女神と一緒に異世界転移〜不死身の体と聖剣はおまけです〜

子供の子

第75話 終わらない

 やっちまった……


 という始まり方ももう二回目くらいだろうか。
 ミラとの時もこんな感じだった気がする。
 雰囲気に流されて。
 まぁセレンさんもそうと言えばそうか。


 こんなん雰囲気に身を任しちまえば良いんだ。昨日の俺が悪い。今日の俺は悪くない。……とは流石に言えないが。
 そこまで割り切れる奴は異常だ。


 隣で寝ているパルメを見る。


 黙ってれば最上級の可愛さだ。


 喋ると残念さ加減が上回るが。
 ……いや。
 結局昨日俺はパルメにハメられた形でハメたんだからもう馬鹿には出来ないか。


 頭がガンガンする。
 昨日はかなり飲んだからな……


 今見てみるとこれ、度数30%とか書いてあるんだが。
 日本で普通に売ってるアルコール飲料って大体5%くらいだっただろ。何%を超えると燃えるんだっけか。少なくとも流石にこれは燃えそうにないが。


 ロシアだったか。寒いからって言って度数バカ高いのガポガポ飲んでる国は。寒い国は大変なんだなぁ、て程度に思ってたが、いざ自分が30%の飲むとあいつらは化け物なのかと思うぜ。90%くらいのやつとか飲んだら急性アルコール中毒で死んでしまうんじゃなかろうか。


 現実逃避はこれくらいにして。


 現代日本ではいわゆる『危険日』でも命中する確率は相当低いらしいが、パルメはかなり確信的に子どもを産むと言っていた。多分そういう薬があるんだろう。嘘みたいだろ。完璧な避妊薬とかもこの世界にはあるんだぜ。普通に薬局らしきところに売っているらしい。


 部屋の隅とかよく見たら怪しげなお香とか炊いてあるしな。
 大丈夫かこれ。ちゃんと合法なのか。


 少し鼻を近づけて匂いを嗅いでみると、それだけで軽く眩暈がする。
 昨晩よりも弱まってはいるだろうのにこれ程とは。大丈夫なのか本当に。


 ……まぁ俺がしでかしたことを酒だとか薬だとかのせいにするのも良くないか。
 一年後には俺がパパになるのか……
 両親に異世界行きを告げる時はまさかこんな事になるなんて微塵も考えてなかったな。なんか漠然と魔王っぽい奴を倒して終わりだと思ってた。


 実際は魔王倒しても終わらないし、それより強い魔族とかいう訳の分からんの出てきてるし、敵だと思ってた魔神に助けられるしで意味が分からない。


 恩を売っているだけ、という結論に落ち着きはしたが、どこか腑の落ちない表情をしていたのは俺もセレンさんも同じだ。
 何か見落としているような気がする。


 俺にはそれが何なのか全然分からないが。


 俺が考えても分からないか。
 考えても分からないから、魔神も俺にコンタクトを取ってきてるんだろうしな。


 単純で明解な答えだ。
 俺には分からん。


 やっぱパルメの事をバカに出来ないな俺。


 それにしても起きないなーこいつ。
 悪戯してやろうか。
 悪戯って感じで書くのとイタズラってカタカナで書くのだと後者の方が妙に厭らしく感じるのは俺だけだろうか。


 とりあえず俺が今からするのは悪戯だ。


 どこかにペンとかないかな。
 額に肉と漢字で書いても分からないだろうから、なんかもっと斬新なものを考えよう。


 …………駄目だ思いつかん。


 そもそもペンが見つからない。
 ラブホにペンなんて無いか。必要ないものだし。


 どんなニッチなプレイするつもりなんだよ。


 でもあれだな。
 ボールペンとメモ帳くらいは日常的に持ち歩いとくべきだな。ボールペンで人体に落書きは無理だが。痛いよ普通に。


 というかこの世界ボールペンとかあるのだろうか。


 ギルドで自分の名前書いたあのペンは何ペンと言うのだろう……
 筆ペン?
 そんな感じのやつだった気がする。


 筆ペンなら人体に落書きも可能だ。プレイにも応用できる。
 いや違う。そういう話じゃなかったはずだ。俺の性癖の話じゃない。そもそも俺にそういう趣味はない。普通が一番だ。普通が。


 結局アイスはバニラ味が一番美味いんだよ。


 チョコとかイチゴとか抹茶とかに浮気して最後はやっぱりバニラに戻るんだよ。
 ……そう考えると変態的な嗜好に移っていくのは自然な事なのか?


 駄目だ。
 お香のせいで思考が変になってる。


 まだアルコールが残っているのかもしれない。
 パルメも起きる気配ないし、時間は無制限で入ったはずだ。
 もうひと眠りするのも一つの手か。


 ……しかしあれだな。


 こんなすぐ近くでぐうぐう寝てる美少女がいるって、日本にいた時には考えられなかったことだよな。そもそも普通じゃあり得ないレベルの容姿だし。アイドルなんかになった日には全てのアイドルが過去になるだろう。


 そう考えるとこの場面で何もしないのは勿体ないのではないだろうか。
 美少女。ベッド。睡眠。起きる気配なし。


 うーむ。
 心躍るワードばかりじゃないか。


 何もしないのはむしろ不自然だろう。だって華の18歳だぜ。19かも。まだまだ元気な頃合いだ。黙って見ているだけというのも無いだろう。


 ……はっ。
 いかん、イタズラの方に心が動きかけていた。


 これもそれもあれも黙ってれば可愛いパルメが悪い。
 早く起きてそのアホさっぷりを俺に見せてくれれば万事解決なのに。


 しかし起こすのも忍びない。
 さっきからちょこちょこ部屋を動き回っているのに全く起きる気配を見せない。


 本当は起きてるんじゃないかと思う程だ。


 ……起きてるのか?


 昨日、パルメに一杯食わされたばかりじゃないか。
 演技で。


 実は起きているのかもしれない。


 …………ふむ。
 この説は案外説得力があるんじゃないか?


 寝ているフリをしている。
 その理由は定かではないが、これはもしかしたらもしかすると据え膳というやつなのかもしれない。それで痛い目を一度見ている俺だ。


 ここで再び見逃してしまえば男としての格が下がってしまう。


 それだけは避けなければならない。
 絶対にだ。


 確かめる必要がある。


 本当にパルメが寝ているのかどうかを。


 だがどうやって確かめる?
 話しかけてみるか?
 寝ているフリをしているのならば反応はしないか。


 大声で叫んでみるというのはどうだろう。
 隣の部屋の人に迷惑がかかるという事はないだろう。この部屋の防音設備は中々のものだ。だが、大声では本当に寝ていたかどうかの判別が難しい。


 本当に寝ていても大声には反応してしまうからな。


 寝ていたら反応しないけど、寝てるフリだったら反応する事を考えるのだ。


 ……体に触れてみる、というのはどうだろう。


 本当に寝ているのならば反応しないくらいの範囲で。
 寝ていても自身の体には敏感な者というのもいるが、パルメがそれに該当する者ならば俺が部屋でゴソゴソしている時点で起きているだろう。


 有用な策のように思える。
 むしろ有用にしか思えない。


 これ程完璧な手は他にないと言い切れる。
 俺の頭も案外バカに出来たもんじゃないな。


 土壇場ではこのような冴えた解答だって出せるのだ。


 という訳で次は体のどこに触れるか、という問題である。
 まずパルメは仰向けに寝ている。
 だから体の後ろ部分は無理だ。お尻とか背中とか。太ももの裏とか。


 体の前面。
 つまり太ももの前側とか胸とかお腹とか顔とか。


 こいつ脚めっちゃ綺麗なんだよな。
 セレンさん並みに巨大な胸に目が行きがちだが、こいつの本領は脚だと思う。脚なっげえしな。俺より身長低いのに俺と同じくらいかそれより長いもん。


 むしろ長すぎだろってレベル。決して俺が短足な訳ではない。決して。


 脚だろうか。やはり。順当に行くならそうだろう。
 次点でお腹、大穴に胸と言ったところだろうか。


 おっと勘違いしてもらっちゃあ困る。俺の性癖じゃない。触っても気付かれなさそうな順番に挙げただけだ。そこのところを誤解してもらっては困る。


 さて。
 脚だろう。
 やっぱり脚だろう。


 ここはどう考えても脚しかないと思う。それ以外の選択肢なんて最初から無かった。


 脚だ。


 どう触るかも鬼門だな。
 がっと行くかそっと行くか。


 起きているか起きていないかを確かめるという意味ではそっと行くべきなのだろうが、なんかどうでも良くなってきたしがっと行ってしまおう。


 がっと。


 ぴく、とパルメの体が動いた。


 この反応は……
 分からん。


 分かる訳ないだろう冷静に考えて。
 でももうどうでも良いや。


「おい起きてんだろパルメ」
「…………」
「返事がないならもっといろんなところを触るぞ。触りまくるぞ」
「…………」


 よし了承は得た。


 つぅ、と指を這わせて行く。
 ちなみに致したまんま寝てるから、毛布を剥がしてしまえばマッパである。俺はバスローブを羽織っているが。流石にマッパで部屋をうろつきはしないさ。


 ぴく、ぴく、とパルメの体が微細動を繰り返す。
 やっぱり寝てるのか起きてるのかよく分からんな。


 脚から始まった触診は腹部にまで及んだ。
 しかしパルメは起きない。頑として起きない。本当に寝てんのかな。


 ぶっちゃけ寝たフリをしている確率の方が高いと踏んでいたのだが。よもや俺の読みが外れたか……?


 しかしまだこれだけじゃあ分からない。
 大穴へと移行する必要がありそうだ。


 一段と柔らかい場所へ指が埋まる。
 男には絶対ない柔らかさだ。


 ……起きないな。


 なんか虚しくなってきた。


 指を離して、ベッドから立ち上がる。


 ……寝るか。
 と振り返って見ると、パルメが目を開いていた。


 こちらをじっとりと睨みつけるような目線だった。


「…………今ので終わりか?」


 ぼそっと呟かれたその言葉。


 終わりな訳がなかった。

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