目が覚めたら悪役令嬢になっていたので最強のヴィランズになってみたかった(失敗)

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これは名案だわ!②

 乙女ゲーム内では自分の婚約者に破談を突きつけられ、もっと性格がねじ曲がってしまい、大公様の息子やら国で噂の魔術師、さらには顔の美しさに評判のある子爵の息子に唾を付けにいく、というゲームらしい完全なヒロインの当て馬ポジションなんだけど、エンディングではなんと、どのルートを通ってもヒロインを殺害する1歩手前でヒーローに斬られ(もしくは魔術を使われて)一生残る傷を顔につけられるというなんとも惨い傷つけられ方をする。


 他にもゲーム内ではグロテスクな表現が多くあったため、“そういうもの”として扱われてたから、ひと味違う乙女ゲームとして人気を集めたんだと思う。


 私もその1人だった。


 元々クリスティーナのキャラデザインが気に入ってたから始めたものだから、どのルートを通ってもトラウマ級のグロイラストが大画面に写った時は倒れそうになった。


 マベル・カエラも知っている。クリスティーナを何度も助けて、ヒロインに出し抜かれないように目を光らせる役を担ってた。


 ……なんだ、知り合いばっかりじゃん。いや、一方的に知ってるだけなんだけどね。

 クリスティーナが倒れるってシナリオは知らなかったから多分、ヒロインと知り合う前の話か。ということは嫌でもヒロインとはぶち当たることになる。確か最初の出会いはヒロインが17歳になって、挨拶回りに来るところからだから……。


 「マベル? 日付だけ忘れてしまったわ。教えて頂戴」


 シナリオ通りの彼女の口調に合わせてマベルに言い放つ。髪の毛を弄る癖も忘れない。鼻にかかった嫌味な声は彼女のチャームポイント(だと思ってる)だ。
 マベルは心做しかほっとした表情で日付を言った。

 「はい。5月22日でございます」

 ヒロインの誕生日は7月。という事はあと2ヶ月ね!
 という事は、クリスティーナの婚約者から破談を突きつけられるのは1ヶ月後。
 ふむふむ、時系列がわかってきた。

 人間、自分が誰か分かった途端に万能になれる気がする。自分が何をすべきなのか、どうすれば最適なルートを進むことが出来るのか、今ならわかる。しかも今はシナリオを把握しているチートつきだ。

 決めた!
 最強のヴィランズになるぞ!!

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