女神と一緒に異世界転移〜不死身の体と聖剣はおまけです〜
第72話 仲直り
「《魔族》じゃ」
「魔族?」
レッサーデーモンを撃退してめでたしめでたし――で終わる訳にはいかない。あいつは意味深な台詞を幾つも残してるし、魔神がわざわざ介入してきたのだろうから相当な事態なのだろう。
という訳で戦闘中、何やら知っていそうな雰囲気を出していたラリアに話を聞き始めたのは良いのだが――
レオルとラリアの雰囲気がやばい。
一触即発って感じの。
正直レオルが本気でやろうと思えば一瞬でラリアを殺せるだろう。
もしそうしようとしたら俺が身を挺して止めるが、こいつの全力ってまだ見えてないんだよな……
俺で止められるのだろうか。
というか魔神のやろう、四人で戦ってようやく勝てるとか言ってたくせにレオル一人で余裕だったじゃねえか。一発で終わってたじゃん。
「儂も言い伝えでしか聞いた事は無いがの。この世界と対をなす世界があるらしいのじゃ。そこにいる者たちを総称して《魔族》と呼んでおる」
「……聞いたことあります? セレンさん」
「いえ……すみません、初めて聞きました」
セレンさんでも知らない情報か。
女神の知恵が及ばない範囲でそんな世界があるのか?
「どの文献にも載っとらん。知っとるのは儂と――」
ちら、というかギロ、という感じでレオルの方をラリアが睨んだ。
「余ぐらいだろうな。先代の光のハイエルフなら知っていたかもしれんが、いつの間にやら死んでおったし」
怖えよこの二人の関係。
マジで何があったんだ。
ラリアが一人でキレてるならまだしも、レオルも何やら思うところがあるようでそれもまた不可解だ。レオルの性格から考えて、よっぽどの事じゃないとこうはならないと思うのだが……
「レオルはどれくらい知ってるんだ? 魔族とやらについて」
「余も詳しくは知らん。大昔の――数万年前の女神と魔神が関わっているらしいが、それ以上の事はな」
女神と魔神……?
セレンさんとあいつ……ではないだろう。
ならばメロネさんとあの魔神だろうか。
……いや、違うだろう。
数万年前と言ったら、メロネさんもまだ女神をやっていたか更にその前の人のはずだ。メロネさんが魔族とやらに関わっているのなら、何かしらの情報を俺に与えてくれていただろうし。
「数万年前って、誰が女神やっていたんですか?」
「……私たちはそれぞれ、先代からしか情報を貰わない事になっているんです。なので考えられるのは、メロネさんの更に前……もしかしたら前の前かもしれないです」
そんな昔からこの世界はあるのか。
というか、この四人の平均年齢が高すぎるお陰で感覚が鈍っているが数万年前ってどんな規模だよ。元の世界で言えば人類が生まれるか生まれないかくらいのスレスレラインじゃないのか?
いやでも恐竜がいた時代が何億年前とかって話だし、そう考えると数万年前程度なら……いやいや。やっぱ鈍ってるよ。俺なんて18歳だぜ。もしかしたら19歳になってるかも。どっちにしろ20年も……一世紀の五分の一も生きてないような赤ん坊みたいなもんだ。
……待てよ。
あいつが魔神と名乗っているのは、あいつが魔法を造ったから、じゃないのか?
話の整合性が取れていない。
魔神が数万年前にも存在していたというのは変だ。
……どうなってんだ一体。
「儂が聞いた話じゃと、あちら側とこちら側は決して結び付かない、全く別個の――真逆の世界なはずなんじゃがな。だからあちらの世界にいるはずの魔族がここにいたのはおかしいんじゃ」
「余はここへ来る途中であんなのをもう一匹見つけたぞ」
「そう言えばそんな事言ってたな。そいつはどうしたんだ?」
「普通に始末したが。余の通路を妨害したのでな」
「……あ、そ」
だが、今のラリアの話を聞く限り、あれが二匹もこちらに来ているのは明確な異常事態だ。あり得ない事が起きている。
……駄目だ。俺には分からん。
魔神なら分かるのか?
だがこっちからあいつにコンタクトを取る方法とかないしな……
何の前触れもなく突然現れやがる。
そしてごちゃごちゃ言って消える。
今回は正直助かったが。
レオルが来ていなければ、あの場面を潜り抜けられていたかは五分五分だ。多分あの超必が当たれば勝ててただろうが、外れてれば一巻の終わりだからな。
五分五分、と言っといてあれだが、ほぼ100%当たると思ってはいた。タイミング、態勢、俺自身のレベルアップ等々色んな要素を加味して間違いなくいけると思った上でのレオル登場だ。
こいついればもう大体全部何とかなるんじゃないか。
まぁ、立場もあるしそんな簡単な問題じゃないか。
やはり俺が強くなる他ない。
ただ……
俺がどうにか出来る問題ではないかもしれないが、レオルとラリアの関係をどうにかしておきたい。
髪色と顔色の悪い大人と黒髪おかっぱロリのにらみ合いをいつまでも見てるのは色んな意味でハラハラする。
どっちからアプローチしてくか……
レオルかなぁ。
「なあおいレオル」
「どうした」
「ラリアと何があったか知らないけどさ、仲良くやってこうぜ」
「…………おぬしが言うのならば、余は吝かでないが」
「…………」
それを聞いたラリアがぴくりと反応した。
ぴきりと反応したと言っても良いかもしれない。
あんまり良い感じの反応じゃなかった。
……何があったのマジで。
怖いよお前ら。
「ラリア……さん」
呼び捨てにしようと思ったら思いっきり睨まれたので思わずさんを付けてしまう俺。び、ビビった訳じゃないし。後腐れなく行こうと思っただけだし。
心の狭い幼女だ。
呼び捨てくらい別に良いじゃん。
「レオルと仲直りする気とかあるか?」
「あぁん?」
輩かお前は。
なんだその態度は。
「……まぁ、してやらん事もない。かわいい弟子の頼み事じゃしの」
「じゃあ――」
「が、条件がある」
「……なんだよ。俺にか? レオルにか?」
「お前に、じゃ」
「出来る範囲ならなんでもやってやるさ」
普通こういうのってレオルに条件を出すと思うんだがな。なんで俺なのか。まあいいさ。出来る範囲ならなんでもやってやる。こういうのも何だが、多分大抵の事は出来るしな。
「ほれ」
と。
ラリアは草履(みたいなやつ)から右足を抜いて、俺に向かって突き出した。どうしろと。足でも揉んで欲しいのか?
「俺マッサージとか出来るタイプじゃないぞ」
「違うわ。吸血鬼の足が凝る事なんてある訳ないじゃろう」
それもそうだ。
不死身なんだからな。基本的に体調はベストな状態で保たれているはずである。吸血鬼によって不死身の度合いは違うが、レオルの眷属ならば不死身性に疑いもないだろう。
……あれ?
吸血鬼って主従関係がかなりはっきり出るって聞いてた気がするんだが。レオルが主で、ラリアが従だよな? この場合。なんでこいつこんなはっきりとレオルを拒絶出来てるんだ。
「はよせんか」
「だから何をだよ」
「舐めよ」
「な、なめ……!?」
セレンさんが俺より先に反応した。
お陰で俺は逆に落ち着く事が出来た。
そういえばこういう奴だったなこいつ。
生粋のサドみたいな奴だ。この手の要求をしてくる可能性は十分にあった。完全に思考の外だったが。流石にロリババアに足を舐めろなんて言われる日が来るとは思いませんて。
どうするかな。
足舐めるのは普通に嫌だ。
確かにこいつは見てくれはかなりの美幼女だが、流石に足を舐めるのをご褒美と言って享受するほど俺も女に飢えてない。既に三人の嫁がいてその上に嫁になるだろう人が一人いるんだからな。
俺がドMかつロリコンだったら喜んでこの条件を受けていただろうが、残念ながら俺はその属性を両方とも持ち合わせてない。
ミラは微妙なラインだが、セーフなはずだ。
絵面は結構危ないけど、あいつは年齢より幼く見えてるだけだから大丈夫。
……そういう意味じゃこいつはセーフどころじゃない気もするな。
ロリババアだもん。
合法ロリ。
反語は違法ロリだろうか。それとも脱法ロリだろうか。脱法って法に触れてなさそうに聞こえるけど、普通にアウトなんだよな。確か。
脱法ロリ。
凄まじい響きである。なんという言葉を生み出してしまったのだろうか。もう響きだけでやばい。この単語を発した時点で捕まりそうな勢いを感じる。
「やれぬのか? やれることはやるのではなかったのか?」
「ラリアさん、流石にこれは……!」
「小娘は黙っとれ。儂は小僧と話しておるのじゃ」
お前セレンさんになんて口ききやがる。
だが、どっちが年上なのかとか分からないな。……セレンさんは永遠の18歳なんだっけ。ラリアは見た目は永遠の小学生だけど、何百年とか下手したら何千年とか生きてるんだよな。
「……よし分かった、舐めようじゃないか」
「ほう」
作戦αで行こう。
βなんて考えてないけど。
「ただし先に言っておくことがある。俺はお前くらいの見た目の奴が大好きで大好きで、日常的に足を舐めたいと思っていた。夢にまで見るほどだ。だからもしかすると足だけじゃ済まずにあんなところやこんなところまで舐めようとしてしまうかもしれない。いや、かもしれないじゃない。してしまう。間違いなくしてしまうだろう。抵抗は無駄だ。何故なら俺の方が力が強いからな。力ずくでやれば取り押さえて舐めるくらいの事は造作もない。舐めてやろう。舐めつくしてやろう。俺の舌が触れてない場所などないという程に舐めしゃぶってやろう。今更逃げようったってそうは行かないぜ。問屋が卸さねえ。絶対に俺はお前を舐めるし、嫌がろうが泣こうが喚こうが暴れようが舐める。むしろそういうのの方がそそる。分かるか? 俺はそういう趣味なんだよ。それでも舐めて良いと言うのならば舐めよう。舐めつくしてしんぜよう」
ラリアは。
ドン引きしていた。
というか、セレンさんがかなり引いていた。
違うんです。
そういう作戦なんです。
とアイコンタクトで伝えようとしたら、目を逸らされた。
後で迅速で適切なフォローが必要だなこれは。とりあえずこの場をまず切り抜けよう。
「さぁどうしたラリアさん。足が若干引き気味だぜ。それじゃあ舐めにくいだろう。ああ、俺が自分から逝けば良いのか。すまないな、わざわざお前の手を――足を煩わせるほどの事じゃあないもんな。安心して俺に身を預けてくれ。大丈夫、舐める以上の事は多分しないから。ちょっとくらいしかしないから。先っちょだけだから」
「……もう良いわ」
す、とラリアは足を下げて、草履(らしき履き物)に足を通し直した。
「まさかお前がそんな業の深い性癖だったとは思いもせんかった。儂が悪かった」
「俺に謝るなよ。貴重な謝罪を俺に使うなよ。レオルとの仲直りに使えよ」
「別に貴重でもなんでもないわ。儂が悪いと思えば謝りもする。…………すまなかった、吸血鬼の王。許して欲しいとは言わんが、せめて弟子の前でくらいはそういう事にしておいて欲しい」
そう言って。
ラリアは頭を下げた。
レオルは――
「……いや。あれは余にも――否。余にこそ非があった事を認める。こちらこそすまなかった。おぬしの意をくんでやれなかった」
そう言って、頭を下げた。
ラリアと同じように。
……なんとかなった、のか?
何があったのかとかは分からないが。
なんだろうな。
昔恋仲だったとかだろうか。
まぁ、俺の関与するところじゃないか。
とりあえず、一触即発の雰囲気だけは払拭出来ただけでも良しとしよう。
後でセレンさんへのフォローが大変だが。
「魔族?」
レッサーデーモンを撃退してめでたしめでたし――で終わる訳にはいかない。あいつは意味深な台詞を幾つも残してるし、魔神がわざわざ介入してきたのだろうから相当な事態なのだろう。
という訳で戦闘中、何やら知っていそうな雰囲気を出していたラリアに話を聞き始めたのは良いのだが――
レオルとラリアの雰囲気がやばい。
一触即発って感じの。
正直レオルが本気でやろうと思えば一瞬でラリアを殺せるだろう。
もしそうしようとしたら俺が身を挺して止めるが、こいつの全力ってまだ見えてないんだよな……
俺で止められるのだろうか。
というか魔神のやろう、四人で戦ってようやく勝てるとか言ってたくせにレオル一人で余裕だったじゃねえか。一発で終わってたじゃん。
「儂も言い伝えでしか聞いた事は無いがの。この世界と対をなす世界があるらしいのじゃ。そこにいる者たちを総称して《魔族》と呼んでおる」
「……聞いたことあります? セレンさん」
「いえ……すみません、初めて聞きました」
セレンさんでも知らない情報か。
女神の知恵が及ばない範囲でそんな世界があるのか?
「どの文献にも載っとらん。知っとるのは儂と――」
ちら、というかギロ、という感じでレオルの方をラリアが睨んだ。
「余ぐらいだろうな。先代の光のハイエルフなら知っていたかもしれんが、いつの間にやら死んでおったし」
怖えよこの二人の関係。
マジで何があったんだ。
ラリアが一人でキレてるならまだしも、レオルも何やら思うところがあるようでそれもまた不可解だ。レオルの性格から考えて、よっぽどの事じゃないとこうはならないと思うのだが……
「レオルはどれくらい知ってるんだ? 魔族とやらについて」
「余も詳しくは知らん。大昔の――数万年前の女神と魔神が関わっているらしいが、それ以上の事はな」
女神と魔神……?
セレンさんとあいつ……ではないだろう。
ならばメロネさんとあの魔神だろうか。
……いや、違うだろう。
数万年前と言ったら、メロネさんもまだ女神をやっていたか更にその前の人のはずだ。メロネさんが魔族とやらに関わっているのなら、何かしらの情報を俺に与えてくれていただろうし。
「数万年前って、誰が女神やっていたんですか?」
「……私たちはそれぞれ、先代からしか情報を貰わない事になっているんです。なので考えられるのは、メロネさんの更に前……もしかしたら前の前かもしれないです」
そんな昔からこの世界はあるのか。
というか、この四人の平均年齢が高すぎるお陰で感覚が鈍っているが数万年前ってどんな規模だよ。元の世界で言えば人類が生まれるか生まれないかくらいのスレスレラインじゃないのか?
いやでも恐竜がいた時代が何億年前とかって話だし、そう考えると数万年前程度なら……いやいや。やっぱ鈍ってるよ。俺なんて18歳だぜ。もしかしたら19歳になってるかも。どっちにしろ20年も……一世紀の五分の一も生きてないような赤ん坊みたいなもんだ。
……待てよ。
あいつが魔神と名乗っているのは、あいつが魔法を造ったから、じゃないのか?
話の整合性が取れていない。
魔神が数万年前にも存在していたというのは変だ。
……どうなってんだ一体。
「儂が聞いた話じゃと、あちら側とこちら側は決して結び付かない、全く別個の――真逆の世界なはずなんじゃがな。だからあちらの世界にいるはずの魔族がここにいたのはおかしいんじゃ」
「余はここへ来る途中であんなのをもう一匹見つけたぞ」
「そう言えばそんな事言ってたな。そいつはどうしたんだ?」
「普通に始末したが。余の通路を妨害したのでな」
「……あ、そ」
だが、今のラリアの話を聞く限り、あれが二匹もこちらに来ているのは明確な異常事態だ。あり得ない事が起きている。
……駄目だ。俺には分からん。
魔神なら分かるのか?
だがこっちからあいつにコンタクトを取る方法とかないしな……
何の前触れもなく突然現れやがる。
そしてごちゃごちゃ言って消える。
今回は正直助かったが。
レオルが来ていなければ、あの場面を潜り抜けられていたかは五分五分だ。多分あの超必が当たれば勝ててただろうが、外れてれば一巻の終わりだからな。
五分五分、と言っといてあれだが、ほぼ100%当たると思ってはいた。タイミング、態勢、俺自身のレベルアップ等々色んな要素を加味して間違いなくいけると思った上でのレオル登場だ。
こいついればもう大体全部何とかなるんじゃないか。
まぁ、立場もあるしそんな簡単な問題じゃないか。
やはり俺が強くなる他ない。
ただ……
俺がどうにか出来る問題ではないかもしれないが、レオルとラリアの関係をどうにかしておきたい。
髪色と顔色の悪い大人と黒髪おかっぱロリのにらみ合いをいつまでも見てるのは色んな意味でハラハラする。
どっちからアプローチしてくか……
レオルかなぁ。
「なあおいレオル」
「どうした」
「ラリアと何があったか知らないけどさ、仲良くやってこうぜ」
「…………おぬしが言うのならば、余は吝かでないが」
「…………」
それを聞いたラリアがぴくりと反応した。
ぴきりと反応したと言っても良いかもしれない。
あんまり良い感じの反応じゃなかった。
……何があったのマジで。
怖いよお前ら。
「ラリア……さん」
呼び捨てにしようと思ったら思いっきり睨まれたので思わずさんを付けてしまう俺。び、ビビった訳じゃないし。後腐れなく行こうと思っただけだし。
心の狭い幼女だ。
呼び捨てくらい別に良いじゃん。
「レオルと仲直りする気とかあるか?」
「あぁん?」
輩かお前は。
なんだその態度は。
「……まぁ、してやらん事もない。かわいい弟子の頼み事じゃしの」
「じゃあ――」
「が、条件がある」
「……なんだよ。俺にか? レオルにか?」
「お前に、じゃ」
「出来る範囲ならなんでもやってやるさ」
普通こういうのってレオルに条件を出すと思うんだがな。なんで俺なのか。まあいいさ。出来る範囲ならなんでもやってやる。こういうのも何だが、多分大抵の事は出来るしな。
「ほれ」
と。
ラリアは草履(みたいなやつ)から右足を抜いて、俺に向かって突き出した。どうしろと。足でも揉んで欲しいのか?
「俺マッサージとか出来るタイプじゃないぞ」
「違うわ。吸血鬼の足が凝る事なんてある訳ないじゃろう」
それもそうだ。
不死身なんだからな。基本的に体調はベストな状態で保たれているはずである。吸血鬼によって不死身の度合いは違うが、レオルの眷属ならば不死身性に疑いもないだろう。
……あれ?
吸血鬼って主従関係がかなりはっきり出るって聞いてた気がするんだが。レオルが主で、ラリアが従だよな? この場合。なんでこいつこんなはっきりとレオルを拒絶出来てるんだ。
「はよせんか」
「だから何をだよ」
「舐めよ」
「な、なめ……!?」
セレンさんが俺より先に反応した。
お陰で俺は逆に落ち着く事が出来た。
そういえばこういう奴だったなこいつ。
生粋のサドみたいな奴だ。この手の要求をしてくる可能性は十分にあった。完全に思考の外だったが。流石にロリババアに足を舐めろなんて言われる日が来るとは思いませんて。
どうするかな。
足舐めるのは普通に嫌だ。
確かにこいつは見てくれはかなりの美幼女だが、流石に足を舐めるのをご褒美と言って享受するほど俺も女に飢えてない。既に三人の嫁がいてその上に嫁になるだろう人が一人いるんだからな。
俺がドMかつロリコンだったら喜んでこの条件を受けていただろうが、残念ながら俺はその属性を両方とも持ち合わせてない。
ミラは微妙なラインだが、セーフなはずだ。
絵面は結構危ないけど、あいつは年齢より幼く見えてるだけだから大丈夫。
……そういう意味じゃこいつはセーフどころじゃない気もするな。
ロリババアだもん。
合法ロリ。
反語は違法ロリだろうか。それとも脱法ロリだろうか。脱法って法に触れてなさそうに聞こえるけど、普通にアウトなんだよな。確か。
脱法ロリ。
凄まじい響きである。なんという言葉を生み出してしまったのだろうか。もう響きだけでやばい。この単語を発した時点で捕まりそうな勢いを感じる。
「やれぬのか? やれることはやるのではなかったのか?」
「ラリアさん、流石にこれは……!」
「小娘は黙っとれ。儂は小僧と話しておるのじゃ」
お前セレンさんになんて口ききやがる。
だが、どっちが年上なのかとか分からないな。……セレンさんは永遠の18歳なんだっけ。ラリアは見た目は永遠の小学生だけど、何百年とか下手したら何千年とか生きてるんだよな。
「……よし分かった、舐めようじゃないか」
「ほう」
作戦αで行こう。
βなんて考えてないけど。
「ただし先に言っておくことがある。俺はお前くらいの見た目の奴が大好きで大好きで、日常的に足を舐めたいと思っていた。夢にまで見るほどだ。だからもしかすると足だけじゃ済まずにあんなところやこんなところまで舐めようとしてしまうかもしれない。いや、かもしれないじゃない。してしまう。間違いなくしてしまうだろう。抵抗は無駄だ。何故なら俺の方が力が強いからな。力ずくでやれば取り押さえて舐めるくらいの事は造作もない。舐めてやろう。舐めつくしてやろう。俺の舌が触れてない場所などないという程に舐めしゃぶってやろう。今更逃げようったってそうは行かないぜ。問屋が卸さねえ。絶対に俺はお前を舐めるし、嫌がろうが泣こうが喚こうが暴れようが舐める。むしろそういうのの方がそそる。分かるか? 俺はそういう趣味なんだよ。それでも舐めて良いと言うのならば舐めよう。舐めつくしてしんぜよう」
ラリアは。
ドン引きしていた。
というか、セレンさんがかなり引いていた。
違うんです。
そういう作戦なんです。
とアイコンタクトで伝えようとしたら、目を逸らされた。
後で迅速で適切なフォローが必要だなこれは。とりあえずこの場をまず切り抜けよう。
「さぁどうしたラリアさん。足が若干引き気味だぜ。それじゃあ舐めにくいだろう。ああ、俺が自分から逝けば良いのか。すまないな、わざわざお前の手を――足を煩わせるほどの事じゃあないもんな。安心して俺に身を預けてくれ。大丈夫、舐める以上の事は多分しないから。ちょっとくらいしかしないから。先っちょだけだから」
「……もう良いわ」
す、とラリアは足を下げて、草履(らしき履き物)に足を通し直した。
「まさかお前がそんな業の深い性癖だったとは思いもせんかった。儂が悪かった」
「俺に謝るなよ。貴重な謝罪を俺に使うなよ。レオルとの仲直りに使えよ」
「別に貴重でもなんでもないわ。儂が悪いと思えば謝りもする。…………すまなかった、吸血鬼の王。許して欲しいとは言わんが、せめて弟子の前でくらいはそういう事にしておいて欲しい」
そう言って。
ラリアは頭を下げた。
レオルは――
「……いや。あれは余にも――否。余にこそ非があった事を認める。こちらこそすまなかった。おぬしの意をくんでやれなかった」
そう言って、頭を下げた。
ラリアと同じように。
……なんとかなった、のか?
何があったのかとかは分からないが。
なんだろうな。
昔恋仲だったとかだろうか。
まぁ、俺の関与するところじゃないか。
とりあえず、一触即発の雰囲気だけは払拭出来ただけでも良しとしよう。
後でセレンさんへのフォローが大変だが。
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