魔女メルセデスは爆破しかできない
魔女は魔法? を唱えた
「メルセデスぅぅぅぅ!」
少しばかり昔の事を考えていたメルセデスの耳にベロニクの声が聞こえてきた。
ベロニクの怒鳴り声と共に怒りを形に変えたかのように雷が森を駆け巡り木や地面、ついでに運が悪かったモンスターをも抉り取る。
もはやメルセデスを探しているのか自然破壊をしているのか全くわからない状況であった。
「あれ、どうするんですか?」
「ボク的には見つからずに逃げたいんだけど……」
言葉を告げ終える前にベロニクの体から迸った雷がメルセデスとアィヴィの隠れていた大木へと閃く。
それから少しして焦げるような匂いと共に大木はゆっくりと倒れていき大きな音を立てた。
焼き切られ、切断面からうっすらと煙を上げながら倒れた大木を見たメルセデスとアィヴィは口を閉じると無言で視線を交わす。
(バレた?)
(バレてないと思いますが……)
声には出さず、視線でのみ二人は会話する。
主人とメイドの組み合わせならば声を出さずにアイコンタクトで確認し合うくらい楽勝であった。
「みぃぃつけたぁぁぁ……」
空恐ろしい声が聞こえた。
ゴーレムであるアィヴィも思わず肩が震えるほどの声が。
その声が聞こえた段階でメルセデスはというと腰のベルトに差し込んでいた杖を反射的に引き抜き振り返りながらも構えた。
「ふ、ファイヤーボール!」
引き抜いた杖を目の前の悪鬼のごとく顔を歪めて雷を周囲にばら撒いているベロニクに向けると短く魔法をメルセデスは唱えた。
杖の先端に細かく小さな魔法陣が幾つも重なるように展開され回転、魔法陣に魔力が集まっていく。
そして魔法陣に魔力が集まっていくのに比例するように周囲の魔力が枯渇していく。
木々や草花が一瞬にして枯れ落ち、周りの土地すらも一瞬で死んだことがわかる。
さらには展開されていた魔法陣が不気味な色を発しながら点滅を始める。それは魔法の素人が見ても異常とわかる光景だった。
その光景を見たベロニクは目を見開き、汗を流し始めた。
対してアィヴィは驚きながらも冷静にベロニクへと向けてと杖を向けているメルセデスへと素早く近づいていくとメルセデスの手を掴み、即座に上へと勢いよく跳ね上げた。
「あ……」
「危ないです」
アィヴィが淡々と告げ、メルセデスの持つ杖が跳ね上げられた瞬間、魔法陣の回転が止まり、砕けた。そして杖の先端が眩く光ったと思うと、
ドオオオオオオン!
メルセデスにとっては慣れ親しんだ音である爆音と目が眩むような光がベロニクの頭上を駆け抜けていった。
その頭上の木々というか進路上を綺麗さっぱりと消しとばしながら。
「あ、あぁぁ……」
死の恐怖を身近に味わったせいか腰が抜けたらしいベロニクは地面へとへたり込む。心なしか地面に水跡が広がっているような気がするがそこにメルセデスは気付いていなかった。
「マスター、いくら怖かったからといって魔法の中でも最強系統である爆発魔法を人の顔面に向かって放つのはどうかと思うのですが…… 見てください。ベロニク様が漏らしてます」
「ほ、ほっといてくださいまし!」
しかし、メイドは容赦がなかった。
そして話しかけられたメルセデスはというと一瞬にして魔力を使い切ってしまい、魔力が無くなり意識を失うという魔力欠乏症に陥り、白目を剥いて地面に転がっていた。
ベロニクはローブで必死に跡を隠そうとしてるのだがそれを綺麗好きのアィヴィが許すわけがなかった。
「汚れてるのですから早く下着は脱いでください。スカートとローブは濡れてないようなのでさっさと脱いでください」
「ちょ、待って! 無理やり脱がそうとしないで!」
綺麗好きの本性を見せたアィヴィが先程までベロニクに怯えていた様子など微塵も見せずに手をワキワキと動かしながらベロニクへと近づくと嫌がるベロニクの服、というか下着を無理矢理剥ぎ取りにかかった。
ベロニクは必死の形相で下着を死守しているのだが掃除の鬼と化した、しかもゴーレムであるアィヴィの怪力の前には魔法に特化した魔女であるベロニクではまるで歯が立たずあっさりと下着を奪い取られるのであった。
「うう……」
「汚い下着など履いておくなど許せません」
奪い取った下着をどこからか取り出したであろう袋へと入れるとアィヴィはそれをポケットへと入れる。
「わ、わたくしの下着をどうする気ですの⁉︎」
「? 後で洗うだけですが? あぁ、安心してください」
いつも無表情であるはずのアィヴィが珍しく、本当に珍しく人にわかるほどににこやかな笑みを浮かべる。
もし、それをメルセデスが意識を失わずにその顔を見ていたのであればこう言ったであろう。悪い笑顔だと。
「アィヴィはベロニク様のように女性の下着の匂いを嗅いで興奮するような趣味はありませんので」
「っっ! そんな趣味はわたくしにはありませんわ!」
顔を赤くしながら、と言っても本当のことを言われたら赤くなっているのかそんな恥ずかしいことをしていないから怒りで赤くなっているのかの判断はつかないのだが。
「はぁ、もういいですわ」
疲れたようにため息吐いたベロニクはゆっくりと立ち上がり、軽く手を振るうと何も持っていなかった手の中に杖が現れた。
「マスターと違ってとても魔女っぽい」
そんな魔女らしい立ち振る舞いにアィヴィは感嘆の声を上げる。
「魔女ですからね⁉︎ わたくしは魔女ですからね!」
一応メルセデスも魔女ではあるのだがそんなことは今のベロニクの頭の中になかった。
しかし、アィヴィが少しばかりにやにや笑っているのを見て何を言っても無駄なことを悟ると取り出した杖へと腰をかけた。
ベロニクが腰かけたのを察知したのか杖は音もなく浮かび上がり徐々に高度を上げていく。
「今回はここまでですわ。決着は魔女の夜会でつけるとしますわ! そうメルセデスさんに伝えておいてくださいまし!」
やがて見えなくなるほどの高さに上がったベロニクは倒れて意識のないメルセデスを指差しながら宣言。
そんなベロニクを見上げながらメルセデスを担ぎ上げたアィヴィは本当に、本当に小さな声で呟いた。
「パンツ穿いてないから色々丸見えですよ」
「おぼえてなさいよぉぉぉぉぉ!」
どうやら聞こえたらしいベロニクは物凄い勢いで空を翔け遠ざかっていった。
「あんまり早く飛ぶとスカートがはためいて見えそうな気がしますが……」
その後、魔女界に戻ったベロニクは空から降りる際に下着を穿いてないことを他の魔女から揶揄われ、ベロニクが更にやる気を出してしまった事をメルセデスは知らなかった。
少しばかり昔の事を考えていたメルセデスの耳にベロニクの声が聞こえてきた。
ベロニクの怒鳴り声と共に怒りを形に変えたかのように雷が森を駆け巡り木や地面、ついでに運が悪かったモンスターをも抉り取る。
もはやメルセデスを探しているのか自然破壊をしているのか全くわからない状況であった。
「あれ、どうするんですか?」
「ボク的には見つからずに逃げたいんだけど……」
言葉を告げ終える前にベロニクの体から迸った雷がメルセデスとアィヴィの隠れていた大木へと閃く。
それから少しして焦げるような匂いと共に大木はゆっくりと倒れていき大きな音を立てた。
焼き切られ、切断面からうっすらと煙を上げながら倒れた大木を見たメルセデスとアィヴィは口を閉じると無言で視線を交わす。
(バレた?)
(バレてないと思いますが……)
声には出さず、視線でのみ二人は会話する。
主人とメイドの組み合わせならば声を出さずにアイコンタクトで確認し合うくらい楽勝であった。
「みぃぃつけたぁぁぁ……」
空恐ろしい声が聞こえた。
ゴーレムであるアィヴィも思わず肩が震えるほどの声が。
その声が聞こえた段階でメルセデスはというと腰のベルトに差し込んでいた杖を反射的に引き抜き振り返りながらも構えた。
「ふ、ファイヤーボール!」
引き抜いた杖を目の前の悪鬼のごとく顔を歪めて雷を周囲にばら撒いているベロニクに向けると短く魔法をメルセデスは唱えた。
杖の先端に細かく小さな魔法陣が幾つも重なるように展開され回転、魔法陣に魔力が集まっていく。
そして魔法陣に魔力が集まっていくのに比例するように周囲の魔力が枯渇していく。
木々や草花が一瞬にして枯れ落ち、周りの土地すらも一瞬で死んだことがわかる。
さらには展開されていた魔法陣が不気味な色を発しながら点滅を始める。それは魔法の素人が見ても異常とわかる光景だった。
その光景を見たベロニクは目を見開き、汗を流し始めた。
対してアィヴィは驚きながらも冷静にベロニクへと向けてと杖を向けているメルセデスへと素早く近づいていくとメルセデスの手を掴み、即座に上へと勢いよく跳ね上げた。
「あ……」
「危ないです」
アィヴィが淡々と告げ、メルセデスの持つ杖が跳ね上げられた瞬間、魔法陣の回転が止まり、砕けた。そして杖の先端が眩く光ったと思うと、
ドオオオオオオン!
メルセデスにとっては慣れ親しんだ音である爆音と目が眩むような光がベロニクの頭上を駆け抜けていった。
その頭上の木々というか進路上を綺麗さっぱりと消しとばしながら。
「あ、あぁぁ……」
死の恐怖を身近に味わったせいか腰が抜けたらしいベロニクは地面へとへたり込む。心なしか地面に水跡が広がっているような気がするがそこにメルセデスは気付いていなかった。
「マスター、いくら怖かったからといって魔法の中でも最強系統である爆発魔法を人の顔面に向かって放つのはどうかと思うのですが…… 見てください。ベロニク様が漏らしてます」
「ほ、ほっといてくださいまし!」
しかし、メイドは容赦がなかった。
そして話しかけられたメルセデスはというと一瞬にして魔力を使い切ってしまい、魔力が無くなり意識を失うという魔力欠乏症に陥り、白目を剥いて地面に転がっていた。
ベロニクはローブで必死に跡を隠そうとしてるのだがそれを綺麗好きのアィヴィが許すわけがなかった。
「汚れてるのですから早く下着は脱いでください。スカートとローブは濡れてないようなのでさっさと脱いでください」
「ちょ、待って! 無理やり脱がそうとしないで!」
綺麗好きの本性を見せたアィヴィが先程までベロニクに怯えていた様子など微塵も見せずに手をワキワキと動かしながらベロニクへと近づくと嫌がるベロニクの服、というか下着を無理矢理剥ぎ取りにかかった。
ベロニクは必死の形相で下着を死守しているのだが掃除の鬼と化した、しかもゴーレムであるアィヴィの怪力の前には魔法に特化した魔女であるベロニクではまるで歯が立たずあっさりと下着を奪い取られるのであった。
「うう……」
「汚い下着など履いておくなど許せません」
奪い取った下着をどこからか取り出したであろう袋へと入れるとアィヴィはそれをポケットへと入れる。
「わ、わたくしの下着をどうする気ですの⁉︎」
「? 後で洗うだけですが? あぁ、安心してください」
いつも無表情であるはずのアィヴィが珍しく、本当に珍しく人にわかるほどににこやかな笑みを浮かべる。
もし、それをメルセデスが意識を失わずにその顔を見ていたのであればこう言ったであろう。悪い笑顔だと。
「アィヴィはベロニク様のように女性の下着の匂いを嗅いで興奮するような趣味はありませんので」
「っっ! そんな趣味はわたくしにはありませんわ!」
顔を赤くしながら、と言っても本当のことを言われたら赤くなっているのかそんな恥ずかしいことをしていないから怒りで赤くなっているのかの判断はつかないのだが。
「はぁ、もういいですわ」
疲れたようにため息吐いたベロニクはゆっくりと立ち上がり、軽く手を振るうと何も持っていなかった手の中に杖が現れた。
「マスターと違ってとても魔女っぽい」
そんな魔女らしい立ち振る舞いにアィヴィは感嘆の声を上げる。
「魔女ですからね⁉︎ わたくしは魔女ですからね!」
一応メルセデスも魔女ではあるのだがそんなことは今のベロニクの頭の中になかった。
しかし、アィヴィが少しばかりにやにや笑っているのを見て何を言っても無駄なことを悟ると取り出した杖へと腰をかけた。
ベロニクが腰かけたのを察知したのか杖は音もなく浮かび上がり徐々に高度を上げていく。
「今回はここまでですわ。決着は魔女の夜会でつけるとしますわ! そうメルセデスさんに伝えておいてくださいまし!」
やがて見えなくなるほどの高さに上がったベロニクは倒れて意識のないメルセデスを指差しながら宣言。
そんなベロニクを見上げながらメルセデスを担ぎ上げたアィヴィは本当に、本当に小さな声で呟いた。
「パンツ穿いてないから色々丸見えですよ」
「おぼえてなさいよぉぉぉぉぉ!」
どうやら聞こえたらしいベロニクは物凄い勢いで空を翔け遠ざかっていった。
「あんまり早く飛ぶとスカートがはためいて見えそうな気がしますが……」
その後、魔女界に戻ったベロニクは空から降りる際に下着を穿いてないことを他の魔女から揶揄われ、ベロニクが更にやる気を出してしまった事をメルセデスは知らなかった。
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