女神と一緒に異世界転移〜不死身の体と聖剣はおまけです〜

子供の子

第66話 魔法

「《嫉妬》……確かに、相手の何割かの力をコピーする能力ですね」
「力っていうのはどういう力なんですか?」
「純粋な膂力です。なので、優斗さんの不死性までコピーされててまた蘇る……という事はないと思います」
「なるほど」


 膂力、か。
 加減した攻撃じゃ倒せない訳だ。


「他の七つの大罪? ていうのの能力は分かるの?」


 とミラ。
 そういえばそうだな。
 先に聞いておいた方が良いか。


「はい。《怠惰》は優斗さんが持っている眼です。未来を視る事が出来る。そして《嫉妬》は相手の力の一部を模倣する。《強欲》と《暴食》はほとんど一緒ですが、相手の存在力――『強さ』そのものを奪うような力です。《強欲》は倒した相手の存在力を。《暴食》は喰らった相手の存在力を。
 《傲慢》は相手のしてきた攻撃をそのままの威力で跳ね返すという能力です。強力ですが、デメリットとして必ず・・先に相手の攻撃を受けなければなりません。
 《憤怒》と《色欲》は字面通りの能力で、《憤怒》が怒りに呼応して膂力が高まる能力。《色欲》は異性を誘惑する能力です」


 ふむ……
 魔王も、強欲と暴食のどっちも持っていればあれだけの強さになるのも頷ける。
 傲慢、憤怒、色欲はまだ実際に見た事ないがどれも厄介そうな能力だな。特に色欲。男が使うか女が使うかによるが、《嫉妬》を持った斎藤を俺にピンポイントで当ててきたという事は、女が《色欲》を持って俺に近付いてくる可能性は高いな。


 男だとしたら……セレンさん達に会う前にぶちのめすだけだ。
 俺が先にそいつに会わないといけないが。


「……色欲ってどれくらいの強制力があるんですか?」
「実はそれほど高くないです。攻撃するのを躊躇うくらいで」
「なるほど」


 攻撃するのを躊躇う、か。
 戦闘中なら大きなデメリットだな。
 躊躇うじゃなくて攻撃出来なくなる、までだったら強力すぎるし、そんなもんがあの魔神の裁量ってところだろうか。


 知らんけど。


 不死身や聖剣と言った強力無比な能力二つをセレンさんは俺に渡してくれたが、魔神はどこか穴のある――メタ的な意味で低コストな能力を配っている。


 量より質。
 質より量。


 どちらに転ぶかは分からないが、そういう意味では相手側の戦力とこちら側の戦力はほとんど変わらないはずだ。
 むしろ、こちらは偶然が重なって吸血鬼と竜人を仲間に引き入れる事が出来ている分有利だ。


 三人の頂点のうち二人がこちら側にいるというのは大きい。
 というか一人は俺って事になってるのが変なんだけども。元竜王も仲間にいるからとりあえずいいやってなってるだけで。


 一度整理するか。


 セレン(女神)さん側の戦力。
 まずセレンさん本人。何万人ものエルフを相手に無傷で生還できるレベルの魔法の使い手。言葉にするとやばいな。セレンさんだけで何とかなるんじゃないか。


 次に吸血鬼の王、吸血鬼。
 レオル単体の戦闘力は言わずもがな。世界最強クラスと言って良いだろう。


 そして竜王、竜人。
 パルメの戦闘力も今更だが、こちらもセレンさんと同じくほぼ無傷で何万人ものエルフを退けている。普通じゃない。


 ミラやディーナ、エルランス……は加えて良いのか分からないがとりあえず入れとくか。あの辺りは強いが人間の範疇を超えていない。いや、人間の範疇を超えている連中がおかしいだけなんだけど。


 最後に俺。
 エルフ数万人相手にボロボロになりながらギリギリで勝利(?)。


 不死身、チートな聖剣、吸血鬼化というアドバンテージがありながら光のハイエルフには手も足も出ず。しかも聞いた話によればあいつは剣より魔法が得意らしい。
 魔王には手も足もどころか、口さえ出せなかった情けない奴。


 ひでぇ戦績だ。
 大丈夫か俺。


 MMOにこんな性能の奴いたら間違いなく運営サイドなのに、負けてばかりな気がする。


 新しい神器と怠惰の魔眼まで手に入れて、まだ負けるとか流石ないよな……?
 いや、ぶっちゃけまだ魔王に勝てる気はしないが。


 光のハイエルフは分からない。
 近接戦闘ならどうにかなりそうな気もしないでもないが、あいつ魔法の方が得意なんだよな。やっぱ俺の方が弱いわ。


 剣術だな。
 まずは剣術だ。


 それから、魔法も覚えたい。
 魔力が俺の中にある事が判明したからな。
 これも間接的にというかたまたま偶然ではあるけど、セレンさん経由で貰ったものなんだよな。セレンさんと一緒に戦うと、《支援魔法》なるものをかけてくれる。


 あれを自分で使えるようになると、一人で戦う時にも便利だ。


 支援魔法って物凄い上級魔法らしいけど。
 普通は使えないというか、使える人間が世界に10人もいるかいないかってくらいの。努力しても届かない領域にあるらしい。
 才能があって、且つ死に物狂いで努力をした人しか使えない。


 そんな魔法だ。
 ……俺には無理な気もするが、やってみるだけやってみたいじゃん。


 剣術の後だけどさ。


 ファイアーボールとかアイスウォールとかサンダーボルテックスとか使ってみたいじゃん。今適当に考えた名前の魔法だけど、多分あるよね。ありがちな名前だし。


 そういえばセレンさんは氷系の魔法を多用するが、別にあれは氷系が得意だからという理由ではないらしい。何かと便利なんだとか。


 かっちょいいよね、氷魔法。
 俺も氷魔法使いたい。
 氷のドラゴンとか出してドヤ顔したい。


 俺の氷魔法は全てを凍てつかせる……とか言ってみたい。
 要は魔法を使ってみたい。


「それこそファイアーボールくらいなら今すぐにでも使えるようになりますよ?」
「マジっすか!?」
「魔法苦手なボクでもそれくらいなら出来るよ」
「なんだと!?」


 全く使えないとばかり思ってた。
 ……いや、前に苦手なだけとか言ってた気もするな。
 どうだったかな。


「外に出ましょうか。室内だと危ないですし」















「色々方法はありますけど、一番簡単なのは詠唱して魔法を使う事ですかね」
「詠唱」
「詠唱です。好きでしょう、そういうの」
「大好きです」


 外へ出た俺たちは、魔法をぶっ放しても人に被害が出ない場所――町から少し離れた空き地に来ていた。ここならよほどの事故が無い限り安全だろう。


 詠唱か。
 なんかかっこいいのあるんだろうか。


「《火の精よ》《我が願いを聞き届け》《魔となりて顕現せよ》――ファイアーボール!」


 ぼう、と火の玉が飛んでいって、空き地の中央辺りで消滅した。
 だいぶ威力抑えたんだな。


「今のは詠唱の簡易版ですけどね。これを枕にして、自分なりのアレンジを加えて威力を高める人もいます。例えば火柱を作りたいなら《天を穿つ》とか加えたり」
「なるほど」


 センスが試される訳だ。


 と。
 ぼう、と火の玉がもう一つ飛んでいって、空き地の中央で消えた。


 火の玉を出した奴――ミラを見ると、心なしかドヤ顔をしながら


「ボクは無詠唱で出来る」
「ぐぬぬ」


 良いもん。
 俺は俺でかっこいい詠唱でやるもんね。


「行くぜ! 《火の精よ》《我が願いを聞き届け》《魔となりて野を焼き焦がせ》――ファイアー――ああああああ!?」


 火の玉は出た。
 自分なりにかっこいい(?)文句も付け加えた。
 そしたら、火の玉がめっちゃでかくなった。


 え、なにこれやばいって。
 やばいやばいやばい!
 熱い熱い焼ける。


「セレンさんこれ制御とかどうやってやるんですか!?」
「え!? えっと……慣れですかね」
「うわああああもう駄目だこれ撃って良いですか? 撃ちますからなんとかしてください!」


 丸投げだった。
 最終的に直径10メートルくらいになった火の玉はすっ飛んで行き――水の壁に阻まれ、消滅した。
 ……何今の。


 慣れてない人がやるとこんななっちゃうの?


「……優斗さん、今のもう一発やれます? どれだけ大きくなっても私が何とかするので、最大火力まで」
「俺の肌がこんがり焼けますけどやれますよ」
「……クール」


 ぴ、とセレンさんが俺に向かって人差し指を突き出した。


「今何かしました?」
「暑さへの抵抗を高めました。かなり変わるはずです」
「ほうほう」


 そんな魔法もあるのか。
 今のも支援魔法に含まれるのだろうか。


「じゃあ行きますよ。本当に何とかしてくださいね。《火の精よ》《我が願いを聞き届け》《野を焼き尽くせ》――ファイアーあああああああ!!」


 突き出した両手の先に、火の玉が出現する。
 魔力が際限なく火の玉に注がれて行き、膨張する。
 膨れ上がった火の玉の大きさは――直径にすると50メートル程だろうか。


 そこで俺の魔力が尽きた(多分)。


「これ撃っちゃって大丈夫なんですか?」
「大丈夫です」


 じゃあ撃っちゃおう。
 熱さ耐性上がっててもあっついし。


「行きます!」


 ドン、と。
 地面を削り焼きながら突き進んで行く火の玉に、大量の水がぶっかけられた。
 すぐに鎮火。


 フルパワーの魔法でもあっさり消されちゃうのか。
 いや、消えないとまずいんだけど。
 消えたら消えたでなんか寂しいな。


「……で、今ので何が分かったんです?」
「優斗さんの魔力量と、魔法適正ですね」
「ほほう」
「まず魔力量ですが、普通の人の4倍から5倍くらいですね」
「おお」
「次に魔法適正ですが、ほぼ無いです」
「えっ」
「ほぼ無いです」
「えぇ……」
「とは言っても、簡単なものなら今みたいに撃てるんですが、多分優斗さんの場合だと今まで魔力が無かったのに急に生産されるようになって、体が順応しきってないんだと思います」
「もうちょっと馬鹿にも分かるように」
「……元々優斗さんは魔力を持っていなかったので、魔法を使おうとすると垂れ流しになっちゃうんです。蛇口を捻ったら戻せない、みたいな」
「それはまずいですね」


 だが、撃ってしまえばそれで魔力の放出は抑えられた。
 刹那的な使い方をする分には出来ない事もないって感じか。


 魔眼に魔力を籠めるのは普通に出来るのになぁ。


「魔力を繰る事と魔法を扱う事はまた違った素質が必要ですからね……」
「残念だったね、ユウト」
「少しは残念そうな顔で言え」


 ざまぁみろという声が聞こえてくるようだ。
 いつも通りの無表情だけど。


 しかし、魔法が使えない訳ではない。
 というのが分かっただけでもめっけもんだな。
 今までは当然使えないものとして戦略から完全に除外してたんだから。


 とりあえず。
 まずは剣術だよ。
 そっちを忘れちゃダメだ。
 その後で魔法。
 やる事がたくさんあるな。

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