ちょっと珍しい奴隷を買ったんだが、どうせ俺のものなんだし虐待してみようと思う

子供の子

ちょっと珍しい奴隷を買ったんだが、どうせ俺のものなんだし虐待してみようと思う

 それなりの実力を持った冒険者というのは、大抵が奴隷という存在を武器として、或いは防具として扱って更に富を得る。
 そのうちの一人に、これから俺もなる訳だが。


 日本から転生してきた時はまさかこうなるとは思ってなかった。


「いらっしゃいませ旦那様。良いのがいっぱい揃ってますぜ」
「戦闘用の奴隷を買いたいのだが」
「こちらになります。へっへ」


 禿で丸々と太ったおっさんが売り主か。
 っぽくて分かりやすいな。


 案内された先は、すえた臭いのする、控え目に言っても人間が長時間いて良いような環境ではなかった。思わず眉を顰める。


「ここにいるのはみんな戦える奴らでさあ。主の矛となり盾となり得る種族ばかり集まってます」
「一人で選ぶ。席を外してくれ」
「へい」


 おっさんが来た道を引き返して行く。


 さて。
 《万物創造》のスキルでマスクを造り、それで臭いをシャットアウトする。
 これを見られるのは色々とまずいからな。


 戦闘用の奴隷というのをじっくりと見分して行く。


 狼人族の男、エルフ族の女、竜人族の男――


 なるほど、《鑑識眼》で見ても確かに戦力になりそうな奴隷ばかりだ。


「…………こいつは」


 一人。
 奥の方にいた――狐系の獣人の女が目についた。
 16歳で剣士か。


 鑑識眼によると、かなりの戦闘力を有してはいるが……


「病気持ちか」


 病気というか、虫というか。
 厄介なものを抱え込んでるな。


 しかし、値段が安い上に恐らくこの中で一番強い。
 見てくれもよく見れば悪くない。


 こいつにするか。













「へえ、良いんですかい? そいつは不治の病を患っている上に、混血ですぜ」
「問題ない」


 こうして俺は、普通の戦闘奴隷の相場の半額以下で奴隷を手に入れる事が出来た。
 ここからが面倒なんだがな。















「良いか。俺がこれからお前の主人だ。俺が死ねと言ったら死んで盾になれと言えば盾になれ」
「はい」


 名前をコンと名付けた。
 狐の耳が特徴的だからだ。実際は狐人族と狼人族の混血だが。ポチかコンならコンだろう。


 とりあえずあれだな。


「ちょっと来い」
「? はい」


 首を傾げつつついてくるコン。
 着いた場所は風呂場だ。
 俺はそれなりに稼ぎが良い。
 この世界では普通風呂なんてものを一軒家につける家庭は少ないらしいが、ちょっとぐらい懐が痛んだって俺は湯船に浸かりたかったのである。


「服を脱げ」
「……はい」


 ボロボロの服――というか麻布を脱ぐコン。
 栄養が足りていないのか、あばら骨が浮いている。
 栄養が足りていない――というか。


 なるほど、病気の名前だけじゃピンと来なかったがそういう病気か。
 なら治すのも簡単だな。
 とりあえず風呂の後だが。


 シャワーを向けると、コンは後ずさりをしようとした。


「止まれ」


 主としての命令権を行使し、コンの動きを止める。


「はい」


 《万物創造》のスキルで洗剤を大量に創り出し、コンの体に塗りたくって行く。あわあわ。


「あわあわ」
「はい?」
「何でもない。気にするな」


 しかし、こういった洗剤を知らない人間からすればこれ(あわあわ)も警戒すべきものなんだろうな。コンがさっきからびくついている。
 シャワーで洗い流してやると……


 うん。
 見違えるようだ。


 さてと。


「服を着ろ。そしてそのあとにこれを飲め。噛まずに飲めよ。そのあとに便所へ行け」
「……? はい」


 《万物創造》で創った服と、とある薬を渡す。
 そして俺は耳栓を創って両耳に詰める。




 しばらく待っていると、心なしかげっそりとした様子のコンが便所から出てきた。耳栓を外し、《鑑識眼》で見てみる。


 全部出たようだな。
 なんて事はない。
 虫が腹に居ついていたから、それを強制的に追い出させただけだ。


「そこに座って待ってろ」
「……?」
「違う、地べたにじゃない。椅子にだ」


 こちらの世界に来る前から自炊はしていた。
 この世界だと《万物創造》があるからあちらよりも楽に料理が出来る。魔法もあるしな。火とか水の。シャワーや湯船もそれで機能させている。






「食え」
「……ですが」
「食え」


 食わす。
 鑑識眼によればこいつはかなりの凄腕のはずだが、こんなにやせ細っていてはその実力を発揮できないだろう。普通の半額以下とは言え高い買い物だ。変なところで損をしたくない。


「しかし、主様と同じ食卓について同じ食事をとるというのは――」
「良いから食え。命令だ」


 頑固だなこいつ。
 奴隷ってそういうもんなのだろうか。


「美味しい……です」
「別に世辞はいらないが」
「本当に美味しいです」


 コンは泣いていた。
 感情表現のオーバーなやつだ。


 どんな苦しい体験をしてきたか知らないが。


 …………。


「どこへ行かれるのですか?」
「便所だ」





















 コンを購入してから半年経った。
 今となってはすっかり馴染み、初期程の奴隷根性は消え去った。
 というか一ヵ月前くらいに奴隷契約は切った。


 それでもコンは俺の傍から離れないらしいが。


 それはまあ、奴の好きでやっている事だ。
 俺は別に辞めさせる気はない。




 ある日の食卓。
 コンがとある質問をしてきた。




「主様は何故、女性なのに『俺』と言うのでしょうか?」


 今更何を言うんだこいつは。


「何故って、そっちの方がそれっぽいだろう」

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