メイドと武器商人

るーるー

メイドと負けられない戦い

「お前は! お前だけはゆるさぁぁぁぁぁん!」
「相変わらず沸点が低いね君は」


 ゴーレムが下半身は走りながら、ですが上半身だけをわけもわからず動かしまくるという不気味な動きをしてきた事に私とアオイは警戒し、アオイは刀を私は少しばかり音がなる体を動かし拳を構えます、


「一撃必殺だぁぁぁぁぁ!」


 ゴーレムが雄叫びを上げながら人間では不可能な程に体を捻り、その反動から巨大な拳を繰り出してきます。それはもう普通に受け止めれば魔導列車マギトレインごと私達を粉々になりかねない程の速度と威力を兼ね備えていそうです。
 普通では迎撃不可能。
 そう判断した私は背後のご主人様へ視線だけ動かし、ご主人様が頷くのを確認し、再び魔力回路パスをご主人様と繋ぎ、魔力を体へと取り込みます。


「ガハハハハハ! そんな細い体でマッスラーの豪腕を止めれるものか!」


 これマッスラーと言うんですか……
 見た感じは完全にドラム缶にドラム缶をくっつけて手足を生やしたようなフォルムなんですが……


「リップス」


 ご主人様の声が背後から聞こえます。それは僅かばかりな不機嫌な声音で。


「砕いて」
「はい」


 しかし、逆らうという選択肢など私の中にはありません。
 故に、魔力で満ちる身体を動かし構えます。


「つばぁだれらぁぁぁぁぁぁ!」


 正確な発言をしていただきたいものです。なにを言ってるかわかりませんからね。まぁ、拳が繰り出された所から「潰れろ」あたりでしょうかね。
 迫る巨大な拳に合わせるようにしてアオイは跳躍、紙一重で巨拳を空中で身体を回転さしながら躱し、いつの間に抜いたのか二振り目の刀を持ち、手に一つずつ持った刀を巧みに振るいお返しと言わんばかりに斬撃を放っていきます。
 しかし、放たれた刃はゴーレム、確かマッスラーとかいう名前だった物の腕を切り裂けずに硬質な音を立てながら弾かれます。その際にアオイは僅かばりに眼を見開き、後ろからはご主人様の「へぇ」という感嘆の声が聞こえました。
 アオイはというと弾かれた拍子にどこから縄のようなものを取り出し、それを魔導列車マギトレインへと投げると縄は出っ張り部分に巻きつき、アオイは落下してミンチにならなくて済んだようです。
 ただのドラム缶もどきがご主人様の作り上げた武器を弾くとは……
 いや、そんなことを考えてる場合ではありませんね。
 当初の私の予定では飛び出したアオイの刀でゴーレムの腕を切ってもらうはずだったのですが拳は変わらずこちらに向かってきています。
 魔導回路パスから流れてくる魔力を四肢へと回し、残り少ない魔導液体マジカルリキッドで拳を覆い、迫る拳へと備えます。
 魔導液体マジカルリキッドも残りが少ない。補充用のものはありますが取りに移動している間に魔導列車マギトレインが潰れそうですし補充は無理でしょう。
 迫った拳に条件反射で体が動き、魔力を纏った拳がマッスラーの拳と交わり、マッスラーは僅かに後ろへと吹き飛びます、


「あ、あぶない」


 四肢に満ちる魔力のせいで私には傷一つありませんが足場にしていた魔導列車マギトレインの床はマッスラーの拳を私が受けた際に僅かに沈んでいます。下手に受けたら魔導列車マギトレイン自体が崩壊しそうですね。


 そんなマッスラーはというと弾かれた拍子に速度が落ちたのか魔導列車マギトレインに置いていかれるように姿が小さくなっていきました。
 ですが、すぐに足を残像が残るほど気持ち悪く高速で動かし始め、再び魔導列車マギトレインへと追いつくとまた私達ののる車両と並走し始めます。


「ガハハハ! まさかマッスラーの拳を吹き飛ばすとは!」


 ゴーレムがまた無表情ながら楽しそうに喋ってきます。さっきまでご主人様に怒っていたはずなのにいきなり上機嫌な感じです。ですが頼みますから喜怒哀楽を付けて話してほしいものですね。


「ハッハハハハぁ! 気に入ったぞ! よし! 捕獲してバラして構造解析だ!」
「え、ご主人様以外に中をいじられるのはちょっと……」


 というか発言がマッドすぎます。
 いや、それ以前にあの馬鹿でかいゴーレムに解体なんて不可能でしょう⁉︎


「さあ! バーラバラだぁぁぁぁ!」
「断ります!」


 負けられない戦いですね!

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