魔女メルセデスは爆破しかできない
魔女のメイドはカコン、ジャー、カコン
(狼は諦めたようですね)
幾度も木から木へと飛び移りながら背後を確認したアィヴィはそう判断した。
敵が迫ってきていないとわかればわざわざ足場の悪いところを跳ぶ必要はない。そう考えたアィヴィは躊躇うことなくかなりの高さのある大木から一気に飛び降りた。
結構な高さから飛び降りたにも関わらず着地する瞬間も特に大きな物音も立てず、さらにはスカートが僅かに揺れる程度でアィヴィは優雅に着地する。
すでに先ほどの喧騒はなくなり、森特有の鳥の囀りや動物の鳴き声だけの静かな物音だけが周囲に響き渡っていた。
しくしくしくしく
籠の中から響くメルセデスの泣き声以外は……
ため息をつきながら背負っていた籠を下ろし、アィヴィは籠の蓋をそっと、わずかに中が見えるくらいにズラして中を覗き見る。すると中には薬草特有のきつい匂いとその薬草に埋もれながら涙を流すメルセデスの姿があった。
そんな泣き状態のメルセデスの瞳と覗き込んでいたアィヴィの瞳がばっちり合ったわけなのだがアィヴィは無言で蓋を閉めなおした。
「なんで閉めるの⁉︎ もう戦闘終わったんでしょ⁉︎ ボクもう暗くて狭いとこやだよ! だしてぇぇぇぇぇぇぇ!」
暴れた。
それはもう籠がダンスを踊ってるんじゃないかと思うくらい揺れるほどに暴れた。
仕方なしに出したくはないけどもアィヴィは渋々と言った様子で蓋を開けメルセデスを出した。薬草まみれの。
「苦い、口の中がめちゃくちゃ苦い! 」
「水です」
顔をしかめているメルセデスに対してアィヴィはどこからか取り出したコップに入った水を手渡す。コップには水滴までついておりかなり冷えているのが見て取れた。
そのコップを受け取ったメルセデスは喉を鳴らしながら一気に飲み干した。
「ぷはぁ! もう一杯頂戴!」
飲み干し、空になったコップを力強くアィヴィの前へと突き出す。
それを仕方なしといった感じで受けとる。
カコン、ジャー、カコン
アィヴィの口が顎が外れるかというほどに下まで下がると口の奥から音を立てて水を吐き出し始めた。しばらく水を吐き出していたアィヴィであったがやがてコップが満たされると水は止まり、顎が元に戻る。
「どうぞ」
「飲めないわよ! というかそうやって今まで水出してたの⁉︎」
アィヴィが手渡してきた冷たい水の入ったコップを今度は受け取らずにメルセデスは叫んだ。
アィヴィはというとわからないとばかりに首を傾げていた。
「アィヴィはゴーレムです。しかもそこらへんのゴーレムとは格が違います」
無表情ながらも心なしか誇らしげにアィヴィは大してない胸を張る。
その姿はまるで「私は間違っていません」と宣言しているようにも見えなくはない。
「そんなの知ってるよ! でも水とかはほら、不衛生じゃないの?」
「ちゃんと煮沸消毒は行なっています」
さあさあ、と言わんばかりにアィヴィがコップをメルセデスに押し付けようとしてくる。主にそれなりの大きさを誇る胸に押し当てるようにして。
「痛い、痛いから! 飲む! 飲むからボクの胸に押しつけるようにしないで!」
グイグイとゴーレムの力を誇示するようにしてコップが割れず、水がこぼれないような絶妙な力加減でアィヴィはメルセデスの胸へとコップを押し付けていたがメルセデスがコップを手にしたことで力を抜いた。
「うん、いや、美味しいんだけどどこか釈然としないものが……」
悩ましげに腕を組みながらメルセデスがそう呟いていたがそのメイドの視線はメルセデスが腕を組んだことで強調されている胸へと向けられていた。しばらくの間メルセデスの胸を凝視していたアィヴィは無意識に視線を自分のストーンとした胸へと落とし触った後に悔しそうに歯ぎしりをするとメルセデスに背を向ける。
そして無造作に手を伸ばし何かを色々と取っていた。
「とりあえず、今日は工房に戻ろう。ボク疲れちゃったし」
「マスター、疲れた時には甘いもの」
「え、うん、ありがとう」
アィヴィが手を出してきたのでメルセデスも手を出して物を受け取ろうとした。
そして落とされる物。
ウジャウジャウジャウジャウジャウジャ
色々とみるのも口にするのもおぞましい造形をした虫がメルセデスの手の腕を大量に這い回っていた。
「自慢してきた恨み」
「なんのことぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ⁉︎ ヒィィィィィィィィィあ……」
這い回る感触とグロテスクな光景に悲鳴をあげていたメルセデスだが頭の許容量を完全にオーバーしたのか白目を剥いて倒れ込んだ。倒れ込んだメルセデスが地面につく前にアィヴィは抱え、片手で胸を揉む。そう、自分よりある胸を……
「…… なんたる駄肉。今度のお給料でアィヴィもばすとあっぷ」
密かに握りこぶしを作り今度の給料の使い道を定めたメイドは薬草の入った籠を再び背負うと主人を脇に抱え工房へ向かい歩き出したのであった。
幾度も木から木へと飛び移りながら背後を確認したアィヴィはそう判断した。
敵が迫ってきていないとわかればわざわざ足場の悪いところを跳ぶ必要はない。そう考えたアィヴィは躊躇うことなくかなりの高さのある大木から一気に飛び降りた。
結構な高さから飛び降りたにも関わらず着地する瞬間も特に大きな物音も立てず、さらにはスカートが僅かに揺れる程度でアィヴィは優雅に着地する。
すでに先ほどの喧騒はなくなり、森特有の鳥の囀りや動物の鳴き声だけの静かな物音だけが周囲に響き渡っていた。
しくしくしくしく
籠の中から響くメルセデスの泣き声以外は……
ため息をつきながら背負っていた籠を下ろし、アィヴィは籠の蓋をそっと、わずかに中が見えるくらいにズラして中を覗き見る。すると中には薬草特有のきつい匂いとその薬草に埋もれながら涙を流すメルセデスの姿があった。
そんな泣き状態のメルセデスの瞳と覗き込んでいたアィヴィの瞳がばっちり合ったわけなのだがアィヴィは無言で蓋を閉めなおした。
「なんで閉めるの⁉︎ もう戦闘終わったんでしょ⁉︎ ボクもう暗くて狭いとこやだよ! だしてぇぇぇぇぇぇぇ!」
暴れた。
それはもう籠がダンスを踊ってるんじゃないかと思うくらい揺れるほどに暴れた。
仕方なしに出したくはないけどもアィヴィは渋々と言った様子で蓋を開けメルセデスを出した。薬草まみれの。
「苦い、口の中がめちゃくちゃ苦い! 」
「水です」
顔をしかめているメルセデスに対してアィヴィはどこからか取り出したコップに入った水を手渡す。コップには水滴までついておりかなり冷えているのが見て取れた。
そのコップを受け取ったメルセデスは喉を鳴らしながら一気に飲み干した。
「ぷはぁ! もう一杯頂戴!」
飲み干し、空になったコップを力強くアィヴィの前へと突き出す。
それを仕方なしといった感じで受けとる。
カコン、ジャー、カコン
アィヴィの口が顎が外れるかというほどに下まで下がると口の奥から音を立てて水を吐き出し始めた。しばらく水を吐き出していたアィヴィであったがやがてコップが満たされると水は止まり、顎が元に戻る。
「どうぞ」
「飲めないわよ! というかそうやって今まで水出してたの⁉︎」
アィヴィが手渡してきた冷たい水の入ったコップを今度は受け取らずにメルセデスは叫んだ。
アィヴィはというとわからないとばかりに首を傾げていた。
「アィヴィはゴーレムです。しかもそこらへんのゴーレムとは格が違います」
無表情ながらも心なしか誇らしげにアィヴィは大してない胸を張る。
その姿はまるで「私は間違っていません」と宣言しているようにも見えなくはない。
「そんなの知ってるよ! でも水とかはほら、不衛生じゃないの?」
「ちゃんと煮沸消毒は行なっています」
さあさあ、と言わんばかりにアィヴィがコップをメルセデスに押し付けようとしてくる。主にそれなりの大きさを誇る胸に押し当てるようにして。
「痛い、痛いから! 飲む! 飲むからボクの胸に押しつけるようにしないで!」
グイグイとゴーレムの力を誇示するようにしてコップが割れず、水がこぼれないような絶妙な力加減でアィヴィはメルセデスの胸へとコップを押し付けていたがメルセデスがコップを手にしたことで力を抜いた。
「うん、いや、美味しいんだけどどこか釈然としないものが……」
悩ましげに腕を組みながらメルセデスがそう呟いていたがそのメイドの視線はメルセデスが腕を組んだことで強調されている胸へと向けられていた。しばらくの間メルセデスの胸を凝視していたアィヴィは無意識に視線を自分のストーンとした胸へと落とし触った後に悔しそうに歯ぎしりをするとメルセデスに背を向ける。
そして無造作に手を伸ばし何かを色々と取っていた。
「とりあえず、今日は工房に戻ろう。ボク疲れちゃったし」
「マスター、疲れた時には甘いもの」
「え、うん、ありがとう」
アィヴィが手を出してきたのでメルセデスも手を出して物を受け取ろうとした。
そして落とされる物。
ウジャウジャウジャウジャウジャウジャ
色々とみるのも口にするのもおぞましい造形をした虫がメルセデスの手の腕を大量に這い回っていた。
「自慢してきた恨み」
「なんのことぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ⁉︎ ヒィィィィィィィィィあ……」
這い回る感触とグロテスクな光景に悲鳴をあげていたメルセデスだが頭の許容量を完全にオーバーしたのか白目を剥いて倒れ込んだ。倒れ込んだメルセデスが地面につく前にアィヴィは抱え、片手で胸を揉む。そう、自分よりある胸を……
「…… なんたる駄肉。今度のお給料でアィヴィもばすとあっぷ」
密かに握りこぶしを作り今度の給料の使い道を定めたメイドは薬草の入った籠を再び背負うと主人を脇に抱え工房へ向かい歩き出したのであった。
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