雑食無双ヨルムン

るーるー

ヨルムン、肉の正体を知る

「む、またこの肉か」


 立ち向かってくる奴をどうにかするのを諦めた我。いや、厳密に言うともい容赦ないくらいに殴り飛ばしてやって空の星にしてやっているんじゃがな。


 そんな我の視線の先にあるのは宿屋でも譲られたいくら食べても経験値が入り続ける肉である。しかも大量に積まれておる。
 大通りを歩いているだけで何軒もの店がこの黒い肉を山のよう置いて売っておるわけじゃしな。しかもどの店にも山積みでしばらく見ていたが誰もあの肉を買おうとせんし。


「ふむ、値段はと、五セルって……」


 やはりこの店も・・・安い。
 目の前に置かれている肉は皿に山盛りに積まれているにも関わらず先ほど食べていた焼き串よりもはるかに安い。


「確かにまずいんじゃがこの量でこの値段…… なんかやばいもんなんじゃろうか」


 すでに結構な量を食っているだけにこの恐ろしいまでに安い金額を見ると食べたらやばいものじゃったかもしれんという久しく忘れていた恐怖心が芽生えてくる。むしろ戦いではない恐怖心は初めてかもしれん。


「こ、この肉はなんでこんなに安いんじゃ?」


 意を決して肉を置いている店のものに声をかけてみることにする。肉を捌いていた店の者が我に気づき苦笑を浮かべてきたんじゃが、やっぱりやばいものじゃったんじゃろうか。


「その肉は遥か昔に空から降ってきて人類を救った肉さ。山のように巨大な肉でな、そいつが降ってきて約三千年経つが他の大陸にも落ちてきたみたいでな。まだ食べきれてないんだよ。まあ、凄まじく不味いんだがな」
「……三千年前なら腐ってるんじゃないのか?」
「それがな、全く腐らないんだよ。味も変わらねえしな。ま、いつまでも変わらなく不味いんだが」
「……」


 三千年前、他の大陸にも落ちたてきた、人類を救った、釈放。
 ぐるぐると我の頭の中を言葉が回りよる。やがて頭の中にピカっと光が灯り、我の頭が答えを導き出した。


「それ、我の肉じゃないかのぅ⁉︎」


 となると自分で不味い不味いと言いながら食っておったのは我の体と言うことか⁉︎
 そりゃ経験値がはいってくるはずじゃよな! 我、自分の体を取り込んでいただけなんじゃから! 言うならば自分の力を取り戻していたわけじゃし。


 ということは自分の肉を全部食べたら元の力を取り戻すことができるんじゃろうか?


 ふとそんな考えが思いついたんじゃがすぐに頭を振る。
 まず三千年位前から存在している肉なわけじゃしな。全部残っているわけではないじゃろう。妥当に考えるんじゃったら三分の一程残っていれば僥倖じゃろう。
 そして次に知らなかったとはいえ同族喰らい、いや自分喰らいをしておったわけじゃしな。食ろうていたものを知った今、食べるのに若干の抵抗が…… さほどないのぅ。昔からなんでも食べるgadtjhdtgamと呼ばれていたわけじゃしな。
 しかし、最後に食べるのを渋る理由。
 それはこの慣れることのない味、つまりは不味さじゃ。我の肉のくせにこの不味さはいただけん。どれだけの量がこの世界にあるのかは知らんがそれを全部、しかもこの不味い物を食べると考えると気が遠くなるというものじゃ。


「はぁ、力を取り戻すまでの道は遠いのう」


 とりあえず山盛りのヨルムン肉を買い占めた我は手に持つヨルムン肉のを見ながらぼそりと呟く。


「〈拾い食いの裸女〉ヨルムンだな? その命もぺがぁ!」


 ため息をついている最中にナイフを振り上げながら我に飛びかかってきた輩を手を横薙ぎに振るうだけで吹き飛ばす。


「…… この騒々しいのもいつまで続くんじゃろうなぁ」


 今日はやかましいからのぅ。ゴートゥヘルに戻ってさっさと寝るとするかのう。
 そう考えた我はゴートゥヘルへ向け足を進めるんじゃが…… 場所はどこじゃったかのう?


 結局、ゴートゥヘルにたどり着いたのは日が沈み、空気を読まずに挑んでくる挑戦者を三十人程星にしたころじゃった。

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