女神と一緒に異世界転移〜不死身の体と聖剣はおまけです〜

子供の子

第54話 過ぎれば

 初授業はすぐに行われる。
 そういうものなのだろうか。


 入学式とかないのかな。
 校長のアホみたいに長い話をアホ面しながら聞くのを楽しみにしていたのだが。いや、嘘だ。楽しみじゃないわあんなの。ただの拷問だろ。


 誰かぶっ倒れるフリして校長の話止めろってずっと思いながら聞いてたわ。


 閑話休題。
 話が逸れてしまった。
 校長への怨嗟のせいで。


 あれって長く喋らないといけない制約でもあんのかな。絶対長いよな。今回は短く済ませますって言って短く終わった試しがない。


 話が逸れ続けている。


 入学式は無い。
 無いらしい。


 素晴らしい事だと思う。
 あのイベント何の意味があるんだ。


 心得とかなんとか色々校長が喋るけど、そんなもん言われなくても分かってるし言われても分からん奴は分からないんだよ。
 それをぐだぐだぐだぐだと長々と話し続けやがって……


 校長への憎しみが止まらない。
 全国の校長先生へ言いたい。


 あんたの話めっちゃ長いからな。
 生徒がぶっ倒れてからじゃ遅いんだぞ。


 ちなみに、俺と一緒に入学した人数は全部で100人程度らしい。
 思ってたよりずっと多かった。
 もっと、20人とか30人くらいの少人数だと思ってた。


 クラスも幾つかに別れるらしい。


「お、ユウト君じゃないか。クラス、一緒みたいだね! よろしく!」
「おー。よろしく」


 ディーナだった。
 座る席は自由なようなので、隣に座る。


 俺基本人見知りなんだよ。
 本当だよ。


 だから知らない人と隣同士なんて耐えられないんだ。
 だからディーナの隣に座った。
 それ以上の理由はない。


 決して彼女の見た目が可愛らしいからではない。


 いいね? 分かったかい?


「あ。あの先生。入学試験の審判やってた人じゃない?」
「そうだっけ」


 普通に顔覚えてない。
 むしろよく覚えてるな審判の顔なんて。


 普通は見すらしないくらいだろう。


「わたし、結構人間観察とか好きなんだよね。だからユウト君が本気を出していなかったのもすぐ分かったよ。あれは余裕のある人間の立ち振る舞いかただ」
「へぇ……」


 俺は単純にまだこいつ上があるんだろうなーとぼんやり思っただけだ。
 趣味が人間観察の奴は大体暗い奴という俺の持論が崩れてしまった。そんな持論元々持ってないけど。趣味が人間観察って奴に初めて出会ったよ。


 想像してたより不快感無いんだな。


 と、言うよりはこいつの人間性の賜物だろうか。


 セレンさんやミラ、パルメとはまた違ったタイプの少女だ。
 誰が一番近いかと言えばパルメだろうが、あいつとはアホさ加減が天と地だ。この子にアホの子っぽさは無い。
 安心の賢い子だ。




 しばらくすると、授業が始まった。
 心構えとかなんとか色々。


 座学だしこんなもんか……


 見ればみんなもノートをとったりしている感じはない。
 ノートをとるという習慣がないだけだろうか。
 判断はつかないが、この程度の話ならノートを取るまでもないだろう。


 なんかこうもっと。
 実技みたいなのばかりだと思ってたが、こんなのもあるんだな。


 最初だけかなぁ。


 そういえば、セレンさんたちは今頃どうしているだろうか。


 俺がいない間も依頼を受け続けるとは言っていたが……
 俺がいない間に何か危険な事に巻き込まれたりしてないだろうか。


 今は吸血鬼の王も竜王(元)も味方だから危ない事はないと思うが……
 あ。
 そういえば、ドルーさんはどうしているのだろうか。


 俺たち普通にセレンさんが繋げたゲートとやらで帰ってきたけど。
 ドルーさんと言えば、ドルーさんの故郷を襲った吸血鬼とやらがそういえばいたな。レオルに聞くの忘れてた。


 が、多分あいつの指示ではないと思っている。
 だとすれば王に歯向かう形の吸血鬼もいるという事か。


 三つの頂点に匹敵するほどの強さを誇るであろうセレンさんたちに何かが出来るとは思わないが。実際、吸血鬼の襲撃があった時もあっさりと呆気なく倒してたしな。


 戦闘描写すらなくやられてたし大丈夫だろう。


 唯一の懸念材料としては、光のハイエルフが健在……とまではいかないが生きていることくらいか。剣を使っての戦闘は俺の不死性込みで互角くらいだったからそう大した事は無いのだろうが、エルフってくらいだから多分魔法の方が得意なんだろう。


 セレンさんとどっちが強いかな。
 レオルなら光のハイエルフを追い払えるらしいから、やっぱり大事にはならないと思うが。……あの時の戦争ほどの規模の事はもうそうそう起きないだろう。


 魔王は。


 あいつの意図は読めない。
 イコールで魔神の意図だと思って良いのかすら分からない。


 いつ襲撃してくるか分からないなら常に固まっていた方が良いのではないかという意見に対してのみんなの意見は、「いやむしろ固まってたら来るんじゃね?」との事だった。


 一理ある。
 と、思う。


 一応。
 セレンさんとミラの二人には、レオルが何かを仕込んだらしい。
 吸血鬼の術で、敵に襲われたのを察知する事が出来るのだとか。


 ただしその術は、吸血鬼と密接な・・・関係にある者にしかかけられないらしい。パルメは駄目で、セレンさんやミラは出来た。


 密接な、という部分が一緒にいた時間を指すのか、肉体的な関係を持った事を指しているのかは置いといて、とにかくパルメは駄目だった。


 ……だが、パルメなら心配いらないだろう。
 常に竜人の護衛が付くらしいし、そもそも単純に戦闘力が俺より上だ。


 いやでも魔王は更にその上を行く可能性がある。
 俺はパルメの底も魔王の底も、レオルの底も知らない。


 底を引き出す事が出来ていない。
 ……どうだろうか。


 やはりすぐにでもみんなと合流した方が良いのか……?


 もし魔王が襲撃してきたら。
 全員で対処しないと倒せないんじゃないのか、あれは。


 俺が知っている奴の中で、一番強いのは魔王を除けば恐らくレオルだ。
 吸血鬼の王。
 二番目が団子で、セレンさんになるかパルメになるか俺になるか、光のハイエルフになるかと言ったところだが……光のハイエルフは敵だし関係ないな。


 ただ、セレンさんもパルメも光のハイエルフも俺と並べたが、三人とも遠距離戦闘を得意としてるんだよな。戦えば多分俺が負ける。
 いやパルメは遠距離が得意とは限らないか。


 あの咆哮ブレスのイメージが強いが、近距離戦闘だって決して弱くはないはず。むしろ強いはずだ。そういえば俺ぶん殴られたしな。
 じゃあやはりパルメは一つ上でセレンさんと俺が横並びくらいか……?


 もう分かんねぇなこれ。
 ぐちゃぐちゃでごちゃごちゃだ。




「ユウト君。考え込み過ぎだよ」
「――へ? あ、あぁ」




 そう言えば今は授業中だった。
 全然関係ない事を考えていた。


 意味ないと思える授業でも何かしらの意味があるのだろう。
 ちゃんと聞かなければ。


「考え込んで考え込んで考え込んだ人は、いざ戦場に立つと動けなくなる事が多い。ユウト君ほど強い人が何に悩んでるか分からないけど、あまり考えない方が良いよ」
「…………」


 小声で言うディーナ。


「なんて、無責任なこと言ったかな」
「……いや。助かったよ」


 考え込み過ぎも良くないよな。
 修さんにも力みすぎって言われたし。


 何事も過ぎれば毒となる。
 同じ字で、喉元過ぎればなんて言葉もあるが。


 ……いや、やめよう。
 みんな強い。


 何とかするだろう。
 何とかなるだろう。




「――――であるからして……」


 なんて言ってる先生の話を聞いていた方がよっぽど建設的だ。
 ……建設的だろうか。


 早く実践形式でやりたいんだが。
 座学は勘弁してくれ。

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