女神と一緒に異世界転移〜不死身の体と聖剣はおまけです〜

子供の子

第67話 知らぬ存ぜぬじゃ

「知りません俺は関係ありません。そもそも誰ですかそいつ。見覚えもなければ聞き覚えもないし心当たりもないです。そろそろ帰って良いですか?」


 俺は。
 シラを切っていた。
 斎藤に関する事だ。
 職員室に呼び出されるなんてドキドキイベント、もう二度と味わえないと思ってたぜ。


「そうは言っても、みんなミドリザキ君がサイトウ君を連れてったと言うんだがね……」
「知らないです。誰ですかサイトウって。そんな不吉な名前した奴知らないですし関わりたくもないですね。俺は何も知らないですし誰に聞いても分からないと思いますよ。そろそろ帰って良いですか?」
「……もういい。帰れ」


 よし。
 語尾にそろそろ帰って良いですかを付け続ける作戦は成功した。


 では、と言って職員室を後にする。


「はぁ……」


 斎藤め。
 あいつ本当に正式な手順を踏んでこの学校へ来てたんだな。
 急に連絡が取れなくなったお陰で、斎藤を教室から連れ出したという前科がある俺に白羽の矢が立った訳だ。ああいうキャラは何か裏で工作して入ってくるとかじゃないのか。


 正々堂々真正面から入りやがって。
 普通にテストも受けたらしい。満点合格。舐めてんのかあいつ。


 もっとせこい手で編入してこいよ。




「お疲れ様。なんて答えたの?」


 教室に鞄を取りに戻ると、ディーナが出迎えてくれた。
 先に帰ってても何も文句なんて言わないのに。


「シラを切り通したよ。知らねぇ存知ねぇの一本で」
「度胸あるなー」


 そうだろうか。
 変に答えると絶対こじれるから全部知らない事にしとけばいいやってくらいの考えだぞ。


 ちなみにディーナは真実を知っている。
 巻き込むなら徹底的に巻き込んで、内側に置いとくべきですとのセレンさんの言葉で、ほぼ全てディーナには伝えてある。


 俺が異世界から、この世界を救う為にやってきたという事も、当然。


「なんかすごい事に巻き込まれちゃったな」
「もう引き返せないぞ。相手は全知全能みたいなもんだからな」
「引き返す気なんて全くないよ。相手が全知全能じゃなくても」


 そうですか。
 かっけえな。俺が女でディーナが男だったら惚れてるぜ。


 逆でも既に惚れた腫れたの関係だが。


 結局収まるところに収まったという事なのだろうか。


「あ、そうだ。ユウト君、この後暇?」
「暇というか、お前との特訓以外は何も予定はないけど」
「じゃあ、今日は特訓お休みでご飯でも食べに行かない?」
「いいけど……この辺のうまい飯屋とか俺全然知らないからなぁ」
「おすすめのお店があるんだよねー」
「ほほう。お手並み拝見といこうか」
「お楽しみにー」


 











「うん、美味い」
「よかったー」


 おすすめのお店、と言われて来た場所は。
 種明かしをしてしまえばなんだそんな事かで済んでしまう事なのだが、ディーナの実家だった。郷土料理店、みたいな感じだ。


 味噌汁的な何かを最後に啜り、一息つく。
 味噌汁じゃないけど味噌汁っぽい。謎の液体。たまに見るけど、未だにこれの正式名称を知らないんだよな。味噌汁モドキと名付けよう。


「……ご両親は?」
「いるけど……どうする?」
「まぁ、挨拶くらいはな」


 しといた方が良いだろう。
 別に減るもんじゃないし。


 なんて言おうか。
 娘さんを僕にください! がやはり定番だろうか。


 いやしかし、急にそう入るのもあれか。
 まずは世間話から入るのが良いかもしれない。最近金属類の値段が高騰してますよね、とか。そんな感じの。


 それとも政治の話が一番だろうか。
 最近竜人と吸血鬼が手を結んだらしいですよみたいな。
 で、俺実は竜王なんです。って感じで。


 無理やり過ぎるか。
 ……そもそもディーナのご両親は俺がどういう奴か知っているんだろうか。


 とかなんとか言っている間に、一番奥の部屋まで通されてしまった。


「自然体でいいよ。わたしが好きになった人だもん。文句は言わせないよ」
「……ありがとな」


 扉を開けて、とりあえずこんばんはから入ろうとすると――




「よく来たな少年! よし勝負だ! まずはそれからだ!!」


 って言われてムキムキのおっさんにヘッドロックを極められ、そのまま外へ連れていかれた。何なのマジで。


「ちょっとお父さん!」
「俺より強い男でないと認めん! 勝負だ!!」


 ムキムキハゲだった。
 ディーナのお父さん。
 強そう。


 お母さんは……青い髪だ。ディーナと一緒だな。お父さんの方は分からない。だってハゲだから。眉毛は茶色だから、多分茶髪だろう。ハゲじゃなかったら分かったのに。


「お父さん!!」
「認めん! 認めーん!!」


 ムキムキハゲが駄々をこねる姿は正直見ていられるもんではなかった。
 ……勝負ね。
 外まで連れてこられたって事は、単純に腕っぷし比べだろう。


「いいよ、ディーナ。やりましょうお父さん」
「貴様にお父さんと呼ばれる筋合いはッ! 無いッ!!」


 面白い人だなぁ。
 愛されてんな、ディーナ。


 お母さんがやれやれと言った感じで木刀を持ってきた。


「あの人結構強いけど……大丈夫かしら?」
「はい。たぶん」


 勝つにしろ負けるにしろうまい事やるさ。


「はぁ……ごめんユウト君。軽く捻ってあげて」
「どれくらい強いんだ?」
「剣術なら、少なくともわたしよりは」


 相当だなそれ。
 勝てるかな……


「小僧ぉ! 貴様は何をしてきても良い! この俺に膝をつかせることが出来ればお前の勝ちだ! 逆にお前は参ったと言うまで負けじゃなくていい。――ただし、負けたらうちの娘には二度と近付かないで貰おうか!!」
「じゃあ、俺も膝ついたら負けでいいんで、勝ったら娘さんください」
「ああああん!? この俺に勝とうなんざ10年早いわああああ!!」


 突っ込んできた。
 怒りに任せた突撃のようで、実のところ隙のないぶちかましだ。
 仕方ない。


 ずん、と重い衝撃が両腕に響く。
 真正面から受け止めたのだ。
 体重が120㎏くらいありそうなムキムキ巨漢だが、それどころじゃない俺の怪力をもってしてなら余裕で止められる。


 心配なのは木刀の耐久力くらいだ。


「ぬ!?」
「せい」


 突き飛ばす。
 ディーナとの特訓の時も、鍔迫り合いになるような事はなるべく避けている。ああいう力と力の勝負になってしまうと、俺が負ける訳ないからだ。


 自分の力で得た力じゃないってのがやるせないがな。


 今度はこっちから行くぜ。
 飽きるほど見た、ディーナの十八番だ。


 剣先を一瞬ブレさして、突く。
 これが意外と難しい。
 一人でこっそり練習して、モノになるまでどれだけ時間がかかった事か。


 お父さんの喉元に突きつける。


「……膝、ついてないけどどうします?」
「……………………俺の負けだ。参った」



















「竜王……だと……!?」
「はい。名義だけですけど」
「道理であの怪力……いや、すまなかった。つい逆上してしまって」
「いえいえ」


 お父さんとお母さんにはそれなりに事情を話した。
 巻き込まない程度に。


 俺のざっくりした素性とか。
 ディーナとの出会いとか。


 どれくらいディーナを愛してるのか200文字以上300文字以内で5つ作文しろとか。いやこれ嘘じゃないんだぜ。しかもこのお題を出してきたのが一見のほほんとしてるお母さんの方だからびっくりだ。
 なんとかやったけど。


 正直出来るとは思わなかった。


 発表させられてる時のディーナの顔は見ものだったな。
 カメラがあったら30枚くらい撮ってた。


 既に三人の嫁がいるという事も、別段驚きもなく抵抗もなく受け入れられた。


 この世界ではそういうものらしい。
 強い者がたくさんの妻を娶るのは珍しい事でもないのだとか。


 一夫多妻制のある国で育った訳じゃない俺には分かりかねる価値観だけど、その価値観に助けられているのだから世話のない話だ。


「吸血鬼の王と知り合いだと!?」
「ええ。まぁ」
「道理で強いはずだ……」
「吸血鬼の王はもっと強いですよ」


 なんて感じで。
 お父さんとも結構仲良くなれた。
 自分で言うのもなんだが、このお父さんより強い人間ってのはそうそういないと思う。案外、普通の竜人や吸血鬼よりも強いかもしれない。


 ちなみにお父さんは剥げてる訳でなく剃っているらしい。
 武道の心得がどうとか言っていたが、俺に強要してこなければどうでもいいや。


 流石に丸坊主はちょっと……キャラが薄くなっちゃうし。
 いや、むしろハゲの方がキャラは強いか?


 うーむ……


「ユウト君はそのままが一番だよ」
「そ、そうか?」


 みたいなやり取りをしつつ。
 平和に夜は更けていった。

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