雑食無双ヨルムン

るーるー

ヨルムン、獣を制す

「うらあぁぁ!」


 もう何度目かわからんのじゃがルーの腹に穴が開く。すでに日は落ちて周りはすでに暗くなっとるわけなんじゃが……
 ルーの奴も何度死んだかわからんのじゃが、どうやら復活地点が変わったようで何度ぶっ殺しても我の目の前に復活するようになったわけなんじゃが……


「jtidmtajgadpgamtp⁉︎」
「すでに話もできんのじゃが……」


 目は血走り、武器を使うということも忘れたのかよくわからん言葉を連発しながら素手で殴りかかってきとるわけなんじゃがな。
 どんだけレベルが上がっとるのか知らんがやたらと速い。当たれば多少衝撃でダメージを受けそうなんじゃがそんなもんを受けてやる義理はないわけじゃからな。
 適当に躱し、隙が出来たところに拳が蹴りをくれてやっとったわけなんじゃが……


「GAAAAAAA!」


 野生の獣ばりに勘が鋭くなりよったのさ隙が出来ぬように動きよる。しかも四足歩行で。
 機動もやたらと立体的じゃし本当に獣じゃよ。三発に一発位しか当たらんし。ま、当たったら即死なんじゃが。


「やりすぎたかのう?」


 飛びかかってくるルーをいなし、腹を蹴りつけて吹き飛ばしながらそんなことを口籠る。たまに死なんなこやつ。
 しかし、ここまできて止める方法もわからんわけじゃし。なによりこやつ正気に戻らんし。


「うーん」


 考え込んでいる時に爪で切り裂かんと飛びかかってきたルーの背中に足を振り落とし、そのまま地面に縫い付けるように叩きつける。もう獣じゃないのかこれ?


「GAFEEEE⁉︎」


 ルーの奴は叩きつけられた衝撃で肺から空気を吐き出し、ついでに無様な悲鳴を上げ、地面にヒビが入りまくっとる。
 そのまま足に力を入れたまま地面にルーを固定したままにして再び考え込むわけなんじゃがルーの奴は我の足の下でバタバタと暴れまくっておる。
 足をやたらと引っ掻きまくってくるからさらに足に力を入れて死なない程度の力を込めて踏みつけてやる。
 骨が軋むような音が響くとルーの奴は動きをようやく止めよる。


「ふむ、ようやく動きが止まったわけなんじゃが…… どうしたもんかのう」


 人間が死にすぎると獣ばりに知能が下がるとはおもっとらんかったからのぅ。どうやったら人間レベルまで戻すことができるんじゃろうか。


「あれなにしてるのさ?」
「ん?」


 背中から足を上げることなく声をかけられた方へと顔を向けると、金の髪の少年がやたらと食べ物を手に抱えて立っておった。


「下界はいいね! 天界にはない美味しいものがたくさんあるし!」


 満面の笑みで抱えている食べ物を口に放り込んでいく金の髪の少年。
 しばらくそやつを眺めておるわけなんじゃが……
 んー、どこかで見たことある気がするんじゃが。


「ねぇ、まさかとは思うけど僕のこと忘れてない?」
「まさか。お主はあれじゃろ? ワトソンじゃろ?」
「だれだよワトソン!」


 む、違ったか。まぁ、ワトソンなんて奴は我の知り合いにはおらんのじゃがな。


「僕だよ! サリハルだよ!」
「ああ、自称神様じゃろ?」
「だから僕だって言ってるじゃん!」
「嘘をつくでない。お主と同じ名前の我の知り合いはもっとブサイクじゃ」


 同じ名前の知り合いはおるんじゃがあやつはこんな美形ではなかったからのう。
 どちらかというとあやつは生理的嫌悪感を受けるような顔じゃったし。


「あれは色々とリソースが足りなかったからだよ! というか君は本当に昔から人の話をすぐに信じないよね!」
「当たり前じゃ。我が信じるのは基本的に自分で見たものだけじゃ」


 目に見えんスキルなどは別として我は大体は自分で試さんと納得はせんからな。じゃからルーに渡した『ぼうけんのしょ』については断言しておらんし予測するしか出来んわけじゃしな。
 我はあんなもん試したいと思わんからのう。


「まぁ、いいけどさ。それよりそれなにしてるの?」


 自称サリハルは我の足元で動かなくなりつつあるルーを指差してきよる。


「ん? ああ『ぼうけんのしょ』を使いすぎたんじゃよ」
「『ぼうけんのしょ』を? あれは蘇る時に死んだ光景がなんどもフラッシュバックするような代物だから二、三回使えば結構な数の人間が精神に異常をきたす物だよ? というかまだ存在してだんだね」


 やっぱりなんかヤバいものじゃったのか。
 というかなんなんじゃ死ぬ瞬間がフラッシュバックするとか拷問じゃないのか?


「元々は古代の拷問器具だったものだからね。それが古代文明が滅びて持っていたら死なないということで冒険者が持つようになった代物だし」


 そもそも『ぼうけんのしょ』という名前でもないんだよ。とサリハルはつまらなそうに告げる。
 ふむ、それなら確かに納得できる代物じゃのう。


「で、この子どんだけ死ぬ体感したの? 精神壊れかけてるけど……」
「さぁ、のう」


 何回吹っ飛ばしたかさえすでに忘れたしのう。
 しかし、困った。
 このままルーの精神が壊れたままじゃと……


「約束の食事が食べれん!」
「え、人の心配より食べ物なの?」


 当たり前じゃろ?

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