世界の破壊を阻止せよ[運命を握るのは幼女?!]

千桜

奇妙な噂6

「うわ!おとなしくしろって!」
 元いた場所へ引き返すと、唸り声をあげながら、白い獣が首を鈍器のように振り回している。

「どうした」
 冷静に問いかけると、手綱を握っていたが、ムート達が戻る寸前に急に暴れだしたという 。
 辺りを警戒したが、その時は異常は見当たらず何事も起こらなかったという。

 ムートも隊員も、改めて察知しようと注意力を一気に高め、兵士特有の、気配を押し殺した偵察を開始した。

 しかし、特に異様な気配もせず、原因が分からなかったので、取り敢えず宥めることに集中した。

 アインホルンは戦闘馬故の強力なパワーがある。温厚な性格の為、忘れがちだが波のように押し寄せる軍を逞しい脚力と明晰な頭脳で捌く勇猛さは兵士たちの気力を奮い立たせてくれる。 
 しかし、一度手がつけられなくなると降参したくなる程だ。

 生死の縫い目を共に駆け抜けている自分達ですら、興奮状態の彼を宥めるには苦労させられる。

 なんとか4人掛かりで落ち着かせ、損壊物が無いことを確認した。

 人波を逸れた樹木に繋いでいるとはいえ、幼子や、老人が急に近付いて来ないとも限らない。

 素早く安全を確保し、帰る支度を整えた。

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