雑食無双ヨルムン
金になるもの
「おお、これは確かに見たことがあるやつじゃ」
いろんなところで開いておる店を覗いては旨そうなものを買いながら歩いた我は一際人だかりが多い所の中心に突き刺さる剣を見て呟いた。
人の手で作り上げたとは思えない精緻な意匠を施されたそれは我が見知る聖剣に間違いない。
台座らしきものに突き刺さる聖剣の周りにはなにやら聖剣を模した色々な食べ物が売られているらしく大変賑わっておるようじゃ。
我も近くで売っておる聖剣カステラとやらの小袋を買い近くに設置されている長椅子に座り、一つ取り出してみる。見るとその聖剣カステラとやらやは聖剣を小さく模したお菓子のようじゃな。鞘の精緻な模様まで再現しとるとはいつの間にか人間はドワーフに匹敵するほどの手先の器用さを手にしたようじゃな。そんなことを考えながら聖剣カステラを口中に放り込む。
「うむ、美味美味」
なにやらほんのりと甘い。
しかし、食べごたえが全くないのう。口の中に入れたらすぐに溶けるようにしてなくなってしまった。いや、これはこれでうまいのじゃがな。
聖剣カステラを口に次々と放り込みながら聖剣の突き刺さる広場を眺めていると時折やたらとガタイのよい輩が聖剣に近づいていくのが目にはいる。
特に何か悪いわけでもないようで周りの人間も特に止めることなく様子を見ているようじゃったので我もなにをするのかに興味が湧いたので聖剣カステラを食べながら眺めることとした。
「ふんぬ!」
大声を上げ、体の筋肉が盛り上がるような音が響き大男は聖剣の柄を握りと力を込め引き抜こうとしているようじゃが聖剣は全くと言っていいほどに抜ける様子は見えぬ。
しばらくすると大男は諦めたかのように台座から退くと連れらしき者達が先の大男と同じように聖剣を引き抜こうと頑張っているようじゃ。
「あれはなにをしとるんじゃ?」
空になった聖剣カステラの袋を逆さにして僅かに残っていたカステラの残骸を口に注ぎながら我は呟いた。
「ん、お嬢ちゃんは知らんのかい?」
我と同じように長椅子に座っていた腰の曲がった老人が我の独り言を聞いたのか声をかけてきた。
「なにをじゃ?」
「ふむ、その様子じゃ、王都出身ではなさそうじゃな」
そういうと老人が語り出したのは至極単純な話じゃった。
曰く、あの聖剣を引き抜けた者こそが次代の勇者ということらしかった。
「と言っても魔人や魔族と言った輩は三千年ほど前の世界暴乱で大半が死に絶え魔界に引きこもっとるらしいがの」
「世界暴乱?」
なんじゃそれは。
三千年ほど前のことならば我も知っておってもおかしくないと思うんじゃがな。
「ああ、世界蛇と呼ばれる名前を奪われた蛇が星を食おうとしたことのことじゃよ。その時に二つほど陸を食ったとの話じゃがその食った大陸というのが魔界から攻め込んできた魔人や魔族の大陸じゃったという話じゃ」
「…… ほー」
我、名前がないけど歴史に残っとるのか!
しかし、言われてみれば確かに大陸を喰っとる時にちくちくと攻撃をしてきとった輩は明らかに人間ではなかった気がするのう。あれが魔人や魔族だったんじゃろうか。
なんか鬱陶しかったから尾で吹き飛ばしたり、食べていた大陸を吐き出して迎撃した記憶はあるんじゃがのう。
「まあ、とりあえずはあの聖剣を引き抜けた者は次の勇者として認められこの国の貴族として迎え入れられるわけじゃ。あの場所にあるのもたくさんの人々に聖剣に触れる機会を与え勇者を見つけという意味があるわけじゃ」
「効率的じゃのう」
引き抜けた者を召抱えるという話は人を集めるのにはいい話じゃろうしな。
こうやって老人と話をしている間にも次々と聖剣を引き抜こうと人々が集まってきているようじゃし。
きぞく、というのがいまいちなにかわからんのだがとりあえずは召抱えるということはつまりは食事を提供してくれるということじゃろうか?
そういう意味なら我は是非にも召抱えられたいのじゃがな。
「つまりは我が聖剣を引き抜けばいいわけじゃよな? そうすればお金が手に入ると」
「お嬢ちゃんがかい? 確かなそうではあるんじゃが聖剣は人を選ぶんじゃよ。あの聖剣が抜けたのは長い王国の歴史の中でも三人だけじゃからな」
王国とやらにどれだけな歴史がるのか知らんがあの聖剣が気難しいのかそれとも抜けない奴らが大したことがないのか判断に困るところじゃな。
老人にやんわりと止められたわけじゃが我はすでに抜く気満々である。
手にしていた袋を丸めると老人に手渡す。
「話の礼じゃ」
「いや、ただのゴミじゃろ?」
老人の戯言を聞き流しながら我は軽い足取りで人々の集まる聖剣の方へと歩みを進めるのじゃった。
いろんなところで開いておる店を覗いては旨そうなものを買いながら歩いた我は一際人だかりが多い所の中心に突き刺さる剣を見て呟いた。
人の手で作り上げたとは思えない精緻な意匠を施されたそれは我が見知る聖剣に間違いない。
台座らしきものに突き刺さる聖剣の周りにはなにやら聖剣を模した色々な食べ物が売られているらしく大変賑わっておるようじゃ。
我も近くで売っておる聖剣カステラとやらの小袋を買い近くに設置されている長椅子に座り、一つ取り出してみる。見るとその聖剣カステラとやらやは聖剣を小さく模したお菓子のようじゃな。鞘の精緻な模様まで再現しとるとはいつの間にか人間はドワーフに匹敵するほどの手先の器用さを手にしたようじゃな。そんなことを考えながら聖剣カステラを口中に放り込む。
「うむ、美味美味」
なにやらほんのりと甘い。
しかし、食べごたえが全くないのう。口の中に入れたらすぐに溶けるようにしてなくなってしまった。いや、これはこれでうまいのじゃがな。
聖剣カステラを口に次々と放り込みながら聖剣の突き刺さる広場を眺めていると時折やたらとガタイのよい輩が聖剣に近づいていくのが目にはいる。
特に何か悪いわけでもないようで周りの人間も特に止めることなく様子を見ているようじゃったので我もなにをするのかに興味が湧いたので聖剣カステラを食べながら眺めることとした。
「ふんぬ!」
大声を上げ、体の筋肉が盛り上がるような音が響き大男は聖剣の柄を握りと力を込め引き抜こうとしているようじゃが聖剣は全くと言っていいほどに抜ける様子は見えぬ。
しばらくすると大男は諦めたかのように台座から退くと連れらしき者達が先の大男と同じように聖剣を引き抜こうと頑張っているようじゃ。
「あれはなにをしとるんじゃ?」
空になった聖剣カステラの袋を逆さにして僅かに残っていたカステラの残骸を口に注ぎながら我は呟いた。
「ん、お嬢ちゃんは知らんのかい?」
我と同じように長椅子に座っていた腰の曲がった老人が我の独り言を聞いたのか声をかけてきた。
「なにをじゃ?」
「ふむ、その様子じゃ、王都出身ではなさそうじゃな」
そういうと老人が語り出したのは至極単純な話じゃった。
曰く、あの聖剣を引き抜けた者こそが次代の勇者ということらしかった。
「と言っても魔人や魔族と言った輩は三千年ほど前の世界暴乱で大半が死に絶え魔界に引きこもっとるらしいがの」
「世界暴乱?」
なんじゃそれは。
三千年ほど前のことならば我も知っておってもおかしくないと思うんじゃがな。
「ああ、世界蛇と呼ばれる名前を奪われた蛇が星を食おうとしたことのことじゃよ。その時に二つほど陸を食ったとの話じゃがその食った大陸というのが魔界から攻め込んできた魔人や魔族の大陸じゃったという話じゃ」
「…… ほー」
我、名前がないけど歴史に残っとるのか!
しかし、言われてみれば確かに大陸を喰っとる時にちくちくと攻撃をしてきとった輩は明らかに人間ではなかった気がするのう。あれが魔人や魔族だったんじゃろうか。
なんか鬱陶しかったから尾で吹き飛ばしたり、食べていた大陸を吐き出して迎撃した記憶はあるんじゃがのう。
「まあ、とりあえずはあの聖剣を引き抜けた者は次の勇者として認められこの国の貴族として迎え入れられるわけじゃ。あの場所にあるのもたくさんの人々に聖剣に触れる機会を与え勇者を見つけという意味があるわけじゃ」
「効率的じゃのう」
引き抜けた者を召抱えるという話は人を集めるのにはいい話じゃろうしな。
こうやって老人と話をしている間にも次々と聖剣を引き抜こうと人々が集まってきているようじゃし。
きぞく、というのがいまいちなにかわからんのだがとりあえずは召抱えるということはつまりは食事を提供してくれるということじゃろうか?
そういう意味なら我は是非にも召抱えられたいのじゃがな。
「つまりは我が聖剣を引き抜けばいいわけじゃよな? そうすればお金が手に入ると」
「お嬢ちゃんがかい? 確かなそうではあるんじゃが聖剣は人を選ぶんじゃよ。あの聖剣が抜けたのは長い王国の歴史の中でも三人だけじゃからな」
王国とやらにどれだけな歴史がるのか知らんがあの聖剣が気難しいのかそれとも抜けない奴らが大したことがないのか判断に困るところじゃな。
老人にやんわりと止められたわけじゃが我はすでに抜く気満々である。
手にしていた袋を丸めると老人に手渡す。
「話の礼じゃ」
「いや、ただのゴミじゃろ?」
老人の戯言を聞き流しながら我は軽い足取りで人々の集まる聖剣の方へと歩みを進めるのじゃった。
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