるには十分な判断材料だったと言えるであろう。無論、サブリナは地団駄を踏んでいたわけではなく引きちぎった首輪を踏んでいたのだがカルーバ村の住人には砂埃が立ち上がる足元が見えなかったのだ。


「ふぅふぅふぅ」


 肩で息をしながらようやく落ち着いたサブリナであったが最後に頭につけていたうさ耳を引っこ抜くと力一杯で放り投げた。その際にネイトは「あぁ!」と若干悲しそうな声を上げていたがそんなものはサブリナに聞こえるはずなかった。


「さっさと依頼を済ましてお金をもらうわよ!」


 爽やかな表情で汗を拭いながらもサブリナが告げた言葉は正に守銭奴と言わんばかりの言葉であった。


「と言っても僕、どこに届けるか知らないんだけど?」
「ぷぷー! 依頼もちゃんと確認しないなんてぷぷー!」


 サブリナの人を小馬鹿にしたような嘲笑にイラっとしたファラが腰の杖に手を伸ばそうとしたのに気付いたネイトが慌てたように口を挟む。


「た、確かビリフィタスという人の屋敷じゃなかったか?」
「ふふん、ネイトのくせによく覚えてるじゃない!」


 なぜか誇らしげに胸を反らしながら言うサブリナ。その姿にネイトとファラがさらに苛ついたのは言うまでもないだろう。
 そんな、二人に気づかないままサブリナは近くの若干引いている村人へと話しかけビリフィタスの家を尋ねていた。


「最近思うんだけどね。なんで僕はサブリナと友達なんだろうって」
「奇遇だな、我も最近そう思うんだ」


 二人して頭を悩ませているのだが総じてそんなものには答えが出ないものである。しかしあえて言うならば似たもの同士であると言うことになるのだがそんな事には誰もきづかないものである。


「ほら! さっさといくわよ!」


 先程まで憤っていたのを忘れたかのように笑顔を浮べながら二人に向かい手を振るサブリナを見てネイトとファラは苦笑しながらもそちらに向かい歩いていくのだあった。

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